科学・政策と社会ニュースクリップ

科学政策や科学コミュニケーション等の情報をクリップしていきます。

科学技術基本法改正へ、九大自死事件

2019年1月2日~2019年1月8日
カセイケン代表 榎木英介

 この号で800号となりました。800週間ちまちまとメルマガ作成しています。次は1000号を目指します。

 毎日新聞のスクープ。

★人文・社会も科学振興の対象に 基本法25年ぶり抜本改正へ
https://mainichi.jp/articles/20190107/k00/00m/040/300000c

解説:科学振興、人文・社会も 生命倫理やAI、文・理不可分
https://mainichi.jp/articles/20190108/ddm/012/040/072000c

 1995年に議員立法で成立した科学技術基本法
http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/kagaku/kihonkei/kihonhou/mokuji.htm
http://elaws.e-gov.go.jp/search/elawsSearch/elaws_search/lsg0500/detail?lawId=407AC1000000130&openerCode=1

 第一条は以下。

この法律は、科学技術(人文科学のみに係るものを除く。以下同じ。)の振興に関する施策の基本となる事項を定め、科学技術の振興に関する施策を総合的かつ計画的に推進することにより、我が国における科学技術の水準の向上を図り、もって我が国の経済社会の発展と国民の福祉の向上に寄与するとともに世界の科学技術の進歩と人類社会の持続的な発展に貢献することを目的とする。

 「人文科学のみに係るものを除く」とされていますから、大きな改正です。

 25年ぶりに改正されるとのこと。与党内に異論があるそうで、今後の議論がどうなるか分かりませんが、方向性としては当然と言えましょう。日本の「科学力」の低下は、人文社会科学系の軽視と、分野の壁によるタコツボ化も影響を与えているでしょう。

★科学、大学の仕組みをどうすればよいのか、考えてみた
https://togetter.com/li/1305616

★「科学立国の危機ー失速する日本の研究力」ウラ話の1
https://blog.goo.ne.jp/toyodang/e/0091a192689ee33bcb0af9767356c9cb

 日本の科学をどうするべきか、議論が続いていますが、概ね方向性ははっきりしているように思います。2月1日発売の豊田長康さんの本は必読だと思います。

科学立国の危機 失速する日本の研究力
https://www.hanmoto.com/bd/isbn/9784492223895

 とはいえ、政策に落とし込むという部分は簡単ではなく、提言的なものを出すだけではすまないリアルな政治の部分でもあります。

 政治家などの「トンデモ」発言は、政治家を無見識と馬鹿にするだけでは意味がありません。政治家に分からせる努力をしていないことが如実にあわらわれているわけです。そもそも政治家に会うような研究者はごく限られています。

 時間がかかる地道な活動を行う覚悟と人材が科学コミュニティにあるかということになります。

★Eurodoc Survey on the Structure of Doctorates across Europe
http://eurodoc.net/news/2019/eurodoc-survey-on-the-structure-of-doctorates-across-europe

 Eurodocの調査。政策を動かそうと思ったときにやるべきことの一つは、こうした調査でしょう。結局地に足を着け動いていかなければ物事は変えられないわけで…。ただそれをやってしまうと研究時間が削られてしまうわけです。

 現役研究者が時間的になかなか無理なら、引退した研究者や、科学研究歴のある人材、科学研究に理解のある人材を巻き込みながらアクションを起こす組織が必要です。個人プレイでは限界があります。

 いきなり全米科学振興協会(AAAS)のような巨大な組織を作るのは無理にしても、もう少し組織化した動きをしていかないといけないでしょう。

 私たちも、こうしたことを20年間夢見てきましたが、成し遂げられていません。しかし、関心は高まっているように感じます。

 とにかくアクション、アクション、アクションです。

★事件の涙「そして、研究棟の一室で~九州大学 ある研究者の死~」
https://www.nhk.or.jp/docudocu/program/92894/2894212/index.html

 昨年末に放送されたドキュメンタリー。先日録画を見ました。

 実は私も、Yahoo!ニュース個人にこの事件の記事を書いたので、NHKから意見を聞かれました(プレ取材協力という感じでしょうか)。

 さまざまな感想が出ています。

http://b.hatena.ne.jp/entry/s/www.nhk.or.jp/docudocu/program/92894/2894212/index.html
https://blog.goo.ne.jp/applemint1104/e/a81b1fb2cd3c108db0b5c63b8fa8a239
http://naka3-3dsuki.hatenablog.com/entry/2018/12/29/223858
https://togetter.com/li/1302992

 Salyuの「emergency sign」という曲が挿入されるなど、やや情緒的な部分もありましたが、色々考えさせられました。
http://j-lyric.net/artist/a04aaf7/l01fc06.html

 ただ、どうすればよかったのか…。Kさんのような人を救うことために何をすべきなのかのか…。答えは描かれていませんでした。

 それは私たちに投げかけられた宿題といえるでしょう。

 答えはすぐには出ませんが、せめて危機のときにここに連絡しようという、「110番」のようなものが作れないものかと思います。

 カセイケンでも可能な限り、「とっかかり」を作っていくことができればと思います。

★この映像を観てほしい。あなたは間違いなく衝撃を受ける
南海トラフ巨大地震と首都直下地震による被害をシミュレーションした映像。ただ、再生数は驚くほど少ない。
https://www.buzzfeed.com/jp/kensukeseya/movie-jishin

 このメルマガでも南海トラフ巨大地震関連の情報はフォローし続けていますが、まだまだ関心は薄いと思います。

安倍総理は年頭記者会見を行いました
https://www.kantei.go.jp/jp/98_abe/statement/2019/0104kaiken.html

★Japan’s pioneering detector set to join hunt for gravitational waves
https://www.nature.com/articles/d41586-018-07867-z

★BMC Biology Shares Rejected Papers’ Peer Reviews with Other Journals
https://www.the-scientist.com/news-opinion/bmc-biologyshares-rejected-papers-peer-reviews-with-other-journals-65279

★The world debates open-access mandates
http://science.sciencemag.org/content/363/6422/11

 ScienceにPlanSの記事が出ています。

★病理診断報告書の確認忘れ(医療安全情報 No. 71)
http://www.med-safe.jp/pdf/report_2018_3_R001.pdf

病理診断報告書の確認忘れ、患者「死亡」の報告も-医療機能評価機構が事故情報報告書を公表
https://www.cbnews.jp/news/entry/20190104194631

 私の本業である病理診断に関わるニュース。放射線診断でも起こっているのですが、報告書が読まれないで病態悪化という事例が問題となっています。

 多くの患者をかかえ疲弊する現場のなかで、仕組みをつくっていく必要があります。

★Natureは、今年創刊150周年を迎え、今後さらに科学コミュニティーに貢献できるよう努める。
https://www.nature.com/articles/d41586-018-07844-6

 歴史が違いますね…。日本の先人たちの偉業に思いを馳せながらも、日本が置かれた位置を正しく認識する必要があります。

★Scientists Suffer in Continued Government Shutdown
https://www.the-scientist.com/news-opinion/scientists-suffer-in-continued-government-shutdown-65287

Scientists despair as US government shutdown drags on
https://www.nature.com/articles/d41586-019-00008-0

National parks face years of damage from government shutdown
https://www.nationalgeographic.com/environment/2019/01/why-national-parks-trashed-during-government-shutdown/

 トランプ大統領は何年でも続ける覚悟と言っているそうですが、アメリカの科学に与える影響はじわじわと拡大しています。

★U.S. Senate confirms Kelvin Droegemeier to lead White House science office
https://www.sciencemag.org/news/2019/01/us-senate-confirms-kelvin-droegemeier-lead-white-house-science-office

Donald Trump finally has a White House science adviser
https://www.nature.com/articles/d41586-019-00015-1

 科学アドバイザーとなるKelvin Droegemeier氏の人事が米上院で承認。政権発足すでに2年…。

★米MIT、早期出願合格者に中国人留学生なし
https://news.nifty.com/article/world/12241/12241-158289/

 米中貿易戦争の影響か…。

★Working Scientist podcast: Inside the NIH grant review process
https://www.nature.com/articles/d41586-019-00016-0

★Falling tuition revenues could pinch US universities
https://www.nature.com/articles/d41586-018-07889-7

★UK universities warn ‘no deal’ Brexit will hit crucial funding streams
https://www.nature.com/articles/d41586-019-00023-1

 まだもめているBrexit

★これが「複業推奨」の現実!? 並び屋バイトで食いつなぐ社員兼ポスドクの悲哀
https://hbol.jp/182331

 ひさびさにポスドクの悲哀が記事に。