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No.918 2021年4月20日号 巻頭言
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【巻頭言】
★人間の"脆弱性"と新型コロナ
2021年4月13日〜4月20日
カセイケン代表 榎木英介
新型コロナウイルスの感染拡大が止まりません。
私は兵庫県(神戸市)を中心に、大阪も含め西日本で仕事をしていますが、まさに感染の拡大のど真ん中にいるわけで、かなり危機感を持っています。
変異株は感染力が高いうえに基礎疾患のない若い人も重症化する率が高まっています。別のウイルスか、と思うほどアグレッシブであり、今までの対応では全く間に合いません。
幸いにも私は先週2回目のワクチン接種を受けることができ、副反応も大したことなくすぎました。県をまたいで仕事をしている医療関係者としては助かりましたが、まだまだ患者さんに接する医療関係者すら接種がすんでいない状況のところもあり、非常に心が痛みます。
★ワクチン接種受けてない医師が高齢者に接種 現場から不安の声
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20210419/k10012984401000.html
接種のロジスティクスの問題など、数え上げたらきりがありませんが、何かちぐはぐな気がしています。
★コロナで重症化 約半数の人がイメージ持てず 東大など調査
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20210420/k10012985441000.html
★「全国同時ノーマスクピクニック」に批判殺到 自治体は困惑の声
https://mainichi.jp/articles/20210419/k00/00m/040/230000c
この新型ウイルスは、人間の脆弱性をついて広がっているように思います。
それは、人間が「ドーダ、すごいだろう」と言いたいという生き物であること、身体感覚として、指数関数をイメージできないこと、そして何より、群れで生きる動物であることなどです。
ほんとは逆の話で、そうした脆弱性にうまくフィットしたからこれだけ感染が拡大しているということであり、意図や意味があるわけではありませんが、その戦略があまりに「見事」だと言わざるを得ません。
「ドーダ」は鹿島茂氏が、東海林さだお氏の著書から着想を得て広げた概念で、まあ、お遊び的要素が強い言葉ですが、様々な現象を非常にうまく説明するように思います。
多くの研究者や医師が合意している事項に、あえて「逆張り」したり、異説を唱えるのもドーダ、異説を売り込むのもドータ。人々の間に新型コロナはただの風邪がはびこるのも、説明は単純ではありませんが、政府の要請なんか意味ないよ、従わない自分はドーダすごいだろう、の一種なのかなと思います。
もちろん世の中そんな単純なものではないのですが、若い人が活動的で行動範囲も広いという点も、うまく利用されています。
若い人が軽症や無症状というのは、ウイルスにとってみれば、自らを広げるうえで極めて好都合です。そんな若い人たちに行動制限などの負担を負わせないと広がりを止められないというのは、感染拡大を防ぐ上で難しい課題を突き付けます。
★リスクコミュニケーションで皆が望む社会をめざす
https://www.igaku-shoin.co.jp/paper/archive/y2021/3417_01
武藤香織さん、田中幹人さん、奈良由美子さん。
個人的にはいずれもお会いしたことのある方です。
奈良 複数の若者にグループインタビューを実施した時のことです。ワクチンを接種するかという問いには,若者全員が様子見すると回答しました。それではどういう状況になったらワクチンを接種するか聞いてみました。すると,家族がワクチンを接種したら自分も接種する。その理由は「自分より感染リスクの高い親が接種しているのに,自分が接種せずに感染して家族を罹患させたら大変だから」というのです。さらに,COVID-19に対応する医療従事者のストレスや医療体制のひっ迫を心配しており,この状況が早く改善されることを望んでいました。
つまり,自分がワクチンを接種することと,それによって感染者数が減少して医療従事者の負担が軽減されることが結び付いていないのです。
リスクコミュニケーションが立ち向かうべき課題はとても大きいと感じざるを得ません。
★接触確認アプリ「COCOA」の不具合の発生経緯の調査と再発防止の検討について(報告書)
https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_18108.html
感染が広がっている国には、それぞれ違いがあるわけですが、社会システムの違いすらウイルスの広がりに寄与しているように思います。
稟議書の印鑑に代表されるような合意形成では、なかなか迅速に対応できない部分があるのかもしれません。
ちょっと話を拡大しすぎましたが、感染はこれからしばらく広がっていきます。長年持ち越された課題を一気に解決するには時間がありません。この状態のなかやっていくしかないのです…。
★三重県における豚熱の確認及び「農林水産省豚熱・アフリカ豚熱防疫対策本部」の持ち回り開催について
https://www.maff.go.jp/j/press/syouan/douei/210414.html
栃木県における豚熱の患畜の確認(国内66例目及び67例目)及び「農林水産省豚熱・アフリカ豚熱防疫対策本部」の開催について
https://www.maff.go.jp/j/press/syouan/douei/210417.html
豚熱が発生しました。感染症は新型コロナウイルスだけではなく、そして人間だけの問題ではないことを改めて意識させられました。
★トリチウムのキャラ化に批判 復興庁、公開休止し修正へ
https://www.chunichi.co.jp/article/236502
トリチウム ゆるキャラのように描き批判相次ぐ 平沢復興相陳謝
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20210420/k10012985291000.html
[寄稿]信頼ではなく不信感招いた日本政府のトリチウム「キャラ化」
https://news.yahoo.co.jp/articles/f8c1ce64dc08b2770014085c335a2f6e4eecf6af
これは人々を馬鹿にしすぎた出来事でした。どうして無知な市民を導くエリート的な発想を超えられないのでしょうか?
★総合科学技術・イノベーション会議 第2回 世界と伍する研究大学専門調査会
https://www8.cao.go.jp/cstp/tyousakai/sekai/2kai/2kai.html
現段階は諸外国の財政状況等を検討している段階のようです。
★第182回総会(第25期第2回)日程
http://www.scj.go.jp/ja/member/iinkai/sokai/nittei182.html
「科学が政治の召し使いになる」 学術会議問題、学者ら声明
https://news.yahoo.co.jp/articles/7c3809642ca77c6aa763ed1d433cd53789791a7c
科技相「自民PTの意見尊重」 学術会議の組織見直し
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUA163GW0W1A410C2000000/
日本学術会議 “組織見直しを” 自民が井上科学技術相に伝える
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20210416/k10012978511000.html
「任命拒否撤回を」 97歳元学術会議会員、6万2000人署名提出
https://mainichi.jp/articles/20210419/k00/00m/010/264000c
97歳、任命拒否撤回の署名提出 学術会議元会員、戦争協力を反省
https://www.chunichi.co.jp/article/239418
日本学術会議の総会が開かれています。改革案も含め、自民党や一部世論の学術会議を見る目は厳しく、ある種研究の諸問題の「ラスボス」的扱いを受けています。
しかし、日本の研究体制は、学術会議をラスボスにして叩けば(つぶせば)よくなる、という単純なものではないと思います。そのあたりリアルに考える人が少ない印象です。
★ポスト・コロナを見据えた新たな大学教育と産学連携の推進
採用と大学教育の未来に関する産学協議会 2020年度報告書
http://www.keidanren.or.jp/policy/2021/040.html
経団連。なかでもインターンシップを採用に結び付けてもよい、という方針が話題です。
Society 5.0に向けた産学連携による新たなインターンシップの実現
(1)産学協議会としてのこれまでのインターンシップに関する合意事項
(2)中長期的な視点に立った新たなインターンシップのあり方
(3)産学連携による新たなインターンシップ実現に関わる課題
★6 tips to help you detect fake science news
https://www.washingtonpost.com/health/seeing-through-fake-science/2021/04/16/4697caea-86a8-11eb-82bc-e58213caa38e_story.html
Tip 1: Seek the peer review seal of approval.
Tip 2: Look for your own blind spots.
Tip 3: Correlation is not causation.
Tip 4: Who were the study’s subjects?
Tip 5: Science doesn’t need “sides.”
Tip 6: Clear, honest reporting might not be the goal.
中学理科、2021年から遺伝用語「優性・劣性」が「顕性・潜性」に “劣性遺伝”は間違いになる? 文科省に聞いた
https://news.yahoo.co.jp/articles/69a534ac34bf92da36bb693b2116ad068e0f8cab
★Opinion: The Rise of Preprints Is No Cause for Alarm
https://www.the-scientist.com/news-opinion/opinion-the-rise-of-preprints-is-no-cause-for-alarm-68667
★カブトムシは夜行性じゃない?小学生が根気で“常識”くつがえす発見、アメリカの専門誌に掲載される
https://m.huffingtonpost.jp/amp/entry/story_jp_607e271ae4b03c18bc28383d/
★【プレスリリース】外来植物がカブトムシの活動リズムを変化させる | 日本の研究.com
https://research-er.jp/articles/view/98528
小学六年生が筆頭著者ということで話題です。
これが「小学生ですら論文出すのに、なぜおまえらは出せない、無能め」などという言説につながらないことを祈りますが…。
★Fifteen journals to outsource peer-review decisions
https://www.sciencemag.org/news/2021/04/fifteen-journals-outsource-peer-review-decisions
★NAS Considers Expulsion of Two Scientists for Sexual Harassment
https://www.the-scientist.com/news-opinion/nas-considers-expulsion-of-two-scientists-for-sexual-harassment-68668
セクシャルハラスメントが研究不正であることは、日本では意識がまだまだ乏しいように思います。
★生活保護の有無など学生の個人情報 30国立大で外部提供対象に
https://mainichi.jp/articles/20210420/k00/00m/010/308000c
★Federal agencies expanding disclosure requirements for scientists
https://physicstoday.scitation.org/do/10.1063/PT.6.2.20210413a/full/
外国との関係を開示せよ、という方向性。日本も同じ方向性ではあります。
ただ、読売新聞のなんでも「千人計画」に結び付ける論調はいただけません。切り分けて論じる必要があるでしょう。
研究者の中国「千人計画」参加、国立大の3割が把握せず…政府指針がないことなど理由
https://www.yomiuri.co.jp/national/20210417-OYT1T50298/
★Support Myanmar’s embattled scientists and students
https://www.nature.com/articles/d41586-021-01025-8
ミャンマーの状況は非常に厳しいものがあります。多くの死者が出ています。日本人ジャーナリストも拘束されました。
★新たな履歴書の様式例の作成について
https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_kouseisaiyou030416.html
1. 性別欄は〔男・女〕の選択ではなく任意記載欄としました。なお、未記載とすることも可能としています。
2.「通勤時間」「扶養家族数(配偶者を除く)」「配偶者」「配偶者の扶養義務」の各項目は設けないことにしました。
非常に重要な決定だと思います。
★「院だけ東大」で陰口も…“学歴ロンダリング”と揶揄される人たちの憂鬱
https://news.yahoo.co.jp/articles/8dd718d0a28769e280aaf044496b44f6984c423e
学歴ロンダリングという言葉は、大学名が単なるシグナリング効果を示すものでしかなく、その中身を問わないという古い観念です。高学歴を単に偏差値が高い大学という意味で使うこととつながっています。
いいかげん変えていかなければならないなあと思います。
★「親が貧乏だと就職も結婚もできない」日本の若者を待ち受ける地獄のルート
https://news.yahoo.co.jp/articles/c4f8b3161b8f2dece47932810bc3e207bd8e232d
★収入低い世帯、大学進学率10ポイント上昇 制度後押し
https://digital.asahi.com/sp/articles/ASP4F528HP47UTIL04H.html
低所得世帯の進学率が上昇 昨年度、新制度で
https://www.nikkei.com/article/DGKKZO70968250T10C21A4CR8000/
所得がキャリア形成に大きな影響を与えていることは知られるようになりました。
どんな家庭の人にもチャンスを、というのがきれいごとではなくなる社会を作らなければなりません。
★How junior scientists can land a seat at the leadership table
https://www.nature.com/articles/d41586-021-00956-6
意思決定に若手研究者を関与させるための様々な動き。
若手科学者は特定の科学的方法論やプロセスにあまり固執せず、自分の研究を超えた仕事への取り組みが少なく、努力に高レベルのエネルギーと創造性をもたらします。「そのエネルギーは絶対に本物です」
★「食べていかないと…」でもポストがない、研究室の元助手が飛び込んだ「SF翻訳」の世界
https://www.yomiuri.co.jp/culture/20210413-OYT1T50222/
多様なキャリアパスの実例です。
★伊藤淳史・佐々木希・桐山漣がドラマ共演 日本の科学の問題をサスペンスフルに描く
https://www.oricon.co.jp/news/2191050/full/
伊藤淳史主演 プレミアムドラマ「白い濁流」制作開始!
https://www.nhk.or.jp/dramatopics-blog/30000/447790.html
研究に関するドラマ。8月とまだ先ですが、ぜひ観てみたいと思います。
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“Science Communication News”
[SciCom News] No.918 2021年4月20日号 巻頭言
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