2020年6月9日~2020年6月16日
カセイケン代表 榎木英介
緊急事態宣言が解除され、街中も以前とまではいきませんが、日常が少しずつ戻ってきています。
しかし、東京での新規感染者の報告を見るに、どこかでウイルスが人から人へと広がっているわけで、警戒を怠ってはいけません。
★新しいニセ医学「新型コロナ否認主義」
標準的な医学的知見を否定する名誉教授と市議会委員
http://natrom.hatenablog.com/entry/2020/06/15/113000
新型コロナウイルスなどない、という人が一部にいるようです。流石にそれは逆張りのしすぎですし、害があります。
ウイルス存在否定は、対策を立てなくてよいわけですから、政治に入り込むと厄介です。
★Brazil President Embraces Unproven ‘Cure’ as Pandemic Surges
https://www.nytimes.com/2020/06/13/world/americas/virus-brazil-bolsonaro-chloroquine.html
ノーガードのブラジルは死者数が増加していますが、「ブラジルのトランプ」Bolsonaro大統領が科学無視、軽視なので、事態は深刻です。
★第2回大阪府新型コロナウイルス対策本部専門家会議
http://www.pref.osaka.lg.jp/iryo/2019ncov/sennmonnka2.html
大阪大学核物理研究センター 中野教授が新型コロナウイルスの「収束スピードは一定で緊急事態宣言の効果は極めて限定的」と述べています。
http://www.pref.osaka.lg.jp/attach/37375/00366407/06%20siryo1-2.pdf
経済を止める必要がないという中野教授の意見を魅力的に感じる人、特に政治家は多いでしょう。
中野教授が唱えるK値に関して、Twitterなどで議論が起きています。
K値がたとえ将来的に意義のある値であることが分かったとしても、プレプリントの段階であるK値が大阪府の政策に取り入れられるのは早いのではないかという意見があります。
★政治化された「エビデンス」 新型コロナ研究不正疑惑の波紋
https://mainichi.jp/premier/politics/articles/20200612/pol/00m/010/006000c
コロナ治療薬研究でデータ収集会社に疑義、論文3本取り下げ
ノーベル賞「イベルメクチン」の有効性を示す論文も
https://webronza.asahi.com/science/articles/2020060900003.html
Surgisphere Fallout Hits African Nonprofit’s COVID-19 Efforts
https://bit.ly/3cRaw6l
Authors, elite journals under fire after major retractions
https://science.sciencemag.org/content/368/6496/1167.full
The Pandemic Claims New Victims: Prestigious Medical Journals
https://www.nytimes.com/2020/06/14/health/virus-journals.html
先週お伝えした論文撤回問題。査読は問題論文を防ぐことはできないし、プレプリントの段階で政策に取り入れられる可能性もある…。
スピードと正確性のバランスがスピードに寄りすぎているのではないかという懸念が各方面から出てきます。
各方面から出てくる「異端」「極論」、耳障りの良い研究…。それに飛びつく政治家など…。科学と政治、社会の関係は、答えを出すことが難しい岐路にきているように思います。
★A Pandemic Moves Peer Review to Twitter
https://www.bloomberg.com/amp/opinion/articles/2020-05-05/coronavirus-research-moves-faster-than-medical-journals
プレプリント公開査読時代が来るのでしょうか。
★MITが出版社エルゼビアとの契約交渉を終了、研究成果をオープン利用するための枠組みに沿った提案がなかったため
https://gigazine.net/news/20200612-mit-elsevier-negotiation/
Elsevier社とのビックディールを最近キャンセルした、米国の3機関の図書館員によるコメント(記事紹介)
http://jipsti.jst.go.jp/johokanri/sti_updates/?id=12106
エルゼビア問題。MITは強気のディール。一部の会社の「知の独占」に対するオープンアクセス。資金面をどうするかは大きな課題です。
★無知の知を意味する「知的謙虚さ」の欠如が多くの問題を引き起こしているという指摘
https://gigazine.net/news/20200613-lack-of-humility/
知らないということを知っているという「無知の知」。この知的謙虚さは「妥協するタイプ」とみなされるとのこと。
SNSでも自信満々に極論を言う人がもてはやされるわけで、なかなか難しいところです。
★専門家会議、「役割」どこまで コロナ対策で積極発信、批判も
https://www.asahi.com/articles/DA3S14509212.html
★「8割おじさん」のクラスター対策班戦記【前編】~ 厚労省のビルから北大の研究室に戻るにあたり伝えたいこと
https://news.yahoo.co.jp/articles/7296592623494483d13edd5da3a75bb9eb35ee9b
★「8割おじさん」のクラスター対策班戦記【後編】~次の大規模流行に備え、どうしても伝えたいこと
https://news.yahoo.co.jp/articles/602a038dc47f6aa1a3952ba5f318888f50cc0713
★【特別寄稿】「8割おじさん」の数理モデルとその根拠──西浦博・北大教授
https://www.newsweekjapan.jp/stories/world/2020/06/8-39.php
日本の新型コロナウイルス対策は「異端」を選択はしませんでした。
とはいえ、繰り返し書いているように、科学的助言を政府に対してするという専門家の役割を超えた行動に賛否が出ています。
★イタリア首相を検察が聴取へ 新型ウイルス拡大、遺族ら告訴
https://www.bbc.com/japanese/53018502
政策の責任はあくまで政治にあるわけで、訴えられるとしたら政治家です。しかし、イタリアではラクイラ地震のように専門家が訴えられたこともあります。
緊急事態宣言は要らなかった、経済的損失の責任をとれ、という声が専門家に向かう可能性は消えていないと思っています。
★The world economy on a tightrope
http://www.oecd.org/economic-outlook/june-2020
★ニューノーマルな研究活動の在り方に向けての取組・アイデア調査
https://jp.surveymonkey.com/r/68NX3V8
・文部科学省「科学技術ワクワク挑戦チーム」
・経済産業省「若手WG」事務局
・アカデミスト株式会社
・官民若手イノベーション論ELPIS
2020.6.21(日)までとのこと。
★抗体保有調査の結果について
https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_11892.html
都内の抗体保有率0.1%、海外より低水準 厚労省検査
大阪0.17%、宮城は0.03%
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO60391960W0A610C2MM0000/
巻頭言執筆中に入ってきました。
★Science in the face of the COVID-19 crisis
OECD Science Flash Survey 2020
https://oecdsciencesurveys.github.io/2020flashsciencecovid/
★Borrow crisis tactics to get COVID-19 supplies to where they are needed
https://www.nature.com/articles/d41586-020-01750-6
日本でも防護服やマスクの供給の問題が生じました(まだ解決していません)。
★多核種除去設備等処理水の取扱いに係る書面での意見募集期限を延長します
https://www.meti.go.jp/press/2020/06/20200612005/20200612005.html
処理水の意見公募を再延長 経産省、7月15日まで
https://www.sankei.com/life/news/200612/lif2006120027-n1.html
★若手研究者に7年間で最大5000万円支給へ 独創的な研究を支援
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20200614/k10012469761000.html
創発的研究支援事業です。
「創発的研究支援事業」の公募開始に当たっての文部科学大臣からのメッセージについて
https://www.mext.go.jp/b_menu/houdou/2020/mext_00216.html
本事業は、特定の課題や短期目標を設定せず、多様性と融合によって破壊的イノベーションにつながるシーズの創出を目指す「創発的研究」を推進するため、既存の枠組みにとらわれない自由で挑戦的・融合的な多様な研究を、研究者が研究に専念できる環境を確保しつつ原則7 年間(途中ステージゲート審査を挟む、最大10 年間)にわたり長期的に支援するものです。
評価の声がある一方、結局のところ7年終了してもポスト問題が解決しなければ意味がないという声もあります。
★安倍総理は令和2年度第2次補正予算成立等について会見を行いました
https://www.kantei.go.jp/jp/98_abe/actions/202006/12bura.html
★令和2年度 補正(第2号)各目明細書
https://www.mext.go.jp/a_menu/yosan/h31/1413361_00013.htm
第2次補正予算が成立。
★フィリピンからの入国後に狂犬病を発症した患者(輸入感染症例)の死亡について(続報)
https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_11874.html
患者さんが亡くなられました。ご冥福をお祈りします。狂犬病の怖さを改めて感じます。
★医薬品規制調和国際会議(ICH)総会が開催されました
~3つのガイドラインを新たに採択、各国の薬事規制に取り込みへ~
https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_11785.html
★令和2年版環境白書・循環型社会白書・生物多様性白書の閣議決定について
https://www.env.go.jp/press/108093.html
政府、『気候危機』を指摘し社会変革求める環境白書を決定
https://scienceportal.jst.go.jp/news/newsflash_review/newsflash/2020/06/20200615_01.html
気候変動を「気候危機」と表現 環境白書
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO60279730S0A610C2EAF000/
★QS、世界大学ランキング2021を発表
http://jipsti.jst.go.jp/johokanri/sti_updates/?id=12105
大学ランキングに一喜一憂しない、と毎回書いていますが…。
★「未来からの問い」特設HP/公開対談「新型コロナウイルス後の世界」
http://www.scj.go.jp/ja/member/iinkai/tenbou2020/after-corona.html
★Alexa, do science! Voice-activated assistants hit the lab bench
https://www.nature.com/articles/d41586-020-01683-0
★What Hollywood can teach researchers about scientific storytelling
https://www.nature.com/articles/d41586-020-01731-9
★Thousands of scientists worldwide to go on strike for Black lives
https://www.nature.com/articles/d41586-020-01721-x
Systemic racism: science must listen, learn and change
https://www.nature.com/articles/d41586-020-01678-x
#ShutDownSTEM and the Nature Podcast
https://www.nature.com/articles/d41586-020-01729-3
Note from the editors: Nature joins #ShutDownSTEM
https://www.nature.com/articles/d41586-020-01723-9
IBM will no longer offer, develop, or research facial recognition technology
https://www.theverge.com/2020/6/8/21284683/ibm-no-longer-general-purpose-facial-recognition-analysis-software
Make space for scientists from minority groups to share their experience
https://www.nature.com/articles/d41586-020-01739-1
Lab heads: how have your minority ethnic trainees fared?
https://www.nature.com/articles/d41586-020-01760-4
Rethink economics to help marginalized people
https://www.nature.com/articles/d41586-020-01753-3
How #BlackInTheIvory put a spotlight on racism in academia
https://www.nature.com/articles/d41586-020-01741-7
Researchers around the world prepare to #ShutDownSTEM and ‘Strike For Black Lives’
https://www.sciencemag.org/news/2020/06/researchers-around-world-prepare-shutdownstem-and-strike-black-lives
Time to look in the mirror
https://science.sciencemag.org/content/368/6496/1161.full
人種、差別問題は「そんなのない」という問題否定の誘惑に駆られがちです。問題から目を逸らさず直視することが求められています。
★NIH strengthens policies to alert agency to sexual harassment by grantees
https://www.sciencemag.org/news/2020/06/nih-strengthens-policies-alert-agency-sexual-harassment-grantees
★Prominent Harvard anthropologist put on leave
https://science.sciencemag.org/content/368/6496/1172.full
★米ロサンゼルスで中国人科学者を逮捕、人民解放軍所属のスパイか
https://www.afpbb.com/articles/-/3288155
Fifty-four scientists have lost their jobs as a result of NIH probe into foreign ties
https://www.sciencemag.org/news/2020/06/fifty-four-scientists-have-lost-their-jobs-result-nih-probe-foreign-ties
米中対立は激化。
★Good news: US classrooms are warming to evolution, thanks in part to scientist outreach
https://www.nature.com/articles/d41586-020-01454-x
「創造論を進化論に代わる科学的に有効な選択肢として提示する米国の中等教育学校の生物学教師の割合は、2007年の32%から2019年には18%に減少」とのこと。
★インターンシップを採用に直結 まず院生、産学が試行へ
https://www.asahi.com/articles/ASN6H742BN6HULFA01G.html
採用、学生にガッツ要る?早大の総長、経団連会長に問う
https://www.asahi.com/articles/ASN6H74SCN6CULZU001.html
大学院生がインターンシップに行き、それをもとに採用が決まる…。
かつて私は文科省のポスドクキャリア事業の評価委員をしていましたが、この事業でこうしたインターンシップを行ったところ、企業側の博士に対する評価が上がるなど、高評価でした。
とはいえ、博士課程の研究を中断してインターンシップに出ることに反対論もあり、制度設計は慎重にしなければなりません。
★Don’t let academia consume you
https://www.sciencemag.org/careers/2020/06/don-t-let-academia-consume-you
★How I learned to speak up for myself about authorship
https://www.sciencemag.org/careers/2020/06/how-i-learned-speak-myself-about-authorship