科学・政策と社会ニュースクリップ

科学政策や科学コミュニケーション等の情報をクリップしていきます。

「新成長戦略」〜「元気な日本」復活のシナリオ〜

本日(6月18日)、「「新成長戦略」〜「元気な日本」復活のシナリオ〜」が閣議決定された。

早速科学技術の部分を抜粋。

p3-4

これらの成長分野を支えるため、第五の「科学・技術・情報通信立国戦略」の下で、我が国が培ってきた科学・技術力を増強する。効果的・効率的な技術開発を促進するための規制改革や支援体制の見直しを進め、我が国の未来を担う若者が夢を抱いて科学の道を選べるような教育環境を整備するとともに、世界中から優れた研究者を惹きつける研究環境の整備を進める。イノベーション促進の基盤となるデジタルコンテンツ等の知的財産や産業の競争力を高めるクラウドコンピューティング等の情報通信技術の利活用も促進する。

p15-16

第3章 7つの戦略分野の基本方針と目標とする成果
強みを活かす成長分野
(1)グリーン・イノベーションによる環境・エネルギー大国戦略
【2020 年までの目標】
『50 兆円超の環境関連新規市場』、『140 万人の環境分野の新規雇用』、『日本の民間ベースの技術を活かした世界の温室効果ガス削減量を13 億トン以上とす
ること(日本全体の総排出量に相当)を目標とする』

(「世界最高の技術」を活かす)
我が国は高度成長期の負の側面である公害問題や二度にわたる石油危機を技術革新の契機として活用することで克服し、世界最高の環境技術を獲得するに至った。
ところが今日では、数年前まで世界一を誇った太陽光発電が今ではドイツ・スペインの後塵を拝していることに象徴されるように、国際競争戦略なき環境政策によって、我が国が本来持つ環境分野での強みを、必ずしも活かすことができなくなっている。

(総合的な政策パッケージにより世界ナンバーワンの環境・エネルギー大国へ)
気候変動問題は、もはや個々の要素技術で対応できる範囲を超えており、新たな制度設計や制度の変更、新たな規制・規制緩和などの総合的な政策パッケージにより、低炭素社会づくりを推進するとともに、環境技術・製品の急速な普及拡大を後押しすることが不可欠である。
したがって、グリーン・イノベーション(環境エネルギー分野革新)の促進や総合的な政策パッケージによって、我が国のトップレベルの環境技術を普及・促進し、世界ナンバーワンの「環境・エネルギー大国」を目指す。

このため、すべての主要国による公平かつ実効性ある国際的枠組みの構築や意欲的な目標の合意を前提として、2020 年に、温室効果ガスを1990年比で25%削減するとの目標を掲げ、あらゆる政策を総動員した「チャレンジ25」の取組を推進する。

(グリーン・イノベーションによる成長とそれを支える資源確保の推進)
電力の固定価格買取制度の拡充等による再生可能エネルギー(太陽光、風力、小水力、バイオマス、地熱等)の普及拡大支援策や、低炭素投融資の促進、情報通信技術の活用等を通じて日本の経済社会を低炭素型に革新する。安全を第一として、国民の理解と信頼を得ながら、原子力利用について着実に取り組む。
蓄電池や次世代自動車、火力発電所の効率化、情報通信システムの低消費電力化など、革新的技術開発の前倒しを行う。さらに、モーダルシフトの推進、省エネ家電の普及等により、運輸・家庭部門での総合的な温室効果ガス削減を実現する。
電力供給側と電力ユーザー側を情報システムでつなぐ日本型スマートグリッドにより効率的な電力需給を実現し、家庭における関連機器等の新たな需要を喚起することで、成長産業として振興を図る。さらに、成長する海外の関連市場の獲得を支援する。
リサイクルの推進による国内資源の循環的な利用の徹底や、レアメタルレアアース等の代替材料などの技術開発を推進するとともに、総合的な資源エネルギー確保戦略を推進する。

p18

(2)ライフ・イノベーションによる健康大国戦略
【2020 年までの目標】
『医療・介護・健康関連サービスの需要に見合った産業育成と雇用の創
出、新規市場約50 兆円、新規雇用284 万人』

(医療・介護・健康関連産業を成長牽引産業へ)
我が国は、国民皆保険制度の下、低コストで質の高い医療サービスを国民に提供してきた結果、世界一の健康長寿国となった。世界のフロンティアを進む日本の高齢化は、ライフ・イノベーション(医療・介護分野革新)を力強く推進することにより新たなサービス成長産業と新・ものづくり産業を育てるチャンスでもある。

したがって、高い成長と雇用創出が見込める医療・介護・健康関連産業を日本の成長牽引産業として明確に位置付けるとともに、民間事業者等の新たなサービス主体の参入も促進し、安全の確保や質の向上を図りながら、利用者本位の多様なサービスが提供できる体制を構築する。誰もが必要なサービスにアクセスできる体制を維持しながら、そのために必要な制度・ルールの変更等を進める。

(日本発の革新的な医薬品、医療・介護技術の研究開発推進)
安全性が高く優れた日本発の革新的な医薬品、医療・介護技術の研究開発を推進する。産官学が一体となった取組や、創薬ベンチャーの育成を推進し、新薬、再生医療等の先端医療技術、情報通信技術を駆使した遠隔医療システム、ものづくり技術を活用した高齢者用パーソナルモビリティ、医療・介護ロボット等の研究開発・実用化を促進する。その前提として、ドラッグラグ、デバイスラグの解消は喫緊の課題であり、治験環境の整備、承認審査の迅速化を進める。

(アジア等海外市場への展開促進)
医療・介護・健康関連産業は、今後、高齢社会を迎えるアジア諸国等においても高い成長が見込まれる。医薬品等の海外販売やアジアの富裕層等を対象とした健診、治療等の医療及び関連サービスを観光とも連携して促進していく。また、成長するアジア市場との連携(共同の臨床研究・治験拠点の構築等)も目指していく。

p28-30成長を支えるプラットフォーム

(5)科学・技術・情報通信立国戦略
【2020 年までの目標】
『世界をリードするグリーン・イノベーションとライフ・イノベーション』、
『独自の分野で世界トップに立つ大学・研究機関の数の増』、『理工系博士課程修了者の完全雇用を達成』、『中小企業の知財活用の促進』、『情報通信技術の活用による国民生活の利便性の向上、生産コストの低減』、『官民合わせた研究開発投資をGDP 比4%以上』

〜「知恵」と「人材」のあふれる国・日本〜

(科学・技術力による成長力の強化)
人類を人類たらしめたのは科学・技術の進歩に他ならない。地球温暖化感染症対策、防災などの人類共通の課題を抱える中、未来に向けて世界の繁栄を切り拓くのも科学・技術である。
我が国は、世界有数の科学・技術力、そして国民の教育水準の高さによって高度成長を成し遂げた。しかし、世界第二の経済大国になるとともに、科学・技術への期待と尊敬は薄れ、更なる高みを目指した人材育成と研究機関改革を怠ってきた。我が国は、今改めて、優れた人材を育成し、研究環境改善と産業化推進の取組を一体として進めることにより、イノベーションソフトパワーを持続的に生み出し、成長の源となる新たな技術及び産業のフロンティアを開拓していかなければならない。

(研究環境・イノベーション創出条件の整備、推進体制の強化)
このため、大学・公的研究機関改革を加速して、若者が希望を持って科学の道を選べるように、自立的研究環境と多様なキャリアパスを整備し、また、研究資金、研究支援体制、生活条件などを含め、世界中から優れた研究者を惹きつける魅力的な環境を用意する。基礎研究の振興と宇宙・海洋分野など新フロンティアの開拓を進めるとともに、シーズ研究から産業化に至る円滑な資金・支援の供給や実証試験を容易にする規制の合理的見直しなど、イノベーション創出のための制度・規制改革と知的財産の適切な保護・活用を行う。科学・技術力を核とするベンチャー創出や、産学連携など大学・研究機関における研究成果を地域の活性
化につなげる取組を進める。
科学・技術は、未来への先行投資として極めて重要であることから、2020 年度までに、官民合わせた研究開発投資をGDP 比の4%以上にする。
他国の追従を許さない先端的研究開発とイノベーションを強力かつ効率的に推進していくため、科学・技術政策推進体制を抜本的に見直す。また、国際共同研究の推進や途上国への科学・技術協力など、科学・技術外交を推進する。
これらの取組を総合的に実施することにより、2020 年までに、世界をリードするグリーン・イノベーション(環境エネルギー分野革新)やライフ・イノベーション(医療・介護分野革新)等を推進し、独自の分野で世界トップに立つ大学・研究機関の数を増やすとともに、理工系博士課程修了者の完全雇用を達成することを目指す。また、中小企業の知財活用を促進する。

p35

また、高等教育においては、奨学金制度の充実、大学の質の保証や国際化、大学院教育の充実・強化、学生の起業力の育成を含めた職業教育の推進など、進学の機会拡大と高等教育の充実のための取組を進め、未来に挑戦する心を持って国際的に活躍できる人材を育成する。
さらに、教育に対する需要を作り出し、これを成長分野としていくため、外国人学生の積極的受入れとともに、民間の教育サービスの健全な発展を図る。

p38

強みを活かす成長分野
?.グリーン・イノベーションにおける国家戦略プロジェクト
グリーン・イノベーションを成長の原動力として位置づけ、制度設計、規制改革、税制のグリーン化、事業性評価などによる総合的な政策パッケージにより、将来への投資とする事業を行い、我が国のトップレベルの環境技術・製品・サービスを普及させ、環境・エネルギー大国を目指す。

p39-40

?.ライフ・イノベーションにおける国家戦略プロジェクト
今後、飛躍的な成長が望まれる医薬品・医療機器・再生医療等のライフサイエンス分野において、我が国の技術力・創造力を発揮できる仕組みづくりに重点に置いたプロジェクトに取り組む。また、医療分野での日本の「安心」技術を世界に発信し、提供する。

4.医療の実用化促進のための医療機関の選定制度等
がんや認知症などの重点疾患ごとに、専門的医療機関を中心としたコンソーシアムを形成し、研究費や人材を重点的に投入するほか、先進医療に対する規制緩和を図ることにより、国民を守る新医療の実用化を促進する。
また、患者保護、最新医療の知見保持の観点で選定した医療機関において、先進医療の評価・確認手続を簡素化する。
これにより、必要な患者に対し世界標準の国内未承認又は適応外の医薬品・医療機器を保険外併用にて提供することで、難治療疾患と闘う患者により多くの治療の選択肢を提供し、そのような患者にとってのドラッグ・ラグ、デバイス・ラグを解消する。
新たな医薬品・医療機器の創出、再生医療市場の顕在化などにより、2020 年までに年間約7,000 億円の経済効果が期待される。

5.国際医療交流(外国人患者の受入れ)
アジア等で急増する医療ニーズに対し、最先端の機器による診断やがん・心疾患等の治療、滞在型の慢性疾患管理など日本の医療の強みを提供しながら、国際交流と更なる高度化につなげる。そのため、いわゆる「医療滞在ビザ」を設置し、査証・在留資格の取扱を明確化して渡航回数、期限等を弾力化するほか、外国人医師・看護師による国内診療を可能とするなどの規制緩和を行う。
また、外国人患者の受入れに資する医療機関の認証制度の創設や、医療機関ネットワークを構築することで、円滑な外国人患者の受入れを図るとともに、海外プロモーションや医療言語人材の育成などの受入れ推進体制を整備するほか、アジア諸国などの医療機関等との連携に対する支援を行う。
これらの取組を推進することで、2020 年には日本の高度医療及び健診に対するアジアトップ水準の評価・地位の獲得を目指す。

p42-43

8.グローバル人材の育成と高度人材等の受入れ拡大
我が国の教育機関・企業を、積極的に海外との交流を求め、又は国内のグローバル化に対応する人材を生み出す場とするため、外国語教育や外国人学生・日本人学生の垣根を越えた協働教育をはじめとする高等教育の国際化を支援するほか、外国大学との単位相互認定の拡大や、外国人教職員・外国人学生の戦略的受入れの促進、外国人学生の日系企業への就職支援等を進める。一方、日本人学生等の留学・研修への支援等海外経験を増やすための取組についても強化する。
さらに、優秀な海外人材を我が国に引き寄せるため、欧米やアジアの一部で導入されている「ポイント制」を導入し、職歴や実績等に優れた外国人に対し、出入国管理制度上の優遇措置を講じる仕組みを導入する。
また、現行の基準では学歴や職歴等で要件が満たせず、就業可能な在留資格が付与されない専門・技術人材についても、ポイント制を活用することなどにより入国管理上の要件を見直し、我が国の労働市場や産業、国民生活に与える影響等を勘案しつつ、海外人材受入れ制度を検討し、結論を得る。
これらの施策を通じ、海外人材の我が国における集積を拡大することにより、在留高度外国人材の倍増を目指す。また、我が国から海外への日本人学生等の留学・研修等の交流を30 万人、質の高い外国人学生の受入れを30 万人にすることを目指す。
あわせて、海外の現地人材の育成も官民が協力して進める。

9.知的財産・標準化戦略とクール・ジャパンの海外展開
日本の強みを成長につなげる取組を強化する。
知的財産の積極的な取得・活用、特定戦略分野の国際標準獲得に向けたロードマップの策定、今後創設される「科学・技術・イノベーション戦略本部(仮称)」(総合科学技術会議の改組、知的財産戦略本部の見直し)の活用を進める。

p47-48

成長を支えるプラット・フォーム
?.科学・技術・情報通信立国における国家戦略プロジェクト
我が国の最大の強みである科学・技術・情報通信分野で、今後も世界をリードする。新しい知の創造とイノベーション創出を両輪として制度改革や基盤整備に果断に取り組むとともに、科学・技術人材の育成を進め、彼らが活躍する道を社会に広げていく。政策推進体制の抜本的強化のため、総合科学技術会議を改組し、「科学・技術・イノベーション戦略本部」(仮称)を創設する。

15.「リーディング大学院」構想等による国際競争力強化と人材育成拠点形成と集中投資により、我が国の研究開発・人材育成における国際競争力を強化する。すなわち、我が国が強みを持つ学問分野を結集したリーディング大学院を構築し、成長分野などで世界を牽引するリーダーとなる博士人材を国際ネットワークの中で養成する。最先端研究施設・設備や支援体制等の環境整備により国内外から優秀な研究者を引き付けて国際頭脳循環の核となる研究拠点や、つくばナノテクアリーナ等世界的な産学官集中連携拠点を形成する。また、「国立研究開発機関(仮称)」制度の検討を進める。

大学・大学院の理系カリキュラム改善を産学官連携で推進し、「特別奨励研究員事業(仮称)」の創設を含む若手研究者支援制度の再構築や大学等におけるテニュアトラック制(※)の普及により優秀な若手研究者の自立的研究環境を整備する。また、研究開発独法を活用した取組等により、産業を担う研究開発人材や研究マネジメント人材等を育成する。これらの取組により、特定分野で世界トップ50 に入る研究・教育拠点を100 以上構築し、イノベーション創出環境を整備するとともに、博士課程修了者の完全雇用と社会での活用を実現する。
(※)若手研究者が、厳格な審査を経てより安定的な職を得る前に、任期付きの雇用形態で自立した研究者としての経験を積むことができる仕組み

p50-51

20.新しい公共
新しい公共」が目指すのは、一人ひとりに居場所と出番があり、人に役立つ幸せを大切にする社会である。そこでは、国民の多様なニーズにきめ細かく応えるサービスを、市民、企業、NPO 等がムダのない形で提供することで、活発な経済活動が展開され、その果実が社会や生活に還元される。「新しい公共」を通じて、このような新しい成長を可能にする。
政府は、大胆な制度改革や仕組みの見直し等を通じ、これまで官が独占してきた領域を「公(おおやけ)」に開く。このため、「「新しい公共」円卓会議」や「社会的責任に関する円卓会議」の提案等を踏まえ、市民公益税制の具体的制度設計やNPO 等を支える小規模金融制度の見直し等、国民が支える公共の構築に向けた取組を着実に実施・推進する。また、新しい成長及び幸福度について調査研究を推進する。
官が独占していた領域を「公」に開き、ともに支え合う仕組みを構築することを通じ、「新しい公共」への国民参加割合を26%(「平成21 年度国民生活選好度調査」による)から約5割に拡大する。