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中年の危機とキャリア

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★発行部数 2,509部(1月19日現在)
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     ◆◇◆  Science Communication News ◆◇◆
         No.954 2021年1月19日号 巻頭言
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【巻頭言】
★中年の危機とキャリア

2022年1月12日〜1月19日
カセイケン代表 榎木英介

 先週はトンガの火山の大噴火と発生した津波にゆれた週でした。

トンガ沖で大規模噴火、日本列島各地で潮位上昇を観測
https://scienceportal.jst.go.jp/newsflash/20220117_n01/

 いまだ現地の状況が分からず、緊急を要する事態にあります。

 現地の被害が軽微であることを祈りたいと思います。

 太平洋を中心に発生した津波地震で発生する津波とは異なっていたため、気象庁もはっきり「分からない」と述べたうえで警報を発表していました。

令和4年1月15日13時頃のトンガ諸島付近のフンガ・トンガ-フンガ・ハアパイ火山の大規模噴火に伴う潮位変化について
http://www.jma.go.jp/jma/press/2201/16a/202201160200.html

今回の潮位変化は、地震に伴い発生する通常の津波とは異なります。防災上の観点か
津波警報の仕組みを使って防災対応を呼びかけているものです。

 これに関しては、正直に分からないことを分からないといいつつも、被害の軽減を優先し警報を発表した気象庁を支持したいと思います。

 ただ、だからといって、津波警報の発表が遅れた気象庁の対応を振り返る必要がないというわけではありません。

 なかなかこのあたり理解が得られないところですが、チェック、振り返り、デブリーフィングは非難ではないわけで、「敵味方」に二分する思考からの脱却を目指したいと思います。

 先週大きな話題になったものが、大学入試共通テスト試験会場前で発生した傷害事件です。

文部科学大臣メッセージ~受験生のみなさんへ~
https://www.mext.go.jp/b_menu/daijin/detail/mext_00228.html

 津波もあいまって、例年に増して過酷な受験だったと思います。

 記事へのリンクは張りませんが、「東大理3」を目指していた生徒が起こしたということで、いわゆる「学歴社会」批判が起きています。

 それは当然ではありますが、注意しなければならないのが、「東大理3」、すなわち、ペーパーの学力テストにおいて日本で一番難しいとされる試験での合格を目指したということで、単なる東大でも医学部でもないということです。

 これは競争的な領域ならどこでも起こりうるということにもなります。

 例えばフィギュアスケートで発生したトーニャ・ハーディングが引き起こした「ケリガン襲撃事件」。

襲撃事件の米フィギュア、トーニャ・ハーディング 大工仕事を経て育児に専念
https://news.yahoo.co.jp/articles/25f44a6d149118aa0cfa93f74d959db40ff9bb11

 これは直接競争相手を襲撃した事件であり、今回の事件とは異なりますが、競争的環境にある人間が暴発してしまう事件はいろいろな領域で起こっています。

 こうした事件の発生を防ぐにはどうすればよいか…。

 「東大王」を愛でる私たち一人ひとりが当事者です。もちろん「一億総ざんげ」のような、責任をうやむやにするために言っているわけではありません。

 とくに、大学入試以上に競争的な環境に置かれている研究者にとっても、「自分事」の問題だと思います。

入国規制、研究交流の妨げ:日本経済新聞
https://www.nikkei.com/article/DGKKZO79254910V10C22A1EA1000/

国費留学生87人の入国容認へ 政府、水際強化措置の例外で
https://news.yahoo.co.jp/articles/9459066567637cd66f85b27008eb03d4a78e5ad2

 「鎖国」が少し解かれるようですが、まだまだ不十分です。

衆参委員長を決定:日本経済新聞
https://www.nikkei.com/article/DGKKZO79302060X10C22A1PD0000/

特別委員長 科学技術=手塚仁雄[立]

衆院、九つの特別委を設置 科学技術特別委員長に立憲・手塚氏
https://mainichi.jp/articles/20220117/k00/00m/010/137000c

科学技術・イノベーション推進特別委員会 委員名簿
https://www.shugiin.go.jp/internet/itdb_iinkai.nsf/html/iinkai/iin_t5150.htm

 維新の委員長が辞任し、後任が決まりました。

 国民の意見を反映させる議論の場はしっかりと確保してほしいと思います。

科学技術政策担当大臣等政務三役と総合科学技術・イノベーション会議有識者議員との会合(令和3年度) > 議事次第 令和4年1月13日
https://www8.cao.go.jp/cstp/gaiyo/yusikisha/20220113.html

議題

1.人材育成に係る産業界ニーズの分析結果について

 情報系のニーズの高さがうかがえます。

岸田総理は第208回国会における施政方針演説を行いました
https://www.kantei.go.jp/jp/101_kishida/statement/2022/0117shiseihoshin.html

 大学ファンド等について触れています。新規性はない印象です。

【独自】先端技術育成、研究者公募し官民協議会…経済安保で「けた違い」の資金
https://www.yomiuri.co.jp/politics/20220112-OYT1T50285/

オシント新時代~荒れる情報の海:なぜ今経済安保なのか 米追従ではない判断を 佐橋亮・東大准教授 - 毎日新聞 https://mainichi.jp/articles/20220112/k00/00m/030/116000c

特許非公開化など4本柱に 経済安保法案提出へ
https://news.yahoo.co.jp/articles/c8345e39d8b9c5feb6f3f82cda493afce994deae

政府、特許非公開で新組織 流出防止技術、2段階で審査
https://news.yahoo.co.jp/articles/030250aa68b2c1a4966ae2123d902b9b561a1f58

日本の経済安全保障「防衛産業」の議論が欠ける訳
https://news.yahoo.co.jp/articles/a49a32ee657c8b577a14e65d17e894d74549a7a0

 経済安全保障。実効性のある対策をしっかりやってほしいですが、チャイナイニシアティブをそのままもってくるようなことは避けるべきです。「やってる感」でしかありません。

不透明な米チャイナ・イニシアチブ、司法省がサイト書き換えも
https://www.technologyreview.jp/s/263003/we-built-a-database-to-understand-the-china-initiative-then-the-government-changed-its-records/

What Charles Lieber’s conviction means for science
https://www.nature.com/articles/d41586-022-00107-5

2021年度科学研究費、新規採択減少も2,213億円配分
https://univ-journal.jp/139144/

「これからの時代の地域における大学の在り方について-地方の活性化と地域の中核となる大学の実現-」(審議まとめ)(令和3年12月 中央教育審議会大学分科会)
https://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chukyo/chukyo0/toushin/1411360_00007.html

研究環境基盤部会(第110回) 配付資料
https://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/gijyutu/gijyutu4/010/siryo/1417785_00008.htm

議題
「連合体」の検討状況について
第4期中期目標・中期計画の検討状況について
各作業部会等の審議状況について
令和3年度補正予算及び令和4年度予算案について
大学研究力強化委員会について
大学等における研究設備・機器の共用化のためのガイドライン等の策定に関する検討会について
その他

気候変動の議論から取り残された人たちの「声なき声」を聞く
https://www.technologyreview.jp/s/264489/another-tool-in-the-fight-against-climate-change-storytelling/

「気象防災アドバイザー推進ネットワーク」を設立しました
https://www.jma.go.jp/jma/press/2201/18a/press_20220118.html?135

 気象庁。朝ドラ「おかえりモネ」のモネのような人たちがネットワーク化するということでしょうか。地域に根差した知的人材ですね。

TSMC進出、好機逃すな 熊本の自治体・大学など動く:日本経済新聞
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOJC110WI0R10C22A1000000/

熊本大 半導体研究教育センター新設へ 専門人材の育成めざす
https://www3.nhk.or.jp/lnews/kumamoto/20220112/5000014422.html

私学ガバナンス議論、仕切り直し 文科省の特別委が初会合
https://news.yahoo.co.jp/articles/aae6a07d0568fa3a098b527417ecb4b679fdd859

 私大ガバナンスですが、新しい委員会が会合。様々な意見が出ています。

悪い人が大学トップ…学外者の評議員会で解決?早大総長「おかしい」 https://www.asahi.com/articles/ASQ1G2W2XPDFUPQJ01C.html

経営的観点だけは危険、大学自治の尊重を 田中愛治さん(早大総長)

日大事件は氷山の一角、外部の監視強化を 塩崎恭久さん(前衆院議員)

学外者、教職員、学生…大事なのは相互チェック 両角亜希子さん(東大大学院教授)

 これに関して以下のような会が開催されます。

大学フォーラム研究会(第3回)
「大学の公共性・多様性・自主性とガバナンス問題」
http://univforum.sakura.ne.jp/wordpress/event/

【日時】 2022年1月22日(土)19:00~21:00 オンライン開催

【話題提供】
  光本 滋 さん(北海道大学)「大学法人のガバナンス改革論と大学の公共性」
  増田 正人 さん(法政大学)「私立学校法の改正問題とコロナ禍の下での私大の課題」

岸田総理は日本学術会議会長との面会等について会見を行いました
https://www.kantei.go.jp/jp/101_kishida/statement/2022/0113kaiken.html

首相、任命問題は「終了」 学術会議の梶田会長と初会談
https://www.chunichi.co.jp/article/399822

学術会議の6人任命拒否問題「検討していく」 岸田首相、梶田会長に
https://www.asahi.com/articles/ASQ1F5590Q1FUTFK00W.html

 日本学術会議の任命拒否問題は平行線をたどったままです。

新しい時代に対応した大学教育改革の推進
-主体的な学修を通じた多様な人材の育成に向けて-
https://www.keidanren.or.jp/policy/2022/003.html

採用と大学改革への期待に関するアンケート結果
https://www.keidanren.or.jp/policy/2022/004.html

経団連、大学教育改革を提言 オンライン授業の単位上限の撤廃も
https://www.asahi.com/articles/ASQ1G63JNQ1GULFA01Q.html

 経団連。産業界と大学はよいコミュニケーションをしてほしいと思います。互いに相手に責任をなすりつけたり、丸投げするのではなく…。

国の研究機関がPRアワードで最高賞、若者の心を動かした広報戦略
https://newswitch.jp/p/30468

 研究機関の広報が非常に重要な役割を果たす時代です。

捕食学術誌とのつきあい方
https://psych.or.jp/publication/world096/pw05/

自殺者も多数。大学という閉鎖的環境で起きている「アカハラ」の異常
https://www.mag2.com/p/news/524474

PICKUP:研究スキル売買、誠実な行動促す 日本学術会議 - 毎日新聞 https://mainichi.jp/articles/20220113/ddm/016/040/005000c

 研究スキル売買に関しては、以下も参照。

化学 2022年2月号
https://www.kagakudojin.co.jp/book/b599172.html

カガクへの視点 「研究スキル売買」から見えるもの ●田中智之

White House scientific integrity panel draws its own scrutiny
https://www.axios.com/white-house-scientific-integrity-panel-report-758ac1f0-aa68-4566-80c4-3c501d0cc9ed.html

Why Joe Biden’s bid to restore scientific integrity matters
https://www.nature.com/articles/d41586-022-00105-7

“Bosom peril” is not “breast cancer”: How weird computer-generated phrases help researchers find scientific publishing fraud
https://thebulletin.org/2022/01/bosom-peril-is-not-breast-cancer-how-weird-computer-generated-phrases-help-researchers-find-scientific-publishing-fraud/

Unreliable Science in Media as Peer-Review Breaks Down
https://theclick.news/unreliable-science-in-media/

シンガポール、5年間で研究・改革・企業化のサポートに2兆円規模の 投資 副首相表明
https://spap.jst.go.jp/asean/news/220102/topic_na_01.html

 基礎研究にも多額の投資。

Indonesia’s massive research reform triggers layoffs and protests
https://www.science.org/content/article/indonesia-s-massive-research-reform-triggers-layoffs-and-protests

 インドネシアは混乱。

タリバン支配下のアフガン、
コード・ブートキャンプに
希望を託す若者たち
https://www.technologyreview.jp/s/265549/the-code-must-go-on-an-afghan-coding-bootcamp-becomes-a-lifeline-under-taliban-rule/

 非常に厳しい状況に置かれているアフガニスタンの若者。知を渇望しています。なんとかしなければ。

求む! “理系”官僚
霞が関が人材不足でピンチ
https://www.nhk.or.jp/politics/articles/feature/75310.html

 なかなかやりがいや能力発揮ができない日本型組織。公務員だけの問題ではありません。

80歳までの「40年」を、全力で働けるのか?
「40代オッさん」が考えるキャリアの選び方
https://logmi.jp/business/articles/325686

なぜ40歳を越えると「やる気」が出ないのか?
「中年の危機」を乗り越えるためのエンジンの回し方
https://logmi.jp/business/articles/325687

人生100年時代」という人類史上未曾有の「超長寿社会」にどう備えるべきか?【橘玲の日々刻々】
https://news.yahoo.co.jp/articles/80a59b2ea96d8d5ea82f8fe146a59cbafb950ef8

40代からの学び直し 専門家が選んだ役立つ資格は:日本経済新聞
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUD1711S0X11C21A2000000/

How I navigated my way through a midlife PhD
https://www.nature.com/articles/d41586-022-00113-7

 今週は中年のキャリアにフォーカスされた記事が目立ちました。もちろん私が中年だから見えてきたという部分もありますが。

 私自身当事者として、大学をやめ、公務員医師をやめ、会社や一般社団法人を立ち上げることで、新たな一歩を踏み出している最中です。

 いろいろな意見があろうと思います。まったく新しいことをやったとしても食っていけない、いやいや、中年からでも挑戦はできる…。

 どちらにも理はありますが、要はどうするかを決めるのはそれぞれということですね。当たり前ですが。

 冷静に状況を見極めるクールな目と、課題に挑戦する熱い心。

 MUST、CAN、WILL(できること、やりたいこと、もとめられていること)が交差する部分で、何をすべきか。

 私自身が当事者として、情報発信していけたらと思っています。

東大教授、ネコの腎臓病薬の開発に専念へ 寄付盛り上がり退職を決意
https://www.asahi.com/articles/ASQ1F3FCZQ1DPLBJ00F.html

 社会起業した東大教授。これも一つの道だと思います。

A plea for better working conditions for young scientists
https://www.science.org/content/article/plea-better-working-conditions-young-scientists

わが国の研究力低下の要因と復活に向けた方策(日本学術会議プレゼン1)
https://blog.goo.ne.jp/toyodang/e/50d8d7da5d9f45aca7198b15a778b835

 重要資料です。

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“Science Communication News”
[SciCom News] No.954 2021年1月19日号 巻頭言
【発行】一般社団法人科学・政策と社会研究室
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