科学・政策と社会ニュースクリップ

科学政策や科学コミュニケーション等の情報をクリップしていきます。

ギグエコノミーと研究者 メルマガ856号記事抜粋

2020年2月4日~2020年2月11日

カセイケン代表 榎木英介

 新型コロナウイルスの感染は収束にはまだ遠い状況です。メルマガでの記事ピックアップも、刻一刻と変わる状況を捉えきれないため最小限にしています。

 公的な情報を中心にフォローすると同時に、過小評価、過大評価をしないようにしていただきたいと思います。

コロナウイルスに関する解説及び中国湖北省武漢市等で報告されている新型コロナウイルス関連肺炎に関連する情報
https://www.niid.go.jp/niid/ja/from-idsc/2482-corona/9305-corona.html

 今週のピックアップです。

★「70歳まで雇用」を奨励する政府と「40~50代リストラ」を加速させる企業【怒れるガバナンス】
https://www.jiji.com/sp/article?k=2020020500763&g=eco

 しつこくこの問題を取り上げます。

 70歳までの雇用という政府方針が40代から50代の正社員のリストラを加速しているという話です。

終わらない氷河期~疲弊する現場で:「40歳で人生閉じてもいい」と思った 非正規図書館司書の苦悩
https://mainichi.jp/articles/20200205/k00/00m/040/094000c

 こちらは非正規雇用を続けている人の話です。

 構造が違えど40代の直面する問題は大きいです。

 韓国では45歳でリストラされた人が、大した技術や資本がいらないチキン店を開業しているといいます。

★The company bringing scientists into the gig economy
https://www.nature.com/articles/d41586-020-00374-0

 最近何度か取り上げましたが、フリーランス研究者と企業のマッチングサイトKolabtreeの話です。創始者がインタビューに答えています。

 フリーランス化というトレンドと、博士号取得者が多すぎるという問題を解決する手段として、このKolabtreeを作ったとのことです。

 日本でも、博士号取得者の能力をこうした形態で活かす術はあるように思います。

 一般向けにはランサーズ
https://www.lancers.jp

 やクラウドワークス
https://crowdworks.jp

 といったサイトがあります。

クラウドソーシングおすすめ6選!初心者が副業で稼ぐ具体的な方法を紹介!
https://itpropartners.com/blog/12166/

 とは言え、上記インタビューでも質問されていましたが、安い下請けになってしまう、労働法が適用されないといった問題点も指摘されています。

安倍総理は第35回未来投資会議を開催しました
https://www.kantei.go.jp/jp/98_abe/actions/202002/07miraitoushi.html

新たな成長戦略実行計画策定に向けた今後の進め方のたたき台
https://www.kantei.go.jp/jp/singi/keizaisaisei/miraitoshikaigi/dai35/index.html

 上記のたたき台でも、問題点が指摘されています。

4.フリーランスなど雇用によらない働き方の環境整備
フリーランスについては、ギグエコノミーの拡大により高齢者の雇用拡大に貢献しており、健康寿命を延ばすとともに、社会保障の支え手を増やす観点からもその適正な拡大が不可欠。
希望する個人がフリーランスを選択できる環境を整えるため、内閣官房において、公正取引委員会厚生労働省中小企業庁など関係省庁の協力の下、政府として一体的に、以下の政策のあり方を検討。
1 独占禁止法(優越的地位の濫用)及び下請代金支払遅延等防止法などに基づくルール整備のあり方
2 発注者の指揮命令を受けて仕事に従事する場合(現行法上も「雇用」に該当するもの)の労働法の具体的適用のあり方

 色々な問題はありつつも、40代以降の博士号取得者の生き方として、フリーランスも真剣に考えていかなければならないと思っています。

 今年の4月から、私もフリーランス的働き方を実践し、それを通じで、こうした生き方の利点欠点などを洗い出していきたいと思います。

★「海外出張、公費でコネクテド・ルーム」問題、より深刻なのは日本の医療研究行政が歪められていることです
https://blog.goo.ne.jp/minacraft/e/2b4801960968c2255e04bb93008727e4

日本の医学研究の本丸・AMED、末松理事長が審議会で衝撃発言、「我々の自律性は完全に消失している」
https://blog.goo.ne.jp/minacraft/e/d9be36a227865c8962cfd151c0516298

★「大坪氏問題」でAMED末松理事長が怒りの暴露(その1)
「大坪氏が次長になられてから、我々のオートノミーは完全に喪失しております」
https://bio.nikkeibp.co.jp/atcl/column/16/082400008/020300187/

 にわかに大問題となっています。ワイドショーとしては不倫を取り上げたくなりますが、問題は政策決定過程が密室であるところです。

★科学技術関係予算令和2年度当初予算案令和元年度補正予算について
https://www8.cao.go.jp/cstp/budget/index2.html

科学技術関係予算4兆3787億円 20年度3.3%増
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO55233060U0A200C2I00000/

 一見増加しているように見えますが、本来科学技術と関係ないものが科学技術関係予算とされている例もあります。

 見せかけだけの増加は、こんなに予算を使っているのに成果が上がらないという、予算削減の口実にされてしまいます。

ムーンショット目標決定のお知らせ
https://www8.cao.go.jp/cstp/stmain/20200123moonshot.html

 1月23日の総合科学技術・イノベーション会議で決定したものが公表されていますが…。

目標1:2050年までに、人が身体、脳、空間、時間の制約から解放された社会を実現
目標2:2050年までに、超早期に疾患の予測・予防をすることができる社会を実現
目標3:2050年までに、AIとロボットの共進化により、自ら学習・行動し人と共生するロボットを実現
目標4:2050年までに、地球環境再生に向けた持続可能な資源循環を実現
目標5:2050年までに、未利用の生物機能等のフル活用により、地球規模でムリ・ムダのない持続的な食料供給産業を創出
目標6:2050年までに、経済・産業・安全保障を飛躍的に発展させる誤り耐性型汎用量子コンピュータを実現

 とにかく決まった以上、しっかりやれ、というしかありませんが、しっかりやっているかはウォッチします。そのためにも透明性は担保して欲しいものです。

★革新的研究開発推進プログラム(ImPACT)終了時評価報告書の決定について
https://www8.cao.go.jp/cstp/stmain/20200123impact.html

 大型予算をドーンと投下、を繰り返すだけでなく、振り返りも重要なのは当然です。ImPactの反省はムーンショットに生かされているそうですが…。

★People will not trust unkind science
https://www.nature.com/articles/d41586-020-00269-0

 科学が人々に信頼される文化とは。

A kinder research culture will build stronger, deeper support for research, as well as higher-quality science.

★「教学マネジメント指針」(令和2年1月22日 大学分科会)
https://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chukyo/chukyo0/toushin/1411360_00001.html

★「ヒトに関するクローン技術等の規制に関する法律施行規則」改正案及び「特定胚の取扱いに関する指針」改正案に関するパブリックコメント意見公募手続)の実施について
https://www.mext.go.jp/b_menu/houdou/mext_00103.html

JST、researchmapを大型アップグレード
http://jipsti.jst.go.jp/johokanri/sti_updates/?id=11810

★多核種除去設備等処理水の取扱いに関する小委員会の報告書を公表します
https://www.meti.go.jp/press/2019/02/20200210002/20200210002.html

処理水放出で報告書公表 小委、海や大気「現実的」
https://www.sankei.com/life/news/200210/lif2002100030-n1.html

★東大院教授、学生に交際迫り停職 2年以上にわたり、本人は否定
https://www.chunichi.co.jp/s/article/2020020601002159.html

東大教授が院生にセクハラ…交際拒否されると研究予定を急に変更、無理やり体も触る
https://www.yomiuri.co.jp/national/20200206-OYT1T50219/

★Colombian university fires prominent biologist accused of sexual harassment
https://www.sciencemag.org/news/2020/02/colombian-university-fires-prominent-biologist-accused-sexual-harassment

 東大は停職のみ。コロンビアの大学は解雇。

★Avalanche’ of spider-paper retractions shakes behavioural-ecology community
https://www.nature.com/articles/d41586-020-00287-y

 この問題は先週号でご紹介した

不正なデータは世界を駆ける
https://kensuke-nakata.hatenablog.com/entry/20200203/1580655600

 にも詳しく書かれています。

★がん患者、今後20年で6割増も 中低所得国で顕著とWHO
https://www.chunichi.co.jp/s/article/2020020401001673.html

Cancer burden could balloon in poorest countries
https://www.scidev.net/global/health/news/cancer-burden-could-balloon-in-poorest-countries.html

★世界規模の国際ネットワークによる最大のがん種横断的全ゲノム解読
日本人症例での解析を進めることで日本人に最適な臨床開発への発展を期待
https://www.ncc.go.jp/jp/information/pr_release/2020/0206/index.html

★「大学病院で診療に従事する教員等以外の医師・歯科医師に対する処遇に関する調査」の公表について
https://www.mext.go.jp/a_menu/koutou/iryou/1418468.htm

 無給医問題。滅私奉公はもう過去のものにしたいと思います。

★ヒト胚ゲノム編集について広範な研究者・市民の参加による討議の場を要望する
http://bit.ly/2SbBr5u

 ゲノム編集について、島薗進氏らが要望を出しています。

 トランプ大統領の一般教書演説が2月4日にありましたが、ペロシ下院議長が原稿を破り捨てるなど波乱もありました。

テーマは「偉大なアメリカの再起」トランプ大統領一般教書演説
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20200205/k10012273321000.html

State of the Union
https://www.whitehouse.gov/sotu/

 次は予算です。

★President’s Budget
https://www.whitehouse.gov/omb/budget/

Trump’s 2021 budget drowns science agencies in red ink, again
https://www.sciencemag.org/news/2020/02/trump-s-2021-budget-drowns-science-agencies-red-ink-again

National Institutes of Health would see 7% cut in 2021 under White House plan
https://www.sciencemag.org/news/2020/02/national-institutes-health-would-see-7-cut-2021-under-white-house-plan

NASA soars and others plummet in Trump’s budget proposal
https://www.nature.com/articles/d41586-020-00348-2

 科学機関にとっては厳しい状況のようです。

★U.S. attorneys warn of upcoming ‘spike’ in prosecutions related to China ties
https://www.sciencemag.org/news/2020/02/us-attorneys-warn-upcoming-spike-prosecutions-related-china-ties

Harvard chemistry chief’s arrest over China links shocks researchers
https://www.nature.com/articles/d41586-020-00291-2

U.S. prosecutor leading China probe explains effort that led to charges against Harvard chemist
https://www.sciencemag.org/news/2020/02/us-prosecutor-leading-china-probe-explains-effort-led-charges-against-harvard-chemist

Ex-Emory scientist with ties to China charged with fraud
https://www.sciencemag.org/news/2020/02/ex-emory-scientist-ties-china-charged-fraud

Florida state legislator fears overreaction in probe of foreign research ties
https://www.sciencemag.org/news/2020/02/florida-state-legislator-fears-overreaction-probe-foreign-research-ties

 ハーバード大学の研究者の逮捕は大きく取り上げられましたが、全米で外国との関連が取り沙汰されている研究者に厳しい状況が続いています

★Colombia’s first ever science minister faces calls to resign over fungi-based cancer treatment
https://www.sciencemag.org/news/2020/02/colombia-s-first-ever-science-minister-faces-calls-resign-over-fungi-based-cancer

Colombian science minister’s cancer claims spark controversy
https://www.nature.com/articles/d41586-020-00235-w

 コロンビアの最初の科学大臣が、カビの抽出液ががんを治すという主張をしていることに大きな批判が。

★Tech tools to make research more open and inclusive
https://www.nature.com/articles/d41586-020-00216-z

★ジャーナリストか研究者か?――二足の草鞋を履く日々
https://www.editage.jp/insights/journalist-or-academic-im-leading-a-double-life

 ジャーナリスト研究者もいるようです。