2019年8月13日~2019年8月20日
お盆シーズンでニュースは先週よりさらに少なめです。
先週のニュースで、白楽ロックビル氏のサイトに掲載された平成の5大ネカト(捏造、改ざん、盗用)事件第1位についてご紹介しました。
★平成の5大ネカト事件:東大分生研・加藤事件(第1位)
https://haklak.com/page_FFP_heisei-1.html
今週は引き続いて2位から5位まで発表されました。
平成の5大ネカト事件:第2位-第5位
https://haklak.com/page_FFP_heisei-2.html
どれがランキングしたかは上記リンクを見ていただくとして、どれも著名な事件です。
こうした事件が繰り返されるのはなぜか。そして研究不正への対応は果たして十分だったのか…。令和に持ち越された大きな課題です。
平成に発生した事件ですが、これらのトップ5を凌駕すると思われる事件が、弘前大学元教授の故Y氏の事件だと思います。この事件はいまだ論文撤回が続いており、令和に持ち越した事件と言えるでしょう。
https://retractionwatch.com/the-retraction-watch-leaderboard/
リトラクションウォッチの撤回論文ランキングでは、2019年8月20日現在なんと撤回論文82報で3位です。2位のボルト氏の97報に迫ってきました。
共同研究者のI氏も62報で第4位です。
平成の5大事件に比べ報道されないこの事件。令和のランキングでは確実に上位にくるでしょう。
研究不正への対策はこのままで良いのか、大いなる疑問を感じます。
★学生の論文「コピペ」を探すツールをグーグルが提供。「Google Assignments」が教師をサポート
https://m.huffingtonpost.jp/entry/tol-for-teachers-google_jp_5d5760f6e4b0eb875f23e8f5
こうした試みも重要だと思いますが、それだけではもちろん不十分です。
科学コミュニティの動きも重要です。
★がん当事者の参画、今後も追求(向き合う)
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO48590190V10C19A8TCC000/
公共政策は「お上が提供する問題解決型」であったが、がん対策は「それぞれ専門性を持つ市民からなる市民活動による問題解決型」になりつつある。
以前から、患者団体などの当事者には注目してきました。研究不正対策も科学政策も、文科省が、政府が、というだけでなく、当事者である研究者が動くことが重要だと思います。
しかし、自分の分野にお金を引っ張ってくることばかりの日本の研究者に、それができるでしょうか?
★Teenage activists and an IPCC triumph
https://www.nature.com/articles/d41586-019-02425-7
環境問題では、16歳の環境活動家Greta Thunbergさんが大きな影響を与えました。
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%B0%E3%83%AC%E3%82%BF%E3%83%BB%E3%83%88%E3%82%A5%E3%83%BC%E3%83%B3%E3%83%99%E3%83%AA
私たちは、自分の問題の当事者としてできることがあるはずです。
★Communicating science to policymakers: six strategies for success
https://www.nature.com/articles/d41586-019-02372-3
この記事でもGreta Thunbergさんが取り上げられています。
Strategies for success
1. Know who you want to reach.
2. Have clear and actionable recommendations.
3. Repackage your work.
4. Write well.
5. Pick your moment.
6. Sustain and amplify your engagement.
の6つです。詳細は記事を読んでください。
★Vanishing Arctic ice will open the way for more science voyages, analysis suggests
https://www.sciencemag.org/news/2019/08/vanishing-arctic-ice-will-open-way-more-science-voyages-analysis-suggests
温暖化による北極の氷の減少は、シロクマなどに壊滅的な被害を与えていますが、北極海が輸送路になったり、研究の対象になったりといった側面もあります。
★科学読み物 時代を超え
https://www.nikkei.com/article/DGKKZO48628940W9A810C1BE0P00/
時代超える科学読み物 実験が育む驚きの心
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO48635000W9A810C1000000/
★Hundreds of extreme self-citing scientists revealed in new database
https://www.nature.com/articles/d41586-019-02479-7
自分の論文を過度に引用するセルフ引用が明らかになってきました。
★Rule out conflicts of interest in psychology awards
https://www.nature.com/articles/d41586-019-02429-3
学会賞の利益相反問題。
★Key concepts for making informed choices
https://www.nature.com/articles/d41586-019-02407-9
★For a decade, Francis Collins has shielded NIH-while making waves of his own
https://www.sciencemag.org/news/2019/08/decade-francis-collins-has-shielded-nih-while-making-waves-his-own
Francis's way
https://science.sciencemag.org/content/365/6454/632
サイエンス誌の記事。NIHのコリンズ長官が就任10年に。オバマ政権とトランプ政権をまたぎ、NIHの盾となった長官。
★In departure for NIH, Cancer Moonshot requires grantees to make papers immediately free
https://www.sciencemag.org/news/2019/08/departure-nih-cancer-moonshot-requires-grantees-make-papers-immediately-free
Open access takes root at National Cancer Institute
https://science.sciencemag.org/content/365/6454/629
バイデン元副大統領のイニシアチブで始まったNational Cancer InstituteのCancer Moonshotが、資金を提供した研究に関する論文をオープンアクセスにせよとの要求を出し、すったもんだの大騒ぎに。
★Climate expert at CDC poised to file whistleblower complaint over treatment
https://www.sciencemag.org/news/2019/08/climate-expert-cdc-poised-file-whistleblower-complaint-over-treatment
★Telescopes in Hawaii reopen after deal with protesters
https://www.sciencemag.org/news/2019/08/telescopes-hawaii-reopen-after-deal-protesters
Astronomy must respect rights of Indigenous peoples
https://www.nature.com/articles/d41586-019-02441-7
ハワイの望遠鏡の問題。地域の人たちとの関係という大きな課題を投げかけています。
★Trump administration weakens Endangered Species Act
https://www.nature.com/articles/d41586-019-02439-1
New Trump rules would curb U.S. endangered species protections
https://www.sciencemag.org/news/2019/08/new-trump-rules-would-curb-us-endangered-species-protections
Trump Administration Weakens Endangered Species Protections
https://www.the-scientist.com/news-opinion/trump-administration-weakens-endangered-species-protections-66267
トランプ政権。環境も絶滅危惧種も関心ないという事ですが…。
★小中高に専門知持つ多様な人材を
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO48587960V10C19A8SHF000/
政府は「ポスドク1万人計画」を定め、大学院の定員を増やしてきた。だが、就職氷河期とも重なり、不安定な有期雇用の研究ポストを転々とする多くの高学歴層を生んだ。
和歌山県では、理学、医学の博士号を持つ30~40代の3人を現場に迎えた。来年度の採用でも広げる方針だ。教員免許を持たない社会人を学校に呼び込む流れがさらに広がることを期待したい。