科学・政策と社会ニュースクリップ

科学政策や科学コミュニケーション等の情報をクリップしていきます。

国循阪大研究不正の衝撃

※Science Communication Newsは科学技術政策や科学技術コミュニケーションの動向を
ウォッチするメールマガジンで、毎週1回程度配信されます。
※詳しくは以下のサイトをごらんください。
http://www.kaseiken.org/活動/

※購読の登録、解除も上記サイトよりお願いします。こちらで代行はいたしませんので
※ご了承ください。
※以下でも随時情報を提供しています。
はてなブックマーク http://b.hatena.ne.jp/scicom/
twitter http://twitter.com/kaseikenorg
科学・政策と社会ニュースクリップ https://clip.kaseiken.info/
Yahoo!ニュース個人 https://news.yahoo.co.jp/byline/enokieisuke/

★発行部数 2,563部(8月25日現在)
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
     ◆◇◆  Science Communication News ◆◇◆
         No.884 2020年8月25日号 巻頭言
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

大学のオンライン授業に関する全国大学教員アンケートを実施中(締切8月31日)
https://cactuscommunications.formstack.com/…/sciencetalks_o…
新型コロナウイルス禍で日本の多くの大学がオンライン授業を導入しました。多くの大学教員・学生の方が初めてオンライン授業を経験し、現場では様々な意見が出ています。研究者・科学政策の専門家・企業と市民を繋ぐコミュニティ、サイエンストークスでは、研究者有志により大学のオンライン授業に関するアンケートを開始しました。本アンケートをもとに、YouTubeチャンネル、ScienceTalks TVで9月に大学オンライン授業の様々な論点を語る動画を配信いたします。また、希望者の方には調査レポートを共有いたします。
オンライン授業に関わるすべての教員の方々のご協力を何卒よろしくお願いいたします。
YouTubeチャンネルへの登録もぜひおねがいします
https://www.youtube.com/c/ScienceTalksJapan/

【巻頭言】
★国循阪大研究不正の衝撃
2020年8月18日~2020年8月25日
カセイケン代表 榎木英介

 以前から指摘はありましたが、国立循環器病院研究センターと大阪大学に所属していた研究者の研究不正が明らかになりました。

★研究所元職員による研究活動上の特定不正行為について
http://www.ncvc.go.jp/topics/20200818.html

研究活動上の特定不正行為に関する調査結果について
https://www.osaka-u.ac.jp/ja/news/topics/2020/08/20200818001

 調査委員長として、ベストセラーの著書や書評で有名な阪大の仲野徹教授が関わっています。研究不正は調査に関わる仲野氏のような現役研究者の時間と労力を奪ってしまうという側面があることは認識すべきです。

第104回先進医療技術審査部会 資料
https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_13062.html

 研究不正発表の2日後におこなわれた厚労省の先進医療技術審査部会で、早速取り上げられています。

資料11-2 研究活動における特定不正行為とJANP Studyについて(大阪大学医学部附属病院
https://www.mhlw.go.jp/content/10808000/000660920.pdf

申請医療機関からの報告 (大阪大学医学部附属病院)
[参考論文における研究不正行為による研究実施計画の変更について]
https://www.mhlw.go.jp/content/10808000/000660921.pdf

 撤回された論文の一つは、hANPが肺がんの転移抑制に効果があるかを調べていた臨床研究のJANP Studyの参考論文となっており、JANP Study自体の妥当性に大きな疑問が投げかけられています。

「医師が論文5本で捏造や改ざん」 阪大と国循が発表
https://www.asahi.com/articles/ASN8L6J5VN8LPLBJ006.html

 有料部分で恐縮ですが、カセイケン榎木がコメントしています。コメントでは、患者さんに薬が投与された臨床研究の根拠が揺らいでいるということは、医療倫理としても大きな問題があるのではないかと述べました。

肺がん治療で論文5編に不正 大阪大、元医員を処分
https://www.chunichi.co.jp/article/106485

「先進医療の中止も想定」 阪大の研究不正で国審査部会
https://www.asahi.com/articles/ASN8N7FQ9N8NULBJ004.html

 そもそもの根拠となったPNAS論文は、「メガコレクション」(大規模修正)があったとして、以前から問題視されていました。
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%A4%A7%E9%87%8F%E8%A8%82%E6%AD%A3_(%E8%AB%96%E6%96%87)

国内のミスコンダクト事例とその背景
https://drive.google.com/file/d/1L-JwzfhXGaPac1mjJq7Tl-HsD72Fjmr2/view

A 2015 PNAS paper is six pages long. Its correction is four pages long.
https://retractionwatch.com/2018/08/07/a-2015-pnas-paper-is-six-pages-long-its-correction-is-four-pages-long/

Pubpeerでも議論されています。
https://blog.pubpeer.com/publications/C4D85860F12DA1F1B0F4A6D39A9F0D

 今後このPNAS論文も調査対象になるとのことですが、研究不正が認定されれば、国費が投入された先進医療の研究が意味なくなるわけで、重大な問題です。

 気になるのは、健康被害の有無です。

第79回先進医療技術審査部会
https://www.mhlw.go.jp/stf/shingi2/0000211852_00008.html

の資料7
https://www.mhlw.go.jp/content/10801000/000452801.pdf

でこの試験のことが書かれていますが、

本試験のハンプ投与群で 4 例の脳梗塞が発症したことがあり

 と気になる文章が出ています。「独立安全性モニタリ ング委員会では左上葉切除など術式が大きな原因と考察されている」とのことですが、精査していただきたいと思います。

 今回の研究不正では、筆頭著者のみが責任を負うことになりましたが、それでよかったのかも含め、しっかりとみていく必要があります。

 筆頭著者の方は2017年に日経新聞に取り上げられていました(元サイトが消えたのでアーカイブをリンクします)
http://web.archive.org/web/20191102213043/https://www.nikkei.com/article/DGXMZO16400660V10C17A5X13000/

 サクセスストーリーが美しく語られていますが、素手でマイクロピペットを持った写真があるなど、ややちぐはぐな感じもしています。記事の最後には

 「ハンプ」はその先頭集団。がん転移抑制剤として脚光を浴びる日は来るのか。答えは3年後だ。

 と書かれていますが、3年後のいま、こうして取り上げられることを予想していたのでしょうか。

 話は変わって新型コロナウイルスですが、ピークが過ぎたのではないかと言われています。果たして「第2波」はこのまま収束するのか、安心はできません。

新型コロナウイルス感染症対策分科会
https://www.cas.go.jp/jp/seisaku/ful/yusikisyakaigi.html#3

第6回資料
https://www.cas.go.jp/jp/seisaku/ful/corona6.pdf

新型コロナウイルス感染症のワクチンの接種に関する分科会の現時点での考え方(PDF/153KB)
https://www.cas.go.jp/jp/seisaku/ful/vaccine_kangae.pdf

第7回資料
https://www.cas.go.jp/jp/seisaku/ful/corona7.pdf

大都市の歓楽街に対する迅速な感染拡大防止と中長期的な感染防止を目的とした提言(PDF/114KB)
https://www.cas.go.jp/jp/seisaku/ful/kanrakugai_kansenboushi.pdf

 日本の新型コロナウイルス対策に関しては、BMJの巻頭言で考察されれています。

Resurgence of covid-19 in Japan
https://www.bmj.com/content/370/bmj.m3221

 コミュニケーションの問題や政府の透明性の問題が課題として挙げられています。

★【独自】新型コロナ専門家会議の発言録入手 “検証”阻む黒塗りの壁
https://this.kiji.is/669379030982689889

 検証もできない情報公開では不信感が増すばかりです。

★コロナ専門家への情報隠し批判 適切な発信が不安緩和
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO62897800R20C20A8X90000/

 田中幹人さんのインタビュー。

★科学的根拠が明示されない日本の感染症対策の咎
https://jbpress.ismedia.jp/articles/-/61732

★大学のキャンパス再開が難しい理由と、政府に求められる大学支援
https://news.yahoo.co.jp/byline/murohashiyuki/20200821-00191226/

★外国人留学生の入国、月内にも緩和 再入国は全面解禁へ
https://www.asahi.com/articles/ASN8P7648N8PUTFK008.html

 関係機関は学生が厳しい状況に直面している問題に早急に対応してほしいと思います。

 学生の苦境は日本だけではありません。

★COVID-19 Outbreaks Occur as Students Return to Campus
https://www.the-scientist.com/news-opinion/covid-19-outbreaks-occur-as-students-return-to-campus-67830

★Pandemic harms Canadian grad students’ research and mental health
https://www.nature.com/articles/d41586-020-02441-y

★Signs of depression and anxiety soar among US graduate students during pandemic
https://www.nature.com/articles/d41586-020-02439-6

★Pandemic on campus: tell us how your institution is coping
https://www.nature.com/articles/d41586-020-02452-9

★Millions of students are returning to US universities in a vast unplanned pandemic experiment
https://www.nature.com/articles/d41586-020-02419-w

★Grad students challenge university-mandated COVID-19 agreements
https://www.sciencemag.org/news/2020/08/grad-students-challenge-university-mandated-covid-19-agreements

★How schools can reopen safely during the pandemic
https://www.nature.com/articles/d41586-020-02403-4

★「記者は気持ちいいかもしれないが…」新型コロナの速報合戦、専門家分科会メンバーが批判
https://www.buzzfeed.com/jp/yutochiba/covid-19-media

★問われる科学と政治の距離 コロナ禍「透明性こそ重要」
https://www.asahi.com/articles/ASN8M3RS1N8CUPQJ00D.html

★INSDCの参加機関およびNLM、科学コミュティーSARS-CoV-2配列データの共有を促す声明を発表
http://jipsti.jst.go.jp/johokanri/sti_updates/?id=12234

★‘It’s absurd’: Coronavirus researcher shut down by US funding agency vents frustrations
https://www.nature.com/articles/d41586-020-02473-4

★A dangerous rush for vaccines
https://science.sciencemag.org/content/369/6506/885

Knowledge transfer for large-scale vaccine manufacturing
https://science.sciencemag.org/content/369/6506/912.full

 ワクチン開発の前のめりな姿勢に懸念の声が出ています。

★第5回「新型コロナ対策のための全国調査」からわかったことをお知らせします。
https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_13101.html

感染防止に配慮したつながり支援等の事例集を公表します
https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_13142.html

新型コロナウイルス感染症対策における市民の自発的な行動変容を促す取組(ナッジ等)の募集について(結果)
https://www.env.go.jp/press/108269.html

 ナッジに関してはかねがね注目してきました。ここで取り上げられたのは、香川の小中学校の例でソーシャルディスタンスをブリで表すというものです。

 そのほか
http://www.env.go.jp/earth/ondanka/nudge/COVID-19_r.pdf

 に様々な事例が紹介されています

 人の意欲に頼るだけではなかなか行動変容はできません。ナッジと組み合わせ、好事例が多く出ることを願っています。

★大雨特別警報と警戒レベルの関係を分かりやすくします(気象庁
https://www.jma.go.jp/jma/press/2008/21a/20200821_tokubetsukeihou_kaizen.html?833

 警報と避難行動。分かりやすいことが一番です。

★Scientists worried the pandemic would cause malaria deaths to soar. So far, it hasn’t happened
https://www.sciencemag.org/news/2020/08/scientists-worried-pandemic-would-cause-malaria-deaths-soar-so-far-it-hasnt-happened

 COVID-19の蔓延でマラリアの死者が増加するのではないかと言われていましたが、そうならなかった、それはなぜかという記事です。

東京大学コンサルティング会社を立ち上げた理由
https://business.nikkei.com/atcl/gen/19/00006/081700103/

東大、40年債で200億円 国立大初の市場調達
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO62883610R20C20A8000000/

 東大が大学債を発行したり、コンサルティング会社を作ったりと攻めに出ています。

★ 提言「「人口縮小社会」という未来-持続可能な幸福社会をつくる-」(PDF形式:747KB)
http://www.scj.go.jp/ja/info/kohyo/pdf/kohyo-24-t296-1.pdf

記録「研究データに関する北京宣言」(PDF形式:787KB)
http://www.scj.go.jp/ja/member/iinkai/kiroku/3-20200629.pdf

提言「大学入試における英語試験のあり方についての提言」(PDF形式:755KB)
http://www.scj.go.jp/ja/info/kohyo/pdf/kohyo-24-t292-6.pdf

報告「大学教育の分野別質保証のための教育課程編成上の参照基準 教育学分野」(PDF形式:608KB)
http://www.scj.go.jp/ja/info/kohyo/pdf/kohyo-24-h200818.pdf

★From ACTH to DNA: the rise of acronyms in research
https://www.nature.com/articles/d41586-020-02466-3

 1950年以来の論文に使われている略語調査。使われているのは一部と。

 分野により異なる略語は悩みの一つです…。

★「女性優遇は非生産的」 掲載の独化学誌、批判浴び謝罪
https://www.asahi.com/articles/ASN8L5TWSN8HUBQU00M.html

★Black scientists matter
https://science.sciencemag.org/content/369/6506/884

★Author declaration: have you considered equity, diversity and inclusion?
https://www.nature.com/articles/d41586-020-02429-8

私たちは、科学雑誌が論文を投稿する際に、著者に研究の実施が多様性、公平性、包摂性を考慮しているかどうかを宣言するように求めることで、このようなバイアスの例を克服することができると提案しています。

 日本では残念ながら無意識も、有意識もバイアス偏見だらけです。なんとかしなければなりません。

★名和豊春・北大前総長が沈黙を破った!「私が解任された本当の理由」
https://hre-net.com/syakai/kyoiku/46985/

★China’s research-misconduct rules target ‘paper mills’ that churn out fake studies
https://www.nature.com/articles/d41586-020-02445-8

★片っ端からDNA 協力しないと知らぬ間に親類の所へ
https://www.asahi.com/articles/ASN8Q11CQN7ZULFA011.html

犬探して貼り紙…それだけでDNA「一生、容疑者扱い」
https://www.asahi.com/articles/ASN8Q119KN8PULFA027.html

容疑者の多くからDNA採取 DBに130万件と判明
https://www.asahi.com/articles/ASN8P6Q8HN7QULFA012.html

★750 Million GM Mosquitoes Will Be Released in the Florida Keys
https://www.the-scientist.com/news-opinion/750-million-gm-mosquitoes-will-be-released-in-the-florida-keys-67855

★ヒト受精卵に対するゲノム編集の臨床利用に関する意識調査
https://k5.net-research.jp/e/1141901/login.php?cid=1

ノーベル賞最有力候補「ゲノム編集」が本命とは言えない理由
https://gendai.ismedia.jp/articles/-/74679
https://news.yahoo.co.jp/articles/09a390ccb689dcc922168893a552dd7f01ebfcf1

★次世代の遺伝的介入(ゲノム編集やエピゲノム編集など)の是非を分析するための倫理的枠組みについて
https://www.cira.kyoto-u.ac.jp/j/pressrelease/news/200820-140000.html

Destination, Mars! Pictures celebrate the launch of three bold missions
https://www.nature.com/articles/d41586-020-01966-6

 火星がホットスポットになっています。

★New U.S. ethics board rejects most human fetal tissue research proposals
https://www.sciencemag.org/news/2020/08/new-us-ethics-board-rejects-most-human-fetal-tissue-research-proposals

★California Wildfires Threaten UC Campus, Telescopes
https://www.the-scientist.com/news-opinion/california-wildfires-threaten-uc-campus-telescopes-67854

 多発する森林火災の影響は大学や研究に及びます。

★‘You can’t imagine the disaster we’re living in’: Lebanon’s researchers struggle to cope with explosion aftermath
https://www.nature.com/articles/d41586-020-02437-8

 あの大爆発の影響は想像以上。

★「保護」から「共有」へ大転換、EUの新データ戦略は何を意味するか
https://www.technologyreview.jp/s/215976/the-eu-is-launching-a-market-for-personal-data-heres-what-that-means-for-privacy/

 EUの戦略は我々にも影響を与えます。

★My first grad school adviser made life miserable. Choose yours wisely
https://www.sciencemag.org/careers/2020/08/my-first-grad-school-adviser-made-life—iserable-choose-yours-wisely

Choose your adviser wisely
https://science.sciencemag.org/content/369/6506/1026

 指導教員の選び方。間違うと悲惨なことになるのは洋の東西を問いません。

大学院は、忍耐と忍耐力を必要とする大変で長い道のりです。自分と相性の良い研究室を見つけることは非常に重要です。私は、研究室に入る前に、私の失敗から学び、十分な注意を払って研究室に入ることをお勧めします。多くの質問をし、多様な意見を求めてください。

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
“Science Communication News”
[SciCom News] No.884 2020年8月25日号 巻頭言
【発行者】一般社団法人科学・政策と社会研究室(担当 榎木英介)
【編集者】Science Communication News編集部
【E-Mail】 office@kaseiken.org
【Web Site】 https://www.kaseiken.org/
Facebookhttp://www.facebook.com/kaseikenorg
メルマガの登録解除、イベント告知依頼などは以下のページからお願いします。
https://www.kaseiken.org/活動/
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━