科学・政策と社会ニュースクリップ

科学政策や科学コミュニケーション等の情報をクリップしていきます。

専門家と政治と透明性

2020年4月28日~2020年5月5日
カセイケン代表 榎木英介

 緊急事態宣言は予想通り延長されました。

安倍総理は記者会見を行いました
https://www.kantei.go.jp/jp/98_abe/statement/2020/0504kaiken.html

新型コロナウイルス感染症緊急事態宣言の期間延長
https://corona.go.jp/news/pdf/kinkyujitaisengen_gaiyou0504.pdf

新型コロナウイルス感染症対策の基本的対処方針
https://corona.go.jp/expert-meeting/pdf/kihon_h_0504.pdf

安倍総理は第33回新型コロナウイルス感染症対策本部を開催しました
https://www.kantei.go.jp/jp/98_abe/actions/202005/04corona.html

新型コロナウイルス感染症対策本部(第 33 回)
https://www.kantei.go.jp/jp/singi/novel_coronavirus/th_siryou/sidai_r020504.pdf

安倍総理は令和2年度補正予算成立及び緊急事態宣言の延長について会見を行いました
https://www.kantei.go.jp/jp/98_abe/actions/202004/30bura.html

新型コロナウイルス感染症対策専門家会議
https://corona.go.jp/expert-meeting/#expert-meeting

 会見の中で、諮問委員会の尾身会長がPCR検査について述べています。

その理由はいろいろありまして、大体6つぐらいありますが、保健所の業務の過多とか、それから入院先をしっかり示す仕組みがない、それからPCR検査を行う地方衛生研究所のリソースが極めて少ない。人員のカットなどもありますし、そういうことがあった。それから、検体採取及び実施体制のマスクや防護服、それから一般医療機関都道府県との契約をしないとこういう検査ができないという今までの仕組みがあった。それから、検体を取ったら運ぶということに、これに様々な障害がありました。そういうことでありまして、なかなか他の国よりは確かに少なかった。

★PCR検査数「他国より明らかに少ない」…政府の専門家会議、センター増設求める
https://www.yomiuri.co.jp/national/20200504-OYT1T50108/

PCR検査、日本が少ない6つの理由は? 専門家会議が会見で説明
https://www.huffingtonpost.jp/entry/story_jp_5eb01659c5b63714a8ef9c9d

 PCR検査に関しては、いまだ論争があり、様々な意見が出ています。

★なぜ日本でPCR検査数が増えないのか。論点と解決策をわかりやすく整理する【連載】あたらしい意識高い系をはじめよう(2)
https://finders.me/articles.php?id=1902

★日本はPCR検査をもっとすべきなのか? 新型コロナの不安についてウイルス研究者に聞いた
https://wezz-y.com/archives/76433

★日本の新型ウイルス検査、少なさに疑問の声
https://www.bbc.com/japanese/features-and-analysis-52482946

PCR検査の現場で、職員が口にした不安「試薬や綿棒などモノが入ってこない」 国の“現状への理解”求める声も
https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20200501-00010006-sp_ctv-soci

PCR論争に寄せて─PCR検査を行っている立場から検査の飛躍的増大を求める声に
https://medical.nikkeibp.co.jp/leaf/all/report/t344/202004/565349.html

 ある方が「PCRスンナ派」と「PCRシーヤ派」が争っているとおっしゃっていましたが、現場で十分という完全なスンナ派はいないと思います。シーヤ派にしても全国民対象にやれという人は一部であり、要は数の違いでしかないと思っています。

 だとするとPCR検査の拡大は多くの人たちに共通の課題です。

★山梨大でPCR一貫検査 検体採取はドライブスルー
https://news.tv-asahi.co.jp/news_society/articles/000183173.html

ドライブスルー方式のPCR 山梨大病院で医師らが体験
https://www.asahi.com/articles/ASN4Z3GB0N4XUZOB00J.html

 ドライブスルー形式は拡大が進んでおり、採取に関しては改善がなされています。問題はPCR検査自体です。

 PCR検査を行なっている主体は臨床検査技師ですが、現場では不足しています。臨床検査技師に関しては、Yahoo!ニュース個人に以下の記事を書きました。

臨床検査技師」と正しく言おう〜新型コロナと向き合う重要な人たちに心からの支援を
https://news.yahoo.co.jp/byline/enokieisuke/20200503-00176584/

 地方衛生研究所がパンク状態という現状では、地方衛生研究所以外でPCR検査ができる体制を作ることが必要です。

 その一つは民間検査会社を積極的に活用することです。検査会社の方に話を聞くと、キャパシティはあるとのことではあります。

 また、大学の人材の活用ももっと使えると思います。

 慈恵医大の取り組みは注目に値します。基礎系の教員が新型コロナウイルスの検査に特化することで、病院の機能を守るというもので、医学部がある大学が参考になることだと思います。

「即日1件700〜800円」のPCR、驚愕の全貌
「上手い」「速い」「安い」の3拍子揃ったPCRが誕生するまで
https://jbpress.ismedia.jp/articles/-/60385

 この動きの中心になった嘉糠洋陸教授は、私の東大時代の同学年にあたる方です。アカデミアからのこうした動きがもっと出て欲しいと思います。

★【核心】保健所のリアル
https://newspicks.com/news/4862985

 保健所のキャパオーバーも、別の経路(バイパスという方もいらっしゃいます)を作ってなんとかしなければなりません。

★前のめりの「専門家チーム」があぶりだす新型コロナへの安倍政権の未熟な対応
https://webronza.asahi.com/politics/articles/2020042900002.html

新型コロナ対策における専門家と政治の関係
https://globe.asahi.com/article/13334494

 これはかねがねこの欄で書いてきたことですが、専門家会議と政治の関わりの問題が指摘されています。

 北大西浦教授を政治家以上に批判する人が増えています。西浦教授のセキュリティは大丈夫か、心配になります。そこは早急に対処してもらいたいと思います。

 専門家会議が「新しい生活様式」を提案したことに反発も出ています。

「新しい生活様式」とは 専門家会議が具体例示す 新型コロナ
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20200504/k10012417741000.html

テレワーク、通販など推進を 「新しい生活様式」の例提示―新型コロナで専門家会議
https://www.jiji.com/jc/article?k=2020050400125&g=soc

 報道を見るより、専門家会議の資料を見てみましょう。

新型コロナウイルス感染症対策専門家会議(第 12 回)議事次第
https://corona.go.jp/expert-meeting/pdf/senmonka_sidai_r020501.pdf

 で「新しい生活様式」が初登場しました。

新型コロナウイルス感染症対策専門家会議(第 13 回)
https://corona.go.jp/expert-meeting/pdf/senmonka_sidai_r020504.pdf

 では具体例が別添で示されています(9ページ)。

 三密を避ける、手洗いをすると行った妥当なことが書かれているわけですが、専門家が私的領域に干渉するのか、という反発があるわけです。

 これもコミュニケーションの問題だなあと思います。私権の制限ができない中、モデルを提示したということですが、表現が悪かったのかなと思います。

 科学的助言とは何か、という問題でもありますが、専門家会議が、政策決定や生活様式まで決めているというイメージが増幅されています。

 もちろん助言者が無謬でいられるわけではありませんが、あたかもラスプーチンかのような存在として認識されているとなると大きな問題です。

 専門家暗躍イメージを少しでも減らすには、情報をオープンにすること、透明化だと思います。

★Call for transparency of COVID-19 models
https://science.sciencemag.org/content/368/6490/482.2.full

 どうも透明化、オープン化を阻害する要因が政府内にあるようですが、そこはきっちりしてもらいたいと思います。

新型コロナウイルス感染症対策における市民の自発的な行動変容を促す取組(ナッジ等)の募集について
https://www.env.go.jp/press/108005.html

 行動変容に関しては、ナッジの役割も重要だと思います。お願いだけでは不十分です。

★新型コロナの収束シナリオとその後の世界(3)収束まで「3年から5年」が現実か
https://bio.nikkeibp.co.jp/atcl/news/p1/20/04/24/06847/

新型コロナ流行「1年半~2年続く可能性」 米ミネソタ
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO58757010S0A500C2000000/

 どうも長期化する可能性と、香港、マカオ、台湾、韓国、ニュージーランド、あるいは情報が正しいのなら中国のようにほぼ封じ込めた国との二極分化に向かう可能性があるように思います。封じ込められた国の多くが都市国家や小国である点は、留意が必要ですが、韓国のような大きな国でもできたわけですから、日本もこちら側になんとか入って欲しいと思います。

★感染拡大でも休校なし、休業なし「壮大な社会実験」のスウェーデン、人々は今。【新型コロナウイルス
https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20200429-00010002-huffpost-int

「集団免疫」作戦のスウェーデンに異変、死亡率がアメリカや中国の2倍超に
https://www.newsweekjapan.jp/stories/world/2020/05/post-93307.php

 ノーガードのスウェーデン。この道をいく社会的なコンセンサスは日本にはありません。

★新型コロナによるロックダウン中も生産的でいるための6つの方法
https://www.editage.jp/insights/6-ways-to-be-productive-during-the-covid-19-lockdown

新型コロナウイルスの影響下で今後を憂える研究者たち
https://www.editage.jp/insights/why-the-ongoing-covid-19-global-pandemic-is-worrying-researchers

★As COVID-19 forces conferences online, scientists discover upsides of virtual format
https://www.sciencemag.org/news/2020/04/covid-19-forces-conferences-online-scientists-discover-upsides-virtual-format

Scientists discover upsides of virtual meetings
https://science.sciencemag.org/content/368/6490/457

 常態化するコロナと共にある世界。適応していくことも重要です。

★Women academics seem to be submitting fewer papers during coronavirus. ‘Never seen anything like it,’ says one editor.
https://www.thelily.com/women-academics-seem-to-be-submitting-fewer-papers-during-coronavirus-never-seen-anything-like-it-says-one-editor/

 ウイルスが格差を拡大させています。この問題は早急に対処しなければなりません。

★Against pandemic research exceptionalism
https://science.sciencemag.org/content/368/6490/476.full

 新型コロナだからなんでもあり、ではいけません。

 査読前プレプリントの段階で報道されてしまうような、学術史において初めてという事態に直面しているわけです。

 社会との関係も含め、「新しい学術」「新しい科学コミュニケーション」を考えていく必要があります。

★航空機からの気象観測データ半数以下に 技術開発に遅れも
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20200430/k10012411031000.html

 あまり指摘がありませんが、例えば検診などはほとんど止まっています。これが病気が早期で発見されることを阻害するのか、過剰な検診がなくなるので、大して変わらないのか、いずれ分かるとは思いますが、子宮がん検診などは早期になんらかの形で再開させるべきだと思います。

★いまなぜ「困窮学生」への支援が必要なのか
学生と大学経営の危機を乗り切るために
https://webronza.asahi.com/national/articles/2020050100003.html

学費減免など求める署名活動 160大学に広がる 新型コロナ
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20200429/k10012410931000.html

経済苦の大学生「学費を半分に」 ネット署名、5日間で9000件集まる
https://mainichi.jp/articles/20200428/k00/00m/040/130000c

政府に対して、学費無償化に向けて足を踏み出すことを求めます
https://bit.ly/2WrnS2N

コロナで困窮する大学生、国は救済してくれないのか
https://jbpress.ismedia.jp/articles/-/60349

 大学生の困窮は厳しいものがあります。未来のためにこれはなんとかしなければなりません。

★<コラム>「俺の人生詰んだ」就職できなかった博士の叫びは日中共
https://www.recordchina.co.jp/b192124-s187-c60-d1187.html

 大学院生や若手研究者のおかれた状況も厳しいはずです。

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に対する提言
令和2年4月28日 

小川久雄 (国立研究開発法人国立循環器病研究センター理事長)
里見 進 (前東北大学総長)
土岐祐一郎(大阪大学医学部付属病院長)
中西宏明 (日本経済団体連合会会長)
濱口道成 (前名古屋大学総長)
平野俊夫 (前大阪大学総長)
松本 紘 (前京都大学総長)
松本正義 (関西経済連合会会長)
http://toshio-hirano.sakura.ne.jp/Hirano/Blog/entori/2020/4/28_you_zhiniyoruCOVID-19ni_duisurutsuno_ti_yan.html

 旧帝大の前学長を中心とする錚々たるメンバーの提言。こうした提言が政策を動かすのか、というと、なかなか厳しいものがあるように思っています。その問題意識が、私たちのような草の根の活動の原点でもあります。

★突然、性的画像が画面に…Zoom爆撃、香川大でも被害
https://www.asahi.com/articles/ASN4Y75MGN4WPTLC017.html

★試行錯誤の大学ネット授業 「PC、スマホ無い」学生も
https://www.asahi.com/articles/ASN4W74N3N4KOIPE03G.html

 試行錯誤するオンライン講義。

★感染者「虚偽申告」への「私刑」 行き過ぎた個人攻撃「非常時の想像力欠如」 -
https://mainichi.jp/articles/20200504/k00/00m/040/165000c

 次第に大きな課題になってきました。日本では、法的な強制より「私刑」が社会の抑止力になっています。

★消毒方法の有効性評価について、途中経過をお知らせします
https://www.meti.go.jp/press/2020/05/20200501002/20200501002.html

★Primatologists work to keep great apes safe from coronavirus
https://www.sciencemag.org/news/2020/05/primatologists-work-keep-great-apes-safe-coronavirus

 近い種であり、感染防止が大きな課題です。

 新型コロナウイルス以外の記事。

茨城県常総市内におけるヒアリの確認について
https://www.env.go.jp/press/108020.html

 ヒアリ発見のニュース。今年度初です。関心を失ってはいけません。

★知的財産を経営に生かす知財活用事例集「Rights」を刊行しました
https://www.meti.go.jp/press/2020/04/20200430004/20200430004.html

★CIP(技術研究組合)の設立・運営ガイドラインを改訂しました
https://www.meti.go.jp/press/2020/04/20200430002/20200430002.html

★NDBデータの目的外利用について
https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_11147.html

医療データべース情報、製薬企業に無断提供 部長を処分
https://www.asahi.com/articles/ASN516TCDN51UTFL018.html

 非常に大きな問題。

★「筑波大は核実験やめろ」フェイクニュース地震で拡散
https://www.asahi.com/articles/ASN4X76R6N4WUJHB00M.html

 フェイクニュースが拡大しやすい環境にあるように思います。注意が必要です。

★Nature Index 2020 Annual Tables
https://www.nature.com/collections/chdeajdica

 重要記事。

Rising stars in life sciences 2020
https://www.nature.com/articles/d41586-020-01234-7

Rising stars in Earth and environmental sciences 2020
https://www.nature.com/articles/d41586-020-01237-4

Fast-rising research institutions 2020
https://www.nature.com/articles/d41586-020-01232-9

Fastest movers since 2015
https://www.nature.com/articles/d41586-020-01228-5

Leading research institutions 2020
https://www.nature.com/articles/d41586-020-01230-x

Rising stars in chemistry 2020
https://www.nature.com/articles/d41586-020-01235-6

A guide to the Nature Index
https://www.nature.com/articles/d41586-020-01238-3

Measures of merit
https://www.nature.com/articles/d41586-020-01226-7

Fast-rising academic institutions 2020
https://www.nature.com/articles/d41586-020-01233-8

Ten countries with high-performing hubs of natural-sciences research
https://www.nature.com/articles/d41586-020-01229-4

The ten leading countries in natural-sciences research
https://www.nature.com/articles/d41586-020-01231-w

Rising stars in physical sciences 2020
https://www.nature.com/articles/d41586-020-01236-5

★Why clocking my work hours shifted my work-life balance
https://www.sciencemag.org/careers/2020/04/why-clocking-my-work-hours-shifted-my-work-life-balance

Clocking your work
https://science.sciencemag.org/content/368/6490/542

★学術界にも悪徳な審査委員が存在するのか?
https://bit.ly/2WpOFwx

 査読問題。

★第 31 回「大人になったらなりたいもの」調査結果を発表
https://www.dai-ichi-life.co.jp/company/news/pdf/2020_010.pdf

 こどもの日。恒例の第一生命の調査。新型コロナウイルスの感染拡大を経て、今年度はどうなるでしょうか。