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No.964 2022年3月30日号 巻頭言
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【巻頭言】
★理研雇い止め問題に見る問題先送りの罪
2022年3月23日〜3月30日
カセイケン代表 榎木英介
かねてより問題になっていました、労働契約法の現科学技術・イノベーション創出の活性化に関する法律
https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=420AC0100000063
における特例のいわゆる「10年ルール」により、雇い止めにあう研究者が大量に出てこようとし、問題になっています。
【速報】理研600人雇い止め 研究者らが“撤回”を求めて政府に要望書
https://news.yahoo.co.jp/articles/4c27661d63d78aa515b80a5afa542af08b0012d8
理研で雇い止め、1年後に600人 労組が撤回要求「日本の研究力低下」 研究チームの解散、神戸が4割
https://news.yahoo.co.jp/articles/ee1c1cb114a153d420d05dfaac9b17e4e89592c7
なぜ理研は600人もの研究職を雇い止めするのか
https://news.yahoo.co.jp/byline/joshigeyuki/20220329-00288843
改めて科学技術・イノベーション創出の活性化に関する法律を見てみます。
(労働契約法の特例)
第十五条の二 次の各号に掲げる者の当該各号の労働契約に係る労働契約法(平成十九年法律第百二十八号)第十八条第一項の規定の適用については、同項中「五年」とあるのは、「十年」とする。
一 研究者等であって研究開発法人又は大学等を設置する者との間で期間の定めのある労働契約(以下この条において「有期労働契約」という。)を締結したもの
二 研究開発等に係る企画立案、資金の確保並びに知的財産権の取得及び活用その他の研究開発等に係る運営及び管理に係る業務(専門的な知識及び能力を必要とするものに限る。)に従事する者であって研究開発法人又は大学等を設置する者との間で有期労働契約を締結したもの
三 試験研究機関等、研究開発法人及び大学等以外の者が試験研究機関等、研究開発法人又は大学等との協定その他の契約によりこれらと共同して行う研究開発等(次号において「共同研究開発等」という。)の業務に専ら従事する研究者等であって当該試験研究機関等、研究開発法人及び大学等以外の者との間で有期労働契約を締結したもの
四 共同研究開発等に係る企画立案、資金の確保並びに知的財産権の取得及び活用その他の共同研究開発等に係る運営及び管理に係る業務(専門的な知識及び能力を必要とするものに限る。)に専ら従事する者であって当該共同研究開発等を行う試験研究機関等、研究開発法人及び大学等以外の者との間で有期労働契約を締結したもの
2 前項第一号及び第二号に掲げる者(大学の学生である者を除く。)のうち大学に在学している間に研究開発法人又は大学等を設置する者との間で有期労働契約(当該有期労働契約の期間のうちに大学に在学している期間を含むものに限る。)を締結していた者の同項第一号及び第二号の労働契約に係る労働契約法第十八条第一項の規定の適用については、当該大学に在学している期間は、同項に規定する通算契約期間に算入しない。
10年前に労働契約法改正が大きな問題になった時、私は当時の総合科学技術会議に出席し、問題を指摘させていただきました。
科学技術政策担当大臣等政務三役と総合科学技術会議有識者議員との会合(平成24年度) > 平成24年4月19日
https://www8.cao.go.jp/cstp/gaiyo/yusikisha/20120419.html
私のプレゼン資料は以下。
https://www8.cao.go.jp/cstp/gaiyo/yusikisha/20120419/siryocho-5.pdf
5年が10年になっただけで、根本的な問題が先送りされただけだったのではないかと思います。本来は任期の定めのない労働者を保護するはずだった無期雇用への転換権の話が、雇い止めを多発するという矛盾。それは5年であろうが10年であろうが、そして15年であろうが同じです。
5年前には職員の雇い止め問題が大きな問題になりました。そして最近でも、理研だけでなくさまざまなところで問題が噴き出ています。
千葉大「10年勤務」の有期職員、無期転換できず…組合は「5年ルールの潜脱」主張
https://news.yahoo.co.jp/articles/0b41214535cf2956bd7d630c7d090eca7921e759
第208回国会 内閣委員会 第2号
令和四年三月八日(火曜日)議事録。
https://online.sangiin.go.jp/kaigirok/daily/select0101/main.html
参院内閣委員会で共産党の田村智子議員がこの問題が取り上げましたが、続いて決算委員会でも、同じく田村議員がこの問題を取り上げ、与党議員からも賛同があったといいます。
「重要なご指摘」文科相、共産田村氏に謝意 国立大改善で
https://www.kanaloco.jp/news/government/article-888322.html
論戦ハイライト
参院決算委 田村副委員長の質問
https://www.jcp.or.jp/akahata/aik21/2022-03-29/2022032903_01_0.html
理研だけの問題ではありません。理研が「焼け太り」するだけ、という懸念も聞かれます。研究者だけ助かればいいのか、という批判の声もあります。
あらゆる非正規雇用労働者の問題として、根本的解決を早急に行なっていかなければなりません。もはや先送りはできません。
新型コロナの影響で留学生が長期にわたり不在 大学研究室が危機感
https://www.nhk.or.jp/shutoken/wr/20220328b.html
新型コロナウイルスは感染拡大しつつも、だいぶ警戒感が緩んでいます。
いわゆる「ただの風邪」にはまだ遠いと思いますが、戻りつつある日常のなか、2年間で失ったものの大きさを感じます。
新型コロナ 「エアロゾルでも感染」 感染研、見解を変更
https://mainichi.jp/articles/20220330/ddm/041/040/123000c
感染研がエアロゾル感染認める 飛沫、接触の報告書から一転
https://mainichi.jp/articles/20220329/k00/00m/040/168000c
Japan relaunches its HPV vaccination drive. For thousands of women, it may be too late
https://www.science.org/content/article/japan-relaunches-its-hpv-vaccination-drive-thousands-women-it-may-be-too-late
もはや遅すぎ、という声が重いです…。
HPVワクチン勧奨再開、9年の間にあった議論 厚労省部会長に聞く
https://www.asahi.com/articles/ASQ3S3S6RQ3LULBJ01D.html
HPVワクチンの接種を逃した方へ~キャッチアップ接種のご案内~
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou/hpv_catch-up-vaccination.html
「THE世界大学ランキング日本版2022」-トップは3年連続で東北大学
https://japanuniversityrankings.jp/topics/00207/index.html
【図で理解】THE世界大学ランキング日本版2022ダイジェスト
https://japanuniversityrankings.jp/topics/00209/
東北大が3年連続で1位 東大は2位 世界大学ランキング日本版
https://www.asahi.com/articles/ASQ3S71K7Q3SUTIL033.html
日本版ランキング。東北大学の評価が高いですね。
資料2:「日本学術会議のより良い役割発揮に向けて」に掲げた具体的な取組事項の進捗状況(PDF形式:777KB)
https://www.scj.go.jp/ja/member/iinkai/kanji/pdf25/siryo323-yakuwari220324.pdf
日本学術会議。任命拒否問題は解決の糸口がみられません。そして、人々の関心も薄らいでいます。
関心が薄らげば、問題は解決しなくて良いのか、そもそも法律違反なのではないか…。
そんな声がかき消される「法治国家」ならぬ「放置国家」。
国際物理オリンピック 日本は参加見送り ベラルーシで開催予定
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20220328/k10013555741000.html
生徒さんには辛い決定です。
Dozens of unidentified bat species likely live in Asia - and could host new viruses
https://www.nature.com/articles/d41586-022-00776-2
パンデミックは今の新型コロナで終わりてはないことは意識すべきです。
日本海南西部の海域活断層の長期評価
https://www.jishin.go.jp/evaluation/long_term_evaluation/offshore_active_faults/sw_sea_of_japan/
日向灘及び南西諸島海溝周辺の地震活動の長期評価(第二版)
https://www.jishin.go.jp/evaluation/long_term_evaluation/subduction_fault/#hyuga_t
M8級の発生確率「不明」 日向灘・南西諸島震源:日本経済新聞
https://www.nikkei.com/article/DGKKZO59431740W2A320C2CT0000/
日向灘と南西諸島海溝で予想される地震、最大M8に引き上げ…政府の地震調査委
https://www.yomiuri.co.jp/science/20220325-OYT1T50281/
復興や科学技術力の強化などを目指す【福島国際研究教育機構】研究開発と人材育成を行う
https://www.fnn.jp/articles/-/339324
「福島国際研究教育機構」来年4月設立目指す 基本構想決定
https://www3.nhk.or.jp/lnews/fukushima/20220329/6050017938.html
復興推進会議
https://www.kantei.go.jp/jp/101_kishida/actions/202203/29fukko.html
目標に掲げる運用益4.38%は野心的と思わない
責任者が明かす「大学ファンド」運用戦略の全貌
https://premium.toyokeizai.net/articles/-/30202
科学技術政策担当大臣等政務三役と総合科学技術・イノベーション会議有識者議員との会合(令和3年度) > 議事次第 令和4年3月17日
https://www8.cao.go.jp/cstp/gaiyo/yusikisha/20220317.html
議題
1.「総合知」の基本的考え方及び戦略的に推進する方策<中間とりまとめ>(案)
科学技術政策担当大臣等政務三役と総合科学技術・イノベーション会議有識者議員との会合(令和3年度) > 議事次第 令和4年3月24日
https://www8.cao.go.jp/cstp/gaiyo/yusikisha/20220324.html
議題
1.情報関連人材に関する調査結果について
2.ムーンショット型研究開発制度(目標4)研究開発構想の改訂案及び今後の運用について
ムーンショット型研究開発制度のPM決定について
(ムーンショット目標8・9)
https://www8.cao.go.jp/cstp/stmain/20220329ms.html
令和3年度「学術情報基盤実態調査」の結果報告について-大学における大学図書館及びコンピュータ・ネットワーク環境の現状について-
https://www.mext.go.jp/b_menu/houdou/2021/1418398_00005.html
令和4年度スーパーサイエンスハイスクール(SSH)指定校の内定等について
https://www.mext.go.jp/b_menu/houdou/2020/mext_00102.html
令和4年度科学技術週間における学習資料「一家に1枚 ガラス ~人類と歩んできた万能材料~」及び科学技術週間告知ポスターの公表について
https://www.mext.go.jp/b_menu/houdou/2021/mext_00101.html
私学ガバナンス改革へ文科相に提言提出 自民 文部科学部会など
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20220324/k10013549951000.html
私学諮問機関、監視機能強化へ 文科省、改正案今国会提出目指す
https://news.yahoo.co.jp/articles/1b4653016c1100a1188c4ad871db7e6df177fc15
私立学校のガバナンス問題。
理事会を最高議決機関として維持する一方、諮問機関「評議員会」に大学や短大の合併・解散といった重要事項に議決権を持たせるなどして監視機能を強化するとしている。
こちらが報告書です。
学校法人制度改革特別委員会報告書
https://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/daigaku/010/houkoku/mext_01093.html
特定分野に特異な才能のある児童生徒に対する学校における指導・支援の在り方等に関する有識者会議(第8回) 配付資料
https://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chousa/shotou/169/siryo/mext_00012.html
「9歳でギフテッド認定」天才はどう勉強してきた? 「ギフテッド教育」日本と海外では何が違うのか
https://news.yahoo.co.jp/articles/88f7958e0adb92ef117c43264645aaf3e86a28cb
Study conspiracy theories with compassion
https://www.nature.com/articles/d41586-022-00879-w
Twitter transformed science communication during the pandemic. Will it last?
https://www.science.org/content/article/twitter-transformed-science-communication-pandemic-will-last
DETECTING BULLSHIT
Studying the spread of misinformation should become a top scientific priority, says biologist Carl Bergstrom
https://www.science.org/content/article/studying-fighting-misinformation-top-scientific-priority-biologist-argues
やる気そぐ「測りすぎ」 成果主義の落とし穴、研究の世界にも
https://www.asahi.com/articles/ASQ3Q5F39Q3KULBJ00C.html
(多事奏論)成果主義と研究力 「測りすぎ」が意欲を奪う 岡崎明子
https://www.asahi.com/articles/DA3S15241948.html
インパクトファクター等の指標は、結局「ハック」されてしまう…。成果主義の難しい問題です。
‘Overwhelmed by hate’: COVID-19 scientists face an avalanche of abuse, survey shows
https://www.science.org/content/article/overwhelmed-hate-covid-19-scientists-face-avalanche-abuse-survey-shows
脅迫を受ける研究者がかなりの割合に。
Virtuoso mathematician who re-shaped topology wins Abel Prize
https://www.nature.com/articles/d41586-022-00841-w
Biden bids again to boost science spending - but faces long odds
https://www.nature.com/articles/d41586-022-00897-8
Updated: Biden’s 2023 budget request for science aims high-again
https://www.science.org/content/article/biden-s-2023-budget-request-science-aims-high-again
Afghanistan’s girls’ schools can - and must - stay open. There is no alternative
https://www.nature.com/articles/d41586-022-00877-y
アフガニスタンの女子校が急遽再会停止になった問題。女子教育はタリバンもある程度認めているはずだったように思いますが、そこは国際社会がタリバンを説得し続けるしかありません。
ロシアのウクライナ侵攻は1ヶ月を経過。戦死者は増え続け、ロシア、ウクライナ両国の研究者や研究園もに大きな影響を与えています。
ロシアの科学技術:改革とその行く末 - 新田 英之
https://agora-web.jp/archives/2055765.html
ロシアの研究所勤務の日本人、緊急帰国 「給料、紙くずになる」
https://mainichi.jp/articles/20220329/k00/00m/030/074000c
科学研究もロシア外し 欧米、相次ぎ国際協力停止:日本経済新聞
https://www.nikkei.com/article/DGKKZO59479380Y2A320C2FF8000/
Amid the Terror of War, Efforts to Keep Science Alive in Ukraine
https://www.the-scientist.com/news-opinion/amid-the-terror-of-war-efforts-to-keep-science-alive-in-ukraine-69846
Russian Scientists Grapple with an Uncertain Future
https://www.the-scientist.com/news-opinion/russian-scientists-grapple-with-an-uncertain-future-69842
Europe fights to keep Mars rover alive after split with Russia
https://www.science.org/content/article/europe-fights-keep-mars-rover-alive-after-split-russia
ロシアでは頭脳流出も起きていますが、高度知識人材は国外に逃れられるものの、そうでない人材は戦場に送られるというグロテスクな非対称が起きています。
日本で博士号取得熱がないのは、平和だからという側面もあるのでしょう。
「法科大学院の数を調整するな」 乱立を招いた圧力、見失われた理念
https://www.asahi.com/articles/ASQ3L4JV4Q34UTIL024.html
法科大学院の問題は、博士号取得者の問題ともさまざまな共通項があります。
人材の数の制限は既得権益を生み出しますが、無制限は過当競争を生み出します。
どうすれば良いのか。私たちがどういう社会を選ぶのか、という大変根源的な問題です。
『アカデミアを離れてみたら』トークイベント・ 前編 私たちのきた道
https://tanemaki.iwanami.co.jp/posts/5651
『アカデミアを離れてみたら』トークイベント・後編 Q&A
https://tanemaki.iwanami.co.jp/posts/5652
私も登壇したイベントの記録です。
何度も「不合格」にされた 医学部合格率、男女逆転 消えない悔しさ
https://www.asahi.com/sp/articles/ASQ3T56QZQ3KUTIL01Y.html
How the career path to principal investigator is narrowing
https://www.nature.com/articles/d41586-022-00875-0
余った研究費(5円)を使いきれと言う鬼畜な指令が来た。何を買えばいいんだ→様々な解決法が寄せられる「とんち大会になってる」
https://togetter.com/li/1864331
こんなことに日本の頭脳を浪費してどうするのか、と言いたいです。
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“Science Communication News”
[SciCom News] No.964 2022年3月30日号 巻頭言
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