科学・政策と社会ニュースクリップ

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平時と非常時のはざまで メルマガ898号記事抜粋

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★発行部数 2,564部(12月1日現在)
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     ◆◇◆  Science Communication News ◆◇◆
         No.898 2020年12月1日号 巻頭言
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【巻頭言】
★平時と非常時の間で
2020年11月24日~2020年12月1日
カセイケン代表 榎木英介

 新型コロナウイルスの感染は拡大を続け、知人が勤務する病院でもクラスターが発生するなど、だいぶ近づいてきた感じはあります。

 私は在野で、フリーランスの病理医として働く傍ら、このメールマガジンを作っています。さまざまな病院に行って診断をしており、新型コロナウイルスの診断、治療の前線にいるわけではありません。

 いわば後方にいるわけですが、それでも前線の様子は聞こえてきます。

 先週から感じていることは、診断する標本の件数がどうも減っているのではないかということです。

 もちろんあくまで体感であり、単なる感想でしかありません。変動の範疇かもしれません。

 しかし、前回の緊急事態宣言のときのように、患者の受診控え、医療資源が新型コロナウイルス感染症に割かれ、通常の医療が出来なくなるといった事態により、標本数が減っているとしたら…。

 日本は中小規模病院、診療所が多く、多くが民間の機関です。医療資源が分散しています。それゆえ、経営を維持するために病院間の患者の奪い合いといったようなことがあり、人手不足と過剰医療が同時変更で起こっています。

 「ブルシットジョブ」として、患者を作り出して雇用を維持していたのか。流石にそれは言い過ぎかもしれませんが、今回のパンデミックではそれが裏目に出ています。

 医療資源を集約化し、適切に振り分ければいいのは分かります。患者が減っても過剰な部分が減ったにとどめることもできます。

 しかし、民間病院が多いこと、医療に関わる者も生活者として地域に住んでおり、鉢植えのを移し替えるように簡単に地域を移動できないことなど、集約化は簡単ではありません。

 現在進行形の事態に理想を語る余裕はありませんが、平時には問題の解決の機運が起こらないというジレンマを感じます。

 非常時という点では日本学術会議も同じです。

★学術会議「国の機関から切り離し」 井上担当相の提案が波紋
https://mainichi.jp/articles/20201127/k00/00m/010/420000c

★井上科技相、学術会議の国からの切り離し検討を要請 梶田会長との会談で
https://mainichi.jp/articles/20201126/k00/00m/040/319000c

★「分離」提案に会員困惑 学術会議任命拒否、問題棚上げ
https://mainichi.jp/articles/20201128/ddm/002/010/117000c

 日本学術会議の任命拒否問題は解決する目処もなく、棚上げにされた挙句問題が異なる分離を担当大臣から提案されるに至っています。

 しかも諮問など正式な手続きではないようで、5年前の検討も無視されています。

 さすがに露骨です。

 確かに私はかねてより日本学術会議に批判的であり、不満を持っていますが、それはそれです。

#排除する政治~学術会議問題を考える:「まるでモラハラのよう」 矛盾だらけの「改革」論議 名大・隠岐さや香教授
https://mainichi.jp/articles/20201130/k00/00m/010/215000c

★第304回幹事会後に記者会見を開催しました。(令和2年11月26日)

記者会見資料(PDF形式:2,375KB)
http://www.scj.go.jp/ja/member/iinkai/kanji/pdf25/siryo304-kaikenshiryo.pdf

日本学術会議に関するQ&A(PDF形式:809KB)
http://www.scj.go.jp/ja/member/iinkai/kanji/pdf25/siryo304-QandA.pdf

 The International Science Council (ISC)からは懸念が示される事態です。

Statement on scientific freedom in Japan
https://council.science/current/news/statement-on-scientific-freedom-in-japan/

 一方で、平時には問題点をどうかしようという動きが一部にとどまっていたのも事実です。

 何か問題が起きないと変わらないというのは、この国で繰り返されてきたことではないか…。

 犠牲、被害が出ないと動かないというのは、災害対策なども含め至る所で見られます。犠牲、被害がないときに予防的に改善することは「過剰」と批判されてしまいます。

 平時に平和的に問題点を改善することができるのか…。非常時になるたびに複雑な気持ちが湧き起こります。

★学術会議任命拒否
「100%デマですやん」 ある日ウィキペディアに自分の名前が載ってしまったら…
https://mainichi.jp/articles/20201127/k00/00m/040/171000c

★消えた中国の海外人材スカウト「千人計画」 その実情は
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO66449020Z11C20A1FFE000/

 日本学術会議問題から広がった千人計画のデマ。やや下火になっていますが、いまだ誤解が漂っています。

★任命拒否問題、若手に懸念 井上科技相が意見交換
https://www.chunichi.co.jp/article/159449

 若手アカデミーの方々が大臣と会われたたのこと。

 若手アカデミーとは関係ないことですが、日本学術会議をめぐる問題では、「政治力」というものを感じざるを得ません。

 非常にあいまいな言葉ですが、利害をまとめ、タフな交渉をし、相手の懐に飛び込む。批判をあびるのを織り込み済みで交渉や「取引」をする。「権力」の扱いに慣れている。

 いわば清濁併せ呑むという感じです。こういう人は毀誉褒貶がある人になるでしょう。

 こういうのは個人的には好きではないのですが、ある程度こういう力がないと、けんもほろろに組織を追い出されたりするのは経験済みです。

 勝手なイメージですが、尾身茂氏には若干そういうところがあるように思います。

 日本学術会議に尾身氏のような人がいたらなあ、と思ったりもします。

★第17回資料
https://www.cas.go.jp/jp/seisaku/ful/bunkakai/corona17.pdf

現在の感染拡大を沈静化させるための分科会から政府への提言
https://www.cas.go.jp/jp/seisaku/ful/bunkakai/seifu_teigen_17.pdf

第15回新型コロナウイルス感染症対策アドバイザリーボード(11月24日)
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000121431_00093.html

診療科の全く異なる医師が診療せざる得ない事例も-厚労省、コロナアドバイザリーボードの評価公表
https://www.cbnews.jp/news/entry/20201125133421

★冬場における「換気の悪い密閉空間」を改善するための換気の方法を公表しました。
https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_15102.html

菅総理は第48回新型コロナウイルス感染症対策本部を開催しました
https://www.kantei.go.jp/jp/99_suga/actions/202011/27corona.html

新型コロナウイルス感染症対策本部(第 48 回)議事次第
https://www.kantei.go.jp/jp/singi/novel_coronavirus/th_siryou/sidai_r021127.pdf

菅総理新型コロナウイルス感染症対策等について会見を行いました
https://www.kantei.go.jp/jp/99_suga/statement/2020/1126kaiken.html

 以上政府関係の発表です。

 二度目の緊急事態宣言があるでしょうか。

★有力42大学「入試を変更」 コロナ拡大なら
https://www.nikkei.com/article/DGKKZO66776480Y0A121C2EA2000/

190大学、年度末に休退学増加を予想 コロナで生活苦
https://www.asahi.com/articles/ASNCX76YTNCSUSPT00K.html

 大学や学生が直面する影響は甚大です。

★How Iceland hammered COVID with science
https://www.nature.com/articles/d41586-020-03284-3

 規模の違う国との比較は難しいですが、各国の対応をイメージではなく詳細に検討することは重要です。

★科学技術政策担当大臣等政務三役と総合科学技術・イノベーション会議有識者議員との会合(令和2年度) > 議事次第 令和2年11月26日
https://www8.cao.go.jp/cstp/gaiyo/yusikisha/20201126.html

議題

1.基本計画について(戦略的な研究開発分野の推進)
2.研究資金配分と論文アウトプットの関係性に係る分析結果について(追加分析)

 e-CSTIの活用によって、データに基づく政策の議論ができるようになってきました。

研究資金配分と論文アウトプットの関係性 に係る分析結果について(追加分析)

  • e-CSTIの活用を通じた分析-

https://www8.cao.go.jp/cstp/gaiyo/yusikisha/20201126/siryo4.pdf

では

国立大学における1千万円当たりのアウトプット(総論文および Top1%論文)は、概ね「運営費交付金等」>「科研費」>「その他競争的資金」となっている一方、研究開発法人においては、 「科研費」の生産性が高く「運営費交付金等」や「その他競争的 資金」の生産性が低い。

1人当たり論文数については、若手研究者においては「任期なし」>「任期あり」となる傾向が見られる。一方、シニア研究 者においては逆に「任期なし」<「任期あり」となる傾向が見 られるが、近年シニアの「任期あり」研究者の論文輩出水準が 低下している。

と言ったことが明らかになっています。

★科学技術政策担当大臣等政務三役と総合科学技術・イノベーション会議有識者議員との会合(令和2年度) > 議事次第 令和2年11月19日
https://www8.cao.go.jp/cstp/gaiyo/yusikisha/20201119.html

議題

1.基本計画について(指標)
2.基本計画の評価・モニタリングについて

★総合科学技術・イノベーション会議 第10回 基本計画専門調査会
https://www8.cao.go.jp/cstp/tyousakai/kihon6/10kai/10kai.html

議題

(1)研究力の強化について
(2)次期科学技術・イノベーション基本計画の骨子(案)について

 先週の時点では報道だけでしたが、資料出ました。

★科学技術・学術政策研究所「『博士人材追跡調査』第3次報告書」報告書の公表について
https://www.mext.go.jp/b_menu/houdou/2020/1422310_00004.htm

『博士人材追跡調査』第3次報告書[NISTEP REPORT No.188]の公表について
https://www.nistep.go.jp/archives/46053

 コホート調査。こちらもデータに基づく議論が必要です。

★科学技術・学術政策研究所「サイエンスマップ2018」報告書の公表について
https://www.mext.go.jp/b_menu/houdou/2020/1422310_00003.htm

サイエンスマップ2018[NISTEP REPORT No.187]の公表について
https://www.nistep.go.jp/archives/46077

★コロナ禍を経た科学技術の未来(速報版)の公表について
https://www.nistep.go.jp/archives/46169

★令和2(2020)年度科研費等の審査に係る総括について
https://www.jsps.go.jp/j-grantsinaid/01_seido/03_shinsa/data/r02/R2_shinsa_soukatsu.pdf

 科研費のデータ。その科研費ですが、

科研費の内定通知2カ月前倒しへ 22年度から、活動後押し
https://www.chunichi.co.jp/article/161256

 とのこと。

★京大霊長研の不正支出 なぜ研究費不正はなくならないのか
https://news.yahoo.co.jp/articles/801977e02b9d35d94f2e48630e49fd141e4dc6bd

 榎木のコメントが出ている記事ですが、年度繰越がやりにくいなど、問題があるからと言って、研究費の不正使用が許されることはありませんので、ご注意ください。

★「生物多様性国家戦略2012-2020の実施状況の点検結果(案)」に対する意見募集(パブリックコメント)について
https://www.env.go.jp/press/108702.html

★学校法人慶應義塾と学校法人東京歯科大学
東京歯科大学の歯学部の慶應義塾大学への統合および法人の合併について協議開始
https://www.keio.ac.jp/ja/news/2020/11/26/27-76457/

「慶大歯学部」誕生へ コロナ、少子化が促す連携・統合
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO66778660Y0A121C2NN1000/

 これは大きなニュース。医学部が欲しいがいまだまだ事態が進まない早稲田大学との差が広がった感があります。

★ネイチャー論文を撤回 名大研究チームに不自然なデータ
https://www.asahi.com/articles/ASNCX3R86NCWOIPE012.html

名大チームのネイチャー論文撤回 実験データに誤り
https://www.chunichi.co.jp/article/160798

データに疑義、論文撤回 名古屋大、調査委設置
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO66753120X21C20A1CR8000/

 結果に影響なければ問題ないということはありません。

★Largest ever research integrity survey flounders as universities refuse to cooperate
https://www.sciencemag.org/news/2020/11/largest-ever-research-integrity-survey-flounders-universities-refuse-cooperate

 重要調査。

★2020 AAAS Fellows approved by the AAAS Council
https://science.sciencemag.org/content/370/6520/1048.full

 日本人も。

★ イラン核科学者暗殺か 外相「イスラエルが関与」
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO66770790Y0A121C2I00000/

Alarm as execution looms for scientist on death row in Iran
https://www.nature.com/articles/d41586-020-03396-w

 こういう非合法のことが行われるとは…。過去にもありましたが、軍事研究の現実です。

★German science is thriving, but diversity remains an issue
https://www.nature.com/articles/d41586-020-03317-x

German science on the world stage: visualized
https://www.nature.com/articles/d41586-020-03320-2

Asifa Akhtar is a sign of new things to come at the Max Planck Society
https://www.nature.com/articles/d41586-020-03321-1

Germany’s start-up scene is booming
https://www.nature.com/articles/d41586-020-03319-9

Clusters of Excellence: the new ‘brains trusts’ of German science
https://www.nature.com/articles/d41586-020-03322-0

How Germany retains one of the world’s strongest research reputations
https://www.nature.com/articles/d41586-020-03318-w

 ネイチャーはドイツ特集。

★コロナで変わる世界:<仕事編2>希望退職「35歳以上」 日本型雇用に見直しの波
https://mainichi.jp/articles/20201126/k00/00m/020/112000c

★《JST主催》女性研究者がもっと活躍できるように〜第2回輝く女性研究者賞(ジュン アシダ賞)表彰式&トークセッションより〜
https://scienceportal.jst.go.jp/explore/reports/20201127_e01/index.html

★Why seek a single mentor when you can have three - or more
https://www.nature.com/articles/d41586-020-03339-5

★Credit where credit is due
https://science.sciencemag.org/content/370/6520/1130.full

Don’t erase undergrad researchers and technicians from author lists
https://www.sciencemag.org/careers/2020/11/don-t-erase-undergrad-researchers-and-technicians-author-lists

 論文のクレジットは適切に。

シュプリンガー・ネイチャーがNature およびNature関連リサーチ誌においてゴールドオープンアクセス出版のオプションを2021年1月より提供開始
https://www.natureasia.com/ja-jp/info/press-releases/detail/8816

 先週にご案内いただきましたこのニュース。値段の高さに批判が出ています。

ネイチャー誌とその姉妹誌、120万円のOA出版オプションを設定
https://rcos.nii.ac.jp/miho/2020/11/20201128/

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“Science Communication News”
[SciCom News] No.898 2020年12月1日号 巻頭言
【発行者】一般社団法人科学・政策と社会研究室(担当 榎木英介)
【編集者】Science Communication News編集部
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【Web Site】 https://www.kaseiken.org/
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