2020年4月7日~2020年4月14日
カセイケン代表 榎木英介
緊急事態宣言から一週間。
私が住む神戸もずいぶんひっそりとした感じがありますが、まだ通勤している人も多く、効果の程が分かりません。
こうしたなか、政府の専門家会議やクラスター班への賛否が議論になっています。
★【緊急提言】日本人が今できる、たった一つのこと
https://newspicks.com/news/4805047/
緊急事態を生きる:新型コロナ 常識通じぬ、長期戦 WHO事務局長上級顧問・渋谷健司さん
https://mainichi.jp/articles/20200414/ddm/012/040/118000c
「東京は手遅れに近い、検査抑制の限界を認めよ」WHO事務局長側近の医師が警鐘
https://diamond.jp/articles/-/234205
キングス・カレッジ・ロンドン教授の渋谷健司氏が積極的に発言しています。ポイントのひとつは検査です。
検査に関しては、流石に流行期の今、数を増やさないといけないことは概ね一致した意見と思われます。
★医師4473人に聞いた「新型コロナウイルス感染症に対する検査の実施基準」
接触歴あれば無症状でも「PCR検査すべき」64%
84%が症状・肺炎像だけで「全員検査すべき」
https://medical.nikkeibp.co.jp/leaf/mem/pub/report/t344/202004/565117.html
検査を増やすべきという意見は、山中伸弥教授や渋谷氏自身が加わった提言の中でも言われています。
★徹底的なPCR検査を強く求める 山中伸弥教授が5つの提言
https://scienceportal.jst.go.jp/news/newsflash_review/newsflash/2020/04/20200408_01.html
★新型コロナ PCR検査充実、著名医師ら提言
https://mainichi.jp/articles/20200409/ddm/012/040/088000c
5人中4人が無症状とも……現役医師が訴える「“三密自粛”だけでは、もう医療崩壊を防げない」
https://headlines.yahoo.co.jp/article?a=20200410-00037134-bunshun-soci
COVID-19対策への緊急提言
https://bunshun.jp/articles/37134
2ヶ月ほど前には、まだ患者さんが少なく、検査前確率が低いので、検査の効果は限定的だというのが大勢でした。
蔓延期では検査前確率が高まっているので、検査の効果があるということだと思いますが、初期からもっと検査せよと言っていた方々の間では、最初から検査をやっておけばという声が聞かれます。
だから言わんこっちゃない、という意見を勝ち誇ったように言うのはどうかと思いますが、蔓延期に向けて検査をやるかやらないかは別にして、できるような体勢にしておくべきだったと言うのはその通りでしょう。
なんで準備ができていないのでしょうか。
★安倍1強にも医系の「聖域」 検査・薬で厚労省と溝
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO57942260Q0A410C2EA2000/
当初検査を絞ったのは、検査陽性者を症状のいかんに関わらず入院させなければならないと言う事情もあったのでしょう。
また、私自身は検査部門に近いところで働いているので、臨床検査技師の方々や保健所の方々のマンパワー不足などが検査を増やしたくても増やせないことに関わっているのかと思っていました。
輸送などの問題も大きいと言う話もありました。
ただ、それだけでは説明できない部分もあるようです。民間の検査会社の能力がフル活用されていないと言う情報もあります。
検査がなぜ増やせないか、増えないかについて、政府は包み隠さず情報を出すべきだと思います。でないと陰謀論や不満、不信が増大するばかりです。
また、最近思っているのは、情報発信などに政府の影があまり見えないことです。
★コロナ禍で専門家や学会が積極的に発信 専門家有志の会が感染者に『あなたは悪くない』
https://scienceportal.jst.go.jp/news/newsflash_review/newsflash/2020/04/20200413_02.html
政府にも関わる専門家を含む有志が、自ら情報発信をしており、西浦博教授はTwitterで盛んに発言しています。
政府の専門家会議やクラスター班の位置づけが曖昧で、本来の仕事ではない広報、人々への啓蒙等までやっている感じです。
多分それは個人的義憤や責任感から来ており、「善意」であるのは間違いありません。
「このままでは8割減できない」 「8割おじさん」こと西浦博教授が、コロナ拡大阻止でこの数字にこだわる理由
https://www.buzzfeed.com/jp/naokoiwanaga/covid-19-nishiura
しかし、これは大変危ないことはのではないかと思ってしまいます。
政策の責任を取るのは政府であり、政治家です。映画シン・ゴジラでは、矢口蘭堂と政治家のキャラクター(長谷川博己)が前面に出ていましたが、今回は本来権限のない西浦教授です。
行動制限を行うことによる経済や社会の破綻によって、感染症ではない原因で亡くなる方が増えるかもしれません。
★不急の手術延期を提言 「医療従事者の安全最優先」 医学系10団体
https://mainichi.jp/articles/20200408/k00/00m/040/256000c
私は病理診断を行なっていますが、どの病院でも検体が激減しています。不急を減らすだけならいいですが、必要な手術ができない人が出てくる可能性が高いのではないかと思っています。
★Polio, measles, other diseases set to surge as COVID-19 forces suspension of vaccination
https://www.sciencemag.org/news/2020/04/polio-measles-other-diseases-set-surge-covid-19-forces-suspension-vaccination-campaigns
Pandemic brings mass vaccinations to a halt
https://science.sciencemag.org/content/368/6487/116.full
★Why measles deaths are surging - and coronavirus could make it worse
https://www.nature.com/articles/d41586-020-01011-6
他の疾患の蔓延の可能性もあるわけです。
新型コロナによる死か、経済、あるいは社会の破綻による死か、どちらを選べと言うような極めて厳しい選択を、あたかも西浦教授やクラスター班、専門家会議が行ったかのようなイメージがついてしまった時、どのようなことが起こるか…。
専門家が恨みを一手に背負い、テロ行為に遭うことさせ想定されます。考えすぎならば良いのですが…。
それは本来責任を取るべき政治家にスケーブゴートにされると言うことです。
こうしたことが起こるのは、科学的助言の体制が不十分だから言えるわけです。
★科学的な助言体制の点検急げ 有本建男氏
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO57814990Y0A400C2SHE000/
今回のパンデミックで、わが国は初期対応で政治が先走ったとの見方もあるが、現在ではリスク評価を担う専門家会議の見解を受けて政治が決定する標準的な状態になっているとみている。緊急時対応では、リスク評価とリスク管理の分離が十分でない場合が多い。米国や英国でも想定外の事態に対して助言体制に混乱が見られるが、次第に責任体制が確立しプロセスの情報公開もなされている。
今の危機的な状況の中で、本来主導的な役割を果たしうるのは科学アカデミーであり、日本の場合は日本学術会議です。
★新型コロナウイルス感染症の世界的流行に係る国際協力の緊急的必要性について G サイエンス学術会議共同声明(仮訳)
http://www.scj.go.jp/ja/info/kohyo/pdf/kohyo-24-gs2020-1j.pdf
The critical need for international cooperation during COVID-19 Pandemic
http://www.scj.go.jp/ja/info/kohyo/pdf/kohyo-24-gs2020-1.pdf
新型コロナウイルス感染症に係るGサイエンス学術会議共同声明の公表に際しての日本学術会議会長談話
http://www.scj.go.jp/ja/info/kohyo/pdf/kohyo-24-d6.pdf
今回の場合、日本学術会議の影はかなり薄いと言わざるを得ません。
一部から厳しい批判を浴びている西浦教授やクラスター班を見ていると、科学的助言の構造問題を感じざるを得ません。
★President of Europe’s premier science funder resigns amid criticism that he neglected post
https://www.nature.com/articles/d41586-020-01075-4
Top EU scientist pushed out over coronavirus spat
https://www.sciencemag.org/news/2020/04/top-eu-scientist-pushed-out-over-coronavirus-spat
European Research Council President Resigns in Protest
https://www.the-scientist.com/news-opinion/european-research-council-president-resigns-67395
ERCのトップが、新型コロナウイルスの対応が不適切であるなどの理由で辞任に追い込まれました。
ネット上では今は政府などを批判をすべきではないと言う意見もありますが、批判は重要だと思います。もちろん助言や提言も。
ただ、提言や批判は空に向かって言うものでもなく、「ほら見たことか」と言うためでもなく、今の危機を打破するために行うものです。
もちろん、市井の人々がSNS上に意見や不満、時に罵声を言う権利は大切にしなければなりません。
しかし、大学教員などの地位にある人たちが、安全圏から現実にコミットせず批判するのは残念だと言わざるを得ません。
私たちは政府や大学とは無関係の独立した市井の人間として、政策や専門家を見つめるために団体を作ったり、フリーランスになったりしました。
そういう意味で、独立した専門家というのはとても重要だということは知っています。
ただ、危機の今、能力のある人は渦中の栗を拾って世界を救って欲しいと思います。そうでなくとも、提言や批判が重要だと信じるなら、それを空(サイバースペース)ではなく、しかるべきところに持っていき、実現させる行動を撮ってほしいと切に思います。
★NEWSFLASH:医療従事者、52カ国2万2000人感染
https://mainichi.jp/articles/20200413/dde/001/040/028000c
医療従事者の感染、そして死が相次いでいます。医師として非常に心が痛み、また危機感を感じます。
立場を超えて英知を結集する、この状況を救う「ヤシオリ作戦」を行う覚悟を、政府も持って欲しいと思います。専門家を矢面に立たせるのではなく。
★特集ワイド:「コロナの時代の僕ら」出版へ イタリア人作家ジョルダーノさん いま考えること忘れまい 国ではなく全人類の問題
https://mainichi.jp/articles/20200413/dde/012/040/016000c
何を守り、何を捨て、僕らはどう生きていくべきか。『コロナの時代の僕ら』全文公開【終了/著者あとがきのみ継続】
https://www.hayakawabooks.com/n/nb705adaa4e43
全文公開がされており、読んだ方も多かったと思います。
この危機に文学、文化、学術の力は非常に重要です。
★要望書書面 「非常勤講師に賃金補償を!」賛同6150名超、感謝。
https://bit.ly/3cdWc7Q
★新型コロナ 緊急事態宣言 文化の喪失懸念 劇作家・平田オリザ氏の話
https://mainichi.jp/articles/20200409/ddm/041/040/059000c
危機に直面する文化をアフターコロナの時代に残すために何をすべきか…。
★第1回「新型コロナ対策のための全国調査」の結果及び第3回「新型コロナ対策のための全国調査」の実施のお知らせ
https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_10798.html
★新型コロナ・緊急事態:在宅だけど…ハンコのため出社 日本独特の文化壁 申請書に上司印、契約書に会社印
https://mainichi.jp/articles/20200410/dde/041/040/035000c
緊急事態とはいえ、休めない人は多く、こんな旧態依然とした慣習のために感染の危機が減らないわけです。
★Taiwan's coronavirus response is among the best globally
https://edition.cnn.com/2020/04/04/asia/taiwan-coronavirus-response-who-intl-hnk/index.html
★‘Suppress and lift’: Hong Kong and Singapore say they have a coronavirus strategy that works
https://www.sciencemag.org/news/2020/04/suppress-and-lift-hong-kong-and-singapore-say-they-have-coronavirus-strategy-works
★欧米が称賛する韓国コロナ対策 6つの注目点
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO57703240W0A400C2000000/
韓国、台湾、シンガポール、香港の対策が高評価を得ています。小さな国も多いし、各国の事情があるので、単純に参考にはできませんが、良いところは取り入れる柔軟性が必要です。
★Refugees face double coronavirus emergency
https://www.scidev.net/global/migration/news/refugees-face-double-coronavirus-emergency.html
日本ではあまり深刻ではありませんが、日本の場合ホームレスなどのことを考えなければいけません。
★How I’ve connected with other scientists online during the COVID-19 pandemic
https://www.sciencemag.org/careers/2020/04/how-i-ve-connected-other-scientists-online-during-covid-19-pandemic
★Early-career scientists at critical career junctures brace for impact of COVID-19
https://www.sciencemag.org/careers/2020/04/early-career-scientists-critical-career-junctures-brace-impact-covid-19
★Ten work-life balance tips for researchers based at home during the pandemic
https://www.nature.com/articles/d41586-020-01059-4
★Support early-career researchers for post-pandemic prospects
https://www.nature.com/articles/d41586-020-01031-2
★Six ways to juggle science and childcare from home
https://www.nature.com/articles/d41586-020-01060-x
★Opinion: Lab Work Under Isolation
https://www.the-scientist.com/news-opinion/opinion-lab-work-under-isolation-67398
研究も大きな影響を受けています。日本でも大学がロックアウトされて研究できないというところも出てきました。
★CRISPR pioneer Doudna opens COVID-19 testing lab
https://www.bionews.org.uk/page_148961
COVID-19に関わらないと生き残れないということもあるし、また、その能力をCOVID-19対応に回すことで貢献してほしいという思いもあります。
★Study Questions if School Closures Limit the Spread of COVID-19
https://www.the-scientist.com/news-opinion/study-questions-if-school-closures-limit-the-spread-of-covid-19-67390
学校に行けない子供が何億人もいます。根拠は…
★Protecting older adults during social distancing
https://science.sciencemag.org/content/368/6487/145.1
以下COVD-19以外。
★我が国の企業の研究費と売上高
- 科学技術週間(4/13~4/19)にちなんで- (科学技術研究調査の結果から)
http://www.stat.go.jp/data/kagaku/kekka/topics/topics124.html
科学技術週間であることなど忘れそうでした。
★科学技術の状況に係る総合的意識調査(NISTEP定点調査2019)[NISTEP REPORT No.184, 185]の公表について
https://www.nistep.go.jp/archives/44176
★長期のインプット・アウトプットマクロデータを用いた日本の大学の論文生産の分析[DISCUSSION PAPER No. 180]の公表について
https://www.nistep.go.jp/archives/44181
★日本科学未来館 新館長(浅川 智恵子 IBM フェロー)就任予定について
https://www.jst.go.jp/pr/info/info1424/index.html
★提言
マイクロプラスチックによる水環境汚染の 生態・健康影響研究の必要性とプラスチックの ガバナンス
http://www.scj.go.jp/ja/info/kohyo/pdf/kohyo-24-t288-1.pdf
★Nature to join open-access Plan S, publisher says
https://www.nature.com/articles/d41586-020-01066-5
★ハゲタカジャーナルで査読を行う研究者たち
https://www.editage.jp/insights/study-reveals-predatory-journals-are-reviewed-majorly-by-junior-researchers
★カリフォルニア大学とPLOSが、若手研究者に恩恵のあるOA協定に合意
https://www.editage.jp/insights/university-of-california-and-plos-sign-open-access-deal-for-early-career-researchers%E2%80%99-benefit
★JST、「世界科学フォーラム2019宣言」の和訳を作成・公開
http://jipsti.jst.go.jp/johokanri/sti_updates/?id=11946
★岩手の観測所、ブラックホール研究暗転 予算大幅減/退職者補充なし
https://mainichi.jp/articles/20200409/dde/007/040/027000c
ブラックホール撮影から1年…国立天文台水沢観測所が予算半減 本間教授「国際的にも影響」
https://mainichi.jp/articles/20200409/k00/00m/040/048000c
★中国が、研究状況を改善するための新ガイドラインを発表
https://www.editage.jp/insights/china-releases-new-policy-to-improve-the-country%E2%80%99s-research-landscape
★日本における学術研究団体(学会)の現状
https://www.jstage.jst.go.jp/article/ejgeo/15/1/15_137/_article/-char/ja/