科学・政策と社会ニュースクリップ

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「若手優遇」は本当か

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★発行部数 2,580部(7月21日現在)
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     ◆◇◆  Science Communication News ◆◇◆
         No.879 2020年7月21日号 巻頭言
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サイエンスアゴラ2020オンライン開催と企画公募のお知らせ◆

サイエンスアゴラは、「科学」と「社会」の関係をより深めていくことを目的として、あらゆる立場の人たち(市民、研究者・専門家、メディア、産業界、行政関係者など)が参加し対話するオープンフォーラムです。
今年は、新型コロナウイルスをとりまく社会状況を考慮しWEB上で開催します。

会期:2020年11月15日(日)~11月22日(日)※予定
主催:国立研究開発法人 科学技術振興機構JST
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【企画募集中】
7月1日(水)から8月2日(日)まで、企画を募集しています。出展料は無料です。
今年はオンライン開催のため遠隔からのご参加が可能です。全国の皆さまのご応募をお待ちしています。
募集要項など詳細は次のURLよりご確認ください。
https://www.jst.go.jp/sis/scienceagora/exhibitor/entry/
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■本件に関するお問い合わせ先■
国立研究開発法人科学技術振興機構JST
「科学と社会」推進部 サイエンスアゴラ事務局
Email: agora@jst.go.jp

【巻頭言】
★「若手優遇」は本当か
2020年7月14日~2020年7月21日
カセイケン代表 榎木英介

 まずはこちらから。総合科学技術・イノベーション会議が開催され、統合イノベーション戦略2020が決定しました。

★総合科学技術・イノベーション会議(第50回)議事次第
https://www8.cao.go.jp/cstp/siryo/haihui050/haihu-050.html

議事

1.研究力強化・若手研究者支援総合パッケージについて
2.スタートアップ支援パッケージについて
3.統合イノベーション戦略2020の策定について
4.最先端研究開発支援プログラム(FIRST)及び最先端・次世代研究開発支援プロジェクト(NEXT)追跡評価について

安倍総理は第50回総合科学技術・イノベーション会議を開催しました
https://www.kantei.go.jp/jp/98_abe/actions/202007/16kagaku.html

★統合イノベーション戦略2020
https://www8.cao.go.jp/cstp/tougosenryaku/index.html

統合イノベーション戦略2020【本文】(PDF形式:1656KB)
https://www8.cao.go.jp/cstp/togo2020_honbun.pdf

統合イノベーション戦略2020【概要】(PDF方式:1103KB)
https://www8.cao.go.jp/cstp/togo2020gaiyo.pdf

政府 約10兆円の基金設立へ 感染症など社会課題解決へ研究支援
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20200716/k10012518781000.html

デジタル投資、コロナで加速へ 科学技術戦略を閣議決定
https://www.nikkei.com/article/DGKKZO61625820X10C20A7EAF000/

「海外から資金」開示要件 政府、研究補助で
https://www.nikkei.com/article/DGKKZO61602000W0A710C2PP8000/

 やはり新型コロナウイルスへの対応が前面に出ています。

 若手研究者への支援策もかなり言及されています。目新しいところとしては「人文・社会科学振興」でしょうか。

社会課題の解決に向け、研究開発テーマの設定や、科学技術と社会との調和、社会 との信頼の構築を考慮する倫理的・法制度的・社会課題(ELSI)の取組などに おいて、人文・社会科学の研究者が主導する研究開発を推進するとともに、大学等 のアカデミアにおける幅広い「知」をベースにして、企業人、行政官、起業家等の ステークホルダーとも連携し、科学技術・イノベーションによる新たな価値の創出
につなげる。

 プレプリントにも触れています。

プレプリント(査読審査前の論文)を用いた研究成果やデータの公表・共有が広がりつつあることから、これらの新たな仕組みについて調査分析を進め、質の確保と、 個々の研究者の権利・インセンティブを確保しつつ、オープン・アンド・クローズ戦 略に基づき我が国の国益の向上にもつながるよう検討を進める。 【科技、文】

★スタートアップ・エコシステム拠点都市の選定について
https://www8.cao.go.jp/cstp/stmain/20200714.html

スタートアップ「4都市圏で集中支援」 竹本科技相
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO61494350U0A710C2PP8000/

若手研究者対象の新たな賞を創設 競争力向上へ 科学技術相
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20200717/k10012520401000.html

 統合イノベーション戦略2020でも若手研究者支援への言及が多く、良いことだとは思うのですが、一方で40代以降の世代はなかったことにされている感じです。

 そこは国の支援の対象ではないというのなら、草の根でやっていくしかありません。

 しかしそもそも「若手優遇」は本当でしょうか。

★「消えるのは授業日数と変わらない学費」「同級生の顔も知らない」 大学生の現状を訴える漫画が議論を呼ぶ
https://nlab.itmedia.co.jp/nl/articles/2007/19/news032.html

ネットで大学紹介、相談も オープンキャンパス中止に
https://www.chunichi.co.jp/article/90802

★困窮学生の給付、申請断念相次ぐ
文科省要件が壁
https://news.yahoo.co.jp/articles/103bace6ec4ba89b64d70cc0fa0a54a788593f09

困窮学生、給付金の申請諦め相次ぐ
https://www.nikkei.com/article/DGKKZO61524980V10C20A7CE0000/

「留学生の入国制限緩和を」 外国出身研究者ら 政府に訴える
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20200715/k10012517101000.html

 若手、若手という割には、最若手の学生は厳しい状況です。GoToトラベルが開始される中、キャンパスに行くことができな学生にしわ寄せが来ています。チグハグな感じがします。

 学生たちが政治力を持っていない、票にならないから、というのなら、非常に悲しいことです。

 若手の苦境というのは、当事者が主張すれば偉くなってから言え、と言われ、アカデミアから追い出されたりもします。

 アカデミアの外から何か言えば、アカデミア外の人間に言う資格はないと言われます。

 アカデミアを離れて多様なキャリアに進んだ人間は「応援団」になる可能性があるのにもったいないです。

 現場ではアンチアカデミアに転じてしまう人もいるように思います。

 ではどうするか。問題意識を持つアカデミアの有力者を動かすと言う手もあります。

 私も呼びかけ人になっている大学フォーラム
http://univforum.sakura.ne.jp/wordpress/

が文章を出しました。

社会へのアピール「新型コロナ危機のもとでの学生支援の抜本的強化を!」
http://univforum.sakura.ne.jp/wordpress/wp-content/uploads/2020/07/statement20200721.pdf

 大学フォーラムはノーベル賞受賞者の梶田博士もメンバーに加わっているなど、問題意識をもった研究者の集まりです。

 本当は当事者が自由に発言しても不利益にならないようにしないといけないと強く思います。

★経済財政運営と改革の基本方針2020(令和2年7月17日閣議決定
https://www5.cao.go.jp/keizai-shimon/kaigi/cabinet/2020/decision0717.html

安倍総理は令和2年第11回経済財政諮問会議及び第41回未来投資会議を合同で開催しました
https://www.kantei.go.jp/jp/98_abe/actions/202007/17keizai_mirai.html

令和2年第11回経済財政諮問会議・第41回未来投資会議合同会議
https://www5.cao.go.jp/keizai-shimon/kaigi/minutes/2020/0717/agenda.html

 こちらもコロナウイルスへの言及があります。科学技術政策に関しては統合イノベーション戦略2020と同一です。

★コロナ論文撤回、相次ぐ 緊急時に揺らいだ科学への信頼
https://www.asahi.com/articles/ASN7G4TFJN6KUHBI02K.html

 LancetやNEJMの論文撤回に関する記事。毎日新聞なども出していますが、朝日新聞が出したことに反発があり、内容より誰が伝えるかで捉え方が異なるという世知辛い現実を感じざるを得ませんでした。

★新型コロナ専門家との亀裂深刻 トランプ氏、2カ月口きかず 米
https://news.yahoo.co.jp/articles/cd031cf124a9b0011a21f5cf0e2b7da23ecc028a

Trump Administration Strips C.D.C. of Control of Coronavirus Data
https://www.nytimes.com/2020/07/14/us/politics/trump-cdc-coronavirus.html

CDC Bypassed Under New COVID-19 Reporting Guidelines
https://www.the-scientist.com/news-opinion/cdc-bypassed-under-new-covid-19-reporting-guidelines-67741

米、感染データ収集を民間委託 疾病対策センター外しに懸念も
https://www.chunichi.co.jp/article/89963

 もう無茶苦茶ですね。日本も科学と政治の関係がちぐはぐでしたが、それ以上です。

★ トランプ政権、留学ビザ制限を撤回 米裁判所が発表
https://news.yahoo.co.jp/articles/61c2d0f2f0d65e4fdb65dad969d9c2fef1f6d0f3

US government rescinds antagonistic international-student visa policy
https://www.nature.com/articles/d41586-020-02160-4

US universities are right to fight injustice
https://www.nature.com/articles/d41586-020-02143-5

United States drops visa restriction on foreign students attending remote classes
https://www.sciencemag.org/news/2020/07/us-drops-visa-restriction-foreign-students-attending-remote-classes

 こちらの方はアカデミアからの猛反発もあって撤回されましたが。

 科学と政治の関係は難しいものです。

★解なき時代の科学と政治 限界踏まえ対話を
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO61660010X10C20A7TCR000/

★Science has always been political
https://science.sciencemag.org/content/369/6501/227.full

 Vannevar Bushの「科学:終わりなきフロンティア」発表75年。

第二次世界大戦後の米国は、圧倒的な軍事力と経済力を誇る超大国として世界に君臨した。戦時下の総動員体制が解かれると、平時における科学技術体制づくりが始まった。1945年にOSRDのヴァネヴァー・ブッシュ局長がハリー・トルーマン大統領に提出した報告書「科学:終わりなきフロンティア」は、政府による基礎研究支援が、健康・安全保障・雇用確保といった社会目標の実現につながるという考え方を提示し、戦後体制の基礎を作った。1950年には国立科学財団(NSF)が設立され、政府による公的な研究開発支援を科学者に委ねるというブッシュ構想が部分的に実現することになる。

(米国の科学技術情勢
https://www.jst.go.jp/crds/report/report10/US20151101.html

 以来、科学は常に「政治的」であったというわけです。

新型コロナウイルス感染症対策分科会
第2回資料
https://www.cas.go.jp/jp/seisaku/ful/corona2.pdf

これからあるべき対策の概要
https://www.cas.go.jp/jp/seisaku/ful/taisaku_gaiyou.pdf

今後実施すべき対策について
https://www.cas.go.jp/jp/seisaku/ful/jisshi_taisaku.pdf

検査体制の基本的な考え・戦略
https://www.cas.go.jp/jp/seisaku/ful/kensa_senryaku.pdf

GO TOトラベル事業に関する分科会の政府への提言
https://www.cas.go.jp/jp/seisaku/ful/goto_travel_teigen.pdf

 現在進行形で、日本の専門家たちの対応が批判されています。

置き去りの専門家、でも矢面に 経済再開へ官邸の思惑
https://www.asahi.com/articles/ASN7J4PQCN77UTFK02S.html

反対しない人選ぶ? GoTo「追認」分科会に疑問の声
https://www.asahi.com/articles/ASN7K7R57N7KULBJ00D.html

 「御用学者」という言葉は使うべきではありませんが、専門家の独立性がどうあるべきかについては模索していく必要があると思います。

★首相が誇ったクラスター対策、実は「崩壊寸前」だった 追跡調査に保健所は悲鳴
https://www.tokyo-np.co.jp/article/42600

★新型コロナ「第2波感染者は第1波より増える」 “8割おじさん“西浦教授が講演、警戒呼び掛け
https://www.kyoto-np.co.jp/articles/-/310221

★知られざる日本のコロナ対策「成功」要因──介護施設
https://www.newsweekjapan.jp/stories/world/2020/07/post-93979.php

★Coronavirus: postdoc winners need paid extensions
https://www.nature.com/articles/d41586-020-02087-w

★The career cost of COVID-19 to female researchers, and how science should respond
https://www.nature.com/articles/d41586-020-02183-x

★令和2年7月豪雨により被災した学生・生徒等のみなさまへ(被災学生等特別就職相談窓口の設置)
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000122602_00005.html

安倍総理は第22回まち・ひと・しごと創生会議を開催しました
https://www.kantei.go.jp/jp/98_abe/actions/202007/15mhs_sousei.html

まち・ひと・しごと創生会議(第22回)議事次第
https://www.kantei.go.jp/jp/singi/sousei/meeting/souseikaigi/r02-07-15.html

 こちらも新型コロナウイルスが大きく取り上げられていますが、地方大学についての言及があります。

魅力的な地方大学の実現、地域の雇用の創出・拡充により、若者の地方への定着を推進す るため、地域の特色・ニーズ等を踏まえ、STEAM人材等の育成等に必要な地方国立大学の 定員増も含めた大胆な改革等に取り組む。

 以下報道。

★地方国立大の定員増へ、政府 在宅勤務支援で移住も推進
https://www.chunichi.co.jp/article/89411

若者の定着狙い地方国立大で定数増 政府が基本方針案
https://www.asahi.com/articles/ASN7H6WWVN7HULFA01Y.html

地方創生へ大学の専門教育を強化 政府が方針案
https://www.nikkei.com/article/DGKKZO61538540V10C20A7PP8000/

★第78回高度情報通信ネットワーク社会推進戦略本部(IT総合戦略本部)及び第9回官民データ活用推進戦略会議を合同で開催しました
https://www.kantei.go.jp/jp/98_abe/actions/202007/15it_kanmin.html

★令和2年度「SDGs未来都市」及び「自治体SDGsモデル事業」を選定しました。
https://www.kantei.go.jp/jp/singi/tiiki/kankyo/teian/sdgs_2020sentei.html

★新しい仕事の仕方・働き方改革の検討に関するタスクフォース報告~ピンチをチャンスに。どんな状況でも働き続けられる職場環境への転換~
https://www.mext.go.jp/b_menu/houdou/2020/1417045_00002.htm

★国際宇宙宇宙探査(日米月探査協力に関する共同宣言の署名について)
https://www.mext.go.jp/a_menu/kaihatu/space/jigyou/detail/1347482_00003.htm

 先週既報です。

★政府系9機関がスタートアップ支援に関する協定を締結~スタートアップや起業家などの人材を継続的に連携して支援~
https://www.jst.go.jp/pr/announce/20200716-3/index.html

★「ウナギの国際的資源保護・管理に係る第13回非公式協議」の結果についての共同発表について
https://www.jfa.maff.go.jp/j/press/sigen/200717.html

★科学と社会の有意義なコラボレーションを実現するには
https://www.editage.jp/insights/public-engagement-with-science-a-collaboration-between-science-and-society

 長文のインタビュー記事。

安倍総理は第46回教育再生実行会議を開催しました
https://www.kantei.go.jp/jp/98_abe/actions/202007/20kyouikusaisei.html

オンライン教育 拡充急ぐ
https://www.nikkei.com/article/DGKKZO61731920Q0A720C2PP8000/

★Open-access Plan S to allow publishing in any journal
https://www.nature.com/articles/d41586-020-02134-6

★Publishers Develop Inclusive Name-Change Policies
https://www.the-scientist.com/news-opinion/publishers-develop-inclusive-name-change-policies-67740

 トランスジェンダー研究者の名前問題。名前が変わっても業績が引き継がれるべきだと思います。

★小学6年生の「がん研究」に不正疑惑=一等賞取り消し、保護者が謝罪―中国
https://www.excite.co.jp/news/article/Recordchina_20200716048/
https://www.recordchina.co.jp/b821261-s0-c30-d0146.html

 流石に小6には難しい研究テーマでバレてしまいました。

★Famous psychologist faces posthumous reckoning
By Cathleen O'Grady
Science17 Jul 2020 : 233-234 Restricted Access
Dozens of papers on personality and health by Hans Eysenck have been retracted or are under suspicion.
https://science.sciencemag.org/content/369/6501/233

 研究不正は研究者本人が死んだとしても追及されます。

★Misconduct allegations push psychology hero off his pedestal
https://www.sciencemag.org/news/2020/07/misconduct-allegations-push-psychology-hero-his-pedestal

安倍総理は第30回健康・医療戦略推進本部を開催しました
https://www.kantei.go.jp/jp/98_abe/actions/202007/14kenko_iryo.html

★Mitochondrial genome editing: another win for curiosity-driven research
https://www.nature.com/articles/d41586-020-02094-x

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“Science Communication News”
[SciCom News] No.879 2020年7月21日号 巻頭言
【発行者】一般社団法人科学・政策と社会研究室(担当 榎木英介)
【編集者】Science Communication News編集部
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