科学・政策と社会ニュースクリップ

科学政策や科学コミュニケーション等の情報をクリップしていきます。

休みなく働く研究者、予算案、HFSP

2019年12月17日~2019年12月24日

カセイケン代表 榎木英介

 いよいよ2019年も終わりが見えてきました。

 今年の終わりは、1年の終わりでもあり、2010年代の終わりでもあります。

 例年のごとく、科学メディアが2019年を振り返っています。

★Cover Story:特集:2019年を振り返る:今年の重要人物10人
https://www.natureasia.com/ja-jp/nature/highlights/101514

Nature’s 10
Ten people who mattered in science in 2019.
https://www.nature.com/immersive/d41586-019-03749-0/index.html

遺伝子編集から重力波まで、2010年代の科学を形作ってきた画期的出来事を振り返り、2020年代に解決を目指すべき気候変動問題を考える。
https://www.nature.com/articles/d41586-019-03857-x

2019 Breakthrough of the Year

Darkness made visible
https://science.sciencemag.org/content/366/6472/1434.full

Runners-up
https://science.sciencemag.org/content/366/6472/1436.summary

Breakdowns of the year
https://science.sciencemag.org/content/366/6472/1442

Seeing is believing
https://science.sciencemag.org/content/366/6472/1423.full

ブラックホール撮影がトップに 米科学誌の今年十大成果
https://www.nikkei.com/article/DGKKZO53675750S9A221C1CR8000/

「今年の大発見」にブラックホール撮影
https://www.sankei.com/life/news/191220/lif1912200006-n1.html

科学10大ニュース、1位は「ブラックホール撮影」
https://www.yomiuri.co.jp/science/20191221-OYT1T50240/

★The Top Retractions of 2019
https://www.the-scientist.com/news-opinion/the-top-retractions-of-2019-66852

 今年少なくとも1433の論文が撤回されたそうですが、その中でトップ10が挙げられています。日本に絡むものはありませんでした。

 「日本は研究不正大国だ」というと、いやいやほかの国も酷いよ、という声が聞こえてきます。

 冬休みのシーズンですが、そんなこと言っていられない、という方も多いかもしれません。

★There’s No Winter Break From ‘Publish or Perish’
https://www.nytimes.com/2019/12/18/science/scientists-holiday-work.html

 元記事はBMJ

Working 9 to 5, not the way to make an academic living: observational analysis of manuscript and peer review submissions over time
https://www.bmj.com/content/367/bmj.l6460

 週末や休みに研究者がどれくらい働いているか国別比較しています。中国がトップ。日本も平均以上です。

 その理由は論文投稿と論文査読。重い負担としてのしかかります。

 このメルマガで2019年および2010年代を振り返るのは来週号にしようかと思いますが、本当にさまざまなことがありました。当メルマガは2003年創刊ですので、はじめて全てをお伝えしたディケイドということになります。

 2010年代も当然といえば当然ですが、毎週ニュースは尽きることがなく、さまざまなニュースや問題をお伝えしてきました。

 2020年代も、力の続く限り情報収集と発信を続けていきたいと思います。

★令和2年度予算政府案
https://www.mof.go.jp/budget/budger_workflow/budget/fy2020/seifuan2019/index.html

文教・科学技術予算
https://www.mof.go.jp/budget/budger_workflow/budget/fy2020/seifuan2019/13.pdf

概要
https://www.mof.go.jp/budget/budger_workflow/budget/fy2020/seifuan2019/12.pdf

令和2年度予算
https://www.mof.go.jp/budget/budger_workflow/budget/fy2020/fy2020.html

 予算案が決定しました。また、13日には補正予算が決定しています。

令和元年度財務省所管一般会計補正予算(第1号)概算が決まりました
https://www.mof.go.jp/about_mof/mof_budget/budget/fy2019/hosei1_20191213.html

令和元年度補正予算
https://www.mof.go.jp/budget/budger_workflow/budget/fy2019/hosei1213.html

科学技術関連に関しては、いろいろ論点があります。

 国立大学の運営費交付金については、相対評価による配分が強化、拡充されます。

 総額は164億円減ですが、高等教育の修学支援新制度のうち、 国立大学における授業料等減免相当分が264億円となっており、差し引き微増。

 「現行の授業料減免制度が対象としていた学部学生が高等教育の修学支援新制度に移行するため、関連経費が剥落している。」とのことです。

★国立大新入生から特例なし 修学支援制度で文科相
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO53690200T21C19A2CR8000/

 科学技術振興費は1兆3565億円で、前年度より187億円増。

 うち科研費は2,374億円で2億円増。

科学研究費助成事業(科研費)の令和2(2020)年度予算政府案について
https://www.jsps.go.jp/j-grantsinaid/06_jsps_info/g_191223/index.html

 若手優遇が謳われており、補正予算でも若手支援として550億円が計上されています。

 その他「Society5.0実現に向けた重点分野への戦略的配分」として

○ 量子技術に対する研究開発の強化(光・量子飛躍フラッグシッププログラム(Q-LEAP))[32億円](+10億円)
○ スーパーコンピュータ「富岳」の開発 [60億円](+3億円)
※ 令和元年度補正予算においても144億円を計上。

○ 宇宙・航空分野の研究開発の推進〔1,575億円〕(+15億円) ※ 令和元年度補正予算においても317億円を計上。

 などとなっています。

【令和2年度予算案】有人月探査に70億円、iPS備蓄事業は継続
https://www.sankei.com/life/news/191220/lif1912200030-n1.html

★経済見通しと経済財政運営の基本的態度
https://www5.cao.go.jp/keizai1/mitoshi/mitoshi.html

安倍総理は令和元年第14回経済財政諮問会議を開催しました
https://www.kantei.go.jp/jp/98_abe/actions/201912/19keizaishimon.html

令和元年第14回経済財政諮問会議
https://www5.cao.go.jp/keizai-shimon/kaigi/minutes/2019r/1219/agenda.html

議事

(1) 新経済・財政再生計画 改革工程表の改定
(2) 令和2年度の経済見通し

 財務省は厳しい経済・財政状況のなか科学技術予算は増やしている、しかし成果が出ていない、それは研究者や大学の怠惰のせいだ、というわけですが、予算総額のみでみてはいけません。

福島原発事故と科学力失速に見る政府依存報道
http://dandoweb.com/r2/

★iPS細胞の補助金はなぜ打ち切りに…黒幕は“税金で不倫旅行”疑惑の官僚!?
https://nikkan-spa.jp/1630176

 大学と財務省、どちらの立場ではない、中立的な立場で科学技術政策を見ていくことができれば、というのが我々の思いですが、まだまだ力不足です。

 2020年代には解析力をパワーアップし、仲間もふやし、人々のためという立場から、科学技術政策をみていきたいと思っています。

ムーンショット国際シンポジウム開催のお知らせ(更新)
https://www8.cao.go.jp/cstp/stmain/20191018moonshot.html

科学技術「ムーンショット型研究開発」のシンポジウム 東京
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20191217/k10012218391000.html

「日本はアジア一のAIプラットフォームを」とソフトバンクの孫氏 「ムーンショット国際シンポジウム」開催
https://scienceportal.jst.go.jp/news/newsflash_review/newsflash/2019/12/20191219_01.html

 ムーンショットシンポジウムが終了しました。このシンポジウムを受けて、やるべきことが絞られていくきます。そもそもムーンショット型研究開発がよいのかという問題もありますが、どのような中身になるのか、みていきたいと思います。

安倍総理は第34回未来投資会議を開催しました
https://www.kantei.go.jp/jp/98_abe/actions/201912/19miraitoushi.html

未来投資会議(第34回) 配布資料
https://www.kantei.go.jp/jp/singi/keizaisaisei/miraitoshikaigi/dai34/index.html

新たな成長戦略実行計画策定に関する
中間報告
令和元年 12月19日 未来投資会議
https://www.kantei.go.jp/jp/singi/keizaisaisei/miraitoshikaigi/dai34/saisyuu.pdf

 こちらでは、若手を一定の期間安定的に支援する事業などについて言及されています。また、フリーランスの働き方についても言及があります。

 政府が若手研究者を優遇するのは基本的に支持します。

 ただ、繰り返し述べているように、問題は若手ではなくなった40代前後の就職氷河期、ロスジェネ世代の研究歴がある人たちのことです。

★ 年収200万円台、大学非常勤講師の貧困事情。50代独身のつらい日々
https://nikkan-spa.jp/1625634

非常勤講師は年収150万円、学会も自腹…大学教員は超格差社会だった
https://nikkan-spa.jp/1629585

 この世代のなかには、上記記事のように非常勤講師で生きている方々もいらっしゃいます。

就職氷河期世代支援のご検討のお願い
http://www.keidanren.or.jp/announce/2019/1217.html

 経団連が「お願い」をしていますが、いかにも弱い…。

 分野も様々で、一言でああしろこうしろとは言い難いのが辛いところですが…。

 氷河期世代研究者の抱える問題は、まず第一が、生きていくための手段を見つけること、もう一つは研究そのものか、研究に匹敵する生きるミッションを持ってもらうことです。

★1/24
バイオテックMEETUP
https://sites.google.com/cellfiber.jp/124-meetup

 バイオベンチャーなど、人材を求めている企業もあります。

 博士号取得者が持つ課題発見能力をフルに使う職場は少ないかもしれませんが、課題解決能力は横展開できると思っています。

 とはいえ、「ライスワーク」(お金を稼ぐためだけの職)になってしまうと辛いものがあります。

 「ライフワーク」であった研究に匹敵する仕事に就くことができればいいのですが…。

★ITが単純労働を食い散らかした後にやってくること
https://www.orangeitems.com/entry/2019/12/15/085729

 しかし、そのライスワークだって、単純労働だったとしたら、なくなる未来が見えています。非常に厳しい状況です。

★70代起業家、現役バリバリで株式上場へ その活力源は
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO53449030X11C19A2X11000/

70歳就労、フリー選択なら「会社は契約を」 厚労省
https://www.asahi.com/articles/ASMDM4V51MDMULFA017.html

 人生100年時代といわれるのですから、70代くらいはまだまだ働きます。自らライフワークを作る人もいます。

 なかなか厳しい時代ですが、同世代の40代には活躍してほしいと思っています。2020年代もそのための情報を提供し続けていきます。

安倍総理は第24回復興推進会議を開催しました
https://www.kantei.go.jp/jp/98_abe/actions/201912/19fukkousuisin.html

第24回復興推進会議[令和元年12月19日]
http://www.reconstruction.go.jp/topics/main-cat7/sub-cat7-1/20191219093300.html

 復興も2020年代以降続いていく課題です。

★特別インタビュー
政策研究大学院大学 科学技術イノベーション政策研究センター(SciREX センター)顧問 黒田 昌裕 氏インタビュー
科学技術イノベーション政策の未来への期待
歴史認識とEBPMによる検証の必要性-
https://www.nistep.go.jp/activities/sti-horizon%e8%aa%8c/vol-05no-04/stih00194

★「デルファイ調査検索」改訂版(第11回調査結果追加)の公開について
https://www.nistep.go.jp/archives/43481

★平成30年(2018年)医師・歯科医師・薬剤師統計の概況
https://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/ishi/18/index.html

 通称「三師調査」と呼ばれるこの調査。

 私の本業である病理診断科勤務の病理医は1993名。2年前より100名増えました。

 しかし年間50名しか増えていないわけです。まだまだ足りません。

 AI時代を目前に、時間をかけて病理医になったところで、その労力が報われないと思う学生、研修医も出てきているようです。

 実はこれはいろいろな分野で起きていることです。

 今ドライバー不足が言われていますが、自動運転時代を目前に、わざわざお金をかけて免許を取ろうとする人が少なくなっていると言われているのです。

「第二種免許の規制緩和」がどうしても必要な理由
https://headlines.yahoo.co.jp/article?a=20191223-00058450-jbpressz-soci

 この過渡期の人材不足をどうするか…。非常に悩ましいところです。

★From social media to conference social
https://www.nature.com/articles/d41586-019-03853-1

 Twitterとリアルカンファレンスを融合した「生物学のウッドストック」を企画しているテルアビブ大のOded Rechavi 氏。

★大学のハラスメント講習で語られた「学生の信頼を損なう恐れのある大学教員の25の行動」…これらを避けるための4つのことも提示も
https://togetter.com/li/1445181

★声明「ヘリウムリサイクル社会を目指して」発表記者会見を行いました
https://www.jps.or.jp/information/2019/12/helium.php

ヘリウム不足「深刻」、再利用訴え 日本物理学会など
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO53628920Q9A221C1000000/

ディズニーから風船消えた ヘリウムガス、世界的な異変
https://www.asahi.com/articles/ASMDF5DVHMDFULBJ00N.html

 非常に大きな問題です。

★上海の名門大、規約から「思想の自由」を削除 学生反発
https://www.asahi.com/articles/ASMDP4RXLMDPUHBI00K.html

IEEE、49件の論文の撤回を発表
http://jipsti.jst.go.jp/johokanri/sti_updates/?id=11687

★Head of ancient-DNA lab sacked for ‘serious misconduct’
https://www.nature.com/articles/d41586-019-03932-3

Bullying allegations lead to firing of prominent ancient DNA expert
https://www.sciencemag.org/news/2019/12/bullying-allegations-lead-firing-prominent-ancient-dna-expert

★Howard Hughes Medical Institute faces race, sex bias lawsuits by two Asian American biologists
https://www.sciencemag.org/news/2019/12/howard-hughes-medical-institute-faces-race-sex-bias-lawsuits-two-asian-american

Two Asian American women allege bias by HHMI
https://science.sciencemag.org/content/366/6472/1432

★日本初「病院内ラジオ局」開局 英国発祥、投稿・音楽も
https://www.asahi.com/articles/ASMDL4FZHMDLOIPE01B.html

 サンドイッチマンの「病院ラジオ」
http://www6.nhk.or.jp/nhkpr/tag/index.html?i=15534

を思い起こしますが、よい取り組みだと思います。

★This AI researcher is trying to ward off a reproducibility crisis
https://www.nature.com/articles/d41586-019-03895-5

★Dispatches from a world in turmoil
https://www.nature.com/articles/d41586-019-03872-y

 Syria, Bolivia, Sudan, Iran, Chile, Ecuador, Lebanon, Venezuela, Hong Kong and Catalonia…。混乱する社会情勢のなか、科学者たちはどう行動したか…。

OECD Recommendation on Responsible Innovation in Neurotechnology
https://www.oecd.org/sti/emerging-tech/recommendation-on-responsible-innovation-in-neurotechnology.htm

★Trump picks computer scientist to lead National Science Foundation
https://www.nature.com/articles/d41586-019-03924-3

Trump to nominate Arizona State computer scientist to lead the National Science Foundation
https://www.sciencemag.org/news/2019/12/breaking-news-trump-nominate-arizona-state-computer-scientist-lead-national-science

★A Year After the Midterm Elections, Where Are They Now?
http://bit.ly/2PObDeM

 中間選挙で研究歴のある議員が数名誕生しました。今どうしているのか…。

 日本でもこうしたことをやらなきゃですね。

★2020 U.S. spending bill restricts some animal research, pushes for lab animal retirement
https://www.sciencemag.org/news/2019/12/2020-us-spending-bill-restricts-some-animal-research-pushes-lab-animal-retirement

★Science groups, senator warn Trump administration not to change publishing rules
https://www.sciencemag.org/news/2019/12/science-groups-senator-warn-trump-administration-not-change-publishing-rules

Rumours fly about changes to US government open-access policy
https://www.nature.com/articles/d41586-019-03926-1

 トランプ政権の論文出版方針に対し異議申し立て。

★Chinese institutes investigate pathogen outbreaks in lab workers
https://www.nature.com/articles/d41586-019-03863-z

★科学者の説明責任、ますます重要に 欧州のポピュリズム深化に対応
https://scienceportal.jst.go.jp/columns/highlight/20191218_01.html

★「研究に関する男女共同参画ダイバーシティの推進状況に関するアンケート調査(研究者対象)」の実施について(ご協力のお願い)【回答期限 2020年1月10日】
https://www.opened.network/questionary/questionary-0002/

ノーベル賞受賞者を30年で28人輩出 驚異の国際機関
http://bit.ly/2r20Wvj

 仏ストラスブールに拠点を置く国際ヒューマン・フロンティア・サイエンス・プログラム、HFSPです。今年亡くなった中曽根康弘元総理の提唱で始まったこのプログラム。

 非常に重要な示唆が含まれているインタビュー記事です。