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第三期科学技術基本計画を読む〜その三、システム改革

 さて、ぼやぼやしていると時間がなくなるので、がーっといこう。

 14ページからの第3章 科学技術システム改革は、おそらく現場の研究者に最も関わってくることだ。非常に重要な案が書かれている。

 個々の人材が活きる環境の形成
1)公正で透明性の高い人事システムの徹底
 能力主義に基づく公正で透明性の高い人事システムの徹底をうたっている。具体的にどうするか。

研究者の採用において、公募等の開かれた形で幅広く候補者を求め、性別、年齢、国籍等を問わない競争的な選考を行う。また、研究者の処遇において、能力や業績の公正な評価の上で、優れた努力に積極的に報いる。

 これは皆が望んできたことだ。年齢、性別に関しては、ぜひ早急に実現させるべきだ。

国は、組織に対する競争的な支援制度において、制度の趣旨に応じ人事システム改革の状況を審査の一指標とすること等により、大学や公的研究機関の取組を促進する

ということなので、ある程度の強制力を使うということだろう。

2)若手研究者の自立支援
 「若手研究者に自立性と活躍の機会30を与える仕組みを導入することを奨励する」とのこと。そのために以下のことをするという。

国は、このための環境整備(スタートアップ資金の提供、研究支援体制の充実、研究スペースの確保等)に組織的に取り組む大学等を支援するとともに、大学等の取組状況を組織に対する競争的な支援制度の審査の一指標とする。また、若手研究者が研究スペースを確保できるような大学の施設マネジメントを促進する。

 若手研究者に独立したスペースを与えるという案は、実力ある若手研究者から聞かれる。これが実現されれば、若手が精神的にも自由に研究ができるかも知れない。

 また、若手に対して「スタートアップ時期に配慮したプログラムの設置や、若手研究者自らが研究組織を率いて研究を遂行できる金額が支給されるプログラムの拡充に配慮する」とのこと。はじめて独立する若手にはうれしい話だと思う。

 そして、ここからがサイコムジャパン的にも関心があるところだ。

なお、ポストドクター等1万人支援計画が達成され、ポストドクターは今や我が国の研究活動の活発な展開に大きく寄与しているが、ポストドクター後のキャリアパスが不透明であるとの指摘がある。このため、研究者を志すポストドクターは自立して研究が行える若手研究者の前段階と位置付け、若手研究者の採用過程の透明化や自立支援を推進する中でポストドクター支援を行う。また、ポストドクターに対するアカデミックな研究職以外の進路も含めたキャリアサポートを推進するため、大学や公的研究機関の取組を促進するとともに、民間企業等とポストドクターの接する機会の充実を図る。

 これが、概算要求7億円で話題になった競争的資金の話にもつながる。

 そのほか3)人材の流動性の向上では「「若手一回異動の原則」の奨励」を、4)自校出身者比率の抑制では「国は、各大学の教員の職階別の自校出身者比率を公表する」とのこと。

 5)では多様で優れた研究者の活躍の促進として、女性、外国人、高齢者の活用をうたっている。一部には女性を他の二つといっしょに論じるのはおかしいとの声もあるが、

現在の博士課程(後期)における女性の割合に鑑みると、期待される女性研究者の採用目標は、自然科学系全体としては25%(理学系20%、工学系15%、農学系30%、保健系30%)である

 と明確な数値目標を入れている点などは注目に値する。これに対してはアファーマティブアクションではないかとの指摘もある。

 とりあえずこの辺で。