科学・政策と社会ニュースクリップ

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2つの「スクープ」から見えるもの

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         No.975 2022年6月15日号 巻頭言
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【巻頭言】
★2つの「スクープ」から見えるもの

2022年6月7日〜14日
カセイケン代表 榎木英介

 最近科学関連のスクープを連発している毎日新聞の鳥井真平記者(科学ジャーナリスト賞受賞者)らが、今回もスクープを。

福井大教授が「査読偽装」の疑い 論文審査に自ら関与か
https://mainichi.jp/articles/20220610/k00/00m/040/114000c

 毎日の報道ののち、各社も報道しています。

「簡単なコメント頂けたら…」 査読偽装、指示はメールで
https://mainichi.jp/articles/20220610/k00/00m/040/119000c

査読偽装の疑い、さらに論文4本にも 福井大教授ら、不正が常態化か
https://mainichi.jp/articles/20220614/k00/00m/040/170000c

 すでにウェブでは出ていますが、問題の教授はメディアにもよく登場しており、私もテレビ番組を見たことがあります。査読という本来厳正であるべき行為が杜撰であれば、研究の妥当性が揺らぎます。

福井大・査読偽装「科学への信頼を揺るがす」文科相が批判
https://mainichi.jp/articles/20220614/k00/00m/040/078000c

 文科相、科学技術担当相も「もし本当ならば」とただしがき付きで批判。

 これに対し、一部ではなんでわざわざ記者はこういう質問をしたのだ、アカデミア内部の規範の問題で、内部で処理すべきものではないかという批判も耳にしました。

 その批判は分からない訳ではないですが、アカデミア内部の自浄作用には私自身あまり期待できないのではないかと思っており、難しい問題です。

 ところで、この偽装査読ですが、日本国内でなかった訳ではなく、最近問題になりつつあります。

https://blog.goo.ne.jp/lemon-stoism/e/e2d910b9b021ff7489e940194f05de11

 によれば、2012年の事件以来大きな問題になっているとのこと

https://blog.goo.ne.jp/lemon-stoism/e/bc13b0d5ecd701096779a30b0b2f42fc

 深刻な問題であり、無視するわけにはいきません。

 こうした不正が、アカデミアへの信頼を失わせていくことを、関係者は自覚すべきでしょう。

令和4年版 科学技術・イノベーション白書:文部科学省
https://www.mext.go.jp/b_menu/hakusho/html/hpaa202201/1421221_00001.html

日本の研究力、国の強化策を読み解く 科技イノベ白書を公表 | Science Portal - 科学技術の最新情報サイト「サイエンスポータル」
https://scienceportal.jst.go.jp/newsflash/20220614_n01/

“科学技術立国実現へ投資推進”科学技術・イノベーション白書 | NHK
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20220614/amp/k10013670721000.html

論文数、日本は過去最低10位に 「状況は深刻」科学技術白書 - 毎日新聞
https://mainichi.jp/articles/20220614/k00/00m/010/032000c

 長いので略しますが、科技イノベ白書が出ました。日本の研究の問題点を分析しています。

 Twitter上にもさまざまな意見が飛び交いましたが、現状分析が正しくても、果たして「10兆円ファンド」という「選択と集中」で良いのか、という声が聞かれます。

 私もまさに同意なのですが、こうした声が、いわゆる「アカデミア」の外には広がっていかないのが残念です。

3M、科学に対する意識調査 「ステート・オブ・サイエンス・インデックス」2022年版の結果を発表:時事ドットコム
https://www.jiji.com/jc/article?k=000000043.000040477&g=prt

調査結果の主なポイント(日本)
1. 日本での科学・科学者への信頼度が過去最高値に
2. STEM分野におけるジェンダー課題の実状と意識との間に差も環境問題への意識は高い一方で、環境に配慮した行動を「一切していない」と回答した人の割合は調査対象国中で最高値に
3. 環境問題への意識は高い一方で、環境に配慮した行動を「一切していない」と回答した人の割合は調査対象国中で最高値に

 科学、科学者は信頼しているけれど、その環境には興味がないということでしょうか。

 野球は好きで選手は応援しているけど、球団内部のドロドロはやめてくれ、みたいな感じでしょうか。

 アカデミアの問題を熱心に報じているのが朝日新聞なのですが、先週ある「スクープ」記事をめぐって批判が研究者サイドから噴出しました。

小惑星探査機「はやぶさ2」が持ち帰った砂から20種以上のアミノ酸
https://www.asahi.com/articles/ASQ6572ZQQ65TIPE002.html

 この記事ですが、2022年6月6日 5時00分に公表されています。関係者からの取材で分かったとされています。

 しかし、Science誌に掲載されたのが6月10日、いわゆるエンバーゴの前だったのではないかという指摘があり、エンバーゴ破りになっているのではないかと言われています。

 例えば岡山大学のプレスリリースを見てみます。

https://www.okayama-u.ac.jp/tp/release/release_id971.html
https://www.okayama-u.ac.jp/up_load_files/press_r4/press20220610-1.pdf

「報道解禁:令和 4 年 6 月 10 日(金)午前 0 時(新聞は 10 日朝刊より)」と書いてあります。

 エンバーゴに是非はあり、プレプリント時代に果たして意味があるのか、という指摘がありますが、一方、エンバーゴ破りは論文掲載取り消しにもつながり、決してメディアと雑誌社の問題ではないという意見も強いです。

 私自身、これはエンバーゴ破りで、誰かが売り込んだとしても、かつてのiPS細胞移植事件のように、前のめりな報道姿勢が業績偽装や株価操作につながるのではないかと懸念しています。

 ただ、Twitter上で、朝日新聞が悪い、とあたかもアカデミアの朝日新聞叩きになっているのはどうかなと思ってもいます。

 難しい問題ですね。メディアとアカデミアは良い意味での緊張関係が必要で、メディアは広報であってはいけないわけです。

 論文が掲載されたとしても、研究不正で撤回されることはあるわけで、要は論文レベルの新規性の時点で大々的に報道することの難しさという、科学報道が抱える問題にも行き着きます。

 今回の件で、一方的に「叩く」のではなく、良い対話ができればと思うのですが…。

 馴れ合いとも敵対とも違う緊張感もある健全な関係を作る…。なかなか難しいですが…。

QS World University Rankings 2023 : Top Global Universities | Top Universities
https://www.topuniversities.com/university-rankings/world-university-rankings/2023

世界大学ランク 日本は100位以内に5大学 東大23位(毎日新聞) - Yahoo!ニュース
https://news.yahoo.co.jp/articles/eecb08a89e6b2d626b499be0c98143abb510dba1

 3大大学ランキングの一つ、QSのランキング。あまり気にしてはいけないものの、イギリスが高度人材呼び込みに使っているので無視もできません…。

 そのイギリスですが、Brexit以来の苦境を脱出するために、ああした人材呼び込みをおこなっているわけですが…。

UK scientists fear they will be locked out of e100 billion EU research programme
https://www.nature.com/articles/d41586-022-01637-8

 ユーロ記号が出ないのでeとしていますが、EUから外れるということはこういうことですね…。

令和4年版環境白書・循環型社会白書・生物多様性白書の公表について
https://www.env.go.jp/press/111155.html

「令和3年度エネルギーに関する年次報告(エネルギー白書)」 が閣議決定されました
https://www.meti.go.jp/press/2022/06/20220607002/20220607002.html

 白書のシーズンです。

「経済的困窮」よりも…コロナ禍で大学中退者が続出、その意外な理由
https://biz-journal.jp/2022/06/post_300516.html

 若い世代への負担は深刻です。親世代としてもなんとかしなければと思います。

感染症危機管理庁」新設、対応一元化 首相表明へ:日本経済新聞
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUA141GX0U2A610C2000000/

「内閣感染症危機管理庁」設置など政府の危機管理強化策案判明 | NHK | 新型コロナウイルス
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20220614/k10013671871000.html

「健康危機管理庁」の創設、岸田首相があす表明…感染症対策強化へ首相直属組織 : 読売新聞オンライン
https://www.yomiuri.co.jp/politics/20220614-OYT1T50032/

 入れ物を作って、果たして中身が伴うか…。そこはしっかりとみていきましょう。

尾身 茂 我々専門家は、言うべきことは言う「オネストブローカー」(中央公論) - Yahoo!ニュース
https://news.yahoo.co.jp/articles/c9f53e48342c150127b3a86ca20f77e58d72e493

 専門家と政治家の関係も整理されていけばと思います。

No Reduction in COVID-19 Hospitalizations, Deaths with Ivermectin
https://www.the-scientist.com/news-opinion/no-reduction-in-covid-19-hospitalizations-deaths-with-ivermectin-70119

ノーベル賞受賞者が言ったから、イベルメクチンを「盲信」していいのか?(ニューズウィーク日本版) - Yahoo!ニュース
https://news.yahoo.co.jp/articles/f1591f4274bd626e1c662e45c11f081a3500be68

 イベルメクチンが宗教のようになってしまい、非常に残念です。

厚労省データ 心筋炎リスク情報も不適格~新型コロナワクチン未接種扱い問題だけじゃない!2つの不適格データ問題を独自検証~
https://news.yahoo.co.jp/articles/0cf1122ab31210e8f5fd8bb14e8eec53e58e50e6

「十分な説明できず」厚労相が陳謝 ワクチン接種歴のデータ計上問題
https://www.asahi.com/articles/ASQ6G3VKZQ6GUTFL00K.html

 データの問題は大きな問題ですが、これも陰謀論に飲み込まれることなく、あるいは忖度することなく、冷静に論じるべき問題です。

サル痘感染者 世界で1000人超 追跡調査強化求める WHO | NHK
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20220609/k10013663791000.html

 WHOも緊急会議を行うようです。

サル痘巡り WHOが23日に緊急委 - Yahoo!ニュース
https://news.yahoo.co.jp/pickup/6429486

令和4年度公開プロセス特設ページ
https://www.gyoukaku.go.jp/review/kokai/R4/process_r4.html

文科省
https://www.mext.go.jp/a_menu/kouritsu/detail/block30_00055.htm

 現在進行中です。科学技術関連の事業もとりあげられています。あまり報道がないのが気になりますが…。

令和4年度公開プロセス配布資料
https://www.mext.go.jp/a_menu/kouritsu/detail/1417520_00002.htm

 6月7日に以下が行われています。

持続的な産学共同人材育成システム構築事業
イノベーションシステム整備事業

半導体の高度人材、九州は手薄 「弱い大学」返上なるか:日本経済新聞 https://www.nikkei.com/article/DGXZQOJC026GU0S2A600C2000000/

シリコンアイランド 争奪1200人(中) 高度人材、育成力見劣り:日本経済新聞 https://www.nikkei.com/article/DGKKZO61547850Y2A600C2LX0000/

初任給「月額28万円」も…関係者は驚き 人材争奪戦の半導体業界(西日本新聞) - Yahoo!ニュース
https://news.yahoo.co.jp/articles/ec499bc5f5ff79d39bf641d6a63d245148a304be

 九州がいまホットな状況です。半導体人材は世界的に需要があり、人材の取り合いになっています。

京大への寄付金100億円突破 「研究力強化に」創立125周年(毎日新聞) - Yahoo!ニュース
https://news.yahoo.co.jp/articles/e3a7eb4ad28ad9704a7a1bd3255fa5a09bdb8d09

 さすが京大くらいになると、という数字です。

サイエンス+エンタメで新境地
https://project.nikkeibp.co.jp/onestep/keyperson/00017/

 サイエンスコミュニケーションは「車輪の再発明」を繰り返している、という指摘があります。なんとか先人たちの残したものを次世代につなげていけばいいのですが。

Science must overcome its racist legacy: Nature’s guest editors speak
https://www.nature.com/articles/d41586-022-01527-z

Chile’s Indigenous peoples seek fairer partnerships with scientists https://www.science.org/content/article/chiles-indigenous-peoples-seek-fairer-partnerships-with-scientists

‘Helicopter research’ comes under fire at Cape Town conference https://www.science.org/content/article/helicopter-research-comes-under-fire-cape-town-conference

若手研究者の環境整備で先鞭付けた産総研、理事長が明かす「博士型任期付研究員制度」廃止の背景|ニュースイッチ by 日刊工業新聞社 https://newswitch.jp/p/32457

 最初から無期雇用にした産総研。セレクションをどこでするかの問題ですね。

「ブルシット・ジョブ」との決別 大学をやめた学者が語る学びの作法
https://www.asahi.com/articles/ASQ6661FHQ5TULEI00G.html

 在野研究者の在り方。

博士号取得でも人文系は2割の人が年収200万円未満?悲観論の嘘と現実
https://biz-journal.jp/2022/06/post_301284.html

 博士課程進学者が減っているのは日本だけではないといった指摘もあり、楽観でもなく悲観でもない、現実的な対応が必要ですね。

As professors struggle to recruit postdocs, calls for structural change in academia intensify
https://www.science.org/content/article/professors-struggle-recruit-postdocs-calls-structural-change-academia-intensify

Industry versus academia - a mid-life career switch
https://www.nature.com/articles/d41586-022-01624-z

 日本でもミドルエイジ以降のキャリアチェンジは大きな課題で、メンバーシップ型ではない雇用を中心に、具体例を積み重ねていかなければなりません。

研究者 刺激し合って知恵を…理化学研究所 五神真・新理事長 : 読売新聞オンライン
https://www.yomiuri.co.jp/science/20220611-OYT8T50062/

 どうも雇い止め問題を解決しようとする姿勢が見えません…。

そこが聞きたい:日本の基礎研究 ノーベル医学生理学賞受賞者・大隅良典氏 | 毎日新聞
https://mainichi.jp/articles/20220614/ddm/005/070/007000c

 教授が楽しく研究していなければ、若い世代も進まないだろうという指摘。

 ただ、研究以外を「雑用」と称し馬鹿にしていても、問題は解決しません。

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“Science Communication News”
[SciCom News] No.975 2022年6月15日号 巻頭言
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今後1年間の科学技術政策の方向性決まる

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         No.974 2022年6月8日号 巻頭言
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【巻頭言】
★今後1年間の科学技術政策の方向性決まる

2022年6月1日〜7日
カセイケン代表 榎木英介

 さまざまな方針、計画が政府から公表されています。

統合イノベーション戦略2022 (2022年6月3日閣議決定)
https://www8.cao.go.jp/cstp/tougosenryaku/2022.html

統合イノベーション戦略2022【本文】(PDF形式:810KB)
https://www8.cao.go.jp/cstp/tougosenryaku/togo2022_honbun.pdf

統合イノベーション戦略2022【概要】(PDF方式:1505KB)
https://www8.cao.go.jp/cstp/tougosenryaku/togo2022_gaiyo.pdf

 6月3日に閣議決定された今年の統合イノベーション戦略ですが、ポイントとして以下が掲げられています。

■知の基盤と人材育成の強化
10兆円規模の大学ファンドの創設を契機とした大学改革や博士学生支援、地域大学振興、STEAM教育を更に推進し、イノベーションと価値創造の源泉となる知を持続的に創出します。

イノベーション・エコシステムの形成
イノベーションの担い手としてスタートアップを前面に、経済社会を活性化させ、科学技術・イノベーションの恩恵を国民や社会、地域に還元します。

■先端科学技術の戦略的な推進
AI・量子の新戦略やシンクタンク、経済安全保障重要技術育成プログラムや次期SIP等を通じ、我が国の勝ち筋となる技術を育成します。

 6月3日には以下も決定。

知的財産推進計画2022
https://www.kantei.go.jp/jp/singi/titeki2/kettei/chizaikeikaku2022.pdf

知的財産推進計画2022の概要

https://www.kantei.go.jp/jp/singi/titeki2/kettei/chizaikeikaku2022_gaiyou.pdf

女性活躍・男女共同参画の重点方針 2022 (女性版骨太の方針 2022)
https://www.gender.go.jp/policy/sokushin/pdf/sokushin/jyuten2022_honbun.pdf

説明資料
https://www.gender.go.jp/policy/sokushin/pdf/sokushin/jyuten2022_setsumei.pd

 科学技術については以下のように触れらています(P19-20)。

科学技術・学術分野において男女共同参画を進め、研究・技術開発に多様な視点を取り入れていくことは、ジェンダード・イノベーションの創出にもつながり、重要で
ある。このため、大学の理工系の教員(講師以上)に占める女性の割合や大学の研究者の採用に占める女性の割合を令和7年までに引き上げる目標を分野別に掲げるとと
もに、大学(学部) の理工系の学生に占める女性の割合を毎年度高めるとの目標を定めている。また、大学の准教授及び教授等(学長、副学長及び教授)に占める女性の
割合(令和3年:准教授 26.1%、 教授等 18.2%)を令和7年までにそれぞれ引き上げる目標(准教授 30%、教授等 23%)を 掲げているところ、これらの目標を達成す
るため、以下の取組を進める。

取組は以下。

理工系分野への進学を選択する女子学生への支援
大学入学者選抜における多様な入試方法の推進
大学への資源配分におけるインセンティブの強化
科学技術・学術分野における女性登用の促進
女子中高生の理工系の学びや分野選択の促進

 そして6月7日にこれらを踏まえた上で、

★新しい資本主義のグランドデザイン及び実行計画・フォローアップ(2022年)
★経済財政運営と改革の基本方針2022

 が閣議決定されました。

新しい資本主義のグランドデザイン及び実行計画
https://www.cas.go.jp/jp/seisaku/atarashii_sihonsyugi/pdf/ap2022.pdf

フォローアップ
https://www.cas.go.jp/jp/seisaku/atarashii_sihonsyugi/pdf/fu2022.pdf

<参考資料>

新しい資本主義実行計画工程表
https://www.cas.go.jp/jp/seisaku/atarashii_sihonsyugi/pdf/apkouteihyou2022.pdf

フォローアップ工程表
https://www.cas.go.jp/jp/seisaku/atarashii_sihonsyugi/pdf/fukouteihyou2022.pdf

経済財政運営と改革の基本方針2022
https://www5.cao.go.jp/keizai-shimon/kaigi/cabinet/2022/decision0607.html

 様々な論点がありますが、科学技術に関して言えば以下です。それぞれの目次から。

新しい資本主義

III 新しい資本主義に向けた計画的な重点投資
2. 科学技術・イノベーションへの重点的投資
(1)量子技術
(2)AI実装
(3)バイオものづくり
(4)再生・細胞医療・遺伝子治療
(5)大学教育改革
(6)2025 年大阪・関西万博

初期の失敗を許容し長期に成果を求める研究開発助成制度の奨励と若手の支援(P6)
では、以下のように記載しています。

具体的には、ムーンショット型研究開発制度、創発的研究支援事業をはじめとした複数年度に渡って支援する公募型の研究開発支援について、 初期の失敗を許容しより長期に評価を行う方向で改善・強化する。
さらに、若手の支援が重要である。NIH(米国国立衛生研究所)が大学卒業生の若手を選抜するプログラム(「アソシエイトトレーニングプログラム」)に選ばれた若手は、後年、ノーベル賞など大きな業績を上げる確率が高いことが実証された。プログラム選抜者同士の人的交流、評判を形成する効果等が考えられる。我が国でも、一部に試み(「未踏」プロジェクト等)があるが、国家規模への拡大を検討すべきである。この際、選抜を行い、研究の指導を行う名伯楽を内外から集めることを検討する。

P8~9では出世払い奨学金等について触れています。

出世払い型奨学金の本格導入 減額返還制度を見直すほか、在学中は授業料を徴収せず卒業後の所得に応じて納付を可能とする新たな制度を、教育費を親・子供本人・国がどのように負担すべきかという論点や本制度の国民的な理解・受け入れ可能性を十分に考慮した上で、授業料無償化の対象となっていない学生について、安定的な財源を確保しつつ本格導入することに向け検討する(注)こととし、まずは大学院段階において導入することにより、ライフイベントも踏まえた柔軟な返還・納付(出世払い)の仕組みの創設を行う。(注)法制的な位置付けの検討を含む。
あわせて、理工系や農学系の分野に進学する女子学生への官民共同の修学支援プログラムを創設する。

P12では、科学技術顧問を設置することについて触れています。

大学についてはp14。

世界と伍する研究大学を作るため、研究力に加え、研究と経営の分離、若手研究者の登用等、優良なガバナンスを導入する大学に対し、10兆円規模の大学ファンドで支援する。この際、大学改革の中心となる高い経営能力を持った人材の下で、研究力強化につながる取組に対して重点的に資金が配分される制度とする。
また、官民のイノベーション人材育成を強化するため、大学の学部再編や文系理系の枠を超えた人材育成の取組を加速する。このため、産業界からの人材需要等も考慮して、進学者のニーズに対応できるよう、大学に対する規制を大胆に見直すとともに、学部再編に要する初期投資や再編後の当面の運営経費に対する継続的な支援を行うことで、大学の学部再編を促進する。
さらに、理系女子の活躍促進に向けて、女子学生枠の確保に積極的に取り組む大学等への支援を強化するとともに、女性の在籍・登用状況等の情報開示を促進する。
また、高校段階でも、文理横断教育を推進する。

P16では、内外から大学を誘致すると書かれています。

スタートアップが集積するグローバル・スタートアップ・キャンパス 内外の大学の誘致を含め、スタートアップが集積するキャンパス作りを推進する。

P18は知的財産。

スタートアップ・大学における知的財産権の戦略の強化
スタートアップが大学の知的財産権を事業化する環境整備に向け、大学の国際特許出願に対する支援強化、共有特許ルールの見直し、大学による株や新株予約権の取得に際しての制限の撤廃等を進める。

骨太の方針

第2章 新しい資本主義に向けた改革
1.新しい資本主義に向けた重点投資分野
(1)人への投資と分配
(2)科学技術・イノベーションへの投資
(3)スタートアップ(新規創業)への投資
(4)グリーントランスフォーメーション(GX)への投資
(5)デジタルトランスフォーメーション(DX)への投資

P14で女性活躍について触れています。

ジェンダーバイアス解消のための総合的な理解の醸成と支援を図り、女子中高生のIT 分野を始めとした理工系の学びや分野選択を促進するなどにより、理工系分野の女性教員 及び女子学生の割合を向上する取組を加速する。

 以上、2022年度の方針が決まりました。これらの計画が実行されるかウォッチを続けます。

令和4年
「規制改革実施計画」(令和4年6月7日 閣議決定)(PDF形式:1,589KB)
https://www8.cao.go.jp/kisei-kaikaku/kisei/publication/program/220607/01_program.pdf

※参考資料:規制改革実施計画 主な実施事項(内閣府規制改革推進室作成)(PDF形式:745KB)
https://www8.cao.go.jp/kisei-kaikaku/kisei/publication/program/220607/02_point.pdf

※関連資料集:規制改革実施計画 関連資料集(内閣府規制改革推進室作成)(PDF形式:3,553KB)
https://www8.cao.go.jp/kisei-kaikaku/kisei/publication/program/220607/03_initiatives.pdf

 こちらも6月7日閣議決定

 ところで、財務省は批判を浴びることが多いのですが、以下で研究者が国際競争力を失っているのは、研究者の閉鎖的な文化によると述べており、批判が沸き起こりました。

財審建議で「科学技術」の現状分析と提言(第9130号) | 株式会社官庁通信社
http://kancho-t.com/%E6%96%87%E6%95%99%E9%80%9F%E5%A0%B1/%E8%B2%A1%E5%AF%A9%E5%BB%BA%E8%AD%B0%E3%81%A7%E3%80%8C%E7%A7%91%E5%AD%A6%E6%8A%80%E8%A1%93%E3%80%8D%E3%81%AE%E7%8F%BE%E7%8A%B6%E5%88%86%E6%9E%90%E3%81%A8%E6%8F%90%E8%A8%80%EF%BC%88%E7%AC%AC9130/

歴史の転換点における財政運営 : 財務省
https://www.mof.go.jp/about_mof/councils/fiscal_system_council/sub-of_fiscal_system/report/zaiseia20220525/zaiseia20220525.html

 私自身ハラスメントを引き起こす閉鎖的な研究環境に批判的ですが、それはそれとして、もっと根本的な部分、すなわち競争的すぎる環境などについて是正していくべきではないかと思うのですが…。

「格差拡大」「稼げる研究重視に」大学ファンドの懸念に担当大臣は…
https://www.asahi.com/articles/ASQ6352CXQ63ULBH007.html

 小林大臣は比較的状況を理解している方だと思っています。

国立大雇い止め撤回を/関係者招き懇談会 田村議員が強調
https://www.jcp.or.jp/akahata/aik22/2022-06-07/2022060704_05_0.html

 先日開かれた懇親会。私も発表させていただき、記事の中でも少し触れられています。

 なお、田村議員が小林大臣などと論戦を戦わせた参議院内閣委員会の議事はしばらくの間以下で読めます。

内閣委員会会議録メイン画面
https://online.sangiin.go.jp/kaigirok/daily/select0101/main.html

 すでにある程度優れた業績を持った研究者が雇い止めの危機にある状況は、博士号取得者の多様なキャリアパスという文脈を超えて大きな問題だと思います。

理研600人雇い止め問題の本質は何なのか:日経バイオテクONLINE
https://bio.nikkeibp.co.jp/atcl/column/16/082400008/052500228/

「ジョブ型正社員」の偽善 | アゴラ 言論プラットフォーム
https://agora-web.jp/archives/220604064020.html

 これらの記事では、10年経っても次のポジションが見つけられなかった研究者や、労働契約法第十六条に問題があると言っていますが、そこが問題ではないと私は思っています。

解雇の金銭解決、日本も動き 柔軟な設計で新陳代謝促せ
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOCD3077M0Q2A530C2000000/

 解雇ができないから雇用者は雇い止めにする、そのルールが悪いなどと言われますが、日本は解雇を結構している国であり、ならばルールを決めた方が良い、という動きがあります。

 そのあたりは以下の濱口桂一郎氏のブログ記事などを。

eulabourlaw.cocolog-nifty.com/blog/2022/06/post-a966db.html

 4500人もの多数の方々が雇い止めに遭おうとしているこの状況は非常に深刻です。労働契約法の趣旨に沿うべきです。

ワクチン接種歴“厚労省と感染研で統計差は不適切”後藤厚労相
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20220607/k10013661091000.html

 先週も触れましたが、不適切なデータの扱いは問題なので修正すべきです。その上で、陰謀論には乗らず冷静に議論すべきです。

大学生ら、コロナ中退増:日本経済新聞
https://www.nikkei.com/article/DGKKZO61447300U2A600C2CM0000/

 若い世代に与える影響、心配です

国の委託、競争働かず コロナ下で強まるコンサル頼み:日本経済新聞
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUE191OZ0Z10C22A1000000/

 結局、メンバーシップ型雇用ではスペシャリティが身につかないので、コンサル丸投げという状況になってしまうのでしょう。

入学金の二重払いになりがちな「追加合格」の減少目指し、私大入学定員の基準緩和へ : 読売新聞オンライン
https://www.yomiuri.co.jp/kyoiku/kyoiku/news/20220606-OYT1T50120/

 これはこの数年大きな問題になっていました。

令和3年度ものづくり基盤技術の振興施策(ものづくり白書)について
https://www.mext.go.jp/b_menu/houdou/2021/1417842_00006.htm

「令和3年度ものづくり基盤技術の振興施策」(ものづくり白書) を取りまとめました
https://www.meti.go.jp/press/2022/05/20220531002/20220531002.html

大学院部会(第106回) 配付資料
https://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chukyo/chukyo4/004/gijiroku/1422801_00007.html

議題
産業界からの人文科学・社会科学系大学院への期待について
人文科学・社会科学系の大学院教育に関する方向性 中間とりまとめ(案)について
その他

サイエンスアゴラ2022(オンライン・実地開催)企画募集
https://www.jst.go.jp/sis/scienceagora/2022/entry.html

 募集開始です。友人の横山雅俊さんが亡くなってからすっかり縁遠くなってしまいました。

Beyond Disciplines 「オープン化、国際化する研究におけるインテグリティ2022-我が国研究コミュニティにおける取組の充実に向けて-(-The Beyond Disciplines Collection-)」
https://www.jst.go.jp/crds/report/CRDS-FY2022-RR-01.html

臨床研究法5年後の見直し、取りまとめを公開:日経メディカル
https://medical.nikkeibp.co.jp/leaf/mem/pub/hotnews/int/202206/575407.html

生命科学・医学系研究等における個人情報の取扱い等に関する合同会議(第5回)(厚生科学審議会 科学技術部会 医学研究における個人情報の取扱いの在り方に関する専門委員会(第5回)) 資料
https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_26017.html

 個人情報保護法改正による医療機関のオプトアウトに関して混乱がありましたが、概ね解決のようです。

人を対象とする生命科学・医学系研究に関する 倫理指針 ガイダンス(6月6日に一部改正)
https://www.lifescience.mext.go.jp/files/pdf/n2330_01.pdf

日本の高専、いま世界で「KOSEN」に 超高倍率を突破した海外の「エリート」たち:朝日新聞GLOBE+
https://globe.asahi.com/article/14635896

 注目の高専

Asia University Rankings 2022 | Times Higher Education (THE)
https://www.timeshighereducation.com/world-university-rankings/2022/regional-ranking#!/page/0/length/25/sort_by/rank/sort_order/asc/cols/stats

東大6位、日本の順位が下落傾向 アジア大学ランキング(共同通信) - Yahoo!ニュース
https://news.yahoo.co.jp/articles/b1ff4857fb3e9c4d3bb7b2800d84cdaea89a3b75

東大は6位維持 アジア大学ランキング、日本は下落傾向:日本経済新聞
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUE018TW0R00C22A6000000/

 大学ランキングを気にしてばかりはいられませんが、それでも気になる…。6月8日にはQSのランキングが出ます。本メルマガ執筆時点ではまだ出ていませんが。

https://www.topuniversities.com/university-rankings/world-university-rankings/

アリゾナ州立大誘致で国際化加速 広島大学長に聞く:日本経済新聞
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOCC3052D0Q2A530C2000000/

「稼げる大学」が土地などを貸すことだとしたら、ちょっと問題ありと思います。

4人の教員に聞くサイエンスコミュニケーションの実態・課題・未来【前編】 | 東大新聞オンライン
https://www.todaishimbun.org/sciencecommunicationintodai1_20220602/

4人の教員に聞くサイエンスコミュニケーションの実態・課題・未来【後編】 | 東大新聞オンライン
https://www.todaishimbun.org/sciencecommnintodai2_20220602/

Japan launches preprint server - but will scientists use it?
https://www.nature.com/articles/d41586-022-01359-x

 Jxivについての記事。

次期理事長候補者及び次期学長の決定について
https://www.nihon-u.ac.jp/announcement01/2022/06/13311/

 林真理子氏が日本大学の理事長に。手腕に期待します。

シャープ技術者が独白「技術流出は90年代から」:日本経済新聞
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUC181MO0Y2A510C2000000/

 博士号取得者を厚遇する韓国への人材流出は昔からあったわけで、基礎科学でも今後ブレインドレインは加速するでしょう。

 その際「売国奴」などと石を投げるのではなく、呼び戻すような政策を行っていってほしいです。

九大院、免除申請者に警告 入学辞退で「不名誉履歴」(共同通信) - Yahoo!ニュース
https://news.yahoo.co.jp/articles/6aec53b3cefd385d99e9d8f0d45a6aa7e8203add

“進撃の小さな巨人” 史上最強の侵略生物!? アルゼンチンアリ | NHK | WEB特集
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20220606/amp/k10013657381000.html

 ヒアリだけではない外来アリの脅威。

Pandemic lockdowns, supply shortages, and inflation wreak havoc with big science projects
https://www.science.org/content/article/pandemic-lockdowns-supply-shortages-and-inflation-wreak-havoc-big-science-projects

 パンデミックが研究に与えた影響。

When All Research Is Dual Use
https://issues.org/dual-use-research-biosecurity-social-context-science-evans/

 あらゆるものがデュアルユースになった時代にどうすべきか。地に足をつけた議論が求められています。

中国の大学生の就職は「超超氷河期」 北京大学博士課程修了者も警備員に|NEWSポストセブン
https://www.news-postseven.com/archives/20220604_1759263.html?DETAIL

博士号を取得しても浮浪者を追い払う仕事しかない 「天安門事件」から33年、中国の実情 (2022年6月4日) - エキサイトニュース
https://www.excite.co.jp/news/article/AllNightNippon_364901/

「浮浪者」という言葉が差別的で気になりますが、中国も厳しいようです。

Taliban rule takes toll on Afghanistan’s academics - especially women
https://www.nature.com/articles/d41586-022-01505-5

 タリバン政権が復活してからだいぶ経ちますが、懸念は払拭されません

春先に消える院生「人生がかかっている」 就活長期化は誰のため:朝日新聞デジタル
https://www.asahi.com/sp/articles/ASQ50432QQ59ULBH003.html

 修士課程が無駄になっています…。

日本化学会長に菅裕明・東大教授 化学者に託されたミッション語る
https://www.asahi.com/articles/ASQ614VQSQ50ULBH002.html

公益社団法人 日本生化学会 » 会長便り
https://www.jbsoc.or.jp/letter

 日本化学会の会長になられた菅裕明氏。運営費交付金減額の影響は乏しいと。

 結局置かれた立場で見える景色が違うのでしょう。もちろん菅教授が「叩き上げ」であることは存じていますが。

Academic mentors wield great power. We need to feel safe talking about abuses | Science | AAAS
https://www.science.org/content/article/academic-mentors-wield-great-power-we-need-to-feel-safe-talking-about-abuses

大学教員「『大学は優秀なIT人材を輩出すべき』と国の偉い人が集まる会合で言われたので『輩出して、待遇が良い外資に行ってます』と不規則発言したら呼ばれなくなりました(n回目
https://togetter.com/li/1894026

 忖度ないことをいう人は外されます…。悲しいですね。

NPO法人・日本科学振興協会 (JAAS) 第1回 総会・キックオフミーティングのオンラインプログラム発表「日本の科学をもっと元気に!」をテーマに27セッションを無料で公開|カクタス・コミュニケーションズ株式会社のプレスリリース
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000045.000006186.html

 NPO法人化したJAASですが、キックオフミーティングが迫っています。

 なお、私たちカセイケンは、榎木と春日がJAASの監事、理事から退任予定。その代わりカセイケンの片桐理事がJAASの理事選挙に当選しました。

 今後ともカセイケンではJAASの理念を支持すると同時に、カセイケンとしては独自の活動を行なっていきたいと思っています。

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“Science Communication News”
[SciCom News] No.974 2022年6月8日号 巻頭言
【発行】一般社団法人科学・政策と社会研究室
【制作・編集】サイエンス・サポート・エージェンシー合同会社
【E-Mail】 office@kaseiken.org
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雇い止め問題、当事者意識を持って行動を

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★発行部数 2,521部(6月1日現在)
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         No.973 2022年6月1日号 巻頭言
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【巻頭言】
★雇い止め問題、当事者意識を持って行動を

2022年5月25日〜6月1日
カセイケン代表 榎木英介

 雇い止め問題が報道される機会が増えてきました。

大量雇い止めを警戒 非正規研究者ら、契約終了迫る 東北大で230人超 23年3月末 /宮城
https://mainichi.jp/articles/20220530/ddl/k04/100/110000c

日本の大学で3000人が雇い止め:「10年雇い止め問題」は研究の自由を奪う
https://agora-web.jp/archives/220528204953.html

来春に迫る研究者の大量雇い止め危機 研究力の低下、頭脳海外流出の恐れ
https://www.chunichi.co.jp/amp/article/480260

国公立大や公的機関の研究者 来年3月に約3000人が大量雇い止め危機 岐路の「科学立国」
https://www.tokyo-np.co.jp/article/179934

 上記の東京新聞の記事には私のコメントが出ています。

 いろいろお話しした中で、文科省が及び腰ではないかとの意見が掲載されましたが、残念ながらいま、文科省、大学の間で「責任のなすり合い」のようなことが起きているのではないかという指摘があります。

 確かに雇い止めを行う機関が問題というのはその通りで、労働契約法の趣旨を捻じ曲げています。

 一方、安定的資金が乏しいという背景がこうした問題行為を誘発しているという側面もあります。

 責任を押し付け合うのではなく、目前に迫り、これからも続くと思われるこの事態の解決に向け、知恵を出し合い行動していくべきだと強く思います。

「国立大学・研究機関における大量雇い止めについてのOnline懇談会」
https://www.jcp.or.jp/web_policy/2017/01/daigaku.html

 6月4日夕方18時から、私も話題提供をさせていただく会のご案内です。

 ここでもお話しさせて頂こうと思っていますが、それぞれが当事者意識を持って、出来ることをやっていくべきなのではないかと思っています。

 科学コミュニティ、アカデミアは、少なくともこの問題に関心を持ち続けるべきです。

 本当はもっとコミットして欲しいし、たとえばスポーツ界におけるセカンドキャリアに対する取り組みのようなことをして欲しいと思っています。

2021年現役若手プロ野球選手への「セカンドキャリアに関するアンケート」結果
https://npb.jp/news/detail/20220527_01.html

プロ野球選手 引退後「会社経営者」希望 3年連続トップ なぜ?
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20220528/k10013647031000.html

 残念がら、「個人商店」の集まりである研究者は、「業界」全体のことを考える余裕や意識に乏しいのが現状のようです。それが悔しいですね。なんでも「政府が悪い」ではなく、踏み出してほしい…。

 政府も「学問の自由」で投げ出すのではなく、明らかに法律の趣旨違反なのですから、厚労省とともにもう少し踏み込んで欲しいです。

 政府やアカデミアが「動かない岩」のように思えてきました。

 けれど、岩が動かないとその場で立ち止まっても何も変わりません。動かないならこえていきましょう。もちろん動かすための努力をやめろというわけではないので誤解なきように。

 若い世代はいろいろ動き始めています。

研究の専門性重視でスカウト…理系大学院生の理想の就活で存在感示すサービスの正体
https://newswitch.jp/p/32306

 こうしたキャリア問題に取り組むスタートアップ企業も増えてきました。

ジャカルタ版ウーバー 世界に類を見ない「助け合う」ギグワーカー
https://www.technologyreview.jp/s/274513/the-gig-workers-fighting-back-against-the-algorithms/

 労働組合など、当事者の権利を守る動きも重要です。

 アカデミアにちょっと関わり、飛び出した(追い出された)私たちにも出来ることがあると思っています。

新しい資本主義実現会議(第8回)|内閣官房ホームページ
https://www.cas.go.jp/jp/seisaku/atarashii_sihonsyugi/kaigi/dai8/gijisidai.html

新しい資本主義のグランドデザイン及び実行計画(案) ~人・技術・スタートアップへの投資の実現~
令和4年5月31日
https://www.cas.go.jp/jp/seisaku/atarashii_sihonsyugi/kaigi/dai8/shiryou1.pdf

 科学技術や人材育成についても様々なことが書かれています。

科学技術立国へ首相直属の顧問…新しい資本主義計画で量子・AI・バイオ重点 : 読売新聞オンライン
https://www.yomiuri.co.jp/politics/20220530-OYT1T50255/

所得連動の「出世払い型奨学金」本格導入へ 「新しい資本主義」原案
https://www.asahi.com/articles/ASQ5W6K8SQ5WUTFK015.html

成長へ投資促す改革 「新しい資本主義」案、人・技術重点:日本経済新聞
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUA307N90Q2A530C2000000/

第7回会議資料 令和4年 会議結果- 経済財政諮問会議 - 内閣府
https://www5.cao.go.jp/keizai-shimon/kaigi/minutes/2022/0531/agenda.html

資料1 経済財政運営と改革の基本方針2022(仮称)原案(PDF形式:831KB)
https://www5.cao.go.jp/keizai-shimon/kaigi/minutes/2022/0531/shiryo_01.pdf

 こちらも重なる部分がありますが、科学技術に関する記載も。

<独自>米大学誘致で起業支援強化 骨太方針概要(産経新聞) - Yahoo!ニュース
https://news.yahoo.co.jp/articles/c2f73031fa294a0798af9201ae5d3d56b6f2f121

規制改革推進に関する答申(PDF形式:1,288KB)
https://www8.cao.go.jp/kisei-kaikaku/kisei/publication/opinion/220527.pdf

[スキャナー]柔軟な医療、「職種の壁」乗り越えて…規制改革答
https://www.yomiuri.co.jp/medical/20220528-OYT1T50013/

大学入試センター研究開発部報告書
大学入試センター・シンポジウム 2021
COVID-19 の災禍と 世界の大学入試
https://www.dnc.ac.jp/sp/albums/abm.php?f=abm00041179.pdf&n=%E5%A4%A7%E5%AD%A6%E5%85%A5%E8%A9%A6%E3%82%BB%E3%83%B3%E3%82%BF%E3%83%BC%E3%83%BB%E3%82%B7%E3%83%B3%E3%83%9D%E3%82%B8%E3%82%A6%E3%83%A0+2021.pdf

「COVID-19の災禍と世界の大学入試」5か国の報告書公開
https://resemom.jp/article/2022/05/26/67176.html

 新型コロナウイルスは入試にも大きな影響を与えています。

キャンパス文化 継承探る
https://www.nikkei.com/article/DGKKZO61236950Z20C22A5CT0000/

大学部活、存続の危機 コロナ禍で勧誘できず 群馬大、3年で団体数180→151に /群馬
https://mainichi.jp/articles/20220530/ddl/k10/100/040000c

 部活動やサークルの存続が厳しい状況に。

 学生時代という短い期間。切れてしまった2年間は大きいです

新型コロナワクチン打っても“未接種扱い”にしていた…厚労省「理由は不明だが意図的なものではない」(CBCテレビ
https://news.yahoo.co.jp/articles/302956e09ab38e2d48292a38a03cbbacf24b7340

 データは正しいものに訂正して欲しいと思います。

 その一方、陰謀論を叫ぶことも危険です。3度目のワクチンに感染を防ぐ役割が乏しかったとしても、重症化を防ぐ役割があったという指摘もあります。

経済安保法「毎年更新を」 自民・甘利明
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUA2947U0Z20C22A4000000/

 相変わらず甘利議員が日本学術会議が中国の軍事研究に加担していると陰謀論を唱えています。

 もう少し現実的な話ができないものでしょうか。

米政権の中華人民共和国に対するアプローチ
https://jp.usembassy.gov/ja/blinken-administrations-approach-to-peoples-republic-of-china-ja/

The number of researchers with dual US-China affiliations is falling
https://www.nature.com/articles/d41586-022-01492-7

 対立が激化するアメリカも、チャイナイニシアチブをやめて現実的な政策をおこなっています。

軍事技術か否か…区別難しい時代に突入 学問の自由とのバランスは
https://www.asahi.com/articles/ASQ5V56J6Q5VUPQJ001.html

 もちろんデュアルユース問題が大きな課題ではあるのは事実で、難しい対応が求められている現実は認識しなければなりません。

大学及び研究機関等における安全保障貿易管理の徹底について(依頼)
https://www.mext.go.jp/b_menu/hakusho/nc/mext_00048.html

 経済安全保障は大きな課題で、対応が必要ですが、「藁人形」の基礎研究者を叩くだけで終わってはいけません。

科学技術・学術審議会 大学研究力強化委員会(第4回) 配布資料
https://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/gijyutu/gijyutu32/siryo/000017833_00002.html

大学研究力強化に向けた取組 (1. 世界と伍する研究大学の実現に向けた大学ファンドの創設 2. 地域中核・特色ある研究大学総合振興パッケージ 3. 大学の強みや特色を伸ばす取組の強化(大学研究力関係))

報告書「15人の人文・社会科学系有識者が語る現状と未来-2050年の日本へ、そのプロセスを問う。」を公開しました
https://www.jst.go.jp/report/2022/220527.html

オープン化、国際化する研究におけるインテグリティ2022-我が国研究コミュニティにおける取組の充実に向けて-(-The Beyond Disciplines Collection-)|戦略提案・報告書|研究開発戦略センター(CRDS)
https://www.jst.go.jp/crds/report/CRDS-FY2022-RR-01.html

研究開発の俯瞰報告書 日本の科学技術・イノベーション政策(2022年)|戦略提案・報告書|研究開発戦略センター(CRDS)
https://www.jst.go.jp/crds/report/CRDS-FY2022-FR-01.html

 恒例の重要資料です。

ミッション志向型科学技術イノベーション政策と研究開発ファンディングの推進|戦略提案・報告書|研究開発戦略センター(CRDS)
https://www.jst.go.jp/crds/report/CRDS-FY2022-SP-01.html

ストパンデミック時代における科学的助言のエコシステムの構築に向けて-新型コロナウイルス感染症対応の課題と今後の方向性-|戦略提案・報告書|研究開発戦略センター(CRDS)
https://www.jst.go.jp/crds/report/CRDS-FY2021-RR-10.html

未踏IT人材発掘・育成事業スーパークリエータを認定しました!
https://www.meti.go.jp/press/2022/05/20220527006/20220527006.html

 東大関係者が多い印象ですね。

「農林水産研究イノベーション戦略2022」の策定について
https://www.affrc.maff.go.jp/docs/press/220524.html

東京港青海ふ頭におけるヒアリの確認について
https://www.env.go.jp/press/111150.html

今年国内初ヒアリ確認 東京港 - Yahoo!ニュース
https://news.yahoo.co.jp/pickup/6427935

 私もYahoo!ニュースにコメント書きましたが、一般市民が関心を失わないことが対策の後押しになります。

G7気候・エネルギー・環境大臣会合の結果について
https://www.env.go.jp/press/111114.html

「後進に道譲る」宇宙飛行士の野口さんJAXA退職へ 総合知の人材育成に意欲 | Science Portal - 科学技術の最新情報サイト「サイエンスポータル」
https://scienceportal.jst.go.jp/newsflash/20220526_n01/

 後進に道を譲る野口さんを評価しますが、強制しているわけではありません。

 若者に立ちはだかる壁になることも重要ではあります。ただ、自己保身とエゴを優先させないでいただけたらと思います。

理研だからできること ―五神 真 新理事長に聞く― | 理化学研究所
https://www.riken.jp/pr/closeup/2022/20220530_1/index.html

 「チーム甘利」とも言われている五神さんですが、若手研究者の問題をよく理解されている方でもありますし、雇い止め問題含め手腕を発揮されることを期待します。

Japan tries-again-to revitalize its research
https://www.science.org/content/article/japan-tries-again-revitalize-its-research

 サイエンスが記事にした10兆円ファンド。法案は成立しましたが、報道が盛んになってきました。

10兆円ファンドの「稼げる大学」に5大学検討 選択と集中へ不安も
https://www.asahi.com/articles/ASQ5W5K1TQ5SULBH00R.html

「稼げる大学」へ10兆円ファンド 国際卓越研究大学どんな制度?
https://www.asahi.com/articles/ASQ5W5GHWQ5VULBH011.html

「輝く大学へまたとない機会」「研究力低下」 10兆円ファンド賛否
https://www.asahi.com/articles/ASQ5W63QRQ5VULBH00L.html

研究力「復活しないと日本終わり」 大学ファンドにかける旗振り役
https://www.asahi.com/articles/ASQ5X046RQ5LULBH007.html

10兆円ファンドに申請しますか? 43大学から聞こえる期待と不満
https://www.asahi.com/articles/ASQ5X03NSQ5VULBH00J.html

(いちからわかる!)10兆円でつくる「大学ファンド」って?
https://digital.asahi.com/sp/articles/DA3S15310329.html

世界と伍する研究を推進する大学新制度、学術界から異論噴出のワケ
https://newswitch.jp/p/32316

設置基準改正へ1「専任教員」は複数大学・学部で兼務可の「基幹教員」に
http://between.shinken-ad.co.jp/univ/2022/05/secchikijun.html

地域中核・特色ある研究大学の強みやその特色を伸ばすための取組について(中間まとめ)―我が国の大学の研究力及び国際競争力強化への7つの提言― 令和4年5月 | 国立大学協会
https://www.janu.jp/news/10611/

Gサイエンス学術会議2022共同声明(2022年5月31日公開)
https://www.scj.go.jp/ja/int/g8/index.html

記者会見資料
令和4年5月25日 >資料1:日本学術会議会長談話「アフマドレザ・ジャラリ博士の状況に対する深刻な懸念について」(PDF形式:215KB)
https://www.scj.go.jp/ja/member/iinkai/kanji/pdf25/siryo326-p-danwa.pdf

>資料2:補欠の会員の選考手続について(令和4年5月25日改正)(PDF形式:251KB)
https://www.scj.go.jp/ja/member/iinkai/kanji/pdf25/siryo326-hoketu.pdf

>資料3:学術フォーラム・公開シンポジウム等の開催予定について(PDF形式:5,439KB)
https://www.scj.go.jp/ja/member/iinkai/kanji/pdf25/siryo326-s-yotei.pdf

「国際基礎科学年」市民参加の議論を 高エネ研野尻教授
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOCD0905G0Z00C22A5000000/

科学と社会をつないでいく 科学コミュニケーター・本田隆行
https://dot.asahi.com/amp/aera/2022052500058.html

 フリーランスの本田さん。応援しています・

Nature addresses helicopter research and ethics dumping
https://www.nature.com/articles/d41586-022-01423-6

HHMI to Award More than $1 Billion to Promote Equity in Research
https://www.the-scientist.com/news-opinion/hhmi-to-award-more-than-1-billion-to-promote-equity-in-research-70066

Has the ‘great resignation’ hit academia?
https://www.nature.com/articles/d41586-022-01512-6

 中堅研究者が逃げ出しているということ。

国の研究費支援、特定の教授らに集中 「10件以上掛け持ち」6%
https://www.chunichi.co.jp/article/476717

 知ってた問題ですが、これぞ選択と集中

Brazil’s space research institute, a source of national pride, is struggling for survival
https://www.science.org/content/article/brazil-s-space-research-institute-source-national-pride-struggling-survival

 ボルソナロ大統領になってから、研究が常に危機ですね…。

東浩紀「相次ぐ日本のウェブメディア閉鎖 『読まれること』が困難な時代に」〈AERA
https://news.yahoo.co.jp/articles/308ee288f1074154affa0be5fbffc7d9842c0637

 長文が読まれない時代。サイトが閉鎖される時代。私たちにとっても無縁ではありません。

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“Science Communication News”
[SciCom News] No.973 2022年6月1日号 巻頭言
【発行】一般社団法人科学・政策と社会研究室
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研究者大量雇い止めの論点

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★発行部数 2,519部(5月25日現在)
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     ◆◇◆  Science Communication News ◆◇◆
         No.972 2022年5月25日号 巻頭言
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【巻頭言】
★研究者大量雇い止めの論点

2022年5月18日〜25日
カセイケン代表 榎木英介

 これまでお伝えしている通り、労働契約法の特例による雇い止め問題は、4500人という対象者の人数も明らかになり、非常に深刻な問題であることが次第に明らかになってきました。

国立大など 4500人雇い止めの恐れ/非正規研究者 田村智子議員の追及で判明/参院内閣委| 「しんぶん赤旗
https://www.jcp.or.jp/akahata/aik22/2022-05-18/2022051801_02_0.html

 報道もされるようになってきています。

国立大研究者、広がる雇い止めの不安 有期→無期雇用の節目に:朝日新聞デジタル
https://digital.asahi.com/sp/articles/ASQ5K6JY1Q5KUTIL02J.html

研究者ら大量雇い止め恐れ 非正規、令和5年3月契約終了
https://www.sankei.com/article/20220521-JEMOM3IQN5N7ZFMVKXDBPGD3L4/

「研究職600人雇い止め」理化学研究所に走る衝撃 | 動画 | 東洋経済オンライン
https://toyokeizai.net/list/video/DredhGf_KdI

 文科省もこの点は認識しており、末松大臣も言及しています。

末松信介文部科学大臣記者会見録(令和4年3月29日):文部科学省
https://www.mext.go.jp/b_menu/daijin/detail/mext_00255.html

一般論として申し上げますけれども、無期転換ルールの適用を意図的に避ける目的で雇止めをしたとしたならばですね、これは、労働契約法の趣旨に照らして全く望ましくないという、私はそのように考えております。

 末松大臣が言われるように、まず大前提として、雇い止めは労働契約法の趣旨に反しています。

大学等及び研究開発法人の研究者、教員等に対する労働契約法の特例(無期転換申込権発生までの期間)に関する経過措置について:文部科学省
https://www.mext.go.jp/a_menu/koutou/shinkou/1410626.htm

無期転換ルールを避けることを目的として、無期転換申込権が発生する前に雇止めをすることは、労働契約法の趣旨に照らして望ましいものではありません。また、有期労働契約の満了前に使用者が更新年限や更新回数の上限などを一方的に設けたとしても、雇止めをすることは許されない場合もありますので、慎重な対応が必要です。

 国立大学や国立の研究機関でこのような法の趣旨に反した行為が行われることは、非常に問題であると言わざるを得ません。

 その上で、もう一点指摘しなければならないのは、無期転換権が生じて申し出し、任期の定めのない雇用になったとしても、それは「終身雇用」ではないということです。

無期労働契約...無期労働契約の労働条件(職務、勤務地、賃金、労働時間など)は、別段の定めがない限り、直前の有期労働契約と同一となります。別段の定めをすることにより、変更可能です。 「別段の定め」とは 、労働協約就業規則、個々の労働契約(無期転換に当たり労働条件を変更することについての労働者と使用者との個別の合意)が該当します。

https://www.mhlw.go.jp/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/roudoukijun/keiyaku/kaisei/dl/h240829-01.pdf

より。

 いわゆるメンバーシップ型の「終身雇用」は、企業と労働者の契約上の問題で、定年まで雇い続けるという契約です。福利厚生の充実や年功序列的な給与体系とセットになっています。

 配置転換等に企業側の裁量がかなり強く入りますし、配置転換してでも雇用を作らないといけないので、解雇は簡単ではありません。

 任期の定めがないということと、終身雇用は似ているようで異なるわけです。

 一方、一旦任期の定めのない雇用に転換すると、解雇は簡単にされなくなります。

https://partners.en-japan.com/qanda/desc_977
https://kanazawagoudoulaw.com/tokuda_blog/201903297777.html

 それが法の趣旨ですから、当然ではあります。

 おそらく大学や研究機関は、簡単には辞めさせられなくなることを恐れているのだと思います。

 しかし、ここでなぜ研究者が10年の特例を付与されたかに立ち返って考えてみます。

 同じ研究施設に10年以上雇われているということは、5年のプロジェクト等の範囲を超えて重要な役割をになっているということになるわけで、それはその施設にとってエッセンシャルな存在であるということです。

 そうした10年雇用されているエッセンシャルな存在を、都合が悪ければ簡単に解雇して良いのですか、ということが問われるわけです。

 流動化と安定化は、研究者にとって常に論争であり続けています。

 たしかに「大した成果も出さずに雇用されている存在」の人を切って、次の人にチャンスを与えるべき、という声は根強くあります。

 しかし、10年も有期雇用を繰り返し、同じ施設で雇われ続けた人たちは、このカテゴリーには当てはまらないのではないでしょうか。ある種のセレクションに合格した人たちではないかと思います。

 まずは法の趣旨に反する雇い止めをやめ、法に沿った無期転換権の付与を求めます。

 これと同時に、さまざまな能力を持った人たちは、アカデミアを超えてさまざまな場でその才能を発揮してもらうのが、社会にとっても有益であると思います。

 私が残念に思うのは、労働契約法の特例ができて10年、今に至るまで、多様なキャリアの促進など、キャリア問題に冷淡でいた大学や研究機関の存在です。10年間何をやっていたのでしょう。

 残念ながらポジティブな形で社会に人材を送り出すという意識が乏しい施設がまだまだ多いように思います。それでいて、解雇できないのは困るといった組織の論理のみを押し出して「法の被害者」ぶったとしても納得いきません。

 4500人の雇い止めはなんとか阻止しなければなりませんが、アカデミアや政府は、その先を見据えて、当事者意識を持ってことに当たらなければなりません。

 正直私はアカデミアに不信を抱いており、自分でできることをやらなければと思っています。

 最近さまざまなスタートアップが、博士号取得者の人材活用サービスをローンチしていますが、それも同じ意識だと思います。

 もちろんアカデミアや若手の官僚の方々の有志の言動に希望も感じており、完全に絶望しているわけではありません。

 どうかこの問題を、自分ごととして考えていただけたらと思います。

 6月4日土曜日の夕方、日本共産党の田村智子参議院議員が、雇い止め問題の懇談会を開催します。

 雇い止め当事者に加え、私も発言の機会を得ました。

国立大学・研究機関における大量雇い止めについての Online 懇談会 参加登録フォーム
https://ptv.jcp.or.jp/survey/187352

 ご関心のある方はご参加ください。

岩手:ブラックホール次は動画 地域、大学連携にも意欲 国立天文台水沢VLBI観測所 本間所長に聞く : 読売新聞オンライン
https://www.yomiuri.co.jp/local/iwate/news/20220519-OYTNT50197/amp/

立民・原口氏「国立天文台応援ツイート」が大炎上、“事業仕分けブーメラン”炸裂! – SAKISIRU(サキシル)
https://sakisiru.jp/27820?s=09

「水沢観測所」が寄付目標突破 1千万円超、若手研究員の雇用へ | 岩手日報 IWATE NIPPO
https://www.iwate-np.co.jp/article/2022/5/20/116312/amp

ブラックホール撮影後押し 研究員雇用寄付1千万円超 水沢観測所 - 産経ニュース
https://www.sankei.com/article/20220520-6VO6M5J33ZLJLOTLQASJPY4ZKY/

ブラックホール撮影の国立天文台、若手「二刀流」に活路:日本経済新聞
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOCD13BGX0T10C22A5000000/

 国の政策に翻弄されている研究機関ですが、若手の雇用のために頑張っています。

 もちろん国の政策に意見を言うのは重要ですし、やり続けるべきですが、こうした当事者意識を持った研究機関が増えてほしいと思います。

教育未来創造会議「第一次提言」を受けたこれからの大学について(進学者のニーズや人材需要に対応するための学部再編と理系女子学生の活躍促進について):文部科学省
https://www.mext.go.jp/b_menu/daijin/detail/mext_00270.html

 末松大臣。各方面に対する要望が書かれています。重要です。

理系に進む女性増へ、国が支援強化 偏見の排除・ハラスメント防止…具体策取
りまとめ
https://www.asahi.com/articles/DA3S15303436.html

詳細はこちらから。

統合イノベーション戦略推進会議(第11回) - 総合科学技術・イノベーション会議 - 内閣府
https://www8.cao.go.jp/cstp/tougosenryaku/11kai/11kai.html

資料3-1Society5.0の実現に向けた教育・人材育成に関する政策パッケージ(案)(概要抜粋)(PDF形式:567KB)
https://www8.cao.go.jp/cstp/tougosenryaku/11kai/siryo3_1.pdf

資料3-2Society5.0の実現に向けた教育・人材育成に関する政策パッケージ(案)(概要)(PDF形式:1500KB)
https://www8.cao.go.jp/cstp/tougosenryaku/11kai/siryo3_2.pdf

資料3-3Society 5.0の実現に向けた教育・人材育成に関する政策パッケージ(案)印刷用一括版(PDF形式:2249KB)
https://www8.cao.go.jp/cstp/tougosenryaku/11kai/siryo3_3print.pdf

分割版1(PDF形式:1977KB)
https://www8.cao.go.jp/cstp/tougosenryaku/11kai/siryo3_3_1.pdf

2(PDF形式:1313KB)
https://www8.cao.go.jp/cstp/tougosenryaku/11kai/siryo3_3_2.pdf

COVID lessons from Japan: the right messaging empowers citizens
https://www.nature.com/articles/d41586-022-01385-9

天然痘に似た症状の「サル痘」が欧米などで拡大 厚労省、国内流入を警戒 | Science Portal - 科学技術の最新情報サイト「サイエンスポータル」
https://scienceportal.jst.go.jp/newsflash/20220524_n01/

 サル痘の感染拡大が続いています。要注意です。

What’s sending kids to hospitals with hepatitis-coronavirus, adenovirus, or both?
https://www.science.org/content/article/what-s-sending-kids-hospitals-hepatitis-coronavirus-adenovirus-or-both

 小児の肝炎も要警戒です。

Tuberculosis Is the Oldest Pandemic, and Poverty Makes It Continue
https://www.nature.com/articles/d41586-022-01348-0

 結核は病理医として診断することもまだまだ多く、重要な感染症です。

被爆者スライド標本データベース」を公開しました
https://www.hiroshima-u.ac.jp/rbm/news/70706

被爆者スライド標本データベース - 広島大学原爆放射線医科学研究所
https://rbm.hiroshima-u.ac.jp/

被爆直後の臓器標本を公開 広島大の研究所:日本経済新聞
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUF20AP40Q2A520C2000000/

 被爆者の組織標本。貴重な資料です。

首相、防衛費「国防」の視点重視 科学技術など総合的に:日本経済新聞
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUA20CCR0Q2A520C2000000/

クアッド4か国、5Gやバイオ技術で官民連携へ…「軍民融合」の中国に対抗 : 読売新聞オンライン
https://www.yomiuri.co.jp/world/20220522-OYT1T50237/

 やはり軍事、デュアルユース研究が政府の関心のようです。

「国際卓越研究大学の研究及び研究成果の活用のための体制の強化に関する法律」が成立
https://www.mext.go.jp/b_menu/activity/detail/2022/20220520.html

 文科省のページ。

論点:「大学ファンド」の是非 | 毎日新聞
https://mainichi.jp/articles/20220520/ddm/004/070/006000c

 必読記事。

新しい資本主義実現会議(第7回)|内閣官房ホームページ
https://www.cas.go.jp/jp/seisaku/atarashii_sihonsyugi/kaigi/dai7/gijisidai.html

議事
(1)人への投資
   (賃金、人材育成、兼業・副業、男女間格差 等)

大学院部会(第105回) 配付資料
https://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chukyo/chukyo4/004/gijiroku/1422801_00005.html

議題

大学設置基準等の改正について
人文科学・社会科学系の大学院教育等について
「大学院における教育改革の実態把握・分析等に関する調査研究」及び「産業界における博士人材の活躍実態調査」の結果について
その他

議事次第 令和4年5月19日 - 総合科学技術・イノベーション会議 - 内閣府
https://www8.cao.go.jp/cstp/gaiyo/yusikisha/20220519.html

議題

研究に専念できる時間の確保について:URAの活用

大学発ベンチャー実態等調査の結果を取りまとめました
https://www.meti.go.jp/press/2022/05/20220517001/20220517001.html

日本学術会議会長談話「アフマドレザ・ジャラリ博士の状況に対する深刻な懸念について」を公表しました。(令和4年5月18日)
>President’s Statement on “Grave concern about the situation of Dr. Ahmadreza Djalali”(PDF形式:96KB)
https://www.scj.go.jp/ja/head/pdf/20220518e.pdf

>日本学術会議会長談話「アフマドレザ・ジャラリ博士の状況に対する深刻な懸念について」(PDF形式:121KB)
https://www.scj.go.jp/ja/head/pdf/20220518.pdf

 全文引用しますが、非常に大きな問題です。

日本学術会議会長談話
「アフマドレザ・ジャラリ博士の状況に対する深刻な懸念について」
死刑執行が差し迫っていると伝えられる災害医学研究者であるアフマドレザ・ジ ャラリ博士の状況について国際学術会議(ISC)が表明した重大な懸念を共有し ます。国連の恣意的拘禁に関する作業部会がこの問題について採択した 2017 年 の意見を考慮し、ISC とともにジャラリ博士の死刑執行の停止を求めます。
令和4年5月 18 日 日本学術会議会長 梶田 隆章

 関連

アフマドレザジャラリ博士の処刑を停止する-国際科学会議
https://council.science/ja/current/news/halt-the-execution-of-dr-ahmadreza-djalali/

President Metsola calls on Iran to set Ahmadreza Djalali free | News | European Parliament
https://www.europarl.europa.eu/news/en/press-room/20220510IPR29210/president-metsola-calls-on-iran-to-set-ahmadreza-djalali-free

元司書が語る! 国立国会図書館の絶版本「読み放題解禁」がスゴい
https://diamond.jp/articles/-/303076

国立国会図書館の絶版資料などがネット経由で見れるサービス、本日提供開始(Impress Watch) - Yahoo!ニュース
https://news.yahoo.co.jp/articles/757c1e973ba23f5c976a8993635f6355f1535302

 注目です。

Open access in low-income countries - open letter on equity
https://www.nature.com/articles/d41586-022-01414-7

Nature journals raise the bar on sex and gender reporting in research
https://www.nature.com/articles/d41586-022-01218-9

そこが聞きたい:広がる研究スキル売買 京都薬科大教授・田中智之氏
https://mainichi.jp/articles/20220524/ddm/005/070/007000c

Law, policy, biology, and sex: Critical issues for researcher
https://www.science.org/doi/10.1126/science.abo1102

The Court is ignoring science
https://www.science.org/doi/10.1126/science.adc9968

Australians vote for stronger climate action
https://www.nature.com/articles/d41586-022-01445-0

 政権が交代したオーストラリア。

「復興のために学問を」 オンライン講義を再開したキーウの大学 | 毎日新聞
https://mainichi.jp/articles/20220523/k00/00m/030/213000c.amp

 復興を見据えています。

Frustration builds over lengthy delay in revamping Mexico’s science law
https://www.nature.com/articles/d41586-022-01408-5

女性医師の3割「ワンオペ育児」経験 男性は1割未満 大学病院など(毎日新聞) - Yahoo!ニュース https://news.yahoo.co.jp/articles/eea76105274506ed3a007faec9bd746565fdd563

AJMC 一般社団法人 全国医学部長病院長会議
記者会見 2022(令和4)年5月17日(火)15:00~
男女共同参画に対する意識調査」結果及び「男女共同参画に向けての提言」について
https://ajmc.jp/news/2022/05/17/4354/

日米豪印フェローシップ創設記念行事の開催
https://www.mofa.go.jp/mofaj/p_pd/ep/page1_001191.html

このフェローシップは、昨年9月に開催された第2回日米豪印首脳会合において、これら4か国の教育及び人的交流に係る協力として発表され、今回その創設が正式に宣言されました。フェローシップは、日米豪印のSTEM分野(科学、技術、工学及び数学)の優れた人材各国25名(計100名)に対し、米国で修士・博士号を取得するための奨学金を授与するもので、シュミット財団が運営・管理を行います。

クアッド、安保色薄め共同声明へ 奨学金創設で合意:日本経済新聞
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUA19C8Z0Z10C22A5000000/

クアッド4か国の大学院生対象の奨学金制度 官邸で創設記念行事 | NHK | 教育
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20220524/k10013641691000.html

PhD students face cash crisis with wages that don’t cover living costs
https://www.nature.com/articles/d41586-022-01392-w

Ph.D. students demand wage increases amid rising cost of living
https://www.science.org/content/article/ph-d-students-demand-wage-increases-amid-rising-cost-living

 アメリカの大学院生が経済的苦境に。

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