2019年5月7日~2019年5月14日
朝のNHKニュースでかなり最初のほうに取り上げられていました。
★JST分析事例「151研究領域におけるTOP10%論文数の国際シェア順位の推移(7か国比較)」
http://www.jst.go.jp/osirase/2019/pdf/Top10papers_20190513.pdf
日本が首位の分野はありません。1位は米中のみ。
まあ、もともと1位だった分野は過去にもなかったし、ほかの国も首位を取れていないわけですが、2位だった分野はありました。それはいまや見る影もなく…。
なお、ドイツはそこまで順位の低下がないそうです。
そんなドイツですが、研究予算が右肩上がりとのこと。
Germany Announces Continued Increases to Research Funding
https://www.the-scientist.com/news-opinion/germany-announces-continued-increases-to-research-funding-65835
German researchers promised a decade of budget increases
https://science.sciencemag.org/content/364/6440/519.full
米中という大国に真っ向から張り合おうとするのか、ドイツをモデルに立て直すのか…。
そんななか、安倍首相も出席して、総合科学技術・イノベーション会議が開催されました。
★総合科学技術・イノベーション会議(第44回)議事次第
https://www8.cao.go.jp/cstp/siryo/haihui044/haihu-044.html
議事
1.研究力強化について
2.ムーンショット型研究開発制度の検討状況について
安倍総理は第44回総合科学技術・イノベーション会議を開催しました
https://www.kantei.go.jp/jp/98_abe/actions/201905/13kagaku.html
研究開発を「出島」で 政府、民間との連携推進に新施策
https://www.chunichi.co.jp/s/article/2019051301002209.html
産学連携強化へ対策検討を指示
https://www.nikkei.com/article/DGKKZO44721360T10C19A5PP8000/
産学連携へ新法人制度 政府検討
税優遇、資金集めやすく
https://www.nikkei.com/article/DGKKZO44697800S9A510C1PE8000/
政府も「研究力」の低下を認識した上で、抜本的改革を行おうとしています。
「研究力強化の肝は、人材・資金・環境 これまでの取組により一定の成果は得られるものの、抜本的な解決に至らず」(大臣資料 https://www8.cao.go.jp/cstp/siryo/haihui044/siryo1-2.pdf)と、素直に失敗を認めています。
新しいところでは「バイアウト制の導入(競争的資金等の直接経費から研究以外の業務の代行経費の支出を可能に)」「競争的資金等の直接経費からPI人件費の支出を可能に」(文科省提出資料 https://www8.cao.go.jp/cstp/siryo/haihui044/siryo1-1.pdf)といったところです。
そして記事の見出しにもあるように、「大学・国研の出島化」(競争領域を中心とした共同研究機能等の外部化)がキーワードどして出てきました(大臣資料)。
また、文科省資料にもあった分業化ですが、「研究に優れた者について、研究に専念できるポストを創出(教育職との分業化)し、 事務を原則アウトソーシングへ」(大臣資料)ということまで踏み込まれています。
研究現場が激変するほどのインパクトがある可能性があるこの改革。果たして実行できるのか、そして実行されたとして、どの程度研究を変えることができるのか…。
★追跡
大学システム、世界から遅れ 研究者就職、立場弱く 東大突然、採用取り消し
https://mainichi.jp/articles/20190510/ddm/012/100/125000c
藤田医科大の宮川教授の件が毎日新聞に取り上げられました。このような雇用の仕組みの問題も含め、大学には大きな問題があります。ここまで踏み込むことができるのか…。
★東北大、学生に経済支援 プログラム拡充
災害科学や人工知能など5分野 大学院生向け環境整備
https://www.nikkei.com/article/DGKKZO44637590Q9A510C1L01000/
既報ですが、政府を待たずとも、こうした取り組みを始めている大学もあります。
いつも言っていますが、私たち自身に何ができるか、自分ごととして考えられるかが、「研究力」にせよ何にせよ必要です。
★研究活動上の不正行為に関する調査結果について
http://www.toyoeiwa.ac.jp/daigaku/news/topics/news_2019051001.html
驚くべき研究不正が明らかになりました。架空の人の架空の論文…。特定不正行為の捏造と盗用が認定されました。
東洋英和女学院 不正行為に関する調査結果「極めて悪質」 深井智朗院長を懲戒解雇 2019年5月10日
http://www.kirishin.com/2019/05/10/24985/
院長の研究不正認定=著書に捏造、懲戒解雇-東洋英和女学院
https://www.jiji.com/sp/article?k=2019051001108&g=soc
架空の神学者「でっち上げ」 二転三転した前院長の説明
https://www.asahi.com/articles/ASM5B5FV4M5BUCLV00J.html
架空論文に浮かんだ3人のレーフラー 記者が謎に迫った
https://www.asahi.com/articles/ASM59577RM59UCVL014.html
「カール・レーフラー」捏造騒動を報告書から整理してみた。Twitterには実在しない「本人」名乗るアカウントも
https://www.huffingtonpost.jp/entry/carl-loevler_jp_5cd775d0e4b0705e47dd5d00
東洋英和前院長の著書、岩波書店が絶版へ 捏造問題で
https://www.asahi.com/articles/ASM5F6GZMM5FUCVL02B.html
謹告(深井智朗氏『ヴァイマールの聖なる政治的精神』ほかについて)――
https://www.iwanami.co.jp/news/n29826.html
研究データを捏造するという話はよくありますが、研究者の存在そのものを捏造するとは、考えが及びませんでした。
そして学長を調査し解雇することができたことも、ある種驚きでした。なぜなら、東北大元学長や岡山大学の事例などでは、研究不正の疑義を訴えだ人たちが逆に処分されているからです。
どんな分野でも研究不正は起こることを認識し、それが誰であろうと公正な調査ができるようにすることに重要性をあらためて感じました。
★大学発ベンチャー調査、大学発ベンチャーデータベースを公表しました
https://www.meti.go.jp/press/2019/05/20190508001/20190508001.html
★総合政策特別委員会(第25回) 配付資料
http://www.mext.go.jp/kaigisiryo/2019/04/1415374.htm
★温室効果ガス排出量を正確に算定する新指針ができた 京都のIPCC総会で合意
https://scienceportal.jst.go.jp/news/newsflash_review/newsflash/2019/05/20190513_01.html
★廃プラ:21年に輸出規制 初の国際枠組み 国内処理強化へ
https://mainichi.jp/articles/20190512/ddm/001/040/135000c
海中でプラ分解 官民規格策定へ
国際標準 提案めざす
https://www.nikkei.com/article/DGKKZO44697880S9A510C1NN1000/
汚れた廃プラ、条約の規制対象に 日本からの輸出、困難
https://www.asahi.com/articles/ASM5B6GNKM5BULBJ01B.html
レジ袋有料化、分別の徹底も 廃プラ規制で変わる生活
https://www.asahi.com/articles/ASM5C4Q1HM5CULBJ00B.html
バーゼル条約で廃プラ輸出規制、国内処理に難題
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO44690870R10C19A5EA2000/
廃プラ問題をどうするか。重要性が増してきました。
★強制では、オープンアクセスへの転換は難しい(記事紹介)
http://jipsti.jst.go.jp/johokanri/sti_updates/?id=11267
★Junior researchers are losing out by ghostwriting peer reviews
https://www.nature.com/articles/d41586-019-01533-8
Early-career researchers commonly ghostwrite peer reviews. That’s a problem
https://www.sciencemag.org/careers/2019/05/early-career-researchers-commonly-ghostwrite-peer-reviews-s-problem
★Stats: abuse by researchers’ lust for certainty
https://www.nature.com/articles/d41586-019-01453-7
Stats: multiple experiments test biomedical conclusions
https://www.nature.com/articles/d41586-019-01454-6
Stats: is this therapy useful?
https://www.nature.com/articles/d41586-019-01452-8
★Academics Raise Concerns About Predatory Journals on PubMed
https://www.the-scientist.com/news-opinion/academics-raise-concerns-about-predatory-journals-on-pubmed-65856
★How I became easy prey to a predatory publisher
https://www.sciencemag.org/careers/2019/05/how-i-became-easy-prey-predatory-publisher
How I became easy prey
https://science.sciencemag.org/content/364/6440/602.full
捕食ジャーナルに関する記事がいくつか出ていました。
★Eye for Manipulation: A Profile of Elisabeth Bik
The microbiologist has turned her attention full-time to unearthing problematic figures in papers-for free.
https://www.the-scientist.com/news-opinion/eye-for-manipulation--a-profile-of-elisabeth-bik-65839
こういう方が日本には足りません。ただ、一部には研究の問題を独立した立場で見つめる人たちが日本にもいます。
★製薬マネー、癌ガイドライン委員に流れる~「平成」が遺した大きな宿題
https://news.yahoo.co.jp/byline/enokieisuke/20190510-00125485/
★Facebook opens up to social scientists, carbon mapper launches and South Africa’s publishing trends
https://www.nature.com/articles/d41586-019-01419-9
★Real change requires experts to collaborate
Like scientific research, good policymaking now needs different perspectives
https://www.ft.com/content/b12c4008-6c14-11e9-80c7-60ee53e6681d
★Building upon foundations for evidence-based policy
https://science.sciencemag.org/content/364/6440/534.full
★US environment agency cuts funding for kids’ health studies
https://www.nature.com/articles/d41586-019-01491-1
★NIH fears good-government bill would hamper peer review
https://www.sciencemag.org/news/2019/05/nih-fears-good-government-bill-would-hamper-peer-review
★Science support for Belt and Road
https://science.sciencemag.org/content/364/6440/513.full
★授業料減免や奨学金支給 「高等教育無償化」法が成立
https://www.asahi.com/articles/ASM5B5TYZM5BUTIL02N.html
大学無償化、低所得世帯の75万人支援 20年4月から
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO44608510Q9A510C1CR0000/
大学等における修学の支援に関する法律
http://www.sangiin.go.jp/japanese/joho1/kousei/gian/198/meisai/m198080198021.htm
が成立。とはいえ、これで「無償化」はないだろうという声も。
アクセス:「大学無償化」言い過ぎ 厳しい所得制限/中間層支援なし 識者「制度は不十分」
https://mainichi.jp/articles/20190514/ddm/012/100/130000c
大学無償化で中間層に影響か=授業料減免の縮小懸念-支援法成立、来年施行
https://www.jiji.com/jc/article?k=2019051001317&g=soc
★研究か就活か 悩める理系学生の現実
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO44452880X00C19A5XS5000/
仕事は3年1本勝負に ジョブ型採用が変える就業観
https://style.nikkei.com/article/DGXMZO44519100Y9A500C1000000/
理系学生にとってジョブ型採用が広がるのはチャンスです。ただ、理系にどうもバイオ系が入っていないようですが…。
もちろんジョブ型になったからといってバラ色というわけではありません。
★Improving diversity in the physical sciences needs more than data - it needs resolve, too
https://www.nature.com/articles/d41586-019-01418-w
★Mental health in academia is topic of the week at a sold-out UK meeting
https://www.nature.com/articles/d41586-019-01468-0
★「平成」時代のブレークスルー:
世界で最も引用された平成時代の日本の論文Top20
https://clarivate.jp/news-releases/2019/Heisei-Breakthrough/
4月26日公表。
★在野に学問あり 第3回 逆卷しとね
https://www.iwanamishinsho80.com/contents/zaiya1-arakiyuta
この連載読んでいなかったのですが、非常に面白いです。在野でも学問はできるというのは、私自身が主張してきたことでもあるし、こうして実践する先駆者がいるのは勇気付けられます。
★昭和の教訓、生かす時代に 新たな研究成果に学ぶ
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO44529100Y9A500C1TCT000/
一般向けの昭和史本には最新の研究成果を踏まえず、過去の俗説や誤りがそのままになっている書物が氾濫している。
在野の研究者はあくまで研究者でなければいけません。質が問われるわけです。