科学・政策と社会ニュースクリップ

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創作とフェイク〜松坂桃李主演ドラマを巡って

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★発行部数 2,538部(5月4日現在)
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     ◆◇◆  Science Communication News ◆◇◆
         No.920 2021年5月4日号 巻頭言
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【巻頭言】
★創作とフェイク〜松坂桃李主演ドラマを巡って
2021年4月28日〜5月4日
カセイケン代表 榎木英介

 あるドラマを巡って様々な意見が交わされています。

 それは松坂桃李主演の「今ここにある危機と僕の好感度について」
https://www.nhk.jp/p/ts/J94YJZG3V6/

 です。

★【再放送アリ】NHKドラマ『今ここにある危機と僕の好感度について』は今だからこそ見たいドラマ! 鈴木杏の長ゼリフが痛烈な社会風刺だと話題に
https://youpouch.com/2021/04/27/753570/

 私も見ていますが、少々デフォルメされてはいますが、今の大学の在り方に一石を投じている良い作品だと思っています。

 ポスドクの女性研究者が研究不正を告発するも、問題を無かったことにしたい大学当局に阻まれて、研究室を去るというストーリーにはリアリティを感じましたし、このポスドクに共感しました。

 私自身が、大学の様々な問題を公言することで、研究室を追放されるなどした経験があるからです。

 監修にも知人の研究者の方々が加わっており、脚本家の渡辺あやさんはNHK連続テレビ小説カーネーション」を書かれるなど、意欲作を多数発表している実力派です。

 ところが、このドラマに大して厳しい意見が出ています。

「今ここにある危機とぼくの好感度について」第2話について|Masaki Nakamura|note
https://note.com/nmasaki74/n/nec99f539c157

 詳しくは中村征樹さんの記事をご覧いただきたいのですが、このほかにも、複数のシニア研究者から怒りの声が上がっています。

 問題とされるのが、研究不正の調査にリアリティがないということです。

 文科省ガイドラインにある通り、研究不正の調査は手間暇がかかるもので、調査に関わられた方々の労力は大変なものだとは理解しています。
https://www.mext.go.jp/a_menu/jinzai/fusei/index.htm

 多くの方々は、こうした調査を真摯に行なっているでしょう。それは認めますし、心より敬意を表明したいと思います。

 しかし、一部の大学で、例えば学長や有力研究者の研究不正調査を、一次調査で「研究不正なし」としてしまうことで闇に葬ってしまう(と少なくとも外から見える)事例が取り沙汰されています。

 具体例をあげましょう。

論文コピペで博士号…不正告発した教授を「大学が排除」のその後
https://gendai.ismedia.jp/articles/-/66681

なぜ?! 岡山大学の教授2人解雇
論文不正の告発から解雇処分までの4年間に起きたこと
https://webronza.asahi.com/science/articles/2016012600004.html

東京大学は不正認定されなかった医学部教授に再現実験を求めるべきだ
http://blog.livedoor.jp/pyridoxal_phosphate/archives/72114005.html

東北大元総長、依然不正認めず 
不正論文疑惑、金属学会が賞取り消し
http://www.kinyobi.co.jp/kinyobinews/2020/05/18/antena-710/

弘前大学佐藤敬学長の論文不正を調査せず!ガイドライン無視!
https://blog.goo.ne.jp/lemon-stoism/e/177ed5145bcd0f1f4dbf8f1fae0a4def

 最近でも、名古屋大学の盗用疑惑に対して、大学がおざなりの調査を行なったのではないかと言われています。

5C 名古屋大学・博士論文の盗用疑惑事件:1 驚愕の判定
https://haklak.com/page_2020_nagoya_plagiarism.html

 こうした状況の中、ドラマで描かれたようなことがあるのではないかと思ってしまいます。

 創作物がデフォルメしていることは、時に問題を生み出します。

 私も医療に関する誤った情報を伝えてしまうようなドラマに警鐘を鳴らしたこともあり、創作物だから全てOKとは思っていません。

 しかし、例えば総理大臣を批判するような作品に対し、「総理は頑張っているのだから訂正せよ」というのは無粋であり、言論の自由を毀損する問題に発展しかねません。

 そして何より、視聴者はそこまでドラマに振り回されないと思います。創作物と現実の境目が分からない「愚民」ではないはずです。

 大学の管理部門には、我々外野からは窺い知れない苦労があることでしょう。しかし大学は公的な存在のはずです。批判を言う自由は誰にでもあるわけです。

 政府批判と同じです。政府の内部の人はおそらく寝る暇もないほど頑張っているでしょう。けれど、頑張っているから批判してはいけないというわけではないでしょう。個人の誹謗中傷は論外ですが。

 まだドラマは2回残っています。どのような展開になるのか、注目したいと思います。

★新型コロナ 西浦博・京大教授に聞く/上 予防接種、普及後も流行警戒 無免疫集団、前提の戦略必要
https://mainichi.jp/articles/20210428/dde/007/040/030000c

★新型コロナ 西浦博・京大教授に聞く/中 集団免疫、国際協調が不可欠 移動制限なし、流行続いた例
https://mainichi.jp/articles/20210430/dde/007/040/032000c

★新型コロナ 西浦博・京大教授に聞く/下 個人の感染、社会全体のリスクに 高齢者接種終了「終わりではない」 
https://mainichi.jp/articles/20210501/dde/007/040/021000c

★西浦博 教授が緊急報告、「第4波」が“これまでと違う”と言わざるを得ない「4つ」の理由
https://news.yahoo.co.jp/articles/10714161a18287baa6d0db26db29dabf01cf8996

★新型コロナの「重症化」とは? 人工呼吸器を装着したら、実際どうなるのか?
https://news.yahoo.co.jp/byline/kuraharayu/20210504-00235518/

★尾身茂氏が語った「マスクを外せる日」「3回目の緊急事態宣言なんて聞く気になれねぇ」への意見
https://news.yahoo.co.jp/articles/1d1423d912400f15fb4591b3b4d188dd4532d42b

 日本では連休中ですが、新型コロナウイルスの感染拡大は収まっていません。そして、観光地は賑わっています。

 インドの例を見れば、日本での感染拡大はおさまらないでしょう。

 医師が自分の利益のために人々に自粛を促しているという考えが広がっているようです。

 言動不一致な政府への信頼低下、コミュニケーションの仕方も含め、大きな問題が横たわっています。

★『はたらく細胞』(ムービングコミック)「新型コロナウイルス編」及び「感染予防編」等を通じて、感染症予防の大切さを啓発します
https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_18359.html

 人気のはたらく細胞とのコラボ。コミュニケーションの一つです。

★第11回科学技術予測調査 所属・年代別の比較分析[DISCUSSION PAPER No.194]の公表について
https://www.nistep.go.jp/archives/47223

★コロナ禍を経た科学技術の未来-第11回科学技術予測調査フォローアップ-[調査資料-309]の公表について
https://www.nistep.go.jp/archives/47233

★「職場のハラスメントに関する実態調査」の報告書を公表します
https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_18384.html

★演劇のまちづくりで揺れる? 志願者約8倍、豊岡「専門職大学」学長に聞く
https://news.yahoo.co.jp/articles/48da2fe8f78b80e33cb0c5347436ac7d226d9acd

 先週話題になった豊岡。平田オリザ氏へのインタビュー。市長選前に行われたといいますが、今後どうなっていくでしょうか。

★学術会議の改革 「議論重ね検討」 科学技術担当相
https://mainichi.jp/articles/20210501/ddm/012/010/146000c

★学術会議の組織形態を議論へ 科技相、有識者会議を設置
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUA303TP0Q1A430C2000000/

 日本学術会議の問題はもう完全に論点をすり替えられてしまいました。軍事研究容認という目的まで、もう止められないのかもしれません。

★【独自】憲法記念日の講演に憲法学者起用、自治体が「政治的」理由に拒否 神奈川県鎌倉市で 識者「民主主義に逆行」
https://www.tokyo-np.co.jp/amp/article/101258

 これも一連の動きとして捉えるべきかもしれません。

★専門知と民主主義、バランスは 学術会議の論点、識者に聞く
https://digital.asahi.com/sp/articles/DA3S14889362.html

★Opinion: Include Public Outreach Plans in Grant Requirements
https://www.the-scientist.com/news-opinion/opinion-include-public-outreach-plans-in-grant-requirements-68723

★Science Advisor Nominee Faces Tough Questions from Senate Panel
https://www.the-scientist.com/news-opinion/science-advisor-nominee-faces-tough-questions-from-senate-panel-68729

Biden’s nominee for science chief issues apology, defends character at confirmation hearing
https://www.sciencemag.org/news/2021/04/biden-s-nominee-science-chief-issues-apology-defends-character-confirmation-hearing

 アメリカのサイエンスアドバイザー候補になったEric Lander博士が、Jeffrey Epstein氏との関連を取り沙汰され、厳しい状況に置かれています。

NSF, NASA sign collaborative agreement to expand activities for broadening participation in engineering | NSF - National Science Foundation
https://www.nsf.gov/news/news_summ.jsp?cntn_id=302597

NSF and NCSES release 2021 Women, Minorities, and Persons with Disabilities in Science and Engineering report | NSF - National Science Foundation
https://www.nsf.gov/news/news_summ.jsp?cntn_id=302622

 重要レポート。

★U.S. national academy picks record number of women, minorities
https://www.sciencemag.org/news/2021/04/us-national-academy-picks-record-number-women-minorities

★京大が25億円基金新設 研究志す経済苦の学生に奨学金
https://news.yahoo.co.jp/articles/3e7175a7c2038fad268301d355db083ebe0c2d60

独立した研究環境、助教に提供 東北大が若手支援強化
https://kahoku.news/articles/20210503khn000036.html

 学生や若手研究者支援の動き。重要です。

★「政治vs科学」をめぐる日米の余りに大きな差 - 須藤靖
https://webronza.asahi.com/science/articles/2021042800007.html

 問題はこの差をどうやって埋めるべきかですが、簡単ではありません。しかし、あきらめないことが重要です。

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“Science Communication News”
[SciCom News] No.920 2021年5月4日号 巻頭言
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