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第三期科学技術基本計画を読む〜その2 重点分野

 さてさて、パブリックコメントの締め切りまで間がないので、どんどん読んでいこう。

 科学技術基本計画の特徴は、重点領域を決めているところである。これが科学技術政策の司令塔たるゆえんであるし、トップダウンと批判もうけるわけだが、それはともかく、三期計画の重点領域を見ていこう。

 はじめにこんなことが書かれている(P10)

これまでの重点化の進捗と成果、今後の我が国の経済社会状況や国際的な情勢を展望すれば、効果的・効率的な科学技術政策の推進という観点から投資の重点化は引き続き重要であり、政府研究開発投資の戦略的重点化を更に強力に進める。その際、第3期基本計画においては、第2期基本計画で進めた研究分野の重点化にとどまらず、分野内の重点化も進め選択と集中による戦略性の強化を図るとともに、基本計画において基本理念の下で新たに設定する6つの政策目標との関係を明確にしていく。

 で、何に重点をおくのか。

1.基礎研究の推進
 人文社会科学も含めて、と明記されている。

基礎研究には、人文・社会科学を含め、研究者の自由な発想に基づく研究と、政策に基づき将来の応用を目指す基礎研究があり、それぞれ、意義を踏まえて推進する。すなわち、前者については、新しい知を生み続ける重厚な知的蓄積(多様性の苗床)を形成することを目指し、萌芽段階からの多様な研究や時流に流されない普遍的な知の探求を長期的視点の下で推進する。一方、後者については、次項以下に述べる政策課題対応型研究開発の一部と位置付けられるものであり、次項2.に基づく重点化を図りつつ、政策目標の達成に向け、経済・社会の変革につながる非連続的なイノベーションの源泉となる知識の創出を目指して進める。

 ただ、そうは言っても基本計画。これに続いて重点領域に関する記述が出てくる。

2.政策課題対応型研究開発における重点化
(1)「重点推進4分野」及び「推進4分野」

 第二期計画では、ライフサイエンス、情報通信、環境、ナノテクノロジー・材料の4分野を取り上げ、重点的に推進してきた(重点4分野)。なぜこれらを指定したのか、理由は以下である。

1)3つの基本理念への寄与度(科学技術面、経済面、社会面)が総合的に見て大きい分野であること。
2) 国民の意識調査から見て期待や関心の高い分野であること。
3)各国の科学技術戦略の趨勢を踏まえたものであること。
4) 戦略の継続性、研究現場への定着等実際的な観点からも適切であること。

三期ではこれに加えのエネルギー、ものづくり技術、社会基盤、フロンティアの4つの分野を「推進4分野」に指定している。

 この8分野は、以下の点に留意するという。

1)デルファイ調査などにより科学的インパクト、経済的インパクト、社会的インパクトを軸とした将来的な波及効果を客観的に評価すること。
2)我が国の国際的な科学技術の位置・水準を明確に認識(ベンチマーク)した上で投資の必要性を明確化すること。(強みを活かし競争優位を確実にする研究開発課題なのか、強い社会ニーズがあり課題解決すべき研究開発課題なのか、パラダイムシフトを先導する研究開発課題なのか等)
3)知の創造から社会・国民への成果還元に至る各々の研究開発の段階に応じて、本計画で設定された政策目標達成への貢献度、達成までの道筋等の観点から、投資の必要性を明確化すること。
4)官民の役割を踏まえ、研究開発リスク、官民の補完性、公共性等の観点から、投資の必要性を明確化すること。

 そして、この8分野は、たとえ三期の期間中であっても評価されるという。

8つの分野で策定される分野別推進戦略について、最新の科学技術的な知見、新興領域・融合領域等の動向を踏まえて、基本計画期間中であっても、必要に応じて重要な研究開発課題や戦略重点科学技術等に関しての変更・改訂を柔軟に行う。また、総合科学技術会議による資源配分方針立案に向けた最新知見の吸収、概算要求前の資源配分方針の提示、概算要求に対する優先順位付け等の実施、次年度の資源配分方針立案に向けた準備といった年間の政策サイクルを確立し、関係府省や研究機関のネットワーク・連携を進める基盤となる「活きた戦略」を実現していく。


 さらに、この8分野以外で重要だと考えられる領域を戦略重点科学技術として選定するという。選定基準は以下のとおり。

1)近年急速に強まっている社会・国民のニーズ(安全・安心面への不安等)に対し、本計画5期間中において集中投資することにより、科学技術からの解決策を明確に示していく必要があるもの。
2)国際的な競争状態及びイノベーションの発展段階を踏まえると、基本計画期間中の集中投資・成果達成が国際競争に勝ち抜く上で不可欠であり、不作為の場合の5年間のギャップを取り戻すことが極めて困難なもの。
3)国が主導する一貫した推進体制の下で実施され世界をリードする人材育成にも資する長期的かつ大規模なプロジェクトにおいて、国家の総合的な安全保障の観点も含め経済社会上の効果を最大化するために基本計画期間中に集中的な投資が必要なもの。

 1)では「国際テロ、大量破壊兵器の拡散、地震・台風等による大規模自然災害・事故、SARS・鳥インフルエンザ等の新興・再興感染症」、2)では抽象的だが「既存の知の体系の根源的な変革や飛躍的な
進化に向けた研究競争が激化しているもの、我が国固有の強みを活かして追随が困難な高付加価値化を一刻も早く確立すべき段階にあるもの、大きな付加価値獲得に波及する限界突破を狙う国際競争をリードする好機に至っているもの」、3)は「、次世代スーパーコンピューティング技術、宇宙輸送システム技術」を想定しているという。

 以上重点分野をみてみた。次は私たちにも関心の深い科学技術システム改革である。これは別エントリーにて。