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科学技術基本法制定のいきさつ

 第三期の科学技術基本計画だが、科学技術基本法の中に制定が明記されている。

 科学技術基本法については
http://www8.cao.go.jp/cstp/cst/kihonhou/mokuji.htm

 以下引用する。

第二章 科学技術基本計画

第九条 政府は、科学技術の振興に関する施策の総合的かつ計画的な推進を図る

 ため、科学技術の振興に関する基本的な計画(以下「科学技術基本計画」とい

 う。)を策定しなければならない。

2 科学技術基本計画は、次に掲げる事項について定めるものとする。

 一 研究開発(基礎研究、応用研究及び開発研究をいい、技術の開発を含む。

  以下同じ。)の推進に関する総合的な方針

 二 研究施設及び研究設備 (以下「研究施設等」という。)の整備、研究開発

  に係る情報化の促進その他の研究開発の推進のための環境の整備に関し、政

  府が総合的かつ計画的に講ずべき施策

三 その他科学技術の振興に関し必要な事項

3 政府は、科学技術基本計画を策定するに当たっては、あらかじめ、科学技術

 会議の議を経なければならない。

4 政府は、科学技術の進展の状況、政府が科学技術の振興に関して講じた施策

 の効果等を勘案して、適宜、科学技術基本計画に検討を加え、必要があると認

 めるときには、これを変更しなければならない。この場合においては、前項の

 規定を準用する。

5 政府は、第一項の規定により科学技術基本計画を策定し、又は前項の規定に

 よりこれを変更したときは、その要旨を公表しなければならない。

6 政府は、科学技術基本計画について、その実施に要する経費に関し必要な資

 金の確保を図るため、毎年度、国の財政の許す範囲内で、これを予算に計上す

 る等その円滑な実施に必要な措置を講ずるよう努めなければならない。

 法案提出のいきさつは以下の通り。

平成6年3月   自民党科学技術部会(尾身幸次部会長 [当時] )において議

        員立法による「科学技術基本法」の制定を目指し検討を開始。

         その後、与党3党(自民党社会党新党さきがけ)の科学

        技術調整会議においても検討開始。



平成6年12月   自民党科学技術部会に、科学技術基本法小委員会(尾身幸次

        委員長)を設置し、「科学技術基本法(第1次素案)」をとり

        まとめ。この頃から、連立与党に加え、新進党も協議に参加。



平成7年5月   連立与党内に、科学技術基本法検討プロジェクトチーム(渡

        海紀三朗座長[新党さきがけ])を設置し、検討を促進。



平成7年10月19日 与党プロジェクトチームにおいて、新進党の意見も織り込ん

        だ国会提出法案を決定。



平成7年10月20日 与党政策調整会議及び院内総務会で、法案提出を決定。



平成7年10月27日 新進党が「トゥモロー・キャビネット」で法案提出を決定。

同日、自民党社会党新党さきがけ及び新進党の4党共同提

案により、「科学技術基本法案」を衆議院に提出。

 詳しくは尾身幸次議員の著書
●科学技術立国論―科学技術基本法解説
尾身 幸次 (著) 価格: ¥1,427 (税込) 出版社: 読売新聞社 ; ISBN: 4643960507 ; (1996/04)
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4643960507/nposciencecom-22/

をごらんいただきたい。

 最近発売された二つの本
●新しき日本のかたち
加藤 紘一 (著) 価格: ¥1,680 (税込) 出版社: ダイヤモンド社 ; ISBN:
4478180431 ; (2005/11/18)
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4478180431/nposciencecom-22/

●21世紀を支える科学と教育―変革期の科学技術政策
井村 裕夫 (著) 価格: ¥2,625 (税込)  出版社: 日本経済新聞社 ; ISBN:
4532165342 ; (2005/10)
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4532165342/nposciencecom-22/

 にも科学技術基本法制定のいきさつが触れられている。

 加藤氏の本には以下のようなことが書かれている。

 大平内閣の政策文書作成のスタッフになった
 アポロ計画に胸打たれ、ビッグサイエンスを政策に盛り込めないかと思案した
 大平首相はうなずいたが、最終文書に盛り込まれなかった
 1980年代後半、中村喜四郎科学技術庁長官に頼まれ「基礎科学技術研究委員会」を引き受けた
 基礎研究の価値を見出せず会合を一回しか開かなかった
 1995年ごろ、自社さ政権の政策調査会議の座長をしていた
 円高をなんとかしなければと思い、大蔵省幹部を呼んだがアイディアが出なかった
 2〜3ヶ月考えて「科学技術立国」で行くしかないとの結論に達した
 1995年9月に幹事長になったので、山崎拓尾身幸次議員とともに四年間強力に推し進めた
 当時尾身氏はライフワークとして「科学技術基本法」に力を入れていた
 尾身氏が「応援してくれ」と言ってきたので、渡りに船と二つ返事で引き受けた
 尾身氏のアイディアは具体的で「科学技術基本計画」という枠組みを新たに立ち上げたいというものだった
 基本計画は国家予算を取るために必須だった(公共事業では通例だった)
 科学技術でも同じ方式を取り入れたい
 大蔵省は「数字を入れられたらたまらない」と言ってきた
 加藤氏はつっぱねた

 井村氏の本では歴史的経緯が触れられている。

1959年、科学技術会議発足
1960年 科学技術基本法の制定についてという答申を出す
 人文社会を含むか否かで自民党ともめて人文社会科学と基礎科学を除く形となった
 1968年廃案になる
1982年 政策委員会設置
1986年 科学技術政策大綱閣議決定
1993年 細川連立政権
 野党自民党橋本政調会長から、党内各部長会に議員立法の検討について指示
 当時自民党科学技術部会長尾身幸次議員は、科学技術基本法を取り上げる必要性に思い至る
1994年より検討開始
1995年 超党派議員立法として国会に提出、可決