科学・政策と社会ニュースクリップ

科学政策や科学コミュニケーション等の情報をクリップしていきます。

フリー研究者の論点

★フリー研究者をめぐる諸問題
2019年11月12日~2019年11月19日

研究不正と歪んだ科学
STAP細胞事件を超えて
日本評論社 税込 2,530円
https://www.nippyo.co.jp/shop/book/8178.html

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 好評発売中です。ご購入くださった皆様には御礼申し上げます。

 まだ詳細を詰めている段階ですが、2020年1月12日(日)に大阪にて出版記念シンポジウムを開催予定です。追ってご案内いたします。

 今週はフリー研究者について考えさせられました。

近畿大学を退職しました
https://evidence8money.hatenablog.com/entry/2019/11/12/165910

 私(榎木)と同時期に、同じ近畿大学を辞めた方のブログです。研究をしたいから大学を辞めるという方がついに現れたのだ、と思い、Yahoo!ニュース個人に記事を書きました。

「フリー研究者」の時代がやってきた?!その可能性と課題
https://news.yahoo.co.jp/byline/enokieisuke/20191115-00151003/

 Twitter上でこの記事について議論させていただきましたが、いろいろ気づかされました。

 まず、研究機関に所属しないで研究を行う人の存在は、昔からいるということ。

 むしろ職業研究者が現れるまでは、多くの研究が趣味で行われていたということです。そしてその後も人文社会科学系を中心に、在野の研究者の存在感は大きかったわけです。それは理解していましたが、その存在感は分野によっては相当大きいということです。

 そうした分野の方々からみれば、何を今更というご意見が出ても理解できます。

 一方で、私のように「ウェット」な生物学をやってきた人間からすると、バイオハッカーDIYバイオを行う人たちのやっていることは驚きなわけで、新しい時代来たなあと思いました。

 こうした分野間の違いは大きいと思います。

 とはいえ、インターネットの発達やコンピュータの性能の向上などは、あらゆる分野で在野研究を行いやすくしているわけで、軽々と大学辞めますという人が登場したのは新しいなあと思います。

 昔は、在野でいることである種のルサンチマンを感じていたというか、在野にしか居場所がない境遇を忸怩たるものと思っていた人も多かったように思いますが、いまはそういう恨めしさみたいなものもだいぶ軽減しつつあるようにも思います。

 とはいえ、大学がなくなるほど在野研究の質量が高いわけではなく、正規軍とゲリラくらいの差はあります。

 しかし、その差がどんどん縮まってきたときに、大学とは何かが大きく問い直されることになるしょう。

「趣味の歴史修正主義」を憂う
大木毅 / 現代史家
https://synodos.jp/society/23075

 もう一つ、在野の大きな問題は、研究の質です。歴史学など、いっけん参入障壁が低そうにみえる分野で、既存の研究を無視したトンデモや陰謀論を唱える人が絶えないわけですが、こうしたトンデモが既存の研究を無視して広がっていく危険性をどうするかは考えないといけません。

海外の例も参考に独立自営の人の支援を
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO52310790Y9A111C1SHF000/

 もう一つ、職業を持って趣味で研究する人は別として、完全にフリーランスになった場合の、社会保障や労働環境をどうするのかという問題もあります。

 すでにフリーランス研究者の仕事サイトなども出てきています。

Hire freelance scientists and researchers
https://www.kolabtree.com/

The rise of the freelance scientist
https://www.editage.com/insights/the-rise-of-the-freelance-scientist

 ともかく、大学教員が軽々と在野に飛び出す時代が間近に迫るいま、いろいろな課題が見えてきました。

 私は在野にいますが、完全なフリーランサーではなく、職を持ちながらこうしたメルマガを作ったり文章を書いたりしているわけですが、現場に身を置いてこの問題を追っていきたいと思います。

★(思考のプリズム)災害復旧のボランティア ハードル下げる発信を 小松理虔
https://www.asahi.com/articles/DA3S14255371.html

 「新復興論」
https://genron.co.jp/books/shinfukkou/

 の小松氏。

課題の「内」が切迫するほど、その緊張感ゆえ、当事者性の低い「外」からの関わりが生まれにくくなる。こうした内と外の問題意識の乖離(かいり)は、原発事故のような特殊な課題領域だけで起こるものではない。

 という指摘は、大学や研究にも当てはまるのかなあと思います。

 在野は黙ってろ!教授になってから物をいえ!という言葉は私自身投げかけられてきました。研究ももうちょっと「外」から語ってもいいと思うのですが…。

★残念ながら大学の非常勤講師の報酬額が安いのは「侮辱」ではない
https://anond.hatelabo.jp/20191117140606

 専業非常勤講師の方々にとっては辛い状況が続いていますが、非常勤講師が専業という状態を考慮しない職である点が問題です。

文化勲章を受章した私が、83歳になっても研究を楽しめる理由
祝・甘利俊一氏受章!研究者人生を語る
https://gendai.ismedia.jp/articles/-/68146

 研究に年齢は関係ない!という思いと、研究を楽しめる環境にない方々が多いことにも思いをはせます。在野で好きな研究ができらたらどれだけよいか。

★異例だった今年のノーベル物理学賞 福岡伸一「地球外生命体の存在という夢に」
連載「福岡伸一の新・生命探検」
https://dot.asahi.com/aera/2019111200018.html

 今年のノーベル物理学賞ポスドクだった研究者が受賞した理由。

男女共同参画社会に関する世論調査
https://survey.gov-online.go.jp/r01/r01-danjo/index.html

★How UniversitiesBecame the NewBattlegroundsin the HongKong Protests
By K.K. Rebecca LaiNov. 18, 2019
https://www.nytimes.com/interactive/2019/11/18/world/asia/hong-kong-protest-universities.html

 ニューヨークタイムズインタラクティブなページに、起こっていることの重大さを感じます。

香港理工大で激しく衝突 警官隊が未明に突入 負傷者多数か
https://www.sankei.com/world/news/191118/wor1911180002-n1.html

香港中文大学で警察が催涙弾2356発 狙いは「国際ネットハブ」との分析も
https://news.nifty.com/article/world/china/12241-465816/

 1968年、日本でもみられた光景に近いのでしょうか。大学がバトルフィールドになったという重大事態を思います。

安倍総理は令和元年第11回経済財政諮問会議を開催しました
https://www.kantei.go.jp/jp/98_abe/actions/201911/13keizaishimon.html

令和元年第11回経済財政諮問会議
https://www5.cao.go.jp/keizai-shimon/kaigi/minutes/2019r/1113/agenda.html

 教育、科学技術政策が議論されています。やっぱり経済財政諮問会議が総合科学技術・イノベーション会議の上なのか、という思いを抱いていしまいますが…。

資料5-1 経済再生・財政健全化の一体的な推進強化に向けて~教育・科学技術政策~(有識者議員提出資料)(PDF形式:277KB)
https://www5.cao.go.jp/keizai-shimon/kaigi/minutes/2019r/1113/shiryo_05-1.pdf

資料5-2 経済再生・財政健全化の一体的な推進強化に向けて~教育・科学技術政策~(参考資料)(有識者議員提出資料)(PDF形式:530KB)
https://www5.cao.go.jp/keizai-shimon/kaigi/minutes/2019r/1113/shiryo_05-2.pdf

資料6 Society 5.0時代の教育・科学技術の在り方について(萩生田臨時議員提出資料)(PDF形式:654KB)
https://www5.cao.go.jp/keizai-shimon/kaigi/minutes/2019r/1113/shiryo_06.pdf

資料7 科学技術・イノベーションによるSociety 5.0実現の加速(竹本臨時議員提出資料)(PDF形式:919KB)
https://www5.cao.go.jp/keizai-shimon/kaigi/minutes/2019r/1113/shiryo_07.pdf

★令和元年10月末申請の大学等の設置認可の諮問について
http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/daigaku/toushin/attach/1422587.htm

 いくつかの大学が誕生しますが、賛否のある大学もあります。

★総合政策特別委員会(第31回) 配付資料
http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/gijyutu/gijyutu22/siryo/1422091.htm

議題

最新の研究開発動向について
我が国の強みを生かした研究戦略の構築について

★ロボットの社会実装を促進するためのタスクフォースを立ち上げました
https://www.meti.go.jp/press/2019/11/20191112001/20191112001.html

山梨県におけるCSFの患畜の確認(国内49例目)について
http://www.maff.go.jp/j/press/syouan/douei/191116.html

 名称が変わりCSFとなった豚のコレラ。発生が続いています。

宇宙政策委員会 宇宙産業・科学技術基盤部会 宇宙科学・探査小委員会 第33回会合 議事次第
https://www8.cao.go.jp/space/comittee/27-kagaku/kagaku-dai33/gijisidai.html

米国提案による国際宇宙探査への日本の参画について
宇宙基本計画工程表の改訂について
宇宙基本計画の改定に向けて
その他

★ポスト「はやぶさ」予算の壁
https://www.nikkei.com/article/DGKKZO52146010U9A111C1EA1000/

ポストはやぶさ2、「トランプ氏の月計画」がライバルに
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO52106440T11C19A1I00000/

 予算の配分という大きな課題。

★提言「持続可能な生命科学のデータ基盤の整備に向けて」
http://www.scj.go.jp/ja/info/kohyo/pdf/kohyo-24-t279-1.pdf

提言のポイント
http://www.scj.go.jp/ja/info/kohyo/kohyo-24-t279-1-abstract.html

 日本学術会議

★Society 5.0時代の人材育成に向けた義務教育の抜本的ICT化を求める緊急提言
http://www.keidanren.or.jp/policy/2019/096.html

 経団連

★The art of research
https://www.nature.com/articles/d41586-019-03460-0

★「これまでに約2000本の不正論文を見つけました」
https://www.editage.jp/insights/i-found-about-2000-problematic-papers-says-dr-elisabeth-bik

 いわゆるネカトハンター。日本にはなかなかいません。

★Elsevier社、OAの対価としてデータを要求か。漏洩文書から明らかに(記事紹介)
http://jipsti.jst.go.jp/johokanri/sti_updates/?id=11627

★多彩な企画で『人間らしさ』考える 『サイエンスアゴラ2019』に5000人が参加し閉幕
https://scienceportal.jst.go.jp/news/newsflash_review/newsflash/2019/11/20191118_01.html

 私たちは今年は不参加でした。

★京大のiPS備蓄で自己資金要求 自民調査会、予算減額も
https://www.chunichi.co.jp/s/article/2019111201002215.html

iPS備蓄事業、予算減額案 山中伸弥氏「非常に厳しい」
https://r.nikkei.com/article/DGXMZO52219680V11C19A1TJM000

iPS研究予算「いきなりゼロは理不尽」 山中伸弥所長
支援継続を政府に求める
https://r.nikkei.com/article/DGXMZO52033220R11C19A1000000

京大iPS細胞備蓄事業、国支援打ち切りか 年10億円
https://www.asahi.com/articles/ASMBX4DVRMBXULBJ006.html

「iPS細胞」実用化に時間がかかるワケ
https://wedge.ismedia.jp/articles/-/17873

 iPS細胞研究に予算を出さないなんてけしからんという意見がある一方で、冷ややかにみる人たちもいます。

血液クレンジングだけじゃない……“トンデモ医療”で大金を稼ぐ「自由診療クリニック」はなぜ野放しなのか?
https://bunshun.jp/articles/-/15324

 医師たちが情報発信をするというレベルでは止められない状況。医療界がもっと本腰を入れろ、という意見も出ています。

★WHO sticks to 2020 governance plan for human-genome editing
https://www.nature.com/articles/d41586-019-03474-8

★CRISPR’s unwanted anniversary
https://science.sciencemag.org/content/366/6467/777.full

 ゲノム編集。ゲノム編集ベイビーの問題が発覚して1年。

★GRADUATE STUDENTS PROTEST TRUMP LABOR BOARD’S PROPOSAL TO EXEMPT THEM FROM DEFINITION OF ‘EMPLOYEE’
https://www.newsweek.com/graduate-students-protest-trump-nlrb-proposed-rule-change-employee-definition-1471750

 大学院生を労働者として認めろという抗議。

★More Indigenous and Latin American students are joining US graduate programmes - but overall diversity remains low
https://www.nature.com/articles/d41586-019-03546-9

SpaceX launch highlights threat to astronomy from ‘megaconstellations’
https://www.nature.com/articles/d41586-019-03446-y

 衛星が天文学に影響するという懸念。

EPA’s ‘secret science’ plan is back, and critics say it’s worse
https://www.sciencemag.org/news/2019/11/epa-s-secret-science-plan-back-and-critics-say-it-s-worse

E.P.A. to Limit Science Used to Write Public Health Rules
https://www.nytimes.com/2019/11/11/climate/epa-science-trump.html

EPA Plans Modifications to Controversial Transparency Proposal
https://www.the-scientist.com/news-opinion/epa-plans-modifications-to-controversial-transparency-proposal-66707

 EPAが極秘研究をするというプランに批判が。

★More South Korean academics caught naming kids as co-authors
https://www.nature.com/articles/d41586-019-03371-0

 子供を共著者にするというなんとも言えないやり方。入試の過度な競争が生み出しています。

★Avert catastrophe now in Africa’s Sahel
https://www.nature.com/articles/d41586-019-03445-z

★Huge study documents gender gap in chemistry publishing
https://www.nature.com/articles/d41586-019-03438-y

 化学の分野でもジェンダーギャップが。

★Nontenure-track researchers ratify first contract with the University of California
https://www.sciencemag.org/careers/2019/11/nontenure-track-researchers-ratify-first-contract-university-california

 大学と交渉し、権利を勝ち取った非テニュア研究者。

★学費無料のエンジニア養成機関、「42 Tokyo」が設立
https://edtechzine.jp/article/detail/2855

ついに黒船上陸──学費無料の仏発エンジニア養成機関「42」東京校が来春オープン
https://forbesjapan.com/articles/detail/30568