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参院文教科学委員会での議論

やや旧聞に属しますが、ポスドク問題が議論されていました。鈴木寛議員(民主)の質問から。

2009年6月18日 文教科学委員会

鈴木寛君 私どもはやっぱり年収八百万円以下のところはもう、先ほどの私立の場合は文系九十万、理系百二十万、これぐらい要るわけですから、そこに対してきちっとこたえていく。あるいは、さらに、低所得家庭のところは生活費の部分も、これドイツとかフランス等というのはやっていますね、奨学金、生活費の部分も。こうしたこともやっていくべきだと我々は考えております。
 そして、じゃ、資料六を御覧いただきたいんですが、今日はずっと我が国の研究開発の体制を議論しているわけでありますけれども、日本の博士号授与者というのは少ないんですね。お隣の中国はもう既に四万人、日本は一万七千人です。しかも、中国は十年前は五千人だったんです。これが十年間で十倍になりました。私も年何回も中国の清華大学に伺っております。大変な活力、元気で、レベルもやっぱり清華大学ぐらいになりますと非常に国際的にも水準の高い研究をやっておられますし、人材育成をやっておられます。私は、このままいくと埋没してしまうんじゃないかということを大変危惧をしているわけであります。ドイツ、イギリスも、日本よりも多くの博士を養成をしていると、こういうことであります。
 この前、私はちょっと新聞を見まして、報道を見て疑ったわけでありますけれども、文部省が国立大学等々に対してポスドクの問題があるので博士課程を減らせというようなことを求めたという報道があって、もちろんポスドクの問題はこれ大事です。しかし、ポスドクの問題は博士課程を減らして解決するんじゃなくて、ドクターを持った人たちがちゃんとその能力を生かし得る職場、活躍の場を増やすことによってポストドクター問題は解決すべきなんであって、方向が全く真逆だというふうに思って、このことはもう絶対委員会で聞かなきゃいけないなと思ったんですけれども、この報道は事実ですか。
○政府参考人(徳永保君) 文部科学省におきましては、先日、国立大学法人法によりまして、文部科学大臣が中期目標期間終了時に国立大学法人の組織及び業務全般にわたる検討を行い、その結果に基づき所要の措置を講ずるものとされていると、こういう法律の規定に従いまして、去る六月五日に、各国立大学法人に対して、それぞれの組織及び業務全般の見直しの内容を求める決定を行い、このことを通知したわけでございます。
 こういった中には、大学院の博士課程についても入学定員や組織を見直すということについて求めておりますが、これは単に大学院の博士課程だけについて言ったものではなく、法科大学院でございますとか教員養成学部、あるいはまた他の学部、附置研究所その他すべての大学の教育研究組織について所要の見直しを行うということを求めたものでございます。
 私どもの方は、その新聞報道ではポスドク云々ということで書かれているわけでございますが、決してそのポスドク問題に対処するためこういうことを通知したものではございませんで、あくまでも、各大学がそれぞれの置かれている状況、そしてそれぞれの御判断によりまして機能別分化を促していく。
 大学によりましては、より大学院博士後期課程に中心を置いて研究者養成あるいは研究といったことに重点を置いている大学、そういったものもあろうと思っておりますし、あるいはまた、修士課程あるいは学部教育といったことにおきまして高度専門職業人の養成に重点を置いている大学、そういったものあろうと思っております。あるいはまた、大学によっては学部等におけるリベラルアーツといったことに重点を置く大学があろうと思っております。
 そういう意味で、それぞれの大学が、それぞれの置かれている状況あるいは自分たちのお考えといったことを踏まえ、さらにはまた、具体的に、現に設定をしております収容定員の充足状況、あるいはそれぞれの修了者の具体的な社会的需要、こういったことを踏まえて各法人が状況に応じた見直しを促すものでございまして、何か定員を一律に削減をするということを求めているものではございません。
 したがって、当然、その見直しの結果については、ある大学によってはむしろ研究面の機能強化ということから、大学によっては学部の入学定員を減らし博士課程の方により重点を置いている大学もあろうかと思っております。
 そういう意味では、それぞれの大学がそれぞれの大学の機能といったものを十分お考えの上で、それぞれ言わばどういった方向に進んでいくのか、そういったことの観点から、その持っている教育研究組織全体の見直しを求める、そういった意味での通知でございます。
鈴木寛君 是非、誤ったメッセージを出すことなく、きちっと今の点をもう一回確認していただきたいと思います。
 それで、これ、日本のやっぱり将来を考えたときに、大学後期課程、特に大学院、この教育の充実あるいは研究の充実というのはもう絶対不可欠なんですね。人口千人当たりの大学院の学生数、日本は二人です。アメリカは九人です。イギリスも九人です。フランスも九人です。韓国は六人です。ここを変えていかない限り、知的立国、人材立国ということはあり得ない。
 なぜこうなってしまったか。日本は、高等教育にGDPの〇・四%しかお金をつぎ込んでいないからです。アメリカですら、税金で一・二、そしてそれをはるかに上回る額の民間からの資金が大学に直接、教育に投ぜられていますから、アメリカだってGDPの二%をはるかに超える。フィンランドだって、これは税金で二%の高等教育費がつぎ込まれている。この結果がまさに二対九にきれいに表れているんです。
 そのことを是非きちっと御理解をいただきながら、この大学に対するこれからまた中期目標などを提示していくんだと思いますが、心していただきたいというふうに思います。
 そこで、その上でしかし、ポストドクター問題はちゃんと解決しなければいけません。そのために今回の二千七百億円の基金がちゃんと使われるということは私は大事だというふうに思っております。
 まず、私の考えを申し上げたいと思います。
 一つ目は、今回の二千七百億のテーマ選定については、きちっとポストドクター問題の解決に資する、つまりは、そういうふうな能力を持った人たちが単にいわゆる物理的な労働を提供するということじゃなくて、知的な貢献をできる活躍の場を与えていただくという観点からこのプログラム選定を是非やっていただきたいということが一点でございます。
 それから、今回は、これは事前に確認を、私どもの部門会議でも確認をさせていただきましたが、内閣府文部科学省が国会議員に持って回っております資料によりますと、三十課題程度を選ぶと、この世界最先端研究支援強化プログラムとしてというふうになっておりますが、このことは役所間の議論のバックデータであって、このことは国会の予算の審議、補正予算の審議、いわんや今回のこの学振法の改正の審議に全くそこは含まれていないという前提で私どもはこの法案に賛成しています。つまりは、二千七百億円を三十課題に振り分けるということについて、私どもは反対でございます。
 この選定に当たっては、まずやっていただきたいことがあります。つまり、第二段階としては日本の科学技術費全部についてでありますけれども、まずこの三千億円については、二千七百億円ぐらいあるわけでありますから、その十億でも二十億でも確保して、より望ましい研究プログラムあるいは研究プロジェクトのテーマの採択の在り方、あるいはその研究チームの採択の在り方、選定の在り方、ここを科学的にやっていただきたい。今回まさに十億とか二十億取って、過去の今までのそういったこの手の選定がどうだったのかと、これをやっぱりレビューしていただきたい。
 あるいは、ほかの国あるいはほかの機関、民間の機関、大学、いろんなところが研究テーマを選ぶ、そしてそれを担う人を選ぶと、こういうことをやっています。そこはもちろんそれぞれの目的あるいはそれぞれの主体の特徴によって違っていいわけでありますが、私が申し上げたいことは、きちっと我が国の研究開発についてのポートフォリオ、これをちゃんと組むということが重要だというふうに思っています。そのためには、今まで研究分野別の議論はありましたけれども、そうではなくて、若い方々の大変いろんな発想を生かすという分野、そこに例えば二千七百億あればその五百億ぐらいは使ってみるとか。
 あるいは、今回の削除させていただいた意義は、緊急経済対策でやるのではなくて、まさに将来の我が国の社会経済の発展基盤になるという観点、その観点をブレークダウンするといろんな観点があると思います。要するに、直接的産業波及効果だけではなくて、むしろそれよりも、ちゃんと人材を育成するだとか、あるいは他の学問への波及だとか、あるいはその基盤になる研究だとか、様々な観点からきちっと目的のポートフォリオを決めると、その分野にそれぞれまた金額を分けていく。その分野の中でハイリスク・ハイリターンなものを、ローリスク・ローリターンなものを、あるいは短期的にある程度決着が付くものを中期的、長期的な観点から取り組む。
 そういう立体的な観点から戦略的にきちっとまず調査をし、そして考え方をまとめて、その考え方の下にこの二千七百億の選定というものをきちっとやっていただきたい。ゆめゆめ経済界から事前に頼まれている三十テーマをそのまま追認をするというような愚策はやめていただきたいということを申し上げておきたいと思います。
 それから、今回、総合科学技術会議がおやりになるそうでありますが、この事務局体制、まだまだそういった意味でいわゆる政策科学としての科学技術政策のプロが入っていません。そこは、国立の研究所であります科学技術政策研究所の協力あるいは連携なども深めて、こうした観点からきちっとやっていただきたいということをお願いを申し上げておきたいと思います。
 何か御答弁があればお伺いしたいと思います。
○政府参考人(西川泰藏君) お答え申し上げます。
 幾つか御質問いただきましたが、まずポスドクの問題に絡めて、こういった若い方々がきちっと活躍できるような、そういった機会の提供に努めるべきだという御指摘でございます。御指摘のとおりだと思っておりまして、今回このプログラムを進めるに当たりまして、具体的な研究課題等を選ぶ基準、これ総合科学技術会議で検討して決定されることになるわけでございますが、委員御指摘のとおり、ポスドク等の若手の研究者が活躍できるような、そういった要素も非常に重要だと思っておりまして、したがいまして、課題の選定に当たりましては、そういった点も含めて判断要素の一つになり得るものであるというふうに考えているところでございます。
 また、三十課題という点につきましては、これは、委員御指摘のとおり、これある種の目安でございまして、具体的な公募及び公募課題の、応募課題の審査の結果、柔軟に内容に応じて課題を選定するというのが基本でございます。また、ポートフォリオをきちっと考えるべきだという点につきましても御指摘のとおりだと思っております。
 他方で、このプログラムはいわゆる公募を考えておりますので、今の段階でどういった課題を採択しますということを申し上げることはできないということは御理解いただければと思いますけれども、私どもとしましては、非常に基礎的な研究、国民に夢と希望を与えられるようなそういう、あるいは高度な人材の育成、あるいはその波及効果が期待できるような基礎的な研究から出口志向の政策的な課題の解決につながるようなそういったプログラムまで、幅広くそういう課題が選定されるように努力をしてまいりたいというふうに考えているところでございます。
 以上でございます。