科学・政策と社会ニュースクリップ

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風向き変わる?頭脳流出をめぐる言説

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★発行部数 2,513部(9月22日現在)
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     ◆◇◆  Science Communication News ◆◇◆
         No.939 2021年9月22日号 巻頭言
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【巻頭言】
★風向き変わる?頭脳流出をめぐる言説
2021年9月15日〜9月22日
カセイケン代表 榎木英介

 風向きが変わっているように感じています。

「千人計画」だけを敵視する、読売新聞の世界観
https://www.newsweekjapan.jp/ishido/2021/09/post-19.php

 石戸諭さんの書評。読売新聞の取材班の本の問題点を指摘する論考です。必読。

 最近、中国に人材が流出する原因について、日本の研究の問題が背景にあるという論考が増えてきているように思います。

日本の頭脳流出問題「研究者の移籍を規制せよ」が的外れな理由
https://news.yahoo.co.jp/articles/226247f2582d1ac4f992c0fe49eb89e066af4c8d

世界大学ランキング、200位以内に「東大京大だけ」の惨状 中国から10校、韓国から6校がランクイン
https://news.yahoo.co.jp/articles/ec65150d48d03d656762169ec65bc6c365c7ffef

 ようやく…。こうした論考が広まる事は非常に良いことだと思います。

 先週お伝えした通り、在米中国人研究者が、中国の大学との関係を隠していたとして逮捕起訴されましたが、先ほど無罪判決を言い渡されました。

U.S. judge acquits researcher charged with hiding China ties
https://www.science.org/doi/abs/10.1126/science.acx9104

 これはアメリカの「チャイナイニシアチブ」に基づくものですが、アメリカ国内でも行き過ぎだという声が出てきています。

米政府、大学での中国スパイ探し停止を=スタンフォード大教職員
https://jp.reuters.com/article/usa-china-stanford-idJPKBN2G922U

 アメリカの動向は、中国に渡った日本人研究者叩きに大きな影響与えていましたが、そのアメリカが動き始めているわけですから、敵対的な論調は見直すべきだと思います。

コロナで制限、留学生入国が9割減…原則認めないのはG7で日本だけ
https://news.yahoo.co.jp/articles/b128d1c64a28d7346c95eb492fe0a9c647c4fae0

 上記記事は読売新聞の記事です。

 読売新聞の本によれば、留学生の中にはスパイがいるので、対応を強化すべきと主張しています。留学生の入国が制限されている現在は、スパイ対策としては悪いことではないはずです。

 それでも読売新聞は、外国の人材の活用ができなくなると指摘しており、それは非常に真っ当なことではありますが、千人計画叩き記事、本の方向とは違います。

 どう考えればよいのでしょう。私は、読売新聞の中にも、良識派の人たちがいると思っています。

「論文ランク1位は中国」ノーベル賞常連の日本が貧乏研究者ばかりになってしまった根本原因
https://president.jp/articles/-/50046

 上記記事を書かれた、ジャーナリストの知野さんは元読売新聞の記者です。

分断が進む米国に見る科学リテラシー普及への道筋〜コロナ禍で科学をどう活かすか?~三井誠(前篇)
https://smartnews-smri.com/literacy/literacy-638/

分断が進む米国に見る科学リテラシー普及への道筋〜コロナ禍で科学をどう活かすか?~三井誠(後篇)
https://smartnews-smri.com/literacy/literacy-643/

 上記記事を書かれた三井記者は、読売新聞に所属しており、科学ジャーナリスト賞を受賞されたこともある優れた科学ジャーナリストです。科学技術の問題点をよくわかっている良識的な記者の皆さんの奮闘を心より期待しています。

先端素材、日本が攻勢
住友鉱山、EV半導体用参入 技術競争力なお優位
https://www.nikkei.com/article/DGKKZO75913450R20C21A9MM8000/

 私は侮日派、無知などと批判されているわけですが、日本が全てダメなどと言っているわけではありません。良い部分悪い部分を見極めて、効果的な対策を立てることが重要だと言っているのですが…。

 千人計画参加の日本人基礎研究者を叩く事は藁人形叩き。スケープゴートでしかありません。早くこうした無意味な状況から脱却してほしいと思います。

「空白」を共有する若者たち 斎藤環さんが案ずるコロナ世代の将来
https://www.asahi.com/articles/ASP9F5VLNP97UPQJ011.html

 二度と戻らない大切な時間をコロナで奪われてしまった若者達。将来にわたってケアしていく必要があるように思います。

‘Zero COVID’ countries seek exit strategies
https://www.science.org/doi/abs/10.1126/science.acx9099

 中国や台湾といったゼロコロナの国。日本もゼロコロナを目指すべきと言う声がありますが、長期的に持続可能か議論されています。

感染力の高いデルタ型の拡大、国境封鎖による経済的負担、封鎖疲れ、ワクチンの入手可能性の増加などにより、方程式は変わりつつあります。

SARS-like viruses may jump from animals to people hundreds of thousands of times a year
https://www.science.org/content/article/sars-viruses-may-jump-animals-people-hundreds-thousands-times-year

 私も本に書きましたが、野生生物と人間の接触が高まるにつれて、これからも「スピルオーバー」は続いていく可能性が高いです。

The fight to manufacture COVID vaccines in lower-income countries
https://www.nature.com/articles/d41586-021-02383-z

 国の所得によってワクチン接種率が大きく異なる現状。ワクチンの3回目接種が取りざたされている中、非常に重要な視点です。

総合科学技術・イノベーション会議 生命倫理専門調査会
『「ヒト胚の取扱いに関する基本的考え方」見直し等に係る報告(案)(第三次)』に対する意見の募集(パブリックコメント)について
https://www8.cao.go.jp/cstp/stmain/20210922.html

 10月21日まで。

科学技術政策担当大臣等政務三役と総合科学技術・イノベーション会議有識者議員との会合(令和3年度) > 議事次第 令和3年9月16日
https://www8.cao.go.jp/cstp/gaiyo/yusikisha/20210916.html

1.ムーンショット型研究開発制度の新たな目標案について

30年後見据えた国の研究事業 災害減らす技術の実現など新目標 https://www3.nhk.or.jp/news/html/20210916/k10013262391000.html

社会変革目指す「ムーンショット研究開発」、風水害など新たに2目標…政府の有識者会議
https://www.yomiuri.co.jp/science/20210916-OYT1T50196/

防衛省、芸能人らインフルエンサー100人に接触計画 予算増狙い
https://www.asahi.com/articles/ASP9J5FV0P9HUTFK01J.html

 省庁が予算獲得のためにプロパガンダを行うと言うことに、若干の違和感を感じます。

次世代半導体に「中核拠点」…研究費総額100億円規模を目標、10年で集中的に投入
https://www.yomiuri.co.jp/science/20210917-OYT1T50122/

令和4年度 概算要求書
https://www.mext.go.jp/a_menu/yosan/r01/1420955_00002.htm

特定分野に特異な才能のある児童生徒に対する学校における指導・支援の在り方等に関する有識者会議(第3回) 配付資料
https://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chousa/shotou/169/siryo/mext_00002.html

科学技術に関する国民意識調査 -新型コロナウイルス感染症の ワクチン接種について-[DISCUSSION PAPER No.201]公表について
https://www.nistep.go.jp/archives/48458

対話を重視する「サイエンスアゴラ2021」をオンライン開催
科学技術イノベーションに対する社会からの要請を受け止める場に
https://www.jst.go.jp/pr/info/info1522/index.html

羽ばたく女性研究者賞(マリア・スクウォドフスカ=キュリー賞)の創設について
https://www.jst.go.jp/pr/info/info1521/index.html

キュリー博士の名を冠した女性研究者賞創設 JSTポーランド大使館
https://scienceportal.jst.go.jp/newsflash/20210921_n01/

キュリー博士に続け、女性研究者の賞を創設 ポーランド大使館も協力 https://www.asahi.com/articles/ASP9K5JSZP9KULBJ00M.html

東京港青海ふ頭におけるヒアリの確認について
https://www.env.go.jp/press/110021.html

研究学園都市つくばが掲げる「スーパーサイエンスシティ」とは?
市民が先端技術研究の成果を実感できるスマートシティ
https://jbpress.ismedia.jp/articles/-/66916

東北大が「学生評議員制度」 第1期に12人、国立大で初
https://news.yahoo.co.jp/articles/6de182fcda91d364d255ca82d1ae5caf95527f97

東北7大学が若手研究者支援、天文や脳科学でも交流
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOCD0913W0Z00C21A9000000/

来年度 富山大学が大改編/富山
https://news.yahoo.co.jp/articles/00dcba522160d5becae3e83aea0f1efa21ad2b1c

富山大、大学院・学部再編へ データ・SDGsに重点
企業にも選ばれる大学に
https://www.nikkei.com/article/DGKKZO75873740X10C21A9LB0000/

富山大、学部連携推進へ 定員変更や大学院再編 富山
https://www.asahi.com/articles/ASP9K71V4P9JPISC00D.html

日本学術会議と政府の科学技術行政-会員任命拒否問題の政治的文脈(広渡清吾)
特別寄稿/日本学術会議の会員任命拒否問題をめぐって
https://www.web-nippyo.jp/24505/

『月刊 経団連』 2021年9月号 特集
「ポストコロナの社会における科学技術イノベーションの役割」
http://www.keidanren.or.jp/journal/monthly/2021/09/

A COVID-19 publishing revolution? Not yet
https://www.sciencemag.org/doi/abs/10.1126/science.acx9043

Reproducibility: expect less of the scientific paper
https://www.nature.com/articles/d41586-021-02486-7

Australian funder backflips on controversial preprint ban
https://www.nature.com/articles/d41586-021-02533-3

 プレプリントを業績に含めることを禁止する規則が、研究者たちの反対にあい中止に。これは数年後日本でも問題になる可能性が高いですね。

【独自】横浜市・山中竹春市長の経歴詐称を示す"決定的証拠"を入手
https://sakisiru.jp/10265

 ビジティングフェローだったのにリサーチフェローと称していたと言う問題。やはり公職にある人は正直でいて欲しいなと思います。

順天堂大も受験料返還義務 不正入試「差別的」 東京地裁
https://news.yahoo.co.jp/articles/33a9b804640f6c17fb9779c3f5df2c6983469d78

論文指導をラブホで…美術評論界トップの上智大教授が肉体関係をもった教え子から訴えられていた
https://news.yahoo.co.jp/articles/ed79f841129ef0dd4c4588751ad7ada66af0e1c1

 論文指導に肉体関係を要求すると言う許しがたいハラスメント。美術の世界にこうしたいびつな関係が広がっていると言うツイートなどを見かけます。一般的なアカデミックな問題とできるかはわかりませんが、しっかりと対策をして被害者を減らすことを考えていかなければなりません。

大学が格差を増幅、悪影響は勝者にも マイケル・サンデル教授の警告
https://www.asahi.com/articles/ASP924517P82ULFA021.html

火論:「死んでいい人なんて」=大治朋子 -
https://mainichi.jp/articles/20210921/ddm/002/070/028000c

 最近公正世界仮説が話題になっています。努力すればするほど報われると言う世界観。もちろんこれは悪いことでは無いのですが、反転させると、成功していないのは努力が足りない、と言う自己責任論になってしまいます。

 成功や失敗など運といった要素にも大きく左右されるのですから、成功しないのは自己責任だ、だから救済などいらない、という論は乱暴だと思います。

 残念ながらアカデミアで成功した人には、公正世界仮説を強烈に持っている人が多いようにも感じ、これが博士号取得者のキャリアパス多様化などに大きな影を投げようとしているように思います。

こうしてポスドクは職を失う
https://yoshiki-sato.blogspot.com/2021/09/blog-post_20.html

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“Science Communication News”
[SciCom News] No.939 2021年9月22日号 巻頭言
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