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国際卓越研究大学方針、デュアルユースの混乱

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     ◆◇◆  Science Communication News ◆◇◆
         No.995 2022年11月2日号 巻頭言
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【巻頭言】
★国際卓越研究大学方針、デュアルユースの混乱

2022年10月26日〜11月1日
カセイケン代表 榎木英介

 メルマガ本誌発行後ですが、10兆円ファンドの国際卓越研究大学の認定スケジュール案、基準が決まりました。

科学技術・学術審議会 大学研究力強化委員会(第9回) 配布資料:文部科学省
https://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/gijyutu/gijyutu32/siryo/000017833_00008.html

【資料1】国際卓越研究大学の選定・支援開始に向けて (PDF:3.5MB)
https://www.mext.go.jp/content/20221102-mxt_gakkikan_000025552_2.pdf

【資料2】パブリックコメント・意見募集における主な意見の概要 (PDF:344KB)
https://www.mext.go.jp/content/20221102-mxt_gakkikan_000025552_3.pdf

 選択と集中批判もあります。文科省の答えは以下。

国際卓越研究大学は、大学ファンドによる支援を通 じて自らの機能拡張を図るにとどまらず、知的資産の形成、社会 的な価値創造やイノベーション創出の中核拠点として、国際的な 頭脳循環のハブとなるとともに、全国の多様な研究大学等との連 携を強化することで人材の流動性の向上や共同研究の促進等を 図るなど、我が国の学術研究ネットワーク全体を牽引していくこ とが求められるとしているところです。

 以下のトップ10%論文を基準にすることに対する文科省の答えは…。

単に指標を満たすために、研究の多様性を損なう取組や総論文 数を抑制することは適切でないと認識しており、法第4条第3項 第3号の規定に基づき、大学の研究体制が新たな学問分野や融合 領域に迅速に対応しているかを確認する際にも留意したいと考 えています。なお、研究計量に関するライデン声明等を踏まえ、 定量的指標は様々な定性的情報と併せて活用するとともに、分析 の中立性・透明性・検証機会の確保に努めることも、基本方針に 明記しているところです。

【資料3】国際卓越研究大学の研究及び研究成果の活用のための体制の強化の推進に関する基本的な方針(案) (PDF:420KB)
https://www.mext.go.jp/content/20221102-mxt_gakkikan_000025552_4.pdf

・ Top10%論文数が 1,000 本程度(直近の5年間総計)以上であり、かつ、総論 文数に占める Top10%論文数の割合が 10%程度以上となっていること。
・ 研究者一人当たりの Top10%論文数において、優れた実績(0.6 本程度以 上)を有すること。

【資料4】国際卓越研究大学研究等体制強化助成の実施に関する方針(案) (PDF:362KB)
https://www.mext.go.jp/content/20221102-mxt_gakkikan_000025552_5.pdf

【資料5】大学研究力の強化に向けて (PDF:5.7MB)
https://www.mext.go.jp/content/20221102-mxt_gakkikan_000025552_6-1.pdf

【資料6】高橋委員発表資料 (PDF:8.1MB)
https://www.mext.go.jp/content/20221102-mxt_gakkikan_000025552_7.pdf

 URAについての資料。

 報道は以下。

「国際卓越研究大学有識者会合で審査し来年秋以降に選定へ
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20221102/k10013878761000.html

10兆円規模大学ファンド認定基準を了承 質の高い論文重視 | 毎日新聞
https://mainichi.jp/articles/20221102/k00/00m/040/046000c

10兆円規模の「大学ファンド」で支援 「国際卓越研究大学」認定スケジュール案(日テレNEWS) - Yahoo!ニュース
https://news.yahoo.co.jp/articles/d97f5b6fda79431a0dc841c153493cc3833e2d1d

10兆円ファンドで支援の「卓越大」、来秋に決定…12月から公募開始(読売新聞オンライン) - Yahoo!ニュース
https://news.yahoo.co.jp/articles/6d566a73049af8e93b63fd3f76c36b208e2dbd79

 日本の大学を変えることになる国際卓越研究大学。いよいよ動き出します。

社説:科学技術と安保 「産官学」の連携へ知恵を絞れ : 読売新聞オンライン
https://www.yomiuri.co.jp/editorial/20221027-OYT1T50253

軍民両用技術で歩み寄り 学術会議が見解、政府は評価
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUA145U50U2A011C2000000/

 国際卓越研究大学パブリックコメントにも経済安全保障のことが書かれていました。

国際卓越研究大学の認定に当たっては、法第4条第3項第3号 の規定に基づき、大学の研究体制が新たな学問分野や融合領域に迅速に対応しているかを確認することとしており、その際、研究インテグリティの確保体制等について、国際競争力の観点から適 切に整備されていることを要件としています。国際卓越研究大学においては、世界最高水準の研究大学にふさわしい研究インテグリティの確保に取り組むことが期待されます。

 デュアルユース研究は、軍民両用性と用途多義性の2種類の意味があり、どうもそこらあたり混同されているようです。メディアも混同していますし、研究者も混同している人が多いようです。

 なんでもデュアルユースは用途多義性。日本版DARPA等の安全保障研究は軍民両用性。中国にいる日本人基礎科学研究者が叩かれるのは、用途多義性の意味でのデュアルユース研究を軍民両用性と捉えることによると思います。

 私自身このあたりまだ明確に理解しているわけではありませんが、切り分けて丁寧に議論していくことが必要です。

博士たちは今 「科学技術立国」の現実 : 読売新聞オンライン
https://www.yomiuri.co.jp/choken/kijironko/ckscience/20221025-OYT8T50097/

【インタビュー】数学は世界の混沌を救えるか 中島啓・国際数学連合(IMU)次期総裁
https://www.yomiuri.co.jp/choken/kijironko/cknews/20221027-OYT8T50124/

 読売クオータリーの記事。中国に関する言及もあります。

最近では中国が優秀な研究者を世界中から集め、研究拠点を中国に移した研究者に「日本のことを考えずに中国に協力している」という批判が出ていると聞きます。しかし、これは筋が違うと思います。特に数学の場合は、研究成果は自動的に公開され、それをもとにしたオープンな議論がなければ研究が前に進みませんから、中国に行っても、中国だけのために研究することはありません。

中国に拠点を移すのは、中国が優秀な研究にお金を使っているからで、日本から研究者が流出しているのは、若い研究者が研究では食べていけなくなっているからです。近年の中国の研究レベルの上昇には目を見張るものがあり、数学の分野では、すでに日本はアジアのトップを走っているとは言えなくなっています。このままでは日本の研究者のレベルは落ちる一方です。これは日本の数学界にとって、深刻な問題だと思います。

Dear Colleague Letter: Reproducibility and Replicability in Science (nsf23018) | NSF - National Science Foundation
https://www.nsf.gov/pubs/2023/nsf23018/nsf23018.jsp

公的研究費等の不適切な会計処理について | 大学からのお知らせ
https://www.nagoya-u.ac.jp/info/20221031_jimu.html

名古屋大教授、出張旅費の架空請求など292件で1131万円を不正受給 https://www.yomiuri.co.jp/national/20221031-OYT1T50146/

名古屋大教授が1100万円不正受給 出張旅費など架空請求
https://www.chunichi.co.jp/article/573924

山形大学「研究費不正使用」と「壮絶パワハラ」 | ZAITEN(ザイテン)「過激にして愛嬌あり」の経済情報マガジン
https://www.zaiten.co.jp/article/2022/10/post-603.html

 研究費不正使用関係の問題。公的研究費の不正使用は、どんな理由があろうと擁護できるものではありません。

 一方山形大学の事例は、自費でベンチャーを作らせるというもので、国際卓越研究大学がこのようなことにならないことを願います。

スパコン一時止めて電気代節約 電気代高騰に資材不足、大学を直撃
https://www.asahi.com/articles/ASQBR71VBQ9JUSPT00C.html

名大・岐大の電気代、2倍増 燃料高直撃、研究費しわ寄せも
https://www.chunichi.co.jp/article/574075

 電気代が大学に大きな影響を与えています。

‘Not even enough money for food’: graduate students face cash crunch
https://www.nature.com/articles/d41586-022-03478-x

 世界各地で大学院生が追い込まれています。

US Supreme Court poised to ban affirmative action in university admissions
https://www.nature.com/articles/d41586-022-03470-5

Affirmative action appears in jeopardy after US supreme court hearing
https://www.theguardian.com/law/2022/oct/31/us-supreme-court-affirmative-action-universities

Why Scientists Must Stand for Affirmative Action and against Scientific Racism
https://www.scientificamerican.com/article/why-scientists-must-stand-for-affirmative-action-and-against-scientific-racism/

 アファーマティブアクションが後退する可能性が取り沙汰されています。

What Xi Jinping’s third term means for science
https://www.nature.com/articles/d41586-022-03414-z

Brazil election: Scientists cheer Lula victory over Bolsonaro
https://www.nature.com/articles/d41586-022-03523-9

Brazil election: Lula win hailed as victory for the Amazon
https://www.newscientist.com/article/2344713-brazil-election-lula-win-hailed-as-victory-for-the-amazon/

There’s only one choice in Brazil’s election - for the country and the world
https://www.nature.com/articles/d41586-022-03388-y

 指導者が科学技術研究に与える影響は大きいものがあります。

大学教育費、日本は5割超を家計負担 OECD報告「奨学金見直しを」
https://www.asahi.com/articles/DA3S15460082.html

Younger Scientists Are More Innovative, Study Finds
https://www.the-scientist.com/news-opinion/younger-scientists-are-more-innovative-study-finds-70700

 若い時期に才能を発揮してもらわないといけませんが、歳を取っても人生は続きます。どうすれば…。

寄附ポータルサイト文部科学省
https://www.mext.go.jp/donation_portal-site.html

文科省が国立の研究機関や博物館などに寄付を募る「寄附ポータルサイト」開設 | TBS NEWS DIG
https://newsdig.tbs.co.jp/articles/-/192794

 研究者個人にも寄付できるようです。

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“Science Communication News”
[SciCom News] No.995 2022年11月2日号 巻頭言
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