科学・政策と社会ニュースクリップ

科学政策や科学コミュニケーション等の情報をクリップしていきます。

COVID-19瀬戸際、ポスドクの流儀

2020年2月18日~2020年2月25日

カセイケン代表 榎木英介

 WHOはまだパンデミックを宣言はしていませんが、いよいよ新型コロナウイルスSARS-CoV2による感染症COVID-19が市中感染症となり、いかに医療資源を重症者に配分できるかが焦点となってきました。

★「今後1~2週間が瀬戸際」国の専門家会議が見解【全文】
https://www3.nhk.or.jp/news/special/coronavirus/view/

新型コロナウイルスに我々はどう対峙すべきなのか(No.4)
想像する力を武器に
https://www.med.tohoku.ac.jp/feature/pages/topics_217.html

 このメルマガを発行する今日、政府は対策を発表します。

 政府は症状がある人は積極的に休めと言っていますが、そう簡単に休めないというのが多くの人々の実感だと思います。

どんどん休めと言われても〜休めないニッポンにつけ込むCOVID-19(新型コロナ)
https://news.yahoo.co.jp/byline/enokieisuke/20200220-00163814/

 Yahoo!ニュース個人に私が書いた記事です。休むというだけでは不十分で、政府がある程度トップダウンで基準を示すなりなんなりしないと、感染拡大のピークを低くすることはできないと思います。

 私はこのニュースを見た深層NEWS(BS日テレhttps://www.bs4.jp/shinsou/ から出演依頼を受けて、番組に出演させていただきました。

 カセイケン代表というよりは、全国医師連盟理事としての立場で出ましたが、労働者や受験生、学生含め安心して休めるようにするにはどうすれば良いか考えなければなりません。

★苦肉の策で「ギリギリの法解釈」重ねる政府 今後の法整備が課題 新型肺炎
https://mainichi.jp/articles/20200224/k00/00m/010/150000c

 番組の中でも指摘がありましたが、憲法や様々な法律に抵触してしまうので、集会やその他の制限を政府が一律にかけるわけにはいかない現実はあります。

 しかし、明確な帰順を示さず現場に対応を任せて良いのかという感じもしています。

労働者の補償Q&A 新型肺炎、入院治療は公費 自主欠勤、休業手当出ず
https://mainichi.jp/articles/20200225/ddm/041/040/088000c

 これではちょっとぐらいの症状では、休めと言われて簡単に休めるはずがありません。

厚労省新型コロナQ&Aの疑問~37.5度の発熱は出社すべきなのか?~
https://news.yahoo.co.jp/byline/kurashigekotaro/20200225-00164471/

コロナウィルスに伴う労務管理上の留意点まとめ(企業向け)
https://news.yahoo.co.jp/byline/kurashigekotaro/20200225-00164465/

新型コロナでひろがる出勤停止  知っておきたい「休業時の生活保障」の知識
https://news.yahoo.co.jp/byline/konnoharuki/20200223-00164282/

症状があるのに出勤を求められたらどうする? 多様なコロナ問題と法的「対処法」
https://news.yahoo.co.jp/byline/konnoharuki/20200220-00163805/

 会社員等がどうすれば良いのか、上記サイトなどでよく学ばなければなりませんが、政府が推奨しているフリーランスの方々はどうすべきか、非常に難しい問題です。

新型肺炎 感染者入試、大学対応割れ 東大・阪大など受験させず
https://mainichi.jp/articles/20200219/ddm/001/040/112000c

国公立大入試、感染者対応分かれる 東大、阪大など受験認めず センター試験で判定の大学も
https://mainichi.jp/articles/20200218/k00/00m/040/203000c

「無理して受験、感染拡大の恐れ」新型コロナで揺れる国公立大 2次試験対応で判断迫られ
https://mainichi.jp/articles/20200218/k00/00m/040/329000c

 私自身、30年前の大学入試のとき、39度の発熱がありながら無理やり受験をした経験があります。受験生は無理やり症状を下げてでも受験するでしょう。

★‘The disruption is enormous.’ Coronavirus epidemic snarls science worldwide
https://www.sciencemag.org/news/2020/02/disruption-enormous-coronavirus-epidemic-snarls-science-worldwide

Coronavirus epidemic snarls science worldwide
https://science.sciencemag.org/content/367/6480/836.full

 COVID-19は研究にも影響を与え始め、様々な会議が中止されています。

★「新型コロナ患者を診たら学会参加を自粛せよ」は適切か
https://medical.nikkeibp.co.jp/leaf/mem/pub/report/t344/202002/564482.html

 今最も信頼おける感染症の専門医、忽那先生の記事。

★Key planning recommendations for mass gatherings in the context of the current COVID-19 outbreak: interim guidance, 14 February 2020
https://apps.who.int/iris/handle/10665/331004

 忽那先生が引用するように、CDCはどのような集会を中止等すべきかガイドラインを出しています。

 個々の判断に任せざるを得ないとは思いますが、ガイドラインの存在は大きな目安です。

 ああ、日本版CDCがあれば、という声が聞こえてきます。

★検証:「独断」医療政策に反発 現場「プロセス不透明」
https://mainichi.jp/articles/20200225/ddm/012/010/053000c

官邸主導トップダウンできしみ 内閣官房健康・医療戦略室 vs 医療研究現場
https://mainichi.jp/articles/20200220/k00/00m/040/014000c

 しかし、日本版NIHとして作られたAMEDが自律を失っていると言われる中、CDCを形だけ真似ても結局骨抜きにされてしまうように思います。

 テレビでも最後にその旨の発言をしましたが、NIHやAMEDも一般的に知られた言葉でなかったので、もうちょっと説明が必要でした。

★Scientist decries ‘completely chaotic’ conditions on cruise ship Japan quarantined after viral outbreak
https://www.sciencemag.org/news/2020/02/scientist-decries-completely-chaotic-conditions-cruise-ship-japan-quarantined-after

 先週は神戸大の岩田健太郎教授のYouTubeへの投稿が日本、そして世界に衝撃を与えました。

 批判を恐れぬ忖度しない態度は、「岩田ファン」として数々の著書を読んできた私にとっては、とても岩田先生らしいなと思ったわけですが(それゆえ昔からアンチ岩田が多いわけですが)、賛否両論入り乱れ、場外乱闘気味になりました。

 当の岩田先生は全く変わっておらず、この守備一貫性はすごいなと思います。

 ともかく、この一件は、政策に研究者がどのように影響を与えるのか、という観点からも色々考えさせられるものでした。

 中に入って調整を重ねる、地道にロビイングするという方法か、SNS時代の特性をうまく利用して、意見を拡散し、外側から圧力をかけるのか。

 CDCやNIHの日本版、そしていまだ形すら見えない研究公正局の日本版を、という声がある中一向に実現しないところを見ると、両方の手段を使い分けることが重要なのかなと思わせられました。

新型コロナウイルス感染症対応に従事する医療関係者への不当な批判に対する声明 日本災害医学
https://jadm.or.jp/sys/_data/info/pdf/pdf000121_1.pdf

新型肺炎 医師ら「バイ菌」扱い クルーズ船対応、職場で「いじめ」 災害医学会、強く抗議
https://mainichi.jp/articles/20200224/ddm/041/040/091000c

 ハンセン病の例を挙げるまでもなく、感染症は常にスティグマとなり、差別の対象となります。21世紀の今でもゾロゾロと出てきています。

 こうした差別には断固として厳しい態度を示すべきです。

新型コロナウイルスPCR検査を求める人に知っておいてほしいこと
https://togetter.com/li/1472743

 市中感染症となったCOVID-19には、特別な治療法がなく、またPCR検査自体感度が高くないという問題もあるため、確定診断の意味がないのは当然なのですが、医師や研究者の中にも誤解している人がおり、これを一般の人に理解してもらうのは難しいかも知れません。

 しかし、これを理解してもらわないと、全国各地の病院に軽症者が殺到し、待合室感染、医療者への感染が起こり、医療が崩壊しかねません。

アメリカのインフルは新型コロナだった説」は本当か?
https://news.yahoo.co.jp/byline/kutsunasatoshi/20200222-00163925/

★Scientists ‘strongly condemn’ rumors and conspiracy theories about origin of coronavirus outbreak
https://www.sciencemag.org/news/2020/02/scientists-strongly-condemn-rumors-and-conspiracy-theories-about-origin-coronavirus

 陰謀論も含め、様々な憶測が流れています。ファクトチェックをしていくことが重要です。

新型コロナウイルス感染症(COVID19)情報サイト
https://covid19-jpn.com/

 有志の方々が作ったサイトです。こうした動きが出てくるのはとても素晴らしいですが、逆に言えば政府の情報発信が弱いということを意味しているように思います。

★科学技術がリスペクトされる社会へ
https://blogos.com/article/437531/

 竹本科学技術担当大臣の文章。科学技術担当大臣は比較的政治的には軽いポストとみなされますが、大臣になられた方が(たとえゴーストライターがいたとしても)自分の言葉で科学技術に対し発言されるのは評価したいと思います。

★大学院部会(第96回) 配付資料
https://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chukyo/chukyo4/004/gijiroku/1422801_00001.htm

議題

大学院修了者の賃金プレミアムについて
大学院におけるリカレント教育促進に向けた制度改正案について
世界から優秀な高度人材を惹き付けるための環境整備について

★第16回がん診療連携拠点病院等の指定に関する検討会
https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_09519.html

地域がん拠点病院、29カ所に“イエローカード”-9月1日で要件未充足なら指定取り消しも検討、厚労省
https://www.cbnews.jp/news/entry/20200219205223

 私も現在がん診療連携拠点病院に勤務する身ですが、様々な問題があります。

宇宙政策委員会 基本政策部会 第7回会合 議事次第
https://www8.cao.go.jp/space/comittee/01-kihon/kihon-dai7/gijisidai.html

資料1 次期宇宙基本計画骨子(案)
https://www8.cao.go.jp/space/comittee/01-kihon/kihon-dai7/siryou1.pdf

★大学統合議案を可決 大阪府・市立、市議会で
https://mainichi.jp/articles/20200222/ddn/041/100/007000c

大阪府大・市大、国の「無償化」に上乗せ 他大学は反発
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO55776370Y0A210C2AC8Z00/

 大阪府大、市大の合併が近づいてきましたが、様々な問題も浮上しています。

★You can’t fight feelings with facts: start with a chat
https://www.nature.com/articles/d41586-020-00452-3

 進化論に関して人々と交流する研究者。非常に重要な指摘が。

Lesson 1: Don’t argue with beliefs.
Lesson 2: Listen.
Lesson 3: Learn what people really think.

★The Tadpole Paper Mill
https://scienceintegritydigest.com/2020/02/21/the-tadpole-paper-mill/

No raw data, no science: another possible source of the reproducibility crisis
https://molecularbrain.biomedcentral.com/articles/10.1186/s13041-020-0552-2

Editor’s investigation reveals missing and suspicious data
https://www.timeshighereducation.com/news/editors-investigation-reveals-missing-and-suspicious-data

 データがないのに論文が発表されているという事実が明らかに。

★Is research integrity training a waste of time?
https://www.natureindex.com/news-blog/is-research-integrity-training-a-waste-of-time

★How do researchers acquire and develop notions of research integrity? A qualitative study among biomedical researchers in Switzerland
https://bmcmedethics.biomedcentral.com/articles/10.1186/s12910-019-0410-x

 研究公正教育は子供の頃から行うべきとのこと。

★Biologist exits prestigious post years after violating sexual-harassment policy
https://www.nature.com/articles/d41586-020-00491-w

 ウッズホールのMarine Biological Laboratory (MBL) で起こった事例。

★EM菌の正体(構成微生物を調べました)
https://note.com/katasekumiko/n/nd2eb3d7da6f8

 自費で研究されたとのこと。頭が下がります。

★無許可再生医療横行か 書類送検大阪医大元講師「他の医師もこっそりやってる」 -
https://mainichi.jp/articles/20200224/ddm/041/040/065000c

再生医療「許可は手間」 書類送検大阪医大元講師 「他の医師もやっているのでは」
https://mainichi.jp/articles/20200223/k00/00m/040/077000c

 かつての(今も?)研究費の業者への預け金と同じように他でもやっているということであるならば、きちっとしなければなりません。

★White House formally invites public comment on open-access policies
https://www.sciencemag.org/news/2020/02/white-house-formally-invites-public-comment-open-access-policies

★英国政府(首相官邸)が新内閣閣僚等の名簿を発表
https://crds.jst.go.jp/dw/20200221/2020022122537/

Has the UK science minister been demoted?
https://www.nature.com/articles/d41586-020-00425-6

★第1回(2020年)米沢富美子記念賞受賞者決定について
https://www.jps.or.jp/activities/awards/yonezawa/yonezawa1-2020.php

女性物理学者5人に米沢富美子記念賞 副賞は20万円分
https://www.asahi.com/articles/ASN2K66KMN2KULBJ01F.html

ポスドクの流儀
悩みを解きほぐして今日から行動するためのチェックリスト
https://www.yodosha.co.jp/yodobook/book/9784758121040/

 御恵贈いただきました。御礼申し上げます。

★一冊の本をまとめました、、『シン・ニホン』
http://kaz-ataka.hatenablog.com/entry/2020/02/24/132143

 注目の一冊。こうした提言が政策に反映されるのかが問われます。