2011年の第一号ということで、科学技術政策に関して昨年を振り返り、今年の展望を考えてみたい。
一昨年の政権交代から、科学技術政策の風景は大きく変わった。変わったというより、見えるようになったというのが正気なところだろうか。
みなさんも気づかれたと思うが、大きな違いは、パブリックコメントだろう。もちろん以前からパブリックコメント募集はあったわけだが、ここまでパブリックコメントが政策を左右されると言われたことはなかったわけで、必死にパブリックコメントを書かれた人も多いだろう。
正直いってまともにやっていたら、疲れてしまった。
第4期科学技術基本計画、元気な日本特別復活枠…
しかし、はしごを外されたような思いも抱いた。
大量に送られた科学技術政策や大学政策へのパブリックコメントが、「組織票」と呼ばれ、厳しい評価をうけたのは記憶に新しい。
ところが、厳しい評価を受けるかと思ったら、総理大臣の「鶴の一声」でひっくり返った。評価する声がある一方で、今までの議論はいったいなんだったのだ、という落胆の声も聞かれた。
とは言うものの、私はこの流れを評価したい。
基本的には政策の可視化、オープン化の流れだ。パブリックコメントと同時に、今まで意見をいう場のなかった若手研究者が意見交換会に呼ばれるようにもなっている。私自身もこうした会に出席する機会を得た。
たしかに、科学技術政策の扱い方は拙いと言わざるを得ない。政策への市民参加の試みは、パブリックコメントや事業仕分け、意見交換会だけではないわけで、政策の軸が右往左往した印象は拭えない。
けれど、今年から始まる第4期科学技術基本計画には、研究支援人材の育成や活用、政策に対する市民参加の試みなどが書き加えられた。
諮問第11号「科学技術に関する基本政策について」 に対する答申(PDF:468KB)
また、平成23年度の予算で、科研費の基金化が盛り込まれ、年度繰越が可能になるなど、科学コミュニティの声を聞いた上で政策が作られた部分もある。
すぐに完璧な仕組みなど作れない。試行錯誤する必要もあるのだろう。
民主党も学習しているとみえ、科学技術調査会を新設したという。
これは民主党が政権を得て学んだことを活かしたということだろう。今後の動きを注視したい。
こうした動きを受けて、私達は何をすべきか。
政策サイドだけでなく、私達自身も学ばなければならない。政策の迷走は、科学コミュニティや市民の側の政策に対する働きかけの拙さと鏡合わせだ。
政策側に意見をいうのに、パブリックコメントや政府の方だけを向いた陳情だけではあまりに不十分だ。一昨年の事業仕分けで多少は学習したのかなと思ったが、残念ながら、まだまだ陳情の域を出ていない声明なども多い。
突然増額された予算に、市民側からは疑問も投げかけられている。
こうした状況のなか、分野横断的な草の根の科学者、市民の組織、日本版の全米科学振興協会(AAAS)。やEuroscienceのようなが必要だという思いを強くしている。陳情だけでなく、社会の声に向き合い、政策提言、人材交流などを行う組織だ。
今年は一歩でもよいので具体化していきたい。
各方面でAAASのような組織の必要性が述べられ始めている。少しずつだが、機運は高まっているように思う。この機運を形にしたい。
また、拙書
博士漂流時代 「余った博士」はどうなるか? (DISCOVERサイエンス)
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でも述べたように、博士に代表される知的人材を、例えばNPOやソーシャルビジネスなど様々な場で活かすための取り組みを行いたい。
私達の活動に関心がある方は、ぜひ
などにご参加いただけたら幸いだ。
私達に出来ることはまだ限られているが、諦めず、ブログやメールマガジン、メーリングリスト、書籍などを通じて、情報提供などの活動を行っていきたい。
皆さまには、昨年のご支援に心より感謝申し上げるとともに、今年もご支援、ご鞭撻のほど宜しくお願い申し上げる。