科学・政策と社会ニュースクリップ

科学政策や科学コミュニケーション等の情報をクリップしていきます。

子どもの憧れの職業、研究者の光と影

2019年4月2日~2019年4月8日

★社会意識に関する世論調査
https://survey.gov-online.go.jp/h30/h30-shakai/index.html

 平成が終わろうとしている今、平成最後の社会意識の世論調査です。

 良い方向に向かっている分野として、科学技術もあがっています。

「医療・福祉」を挙げた者の割合が31.9%と最も高く、以下、「防災」(21.1%)、「科学技術」(19.7%)、「治安」(19.4%)、「教育」(18.7%)などの順となっている。

年齢別に見ると、「医療・福祉」を挙げた者の割合は70歳以上で、「防災」を挙げた者の割合は18~29歳から40歳代で、「科学技術」を挙げた者の割合は18~29歳で、「治安」を挙げた者の割合は60歳代、70歳以上で、「教育」を挙げた者の割合は18~29歳、30歳代で、それぞれ高くなっている。

 とのこと。若者の科学技術に対する意識は好印象のようです。

★2019年版 新小学1年生の「将来就きたい職業」、親の「就かせたい職業」
将来の夢1位は男の子「スポーツ選手」、女の子「ケーキ屋・パン屋」
~男の子はサッカー選手と警察官、女の子はかわいいスイーツやアイドルに憧れ~
https://www.kuraray.co.jp/news/2019/190403

 毎年恒例の調査ですが、男の子で「「研究者」が過去最高5位」となり、また、男の子の親では就かせたい職業として「「研究者」20年前の2.5倍」となったとのこと。

 残念ながら、女の子では研究者はトップ20に入らず、女の子の親は就かせたい職業の13位。おおきなジェンダーによる差があらわになっています。

 研究者は人文社会科学系も含まれますが、世論調査とあわせ、科学技術や研究者が若い人を中心にポジティブにみられているということが分かります。

 子供たちや人々の好感に応えられる科学研究であるべきですが、その実態は…

★私大への支援事業、計画途中で打ち切りへ 大学側は反発
https://www.asahi.com/articles/ASM485CH9M48PTIL013.html

 「私立大学研究ブランディング事業」。東京医大の事件の影響です。

 しかし、外部資金に依存している大学にとっては死活問題です。

「はしご外された」職失う研究者も 私大の支援打ち切り
https://www.asahi.com/articles/ASM485CH9M48PTIL014.html

 影響を受けるのは非正規雇用の研究者や事務の方々などです。外部資金に依存するということはこういうことでもあり、「大学を競争させればぬるま湯を抜け出して良い成果が出る」というわけではないことが分かります。

★東大、非常勤講師の労働契約で違法行為認める…慶應や中央大は頑なに違法行為継続
https://biz-journal.jp/2019/04/post_27372.html

JAXA派遣の男性社員 自殺は過労死認定 土浦労基署
https://mainichi.jp/articles/20190403/k00/00m/040/236000c

 非常勤や派遣依存の体制は、弱いものに負担を押し付ける体制でもあります。

沖縄科学技術大学院大学 パワハラ被害58%  報復恐れ、通報は19%
https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20190330-00402920-okinawat-oki

 衝撃的な数字であると同時に、ここだけの話なのか、という思いも抱きます。やはりここでも弱い人達が苦しんでいます。

★Sydney Brenner, pioneer of molecular biology, dies at 92
https://www.sciencemag.org/news/2019/04/sydney-brenner-pioneer-molecular-biology-dies-92

Sydney Brenner, mRNA Discoverer, Dies
https://www.the-scientist.com/news-opinion/sydney-brenner-mrna-discoverer-dies-65708

Geneticist Sydney Brenner, who made tiny worm a scientific legend, dies
https://www.nature.com/articles/d41586-019-01128-3

 その沖縄研究大学院大学にも関わりの深いシドニーブレンナー博士死去。ご冥福をお祈りします。

 先の調査をブレンナー博士ならどう思うでしょうか。

★Academic Researchers at the University of California Form a Union
https://www.the-scientist.com/news-opinion/academic-researchers-at-the-university-of-california-form-a-union-65705

 研究者組合の設立。こうした動きがないと、弱い立場の人たちが守られません。

 科学研究は成功者の目線で記述されることが多く、その負の側面が覆い隠されています。子どもの憧れという光と、パワハラ、不安定雇用という影…。

 影の部分を取り上げると
「ネガティブなことを言うと研究者になる若者が減るではないか」
と叱られることがありますが、マイナス面を隠してプラス面だけ強調するのは詐欺のようなものです。

 誰かが日の当たらない部分をしっかりと照らし出してすべきです。私たちも目を離さずしっかりと見ていくと同時に、苦しむ人々を救う手段を実行に移していきたいと思います。

★日中イノベーション協力対話を開催しました
https://www.meti.go.jp/press/2019/04/20190402001/20190402001.html

日本、中国に知財保護求める 初のイノベーション対話
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO43242140S9A400C1SHA000/

知的財産保護の取り組み理解を 中国側が日本に説明
https://www.asahi.com/articles/ASM424W68M42UHBI00Z.html

 経産省。知的財産保護やイノベーションなどについて議論されました。

★人間中心の AI 社会原則
平成31年3月29日 統合イノベーション戦略推進会議決定
https://www8.cao.go.jp/cstp/aigensoku.pdf

 先週既報。資料公開されました。EUでも類似の指針が出ました。

EUがAI倫理指針 人間主体、説明責任果たす仕組みを
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO43505940Z00C19A4000000/

政策評価の結果の政策への反映状況(平成30年度)
http://www.mext.go.jp/a_menu/hyouka/hanei/1415013.htm

安倍総理は第5回パリ協定に基づく成長戦略としての長期戦略策定に向けた懇談会を開催しました
https://www.kantei.go.jp/jp/98_abe/actions/201904/02kondankai.html

+2℃の世界・温暖化と生きる:CO2排出、今世紀後半0 再生エネ主力化・石炭火力低減 脱炭素へ、政府有識者懇提言
https://mainichi.jp/articles/20190403/ddm/012/040/037000c

「カーボンプライシング」は両論併記 温暖化長期戦略・有識者が提言
https://mainichi.jp/articles/20190402/k00/00m/040/270000c

★ジャーナルだけでなくリポジトリプレプリントサーバー、解析ツールにいたるまで網羅するElsevier社の無視できない存在(記事紹介)
http://jipsti.jst.go.jp/johokanri/sti_updates/?id=11200

 エルゼビア社が大きすぎて、簡単には「ノー」といえない状況。

★プランSの攻防
https://haklak.com/page_2019_Haug.html

 白楽ロックビル氏のまとめ。

★Microbes May Take Some of the Blame for the Reproducibility Crisis
https://www.the-scientist.com/news-opinion/microbes-may-take-some-of-the-blame-for-the-reproducibility-crisis-65707

 再現性は大きな問題となっていますが、その一因が次第に明らかに。

★論文掲載料目当て粗悪学術誌、米で55億円支払い命令
https://www.yomiuri.co.jp/science/20190404-OYT1T50349/

 読売はハゲタカとは表現していませんが、それはともかく、大きなニュースです。

 読売は今購読者しか読めない記事が増えてきましたので、詳細は以下を。

U.S. judge rules deceptive publisher should pay $50 million in damages
https://www.sciencemag.org/news/2019/04/us-judge-rules-deceptive-publisher-should-pay-501-million-damages

OMICS International Fined Over $50 Million for “Deceptive Practices”
https://www.the-scientist.com/news-opinion/omics-international-fined-over-50-million-for-deceptive-practices-65698

 OMICS社がインドにあるのでどの程度お金が払われるか不透明とのこと。

★子宮頸がんワクチンに関する主張を巡る日本での裁判結果は、偏った主張や誤った情報が正しいと取られかねず、人々の健康を危険にさらす恐れがある。
Court ruling highlights the threat of vaccine misinformation
Distorted facts that undermine uptake of the human papillomavirus vaccine could leave a generation at risk.
https://www.nature.com/articles/d41586-019-01031-x

 先週既報のニュース。natureが巻頭言で取り上げました。

 今回の判決が「反ワクチン派」の拠り所とされてしまうのではないかという懸念。

 判決は名誉毀損について争われていますが、丁寧に説明しないとワクチンはやはり危ないと思ってしまう人がいるかもしれません。

★Bioethicists Concerned over Japan’s Chimera Embryo Regulations
https://www.the-scientist.com/news-opinion/bioethicists-concerned-over-japans-chimera-embryo-regulations-65700

 キメラ動物研究を解禁した日本の方針に懸念が。

★NIH Tightens Security, Blocking Iranian Scientists from Campus
https://www.the-scientist.com/news-opinion/nih-tightens-security-blocking-iranian-scientists-from-campus-65702

GPS glitch threatens thousands of scientific instruments
A quirk in how Global Positioning System signals are time-stamped risks messing up devices’ data from 6 April.
https://www.nature.com/articles/d41586-019-01048-2

Brexit has already irreparably damaged research
https://www.nature.com/articles/d41586-019-01060-6

 同意なき離脱か離脱延期か混乱するイギリス。すでに影響は出ているとのことです。

★21世紀の政策決定に科学が果たすべき役割を議論する「科学が議会に会う」イニシアチブ
https://crds.jst.go.jp/dw/20190402/2019040218776/

★Brazil's government freezes nearly half of its science spending
https://www.nature.com/articles/d41586-019-01079-9

‘We can’t take another hit like this’: Brazilian scientists lament big budget freeze
https://www.sciencemag.org/news/2019/04/we-cant-take-another-hit-brazilian-scientists-lament-big-budget-freeze

 大幅予算カットで途方にくれているブラジルの研究者。

★研究者のためのキャリアアップ術
https://www.natureasia.com/ja-jp/ndigest/v16/n4/%E7%A0%94%E7%A9%B6%E8%80%85%E3%81%AE%E3%81%9F%E3%82%81%E3%81%AE%E3%82%AD%E3%83%A3%E3%83%AA%E3%82%A2%E3%82%A2%E3%83%83%E3%83%97%E8%A1%93/98061

★女性の研究者事情、カナダでは? 首席科学顧問に聞く
https://www.asahi.com/articles/ASM3Y4QY1M3YULBJ009.html

★Stepping up to be a role model for LGBTQ inclusion in science
https://www.nature.com/articles/d41586-019-01146-1

★The many and diverse roles of a research scientist
https://www.nature.com/articles/d41586-019-01043-7

★「破壊的イノベーション」の意味を取り違えている内閣府総合科学技術・イノベーション会議の「ムーンショット型研究開発制度」
http://riversidehope.blogspot.com/2019/04/blog-post_6.html

 本格的ムーンショット批判。

★【永守重信】一流大学卒も、二流大学卒も、全員「役立たず」だ
https://newspicks.com/news/3803085

校名改称の京都先端科学大で入学式 永守氏30分の熱弁
https://www.sankei.com/life/news/190404/lif1904040007-n1.html

入学式
京都先端科学大 「大学、全く作り直す」 日本電産創業者の永守理事長が宣言
https://mainichi.jp/articles/20190404/ddn/041/100/025000c

 熱弁を振るった永守氏。役に立つとはなんぞやとも思いますが、永守氏の大学に期待したいと思います。

★A Review of Everything in Its Place: First Loves and Last Tales
https://www.the-scientist.com/reading-frames/a-review-of-everything-in-its-place-first-loves-and-last-tales-65654

 4年前に亡くなったオリバーサックス氏の新刊。

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JSTは科学技術を用いて社会課題の解決やSDGsの実現に向けた取り組みを実施している団体等を表彰する「STI for SDGs アワード」を創設します。
今般、アワードの創設を記念し、科学技術を用いた社会課題解決事例の紹介や、地方創生の在り方を提起するシンポジウムを開催します。
本シンポジウムは、蟹江憲史慶應義塾大学教授による基調講演とパネルディスカッションの2部構成となっております。
SDGsや科学技術に関心・興味をお持ちの方々のご参加をお待ちしております!
またご興味ある方々へ周知いただけますと幸いです。

(シンポジウム詳細)
【タイトル】STI for SDGsアワード シンポジウム:科学技術イノベーションによる課題解決、そして地方創生へ
【日時】 2019 年4 月16日(火) 13時30分~16時30分(開場13:00)
【URL】https://www.jst.go.jp/sis/co-creation/sdgs-award/
【お申込みフォーム】https://form.jst.go.jp/enquetes/award_sympo
【シンポジウムについての問い合わせ先】国立研究開発法人科学技術振興機構「科学と社会」推進部 E-mail:sdgs-award@jst.go.jp
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