科学・政策と社会ニュースクリップ

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リニアモデルと「千人計画」バッシング

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★発行部数 2,566部(10月27日現在)
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     ◆◇◆  Science Communication News ◆◇◆
         No.893 2020年10月27日号 巻頭言
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【巻頭言】
★リニアモデルと「千人計画」バッシング
2020年10月20日~2020年10月27日
カセイケン代表 榎木英介

 先週Yahoo!ニュース個人に千人計画のことを書きましたが、いまだ誤解によるバッシングが続いています。

★「売国奴」「スパイ」千人計画でバッシングに。日本人研究者たちが鳴らす警鐘とは?
https://www.buzzfeed.com/jp/kotahatachi/thousand-talents-plan-4

 中国への過剰な警戒感を持った人たちは、たとえ基礎研究であっても中国に関わると研究成果を抜き取られると思っており、「売国奴」となってしまいます。

 もちろん一部だと思いますが、ほとんど戦争状態にある国への態度です。

 その一部が過剰な行動をしていることが耳に入ってきました。詳しくは述べられませんが、非常に腹立たしいです。

★中国「千人計画」に参加する日本人研究者 “働けるなら日本で…”の本音
https://news.yahoo.co.jp/articles/8447ed4e99efee308bb4cee56bf06dd0c26116b3

 週刊新潮は千人計画スパイ説は変わらないような感じですが、次第に日本の研究環境の問題にフォーカスしてきました。

 新疆ウイグル自治区チベット、香港などへの締め付け、一帯一路によるアフリカ等の国の債務漬け問題、軍拡など、中国に警戒する声が高まっているのは理解します。

 ただ、もはや研究の中心地の一つになった中国を無視して研究はできないし、かつて日本に向けられた「基礎科学ただ乗り論」を考えると、中国が自国で金を出して他国の研究者を受け入れ基礎研究をしているのなら、それはある種科学コミュニティが望むことなのではないかと思います

 基礎科学とて軍事研究につながる、というのは、いわゆるリニアモデル的な発想かもしれません。基礎科学→応用科学→軍事、といったような単線的発想です。

 現在リニアモデルは古いとされています。

線形モデルの終焉について
http://www.21ppi.org/pdf/thesis/011212_05.pdf

1.0.2 イノベーション・プロセスのモデル
https://scirex-core.grips.ac.jp/1/1.0.2/main.pdf

 だとすると、天文学であるとか分子生物学であるといった分野まで軍事研究だ、というのは古い感覚なわけです。

 しかし、いつかは応用され役立ちます、という言説を、予算獲得でも、基礎科学の重要性をアピールする上でも強調しすぎたあまり、人々があらゆる研究が軍事につながる、といったリニアモデル的考えを持ってしまったとも言えると思います。

 これは大いなるジレンマと言えます。

 役立つことを強調しないと予算はこない、しかし、役立つことを強調しすぎたために、基礎科学を中国で行うことが売国奴だ、ということになってしまう…。

 このジレンマを解消するためにはどうすれば良いか…。難題です。

菅総理は第203回国会における菅内閣総理大臣所信表明演説を行いました
https://www.kantei.go.jp/jp/99_suga/statement/2020/1026shoshinhyomei.html

 日本学術会議のことは触れられていませんが、「二〇五〇年までに、温室効果ガスの排出を全体としてゼロにする」といった年限を区切った具体的目標に言及しているのが目に引きます。ある種評価がしやすいとも言えます。

 アメリカでは大統領選とともに、連邦議会選挙が来週11月3日に迫ってきています。

★COVID and the US election: will the rise of mail-in voting affect the result?
https://www.nature.com/articles/d41586-020-02979-x

Scientists strongly back Joe Biden for US president in Nature poll
https://www.nature.com/articles/d41586-020-02963-5

【記者ブログ】科学者も参戦、「サイエンス票」の行方は
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO65423850U0A021C2000000/

As U.S. election nears, researchers are following the trail of fake news
https://www.sciencemag.org/news/2020/10/us-election-nears-researchers-are-following-trail-fake-news

 科学票がバイデン氏に流れることが予想される中、科学にバックグラウンドを持つ候補の立候補もあり、その動向が注目されています。

★Candidates from STEM and Medical Fields in the National Elections
https://www.the-scientist.com/news-opinion/candidates-from-stem-and-medical-fields-in-the-national-elections-68038

 先週も書きましたが、こうした「サイエンティスト候補」のようなものは日本にはまだまだ少ないわけで、研究を中断して議会選挙に出るというアメリカの研究者の意識や動向は、私たちにとっても興味深いものです。

新型コロナウイルス感染症対策分科会(第12回)
https://www.cas.go.jp/jp/seisaku/ful/bunkakai/corona12.pdf

分科会から政府への提言
感染リスクが高まる「5つの場面」と「感染リスクを下げながら会食を楽しむ工夫」
令和2年10月23日(金)
https://www.cas.go.jp/jp/seisaku/ful/bunkakai/teigen_12_1.pdf

年末年始に関する分科会から政府への提言
https://www.cas.go.jp/jp/seisaku/ful/bunkakai/teigen_12_2.pdf

クラスターの分析に関するヒアリング調査(都道府県・保健所)等の 結果と今後に向けた検討(概要)
https://www.cas.go.jp/jp/seisaku/ful/bunkakai/kongo_kento_12_1.pdf

クラスターの分析に関するヒアリング調査等の結果と今後に向けた検討
https://www.cas.go.jp/jp/seisaku/ful/bunkakai/kongo_kento_12_2.pdf

 新型コロナウイルス(いつまで新型というのでしょうか)ですが、各地でクラスターが発生しており、感染者数は激増はしないものの燻り続けています。

 欧米ほか各国よりは少ない感染者数という面があると同時に、アジアの中では多いという面をどう評価するのか。

 映画「鬼滅の刃」のヒットは、日本の感染状況の低さを示したものでもありますが、この状態ではクラスターは出続ける可能性が高いわけです。

新型コロナウイルス感染症のワクチンの詳細についてを掲載しました。
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000121431_00179.html

新型コロナウイルス感染症のワクチンについて
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/vaccine_00184.html

医療従事者への接種、「必要な情報順次示す」-コロナワクチン実施要領、厚労省健康課長が通知
https://www.cbnews.jp/news/entry/20201026171440

 ワクチン開発は各国で続いていますが、前のめりな姿勢や、ワクチンさえあればなんとかなるという意識には注意が必要です。

★WHOとその関係協力機関が実施している臨床試験の中間結果(レムデシビル)について
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/newpage_00039.html

レムデシビルで厚労省が見解、米は22日正式承認と紹介-WHO試験は詳細な評価・検証を待つ
https://www.cbnews.jp/news/entry/20201023201732

 レムデシビルに関しては期待されたほどの効果がないとのことです。

★令和2年度の妊娠届出数の状況について
https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_14095.html

 今年度の出生数は大幅に減ることが予想されます。「丙午」どころではありません。

★Why big pharma has abandoned antibiotics
https://www.nature.com/articles/d41586-020-02884-3

 Natureは抗生薬に関する特集。

科研費パンフレット2020
https://www.jsps.go.jp/j-grantsinaid/24_pamph/index.html

★「今後の若年者雇用に関する研究会報告書」を公表します
https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_14309.html

「コロナ禍などを契機に新たな就職氷河期世代を生み出さぬよう、若年者雇用の安定化に向けた支援」などについて触れられています。

★「令和2年版厚生労働白書」を公表します
https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_14223.html

★「農林水産省×環境省」連携合意について
https://www.maff.go.jp/j/press/kanbo/kankyo/201023.html

「コロナ後の経済社会の再設計(Redesign)に向けた 「農林水産省×環境省」の連携強化に関する合意」とのこと。

★名古屋港におけるヒアリの確認について
https://www.env.go.jp/press/108582.html

 働きアリ70匹とのこと。警戒は怠ってはいけません。

★ 宇宙飛行士募集に関する発表について
https://www.jaxa.jp/press/2020/10/20201023-1_j.html

日本人宇宙飛行士を13年ぶり募集 来秋、月探査も視野
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO65356710T21C20A0MM0000/

 アルテミス計画に関わるとのこと。

★Springer Nature社、MPDLとNatureジャーナルに関するTAを締結
http://jipsti.jst.go.jp/johokanri/sti_updates/?id=12336

Nature journals announce first open-access agreement
https://www.nature.com/articles/d41586-020-02959-1

Nature family of journals inks first open-access deal with an institution
https://www.sciencemag.org/news/2020/10/nature-family-journals-inks-first-open-access-deal-institution

Nature-Branded Journals Announce First Open-Access Deal
https://www.the-scientist.com/news-opinion/nature-branded-journals-announce-first-open-access-deal-68071

 先週紹介したSpringer Natureとマックスプランクデジタル図書館との転換契約または移行契約。

 SNSの反応を見ると、OA化する1論文当たりのコスト9,500ユーロというのがいくらなんでも高すぎるという声が聞かれました。

筑波大学の学長選考を考える会
https://www.2020tkbgakucho.net/

筑波大、永田学長が再任 任期上限撤廃、最長で11年に 教職員有志「認めない」
https://news.yahoo.co.jp/articles/cd797b50dd8accaf2ec5d78e8978a8e21a885f5d

筑波大学長に永田氏再任 任期制限撤廃で学内紛糾の末
https://www.asahi.com/articles/ASNBN6V6XNBNUJHB00T.html

筑波大学長に永田氏再任 教職員ら「不透明」と批判
https://www.chunichi.co.jp/article/140447

再任の筑波大学長「日本は任期短い」 学内くすぶる反発
https://www.asahi.com/articles/ASNBP729NNBPUJHB005.html

筑波大学長選の正当性訴え 批判に「いちゃもん」とも
https://www.chunichi.co.jp/article/140951

 東大の総長選挙とともに混乱している筑波大。

★Timeline: When Bad Research Changes Public Health Strategy
https://www.the-scientist.com/infographics/timeline-when-bad-research-changes-public-health-strategy-67971

★Physician Behind Surgisphere Scandal Switches Medical Licenses
https://www.the-scientist.com/news-opinion/physician-behind-surgisphere-scandal-switches-medical-licenses-68085

 The Scientist誌が熱心にサージスフィア社の不正問題を追っています。

★Set ambitious goals for biodiversity and sustainability
https://science.sciencemag.org/content/370/6515/411.summary

★AAAS 2021 Annual Meeting Program
https://science.sciencemag.org/content/370/6515/479

 来年2月の年次総会のプログラムが公開。完全オンライン化した年次総会がどうなるか、注目です。

Brexit’s back: the five issues that will shape science
https://www.nature.com/articles/d41586-020-02920-2

 移行期間を経て、来年1月から完全にEUから離れるイギリス。研究への影響が懸念されています。

★Strict biodiversity laws prevent Indian scientists from sharing new microbes with the world
https://www.sciencemag.org/news/2020/10/strict-biodiversity-laws-prevent-indian-scientists-sharing-new-microbes-world

★Mexican Senate Votes to Cut Research Funding, Disaster Relief
https://www.the-scientist.com/news-opinion/mexican-senate-votes-to-cut-research-funding-disaster-relief-68079

 メキシコ。大統領が科学者を閉じた環境で浮世離れしていると批判。今の日本の日本学術会議に向けられる声と似ています…。

★Too intelligent for the life sciences in Brazil: how two female researchers fought back
https://www.nature.com/articles/d41586-020-02978-y

★Troubles escalate at Ecuador’s dream research university
https://www.sciencemag.org/news/2020/10/troubles-escalate-ecuadors-dream-research-university

 財政問題に揺れる「夢の大学」。

★Wheat Blast Arrives in Zambia, First Time in Africa
https://www.the-scientist.com/news-opinion/wheat-blast-arrives-in-zambia-first-time-in-africa-68055

★なぜ、海洋微生物学者が人材ベンチャーを作ったのか
https://prtimes.jp/story/detail/zxgZgeTJMeB

★How to get more women and people of colour into graduate school - and keep them there
https://www.nature.com/articles/d41586-020-02940-y

★How LGBT+ scientists would like to be included and welcomed in STEM workplaces
https://www.nature.com/articles/d41586-020-02949-3

★The unsung heroes of the Nobel-winning hepatitis C discovery
https://www.nature.com/articles/d41586-020-02932-y

 ノーベル賞に名を連ねなかった科学者の物語。三人枠はいつもこうした物語を生みます。

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“Science Communication News”
[SciCom News] No.893 2020年10月27日号 巻頭言
【発行者】一般社団法人科学・政策と社会研究室(担当 榎木英介)
【編集者】Science Communication News編集部
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