科学・政策と社会ニュースクリップ

科学政策や科学コミュニケーション等の情報をクリップしていきます。

2023年の展望

※Science Communication Newsは科学技術政策や科学技術コミュニケーションの動向を
ウォッチするメールマガジンで、毎週1回程度配信されます。
※詳しくは以下のサイトをごらんください。
http://www.kaseiken.org/活動/

※購読の登録、解除も上記サイトよりお願いします。こちらで代行はいたしませんので
※ご了承ください。
※以下でも随時情報を提供しています。
はてなブックマーク http://b.hatena.ne.jp/scicom/
twitter http://twitter.com/kaseikenorg
科学・政策と社会ニュースクリップ https://clip.kaseiken.info/
Yahoo!ニュース個人 https://news.yahoo.co.jp/byline/enokieisuke/

★発行部数 2,516部(1月5日現在)
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
     ◆◇◆  Science Communication News ◆◇◆
         No.1003 2023年1月4日号 巻頭言
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

【巻頭言】
★2023年の展望

2022年12月28日〜2023年1月4日
カセイケン代表 榎木英介

 あけましておめでとうございます。

 今年もひたすら淡々とニュースのピックアップをしていきます。どうぞよろしくお願いいたします。

 さて、2023年はどのような年になるでしょうか。先のことなどわからない世の中ではありますが、今週ピックアップしたニュースから考えてみます。

 やはり日本学術会議は大きなテーマになるでしょう。

学術会議、国の改革案に「強い危惧」 国民向けに説明文書
https://www.asahi.com/articles/ASQDW7K4DQDWULBH00P.html

声明 日本学術会議の独立性維持を求める | 一般社団法人日本医学会連合
https://www.jmsf.or.jp/news/page_224.html

日本学術会議の独立性を侵害する政府の法改正方針を直ち に撤回することを要望します。 - 内田樹の研究室
http://blog.tatsuru.com/2022/12/29_1516.html

「人類社会の福祉、さらには日本の国益に反する」学術会議を巡る政府方針、学者らグループが撤回求める:東京新聞 TOKYO Web
https://www.tokyo-np.co.jp/article/222422

学術会議の独立性侵すな/学者・文化人127人、政府方針撤回要求/「学問と表現の自由を守る会」声明| 「しんぶん赤旗
https://www.jcp.or.jp/akahata/aik22/2022-12-28/2022122801_01_0.html

<社説>学術会議問題 政府案は独立性損なう:北海道新聞 どうしん電子版
https://www.hokkaido-np.co.jp/sp/article/782506

学術会議改革 国費を投じている事実は重い
https://www.yomiuri.co.jp/editorial/20221230-OYT1T50168/

 今週だけでこれだけのニュースをピックアップしたわけで、その関心はある程度あると思われます。

 上記記事だと読売新聞だけが学術会議に批判的であり、世論は学術会議に同情的と思われるかも知れませんが、甘くみてはいけないと思います。自民党の支持率は他の政党より高く、読売新聞は減ったとはいえ新聞のトップです。

https://adv.yomiuri.co.jp/mediadata/

 繰り返しになりますが、意見の違いの間に「橋をかける」存在が不可欠のように思います。また、「世論」に訴える必要もあります。

 さて、読売新聞ですが、2年前の正月は「千人計画」を一面にドカンと持ってきて、千人計画バッシングを引き起こしました。

バイオ覇権・軍民技術…経済面でも米中激突[世界秩序の行方]第1部 攻防経済<1> 
https://www.yomiuri.co.jp/world/20230102-OYT1T50062/

 今回はゲノムデータが「流出」したと書き、中国警戒感を煽っています。

 ウクライナ戦争、台湾情勢と非常にきな臭い状況で、対中警戒感が高まるのは当然ではありますが、お金がかけられなくて「世界微生物データセンター」の運営が中国に移管されたこと、公開データはオープンであることなどを考えると、見出しと中身が異なっています。

 よく読めばわかるとはいえ、見出しだけ見て「噴き上がる」ことを誘発しているのかなと思わないではありません。

 とにかく大雑把なのはいけません。

 経済安全保障も、最近募集が始まった10兆円ファンドも、マイナス面を言わず薔薇色の未来を語ります。

 政府や読売新聞は軍民共用のデュアルユース研究が民生用の製品を生み出すというバラ色の未来を宣伝し、人々の心理的ハードルを下げていますが、軍事研究は金食い虫であることを忘れてはいけません。「電子レンジ」や「インターネット」が発明されるまでに、どれだけお金がかかったのか。

 国際的緊張が高まる中、非武装無抵抗が平和のための必要などという楽観論は言えません。ブチャの虐殺など、ウクライナを見れば、「非征服民」が行うことは苛烈です。

 昔は日本が「非征服民」だったので、軍事研究をしないという「誓い」は重いものがあります。とはいえ、現実に対応しなければなりません。

 そこにも「橋をかける」存在が必要のように思います。

 日本学術会議の「弾圧」と経済安保は地続きの問題です。

中国の注目論文数が世界1位に躍進
http://j.people.com.cn/n3/2022/1230/c95952-10190294.html

中国の卓越科学技術論文、21年は48万本以上
https://rd.kyodo-d.info/ud/KD:xinhuanet1:J007300_20230103_CBMFN0

 中国が仮想敵国になっていますが、完全に遮断すれば日本の国益にも反します。現実的な対応が求められます。

 一方中国のゼロコロナ政策撤廃が研究にどのような影響を与えるかも気になります。多数の大学教授が亡くなっているとも聞きますし。

コロナワクチン 接種後に死亡して解剖されたのは1割程度…人員不足など体制に課題:地域ニュース
https://www.yomiuri.co.jp/local/kyushu/news/20221230-OYTNT50006/

 新型コロナウイルス感染拡大は4年目に突入。行動制限のない正月は許容すべきと思いますが、医療現場は逼迫しています。

 私の親族もこの正月に感染し、いよいよ迫ってきたという感じがします。

 ワクチンさえ打っていれば確かに風邪がちょっと強い程度の症状のようですが、まだ風邪ではありません。

 今年はいわゆる「5類相当」になり、より「風邪」化が進みます。風邪とて拗らせれば人が死ぬわけで、行動の制限がなくとも注意はしながら暮らしてく必要がありそうです。

「ノグチ」の研究所が支えたコロナ禍 ガーナのPCR検査の8割担う
https://www.asahi.com/articles/ASQDX3SX6QCKUGTB00H.html

 「フランケンシュタインの誘惑」で野口英世の問題を指摘したのが2年前。「偉人化」には反対しますが、功績を全てなかったものにするのも違いますよね。是々非々、等身大で。

「いくらなんでも多すぎる」2089本の“論文”仰天内容 学会報告あとがきに「街並みが素敵」…水増し疑惑の大学トップ直撃|FNNプライムオンライン
https://www.fnn.jp/articles/-/457770

 私がオンラインで取材を受けた放送が記事化。医学界でこういう批判を行うと居場所がなくなりますが、フリーランスはこれ以上居場所が無くならない「最強」の状態なので全く問題がありません。

 いずれにせよ、研究公正が2023年も大きな問題であり続けるでしょう。

「女だったら優先的に採る」発言、帝京大教授を諭旨解雇に…ゼミ募集でハラスメント : 読売新聞オンライン
https://www.yomiuri.co.jp/kyoiku/kyoiku/news/20221228-OYT1T50178/

帝京大の60代男性教授、アカハラ認定で諭旨解雇 ゼミ生選抜で不適切言動…学生「教授からまだ謝罪ない」 - 弁護士ドットコム
https://www.bengo4.com/c_18/n_15490/?s=09

本学教員の懲戒処分とお詫び | 帝京大学
https://www.teikyo-u.ac.jp/important/1228

 こうしたハラスメントも「性不正」、研究不正の一つです。日本ではまだまだこのあたりの意識が乏しいので、2023年の大きな課題です。

医学論文に、なぜ「ポケモン都市」が!? 掲載料をぼったくる悪質な出版社をあぶり出すための罠だった(まいどなニュース) - Yahoo!ニュース
https://news.yahoo.co.jp/articles/b78530a5b68b190bf82856ae1639fe255de1791d

論文の査読不正 科学への信頼を傷つけた
https://mainichi.jp/articles/20221230/ddm/002/070/043000c

 悪質科学誌、査読偽装問題も大きな課題です。

博士だけのアイドルグループ「PhD48」始動 “任期付きアイドル”はポスドク問題への風刺? 発起人に意図を聞いた(ねとらぼ) - Yahoo!ニュース
https://news.yahoo.co.jp/articles/7eb27eded1dae17867b2aff2c7ec8e359dc2f2ea

 科学コミュニケーションの新しいあり方。若い人たちのこうした動きを支持したいと思います。

天体写真家の藤井旭さん死去、81歳 著書「星になったチロ」
https://www.asahi.com/articles/ASQD0569VQD0ULEI002.html

天体写真家の藤井旭氏死去 著書に「星になったチロ」
https://www.sankei.com/article/20230101-NIASGHURIFKVHIRBGYVXE46KC4/

 天文ファンだったので、大変お世話になりました。

日本に居続けるリスク 「安定」捨てて海外移住した人たちが遭った壁
https://www.asahi.com/articles/ASQDX4WQMQDVUPQJ006.html

★海外在留邦人の総数は今年10月時点で約130万人

★日本の大卒者が海外移住を希望する割合は、中国やインドの13%よりも高く、23%

★移住理由として一番大きいのは、日本の年金制度の維持などを含む、日本経済の先行きに対する不安

 とのことです。人材流出も課題であり続けるでしょう。

29歳すし職人、海外で夢見る普通の暮らし 時給2倍以上に託す希望
https://www.asahi.com/articles/ASQDX4F84QDMUTFK01X.html

 博士になるより寿司職人。博士号取得者の価値を高めていきたいですが、新しい動きも。

省庁別の「博士官僚」数公表へ 専門人材確保狙う、待遇も改善 政府(時事通信) - Yahoo!ニュース
https://news.yahoo.co.jp/articles/f36b299944e3c95854b3b72bc6a96bcf40731531

 ようやく博士号取得者が評価される時代へ。小さな一歩です。小さすぎる、遅すぎると怒り、こうした動きを潰してしまうのではなく、これを足が係にしていきたいと思います。

女性の「理系嫌い」は日本の社会風土の産物だ | 話題の本 著者に聞く | 東洋経済オンライン | 社会をよくする経済ニュース
https://toyokeizai.net/articles/-/642426

 横山広美さんへのインタビュー。女性研究者の問題なども大きな課題です。

A TikToker who said she has a science Ph.D. begged viewers to stop asking a man to 'explain' things she's already explained
https://www.insider.com/tiktok-female-science-tiktoker-viewers-tagging-hank-green-2022-12

 最後に、上記記事になかった研究者雇い止め問題も大きな課題です。記事になるほどのアピールをしていなければならないとの思いを強くする正月です。

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
“Science Communication News”
[SciCom News] No.1003 2023年1月4日号 巻頭言
【発行】一般社団法人科学・政策と社会研究室
【制作・編集】サイエンス・サポート・エージェンシー合同会社
【E-Mail】 office@kaseiken.org
【Web Site】 https://www.kaseiken.org/
Facebookhttp://www.facebook.com/kaseikenorg
メルマガの登録解除、イベント告知依頼などは以下のページからお願いします。
https://www.kaseiken.org/活動/
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━