科学・政策と社会ニュースクリップ

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第6期計画と「毒まんじゅう」

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★発行部数 2,561部(2月10日現在)
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     ◆◇◆  Science Communication News ◆◇◆
         No.908 2021年2月9日号 巻頭言
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【巻頭言】
★第6期計画と「毒まんじゅう
2021年2月2日〜2月9日
カセイケン代表 榎木英介

 告知です。最近流行りのクラブハウスで、このメルマガの内容をゆるく語る企画を立てました。

榎木のサイコムニュース増刊号#001
https://www.joinclubhouse.com/event/myyYJp0G

 日本時間23時から一時間ほど。初めての試みなので、どうなるか分かりませんが、とりあえずやってみます。お時間がある方はぜひ。

 意見募集は本日(2月10日)までです。

「第6期科学技術・イノベーション基本計画」答申素案についての意見募集
https://www8.cao.go.jp/cstp/stmain/20210120.html

 パブコメがどこまで反映されるかは不透明だなあといつも思っていますが、とにかく意見を言うことが重要です。クラブハウスの企画でも、基本計画を取り上げようかなと思っています(変更の可能性あり)。

氷河期世代にコロナの寒風 失職、再就職ままならず
https://news.yahoo.co.jp/articles/af681fdf536cbd075d9dd663fbb4502b26a8b302

不安定な雇用で長い年月を過ごし、能力があるのに下を向いてしまった人も多い。この世代の困難さに、コロナが追い打ちをかけている

 第6期計画では若手重視が強く押し出されており、それは非常に素晴らしいと思っていますが、若手が若手でなくなった時、そして、すでに若手ではない、私の同世代の人たちのことはもはや計画の対象ではなくなったのかなという印象です。

 ちなみに素案で「若手」という言葉は29回出てきます。

 もちろん、中堅以上の研究者の支援や、研究データ管理、利活用にURAやシニア人材、ポスドクを参加させる、リカレント教育といった記載はありますが、やや乏しい印象です。

 この辺り、決して文科省だけで解ける問題ではないので、政府頼みだけではなく、日本版AAASや私たちカセイケンも、民間非営利の立場でぜひ頑張っていきたいと思います。

【優秀な若手を活かせ】ポスドク支援の課題を考える
https://www.todaishimbun.org/postdoctoral20210208/

このような支援の実施は重要ではあるが、予算に関しては問題点もあると、北野教授は指摘する。「文科省や企業など、外部からの予算で支援を実施すると、予算がなくなった際に支援が続くかどうか不透明です。大学裁量の予算でも支援することが持続性を保つことになります」

 北野秋男教授(日本大学)の発言ですが、この種の予算の問題点を指摘しています。

 私は文科省ポスドクキャリア事業の評価委員をしていましたが、5年の支援が終わると事業自体が消滅してしまう大学などもありました。もちろん、カリキュラム化するなどその後も継続した大学は多かったのですが。

 これは今でもそうです。

科学技術イノベーション創出に向けた大学フェローシップ創設事業 公募情報
https://www.mext.go.jp/a_menu/jinzai/fellowship/1419245_00002.htm

 支給対象学生1人当たり200~250万円/年を支払う事業で、まさに第6期計画の方向性に合致したものですが、以下のように書かれています。

※補助事業によるフェローシップ支援対象は令和7年度の博士後期課程進学者まで。
※補助事業期間終了後には各機関は自立的運営を確立することが前提となります。

 補助事業が終了したのちにどうなるかが不透明で、これは若手が若手でなくなった時と類似した構造になっています。

 こういう事業の乱立を「毒まんじゅう」と揶揄する声があります。食べているうちは美味しいけど、後から毒がまわる、あるいは毒なしでは生きていけない状態になるということでしょうか。

 資金を投入することは重要ですが、構造にまで目を向けないといけません。

 上述の北野教授はこんなことも言っています。

各大学や学会、国、企業などが主体となり、横断的なネットワークの構築を行う必要もあるでしょう

 まさにこれこそ、日本版AAASの目指すことでもあります。

起業家、精神面の「受け皿」必要 家入一真
https://www.nikkei.com/article/DGXZQODZ097E00Z01C20A2000000/

「挑戦ばかりを促し、日本では挑戦が少ないと嘆くのは筋違いだ。」

 このあたり、研究者でも同じなのではないかと思います。挑戦を煽るのはいいですが、それだけではない部分にいかに目配せするか。これが私達にも求められている大きな役割だと思っています。

104歳の男性が“巣ごもり”中に「水問題」の博士論文を完成
https://www.nikkan-gendai.com/articles/view/life/284972

 最高齢?素晴らしい。これこそリカレント教育と言いますか。

 費用対効果を持ち込むと、リカレント教育は無駄、ということになってしまいます。若い人に教育して、長く活躍してもらわないと損、というように。

 そうではないんだ、と強く言いたいです。効率、費用対効果を追求したら、人間など無駄、となりかねないのでは、と思います。

 前号でお伝えした日本版AAASですが、その後も報道が相次いでいます。

【プレスリリース 】日本版AAAS設立準備委員会が正式発足
https://jaas.group/pressrelease-launch-20210201/

若手研究者ら、科学普及のNPO法人設立へ…注目論文減少や理科離れに危機感
https://www.yomiuri.co.jp/science/20210206-OYT1T50126/

「対話通じて科学技術振興」日本版AAAS設立準備委発足
https://sci-news.co.jp/topics/4623/

若手研究者ら、科学普及のNPO法人設立へ…注目論文減少や理科離れに危機感
https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20210206-00050126-yom-sci

 科学新聞は一面で大きくとりあげており、注目と期待の高さが分かります。

 一部で日本学術会議の対抗組織という紹介のされ方がなされましたが、それは本意ではなく、科学アカデミーと分野横断的草の根NPONGO)とは役割が違います。

 日本版AAASの肝は、誰でも条件なく入れるNPOであるということです。研究者の利益を代弁する組織ではありません。科学振興イコール研究者振興では必ずしもないからです。

 その辺りはまだ同床異夢な部分ではありますが、徐々に実現できればと思います。

 今回の日本版AAASの設立の動きは、研究者サイドから出てきたもので、科学コミュニケーションや理科教育関係の方々の関与がまだまだ弱いのが現状です。

 科学コミュニケーションに関わる方々にも、日本版AAASを設立したいという動きが以前よりあるので、なんとか合流なり連携なりができないものかと思います。

 とにかく、6月にNPO法人設立と公にしたので、組織づくりは急ぎたいと思っています。

 個人のノートに少し書きましたが、組織、特に非営利組織の経営は営利組織と異なる部分があり、なかなか難しい部分もあります。

https://note.com/enodon/n/n1ecb88f5f7cf

 集まった皆さんの思いを形にできる強い組織づくりが私のやりたいことであり、日本版AAASでは、まずは自らの主張は封印して、組織を作り回していくことに力を注ぎたいと思っています。やりたいことは母体のカセイケンの方でしっかりとやっていきます。小回りの効く、小さな組織の利点を生かして。

 書きながら思ったのですが、法人としての日本版AAASは、設立後しばらくは、動きたい皆さんのバックアップ組織として、財政面、法的な面等で支えていくといった形になるのかなと思います。宿木と言いますか。

 さて、日本版AAASのモデル、本家AAASは現在年次総会開催中(2月11日まで)で、今年はオンラインでやっています。日本からも参加できるので、ぜひ。

https://meetings.aaas.org

パンデミックを予見した漫画家が驚くほどのリアルさを実現できた理由(朱戸 アオ,佐倉 統)
https://gendai.ismedia.jp/articles/-/79612

信州大、2学部試験中止 共通テストのみで判定
https://www.nikkei.com/article/DGKKZO68802370T00C21A2CR8000/

More than 17,000 jobs lost at Australian universities during Covid pandemic
https://www.theguardian.com/australia-news/2021/feb/03/more-than-17000-jobs-lost-at-australian-universities-during-covid-pandemic

 オーストラリア。厳しい状況になっています。

JSTムーンショット新目標検討21チームを決定
https://scienceportal.jst.go.jp/newsflash/20210208_n01/

 既報ですが、まとまった記事。

「始動 Next Innovator 2020(グローバル起業家等育成プログラム)」のシリコンバレー・プログラム選抜メンバーが決定しました
https://www.meti.go.jp/press/2020/02/20210208001/20210208001.html

「デジタル産業の創出に向けた研究会」を立ち上げます
https://www.meti.go.jp/press/2020/02/20210204003/20210204003.html

人工衛星の中に宇宙寺院 世界遺産の京都の寺が計画
http://www.asahi.com/articles/ASP283TTYP28PLZB007.html

 新たな時代の宗教。銀河英雄伝説の「地球教」ではないですが、宇宙時代に宗教もアップデートされつつあるのかなと思います。

10兆円大学ファンド、低金利下の運用にジレンマ-収益か安定か
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2021-02-08/QNZPCYT0AFB801

大学ファンド法批判/参院文科委 吉良議員が質問
https://www.jcp.or.jp/akahata/aik20/2021-02-04/2021020402_02_1.html

 大学ファンドについては賛否あり、議論が続いています。期待はしますが、期待ほどかどうか。

隣席の東北大学長に「お前、漱石は読んだか」と言われ…北大学長「生意気な男だと思った」
https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20210205-00050138-yom-sci

北大と東北大の学長は同級生!対談で知る素顔
https://toyokeizai.net/articles/-/410448

 二つの旧帝大の学長が同級生だったという話。札幌南高校の優秀さが伝わるエピソードですが、人材の多様性という観点から見ると、今後はもっと多様な人材が学長になってほしいなと思います。

早稲田大学“医学部”誕生が現実味を帯びてきた…東京女子医大は経営難で学費1200万円値上げ
https://biz-journal.jp/2021/02/post_206313.html

 私は早稲田大学に1年間通ったこともあり、稲門医師会という早稲田大を経て医学部に入り直し医師になった人の会に入れてもらっています。医学部を持つ慶應大学に対する早稲田の医学部への希求熱は強いものがあり、今後の大学再編と絡んで注目していきたい話題です。

九大教授の急死を労災認定 損害賠償求め、妻ら法人提訴
https://digital.asahi.com/sp/articles/ASP2465X7P24UTIL03J.html

男性の専門分野は理系で、当時は研究に加え、週5コマ(計7時間半)の授業と論文作成の指導をしていた。九大と中国・韓国の大学の双方で学生が学位を取得できるようにするプログラムの運営にも携わり、中国や韓国に日帰り出張することもあったという。

 大学教員の過労死。この辺り、研究支援人材の活用等も含め真剣に考えないといけません。

名古屋大の元院生が研究論文で画像改ざん 教授の処分検討
https://www.chunichi.co.jp/article/197615

研究活動上の不正行為に関する調査結果について | 大学からのお知らせ
http://www.nagoya-u.ac.jp/info/20210205_news.html

Hundreds of ‘predatory’ journals indexed on leading scholarly database
https://www.nature.com/articles/d41586-021-00239-0

 捕食(ハゲタカ)ジャーナルの「汚染」、浸透はじわじわときています。

「イケメン大卒者の精子」が“売り切れ”続出─パンデミックで枯渇する精子バンク
https://courrier.jp/news/archives/231659/

 露骨な優生思想です。新たな生命倫理問題を提示しているようにも思います。

グーグル、著名なAI研究者の解雇に反発 2名が辞職「疲れ果ててしまった」 | Ledge.ai
https://ledge.ai/google0208/

社会学者を科学行政中枢に登用したバイデン政権 - 細田満和子
https://webronza.asahi.com/science/articles/2021013100001.html

Biden has assembled a stellar science team - now they must pull together
https://www.nature.com/articles/d41586-021-00184-y

いでよ、女性STEM人材 技術革新の恩恵広く社会へ
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGG313QS0R30C21A1000000/

シュプリンガー・ネイチャー・グループ、大学生・院生計2人に150万円の奨学金
https://ict-enews.net/2021/02/09springernature/

シュプリンガー・ネイチャー・グループが学問の継続のために経済的な支援を必要とする日本の大学生・大学院生を対象にチャリティー資金を提供
https://www.natureasia.com/ja-jp/info/press-releases/detail/8830

★The future of grant proposals is video
https://www.nature.com/articles/d41586-021-00341-3

スペースXの大型宇宙船、打ち上げ実験で着陸時に再び爆発
https://jp.reuters.com/article/space-exploration-spacex-idJPKBN2A3052

新型宇宙船の試験飛行でまた爆発 「データは取れた」
https://digital.asahi.com/sp/articles/ASP236QSFP23ULBJ00H.html

 スペースXのマスク氏ですが、学位などいらないと言っています。学位の意味が問われる時代です。博士号取得者のキャリアパスを考える上で、学位不要論は吉なのか凶なのか考えさせられます。

子どもたちは「主にYouTubeRedditで教育を受けてきた」 - イーロン・マスク氏、"教育"を語る
https://www.google.co.jp/amp/s/www.businessinsider.jp/amp/post-228957

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“Science Communication News”
[SciCom News] No.908 2021年2月9日号 巻頭言
【発行者】一般社団法人科学・政策と社会研究室(担当 榎木英介)
【編集者】Science Communication News編集部
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