科学・政策と社会ニュースクリップ

科学政策や科学コミュニケーション等の情報をクリップしていきます。

人種差別、国際共同研究、学者への攻撃

2019年11月19日~2019年11月26日

研究不正と歪んだ科学
STAP細胞事件を超えて
日本評論社 税込 2,530円
https://www.nippyo.co.jp/shop/book/8178.html

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 某ウェブ媒体に、この本をなぜ書いたのか、その意図を解説する記事を書きました。明日公開予定です。

 なぜいまSTAP細胞事件なのか…。その理由がお分かりいただけると思います。

 さて、今週のニュースピックアップです。まずこれです。

★「中国人は採用しません」 東大特任准教授がツイート
https://www.asahi.com/articles/ASMCS7QVPMCSUTIL023.html

東大大学院特任准教授が中国人差別ツイート 大学謝罪、企業は寄付停止表明も本人は反論
https://mainichi.jp/articles/20191126/k00/00m/040/003000c

 まず最初に言っておきます。この発言はまったくアウトです。どこにも擁護する余地はありません。

東大情報学環大澤昇平氏の差別発言について
https://researchmap.jp/jo34y74lc-1820559/

 上記記事に詳しく解説されています。

 東大やマネックスグループの動きは当然ですし、それ以外の選択肢はありません。

学環・学府特任准教授の不適切な書き込みに関する見解
A message about inappropriate writings by a part-time project faculty of III/GSII
http://www.iii.u-tokyo.ac.jp/news/2019112411004

寄付講座担当特任准教授の不適切な書き込みに関する見解
https://www.monexgroup.jp/jp/news_release/news_release/news_release-20191124/main/00/link/20191124_release.pdf

「中国人は採用しません」投稿をした東大特任准教授の講座に寄付停止へ。マネックスグループが発表
https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20191125-00010002-huffpost-soci

 場外乱闘?もありました。

東大発「ヘイト書き込み」への心からのお詫び
教養の欠如、人材育成の偏りへの大反省
https://jbpress.ismedia.jp/articles/-/58352

 当該発言者を東大の学部出身者ではないからという理由で批判したり、教授会に出られない本当の教員でないという理由で批判する人もあらわれました。

 それもある種の属性による偏見なわけで、批判が出てしかるべきです。

学歴ロンダリング、と言われて
https://note.com/ogiuechiki/n/n42ef8782d3b9

 ただ、容認できない人種差別発言とからめて、中国への警戒を口にする人はいます。

 中国の人権問題(ウイグルチベット、そして今は香港)に関しては、私達の価値観とは大いに異なるのは事実です。

★香港デモ、籠城なお100人 遺書したためる学生も
https://www.asahi.com/articles/ASMCM5CTKMCMUHBI01C.html

Violent campus clashes between protesters and police stir fears for Hong Kong universities
https://www.sciencemag.org/news/2019/11/violent-campus-clashes-between-protesters-and-police-stir-fears-hong-kong-universities

Violent clashes at Hong Kong universities disrupt research
https://www.nature.com/articles/d41586-019-03515-2

Hong Kong protests hit universities
https://science.sciencemag.org/content/366/6468/935.full

Research Interrupted in Hong Kong Amid Protests
https://www.the-scientist.com/news-opinion/research-interrupted-in-hong-kong-amid-protests-66771

 香港のデモは研究にも大きな影響を与えています。

 トランプ政権発足以来のアメリカでも、中国を念頭に置いた外国の影響力排除の傾向が強まっているのは、これまでお伝えしてきたとおりです。今週もこれに関するニュースがありました。

★U.S. Senate panel sees a standard grant application as defense against foreign influence
https://www.sciencemag.org/news/2019/11/us-senate-panel-sees-standard-grant-application-defense-against-foreign-influence

Chinese infiltration of US labs caught science agencies off guard
https://www.nature.com/articles/d41586-019-03584-3

 アメリカ上院の委員会が、中国の人材勧誘プログラムが、アメリカの研究予算や技術が中国の軍事技術や経済に使われていると警告を発する報告書を発表しました。

Threats to the U.S. Research Enterprise: China’s Talent Recruitment Plans
https://www.hsgac.senate.gov/imo/media/doc/2019-11-18%20PSI%20Staff%20Report%20-%20China's%20Talent%20Recruitment%20Plans.pdf

 もちろん、これと先の人種差別発言を結びつけることはできません。明確に区別するべきです。

 Nature Indexは、コラボレーションについての特集記事を公表しています。

★Nature Index 2019 Collaboration and Big Science
https://www.nature.com/collections/fcdggfefid

Despite political turmoil, global scientific collaboration continues to flourish
https://www.nature.com/articles/d41586-019-03540-1

A guide to the Nature Index
https://www.nature.com/articles/d41586-019-03545-w

★US-China science weathers political ill wind
https://www.nature.com/articles/d41586-019-03541-0

 科学はオープンであるべきで、「科学に国境はない」のです。

 一方で「科学者に国籍はある」というのもシビアな現実で、理想と現実の間でやっていくしかありません。しかし、理想の旗を下ろしてはいけません。

Brexit shadow hangs over EU partnerships
https://www.nature.com/articles/d41586-019-03543-y

 イギリスが直面する問題も、まさに科学者の国境問題です。

★Attacks on scholars worldwide raise concern
https://www.nature.com/articles/d41586-019-03582-5

 世界中で研究者、学者、そして学生が、政府などから暴力を含めた攻撃を受けています。

 アメリカの特定国への入国規制も挙げられています。

就職氷河期世代の叫び ~女子学生は今
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20191120/amp/k10012183971000.html

「3年で30万人」は絵空事か 就職氷河期世代の雇用対策に欠けた、深刻な視点
https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20191122-00000029-zdn_mkt-bus_all

 就職氷河期世代の問題は、研究歴のある方々が直面している問題であり、また、私自身が同世代でもあり、常にアンテナを貼っています。

 研究者の場合、大学院重点化等で増えた博士号取得者を、ポスドクや任期付き教員として研究機関が採用しました。企業でいう正社員、任期なし教員等は減っているわけではないのですが、それ以上に博士号取得者が増えました。

 1991年から2000年までに博士課程の大学院生は倍増していますが、任期なし常勤ポストが倍増したわけではありません。

 しかし、研究以外の職は就職氷河期だったわけで、任期付きポストを転々としたり、非常勤講師を専業にして生計を立てる人がその生活を抜け出すことができなくなっています。

★揺らぐ高校の役割 人間関係築く教育を
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO52519250S9A121C1CK8000/

 研究者の困難の一つは「地元」に足場がないことだと思っています。

 多くの研究者は大学進学時に高校の学区や高校が含まれる市町村を離れているわけです。そこで人間関係が立ち切れてしまいます。その後もポストを求めて転々とするわけですから、いわば根無草のようなものです。

 あるいは中学進学時に地元公立中学には行かない人も多いでしょうから、その前から「地元」とは関係が希薄化してしまいます。

 もっというと、親世代も「地元」に根差した人ではないかもしれないので、地縁、血縁というセーフティネットを失った状態にある人が多いのではないかと思います。

 うまく行っている時はいいのですが、困難に直面したときに、頼れるセーフティネットがないことが、困難をより悪化させる可能性があるのではないかと思います。

 だとすると、地縁、血縁に変わるセーフティネットネットが必要ということになります。

 もちろん、最後は公的なセーフティネット生活保護等があるわけですが、その前の段階で、研究歴のある方々のコミュニティのようなものを作る必要があるのではないかと思います。

 コミュニティ?そういえば「科学コミュニティ」があったな、と思いますが、このコミュニティは科学界の外側に出ようとしている人たちには冷淡(というか関心がない)なのが現状です。

 SNSなどのサイバースペース上でなんとかならないかと思って試行錯誤はしていますが、これが解決策だ、というものはまだ見つけていません。

 ただ、試行錯誤のなかで、ある試みをしようとしています。詳細がわかればまたお伝えしていきます。

★研究現場は今:第1部 博士/7 企業勤務も一長一短 景気悪化で変わる形態 /京都
https://mainichi.jp/articles/20191119/ddl/k26/040/339000c

 論文博士号。企業研究は景気に左右されるという、当たり前といえば当たり前の現実です。

★Natureによる博士課程の学生向けの調査から、メンタルヘルス、ハラスメント、学生ローンの問題が浮き彫りに
https://www.natureasia.com/ja-jp/info/press-releases/detail/8749

 日本と現状が異なっているという指摘もありますが、重要な調査です。

★なぜいま「在野研究者」なのか
『在野研究ビギナーズ』編著者・荒木優太氏インタビュー
https://shinsho-plus.shueisha.co.jp/interview/%e8%8d%92%e6%9c%a8%e5%84%aa%e5%a4%aa%e3%82%a4%e3%83%b3%e3%82%bf%e3%83%93%e3%83%a5%e3%83%bc/7408

 在野研究者に注目している昨今。ブーム?の火付け役のインタビュー。

★「研究力低下のほんとうの理由」文科省要請でのスピーチ〜全院協の要請行動2019に参加しました〜
https://note.mu/mkepasince2019/n/n74ab97fed44f

 動く当事者を応援したいです。

内閣府オープンイノベーションチャレンジ2019の公募開始について
https://www8.cao.go.jp/cstp/stmain/20191121openinnovation.html

★レビュー「人間中心の政策に転換 第6期科学技術基本計画策定作業進む」
https://scienceportal.jst.go.jp/news/newsflash_review/review/2019/11/20191122_01.html

 第6期科学技術基本計画に向けて提言なども各方面から出始めました。

 提言の影響力などない、という話も聞いたことがありますが、ウォッチを続けていきたいと思います。

★論文の引用・共著関係からみる我が国の研究活動の国際展開に関する分析[調査資料-285]の公表について
https://www.nistep.go.jp/archives/43160

★提言「歴史的思考力を育てる大学入試のあり方について」
http://www.scj.go.jp/ja/info/kohyo/pdf/kohyo-24-t283-2.pdf

提言のポイント
http://www.scj.go.jp/ja/info/kohyo/kohyo-24-t283-2-abstract.html

★令和2年10月の日本学術会議会員・連携会員の半数改選に向けて
http://www.scj.go.jp/ja/member/iinkai/senko/25senkou.html

男女共同参画に携わる研究者等との懇談
https://www.cao.go.jp/minister/1909_e_imai/photo/2019_008.html

★科学のワクワクを感性に訴える 京大初・研究のイラストレーター活躍
https://mainichi.jp/articles/20191122/k00/00m/040/042000c

 日本では新しい活躍の場ですね。

★PC1人1台へ4千億円
情報通信技術化、小5~中3に
https://this.kiji.is/570529499008664673?c=113147194022725109

 大きな決定です。

★How to manage a multi-author megapaper
https://www.nature.com/articles/d41586-019-03544-x

 複数著者がいる論文の調整。

WIPO、“World Intellectual Property Report 2019”を公開
http://jipsti.jst.go.jp/johokanri/sti_updates/?id=11635

★医者と製薬会社の「悪しき慣習」
新薬販促のため製薬会社は多額の金銭を医師にバラまき、国や保険者、患者に余計な負担を強いる。
https://facta.co.jp/article/201912027.html

★製薬会社からのギフトは処方に影響するか?
フランスではギフトを受け取ったGPのジェネリック処方率が低い
https://medical.nikkeibp.co.jp/leaf/mem/pub/hotnews/bmj/201911/563146.html

 製薬会社と医師の関係。ある種の共依存、悪い言葉では「タカリ」でもあります。

★Jeffrey Epstein and the Decadence of Science
https://blogs.scientificamerican.com/cross-check/jeffrey-epstein-and-the-decadence-of-science/

 故エプスタイン氏の問題が投げかけた課題は大きいです。

★Researchers sound alarm on European data law
https://science.sciencemag.org/content/366/6468/936.full

European data law is impeding studies on diabetes and Alzheimer’s, researchers warn
https://www.sciencemag.org/news/2019/11/european-data-law-impeding-studies-diabetes-and-alzheimer-s-researchers-warn

 General Data Protection Regulation (GDPR) について。いろいろなウェブサイトで、ポップアップがたくさん出てきますが、研究への悪影響も懸念されています。

★The science institutions hiring integrity inspectors to vet their papers
https://www.nature.com/articles/d41586-019-03529-w

★【ドキュメント】日本のiPS細胞は、なぜガラパゴス化したのか?
https://newspicks.com/news/4406530

日本終焉レベルの大問題。iPS細胞10億円支援打ち切りという愚行
https://www.mag2.com/p/news/425347

 iPS細胞研究への支援打ち切りに関して、単純に問題だと叫ぶだけで終わってはいけません。

★「ニセ医療」情報の拡散防止、プラットフォーマー各社の対策進む ツイッター、note、はてな
https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20191124-00000001-jct-sci

 医療に関しては偽情報が生命に直結する可能性があります。 シビアな攻防が続いています。

無印良品が“昆虫食”参戦、「コオロギせんべい」発売へ
https://news.livedoor.com/lite/article_detail/17414645/

食用コオロギを使った「せんべい」来春発売 徳島大発ベンチャーのグリラス(徳島市)事業拡大へ
https://www.topics.or.jp/articles/-/287847

「食用コオロギ」商品化へ 研究施設が試行錯誤
https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20191123-00000010-kobenext-soci

 昆虫食が拡大しつつあります。

★Human germline editing needs one message
https://www.nature.com/articles/d41586-019-03525-0

★Global 5G wireless deal threatens weather forecasts
https://www.nature.com/articles/d41586-019-03609-x

New deal won’t prevent 5G communication networks from interfering with weather forecasts
https://www.sciencemag.org/news/2019/11/new-deal-won-t-prevent-5g-communication-networks-interfering-weather-forecasts

★Science funders gamble on grant lotteries
https://www.nature.com/articles/d41586-019-03572-7

★Physics, life sciences, genetics: three big players and their top partners
https://www.nature.com/articles/d41586-019-03542-z

★Researchers must unite against US environment agency’s attack on scientific evidence
https://www.nature.com/articles/d41586-019-03526-z

★US academic-science mentoring falls short of best practices, say National Academies
https://www.nature.com/articles/d41586-019-03598-x

★Experi-mentoring: Where to turn when your PI can’t help
https://www.sciencemag.org/careers/2019/11/experi-mentoring-where-turn-when-your-pi-can-t-help

 メンター問題。日本ではアメリカ以上にあまり話題にならないのは、メンターとして頑張っても、評価の対象にならないからなのでしょう。

★University to Students on Medicaid: Buy Private Coverage, or Drop Out
https://www.nytimes.com/2019/11/24/us/medicaid-students-brigham-young.html

★科学工学指標2020:米国における科学技術労働力の状況
https://crds.jst.go.jp/dw/20191119/2019111921609/

★Double dip
By Charles Piller
Science22 Nov 2019 : 941-943 Full Access
An NIH program pays school debt to keep scientists in academia. Many break the rules by also taking industry money.
https://science.sciencemag.org/content/366/6468/941

Financial Aid Recipients Breaking Funding Rules: Investigation
http://bit.ly/2QOnc6o

 NIHから経済支援(借金返済)を受けている研究者がルールを破って企業からお金をもらっているとの指摘。

★科学・社会科学分野における世界最高峰の研究者を選出した高被引用論文著者リスト2019年版発表
https://kyodonewsprwire.jp/release/201911193682