科学・政策と社会ニュースクリップ

科学政策や科学コミュニケーション等の情報をクリップしていきます。

梯子を外された博士、マスタープラン、疲弊するPI

2020年1月28日~2020年2月4日

カセイケン代表 榎木英介

 melma!がメルマガ発行をやめてしまいましたので、購読者が四百人ほど一気に減りました。まぐまぐに一本化しました。

 今後note等別の手段も考えたいと思います。

 新型コロナウイルスに関しては、刻一刻と変わる状況なので、メルマガでの記事のピックアップは最小限に留めています。

 公的な最新情報を入手し、冷静に対応してください。

★中国に留学中の日本人学生の皆さんへ
https://www.mext.go.jp/a_menu/koutou/ryugaku/1405561_00001.htm

新型コロナウイルスに関連した感染症対策に関する対応について
https://www.mext.go.jp/a_menu/coronavirus/index.html

 フェイクニュースも広がっています。

新型コロナウイルス特設サイト
https://fij.info/coronavirus-feature

 上記サイトではファクトチェックが行われていますが、大手メディアでも問題ある報道がなされています。

新型コロナウイルスと季節性インフルエンザ〜比べて良いのか
https://news.yahoo.co.jp/byline/enokieisuke/20200131-00161228/

 これは私がYahoo!ニュース個人に書いた記事です。感染症の専門医でない私の出番はないと思いますが、リスクが未確定な新型コロナウイルスと季節性インフルエンザを比較してあれこれいう記事が増えてきた印象なので、リスク・コミュニケーションの観点からそれは問題であると指摘しました。

 クライシス状態にある現在、原発事故も含めた過去のクライシス経験が生きるか、試されていると言えます。

 以下はCDCのクライシス・コミュニケーションマニュアル。

Emergency Preparedness and Response
Section Navigation
CERC Manual
https://emergency.cdc.gov/cerc/manual/index.asp

 一部の国会議員が、感染症法の指定により日本に中国人の患者がやってきて無償で治療を受けるのではないかとツイートしていました。

 これは中国と日本の医療、科学技術の差を誤認した考えだと思います。

 もはや日本は科学技術や医療含め、中国に水を開けられ始めているのは周知の事実です。日本が医療や科学の先進国であるというイメージを持つ人はまだまだ多いですが、日本の現状を等身大で認識する必要があるように思います。

★終わらない氷河期~疲弊する現場で:空いたポストは若手に…「はしごをはずされた」 50歳大学非常勤講師の絶望
https://mainichi.jp/articles/20200201/k00/00m/040/145000c

 毎日新聞の記事。取材を受けてくれる人を探しているという情報は私のところにも回っていました。

 これで日本が人文社会科学系も含めた学術の先進国であると言えるのでしょうか。「はしごをはずされた」というのはまさに実感するところです。

★「民間企業の研究活動に関する調査2019」(速報)の公表について
https://www.nistep.go.jp/archives/43747

 恒例の調査ですが、「博士課程修了者及びポスドクを採用した企業割合は横ばいに推移」とのこと。

 ポスドクを採用した企業は調査対象の1.7%です。

★「博士課程修了者の採用増やせ」 ノーベル賞大隅良典氏
https://www.chunichi.co.jp/s/article/2020012901002028.html

★若手研究者支援 博士の力を産学で生かしたい
https://www.yomiuri.co.jp/editorial/20200129-OYT1T50299/

★低学歴化進むニッポン、博士軽視が競争力を崩壊させる
https://business.nikkei.com/atcl/seminar/19/00118/00061/

 若手に関しては様々な指摘があり、今後好転していく見込みがあります。

 その影で40歳以上はもうアカデミアでの活躍の道はかなり厳しいと言わざるを得ません。

 一方、大手企業はすでに早期退職を40代に勧告するような状況です。

 こうした中で人生はまだ50年前後続くわけです。

 どうするべきか。

 その一つとして私は仲間と一般社団法人カセイケンを立ち上げました。この問題に取り組むと同時に、ロールモデルになれないかと思ったからです。

 とはいえ、我々の団体は副業の粋を出ることができていません。

 そこで、近々スモールカンパニーを立ち上げようと考えています。

 社会の中で生きる、フリーランスの時代だと訴えても、医師の副業の範囲では説得力がありません。

 そこで、医師としての仕事はバックボーンにせざるを得ない面はありますが、一人社長の営利企業を作って、この問題にカセイケンとは別角度から取組むと同時に、スモールカンパニーが博士号取得者の生きる道になるかを試してみたいと思います。

 そういえばドラえもんが来る前ののび太くんは、会社を立ち上げていました。よく考えればそれはすごいことだなあと思います。

 結局会社が火事になって借金が残って、100年後も返せないのでドラえもんが送り込まれたわけですが…。

 いずれにせよ、非営利であるカセイケンを中心に、新しく立ち上げる会社も合わせ、40歳以降の博士号取得者の活躍の場を見つけていく活動を続けていきます。

★助けを求める叫び声
https://go.nature.com/2uZUIhi

 英語の記事が掲載された時に既にご紹介していますが、大学院生のメンタルヘルス問題です。

約36%が自らの博士課程研究に関連した不安や抑うつについて助けを求めたことがあると明らかになった

研究風土の全面刷新がなければ、次世代の研究者はいなくなってしまうだろう。

 博士課程進学者の減少の理由は、先行きの不透明さや経済問題だけではないということです。研究風土の改善も重要課題です。

★疲弊する指導者と遠慮する若手研究者
https://www.natureasia.com/ja-jp/partnership/author_service_survey2019

 日本の調査。競争的資金獲得に忙殺される指導者に遠慮する若手という構図がアンケートで明らかに。

今回のアンケートでは、若手に対する論文執筆指導時間をメンターに尋ねているが、その回答の平均は、1年間に13.59人指導するが、1人当たり10.59時間にすぎない。若手からみれば、メンターに頼るばかりでなく、自分自身の手で論文の完成度を上げていく必要があるわけだ。

 かつて私は、若手指導の方法を放牧とブロイラーという2パターンに分けましたが、放牧されている若手が多いような結果です。

★日本神経科学学会 科学コミュニケーション・ガイドライン
http://bit.ly/31xVuyl

 非常に重要なガイドライン

★多核種除去設備等処理水の取扱いに関する小委員会(第17回)‐配布資料
https://www.meti.go.jp/earthquake/nuclear/osensuitaisaku/committtee/takakusyu/017_haifu.html

原発汚染処理水の処分、最終案で2案…「政府が責任もって決定を」
https://www.yomiuri.co.jp/science/20200131-OYT1T50117/

海洋放出が「より確実に実施可能」
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO55049120Q0A130C2MM0000/

福島第1処理水、海洋放出「優位」 反発強く動けぬ政府
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO55084250R30C20A1I00000/

 処理水海洋放出問題。政府の方針と地元の思い、どのように意思決定がなされていくのでしょうか。

★2月4日「風しんの日」に、「風しん対策啓発イベント」を開催します
https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_09162.html

 本日です。

★提言「第24期学術の大型研究計画に関するマスタープラン(マスタープラン2020)」
http://www.scj.go.jp/ja/info/kohyo/kohyo-24-t286-1.html

次世代加速器「重点」逃す 学術会議の研究計画
https://mainichi.jp/articles/20200131/ddm/012/040/069000c

次世代加速器 学術会議が重点計画選定見送り 誘致遠のく
https://www.sankei.com/life/news/200130/lif2001300057-n1.html

次世代大型加速器巡り意見聴く 学術会議、誘致目指す研究者から
https://www.chunichi.co.jp/s/article/2020013001002004.html

 日本学術会議のマスタープランが出ました。焦点は次世代加速器

★次世代加速器 未来見据えて政治決断を
https://www.sankei.com/column/news/200204/clm2002040002-n1.html

 推進したほうが良いという意見も多く、政府がどう決断するかが注目されます。

科学技術基本法改正に関する日本学術会議幹事会声明
http://www.scj.go.jp/ja/info/kohyo/pdf/kohyo-24-kanji-4.pdf

 科学技術基本法に人文社会科学も含まれるようになることへの日本学術会議幹事会の意見。

★助成先の決定に抽選を取り入れ始めた助成機関
https://go.nature.com/2Sk8C5E

 これは英語の記事のときに既にご紹介しています。

★史上空前の論文捏造事件のどんでん返し
捏造は許されないが、論文は物理学の発展を先取りしていた?
https://webronza.asahi.com/science/articles/2020012400007.html

 「どんでん返し」という表現が良くないと多方面から指摘があります。

 かつての「スペクター事件」におけるキナーゼカスケード説もそうですが、仮説を立てることと実証することは別で、仮説がのちに正しいと解ったとしても、研究不正が消えるわけではありません。

 もちろん、実証されない説を唱えることは重要ですが、当てずっぽうでも当たったら栄誉があるというのでは、言ったもんがちになってしまいます。

旭川医大、相次ぐ不正報酬受給を謝罪
https://mainichi.jp/articles/20200129/ddm/012/100/117000c

旭川医大学長、不正報酬で陳謝 自らの給与一部返納も
https://www.chunichi.co.jp/s/article/2020012801001878.html

外部病院に不当報酬要求のメール 懲戒解雇の旭川医大元教授
https://www.chunichi.co.jp/s/article/2020012801002397.html

 問題多発の旭川医大

★Nature ダイジェスト 2020年2月号
投稿前スクリーニングで不正を防ぐ
https://go.nature.com/2UmLYMB

★Genentech was not the first biotech company
https://www.nature.com/articles/d41586-020-00187-1

 歴史を知ることは重要です。

★Faulty Antibodies Undermine Widespread Research
https://www.the-scientist.com/news-opinion/faulty-antibodies-undermine-widespread-research-67039

 抗体が認識しているものが想定されていたものではなかった…。これは近年指摘されていることで、生命科学において無駄で再現性の取れない実験が多くなされていることに批判が集まっています。

★United States charges prominent Harvard chemist with failing to disclose China ties
https://www.sciencemag.org/news/2020/01/us-charges-prominent-harvard-chemist-failing-disclose-china-ties

Prominent Harvard Chemist Arrested For Concealing Ties to China
https://www.the-scientist.com/news-opinion/prominent-harvard-chemist-arrested-for-concealing-ties-to-china-67037

ハーバード大の著名化学者逮捕 中国との関係虚偽申告か
https://www.asahi.com/articles/ASN1Y1QYMN1YUHBI002.html

中国「千人計画」参加隠した米ハーバード大教授を起訴…世界トップ研究者を好待遇招聘
https://www.yomiuri.co.jp/science/20200129-OYT1T50130/

 外国に関係する研究者を排除しているアメリカで、著名教授が中国の「千人計画」に参加していたことを隠していたことで逮捕。

★「中国の千人計画は脅威」 米国議会の報告書が警告
https://go.nature.com/2OnjTky

 千人計画はアメリカに相当警戒されているようです。

★Iranian Students Denied Entry to US
https://www.the-scientist.com/news-opinion/iranian-students-denied-entry-to-us-67023

 緊張高まる米イラン関係。

Brexit is happening: what does it mean for science?
https://www.nature.com/articles/d41586-020-00215-0

UK and EU: Cherish what you have achieved and stay close
https://www.nature.com/articles/d41586-020-00226-x

After Brexit, U.K. scientists face a long road to mend ties with Europe
https://www.sciencemag.org/news/2020/01/after-brexit-uk-scientists-face-long-road-mend-ties-europe

UK to Recruit Top Scientists in New Visa Program
https://www.the-scientist.com/news-opinion/uk-to-recruit-top-scientists-in-new-visa-program-67018

英国に世界のトップの科学者を呼び寄せるための人数制限のない早期発行ビザ制度の開始
https://crds.jst.go.jp/dw/20200131/2020013122367/

 ついにBrexitしました。欧州議会での皮肉たっぷりのファラージ氏の振る舞いを見ていると、ユーモアというものの意味を考えさせられますが、研究にとっては大打撃。

これぞ英国流の煽り? EU離脱演説に「モンティ・パイソンを超えた」
http://bit.ly/392CBG4

「ここまで高純度なブリカス仕草が見れるとは」EU離脱が承認された議会でのイギリスがすごくイギリス
https://togetter.com/li/1462457

★Catalexit: funds for science could suffer
https://www.nature.com/articles/d41586-020-00188-0

 スペインではカタルーニャ地方の分離独立問題。Catalexitと呼ばれています。

★NIH’s new cluster hiring program aims to help schools attract diverse faculty
https://www.sciencemag.org/news/2020/01/nih-s-new-cluster-hiring-program-aims-help-schools-attract-diverse-faculty

 多様な人材を獲得するために新しいプログラム「 Faculty Institutional Recruitment for Sustainable Transformation (FIRST)」を採用。

★Three bad reasons to do a postdoc
https://www.sciencemag.org/careers/2020/02/three-bad-reasons-do-postdoc

★Before applying for your dream science job, Google thyself
https://www.sciencemag.org/careers/2020/01/applying-your-dream-science-job-google-thyself

 日本では「ググれ」ですね。

研究者を目指す若者だけでなく、一般の読者にも読んで欲しい一冊―榎木 英介『研究不正と歪んだ科学 STAP細胞事件を超えて』村上 陽一郎による書評
https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20200204-00004152-allreview-life

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