科学・政策と社会ニュースクリップ

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科学技術政策担当大臣と有識者議員との会合報告

 3月20日、大阪で開催された科学技術政策担当大臣と有識者議員との会合に出席した。

 会場は阪大の中之島センター。かなり大きな会場で、大臣、総合科学技術会議議員、私たち発表者は四角に配置された机に座り、その後ろに傍聴席があるという状態。

 相澤益男議員の司会のもと、各出席者が発表していった。自分以外の発表内容はtwitterで中継したので、そちらをご参照いただきたい。

「科学技術政策担当大臣と有識者議員との会合」を巡るあれこれ
(中継を含めた、ハッシュタグ#cstp0320のまとめ)

 詳しい内容は上記のページをご参照いただきたい。

 それぞれが自分の立場から意見を発表した。前半は大学や企業の関係者の発表。科学技術予算の拡充を訴える声が多かったような印象。若手研究者の育成や、科学技術コミュニケーションの重要性が複数の参加者から語られたのは大きかったと思う。

 なかでも、株式会社大日電子 代表取締役社長 杉本 日出夫さんの話は重要だと思った。人工衛星まいど一号の作成に関わった経験から、無意味な書類作成が多いという問題点を挙げられた。こうした書類の簡素化で、企業も大学もどれほど助かるか。

 後半は比較的若手の発言が続いた。理研CDBの上田泰己さんは、自分の人件費を自分で獲得できる制度などを提案。

 上田さんの次は私の発表。内容は以下。

 私は、若手研究者を「人財」として考え、活躍を促す施策を訴えた。これはポストを保証しろとかお金をくれとかいうものではない。科学技術NPOのような、自発的な取り組みが次々と出てくるような仕掛けをすべきという主張だ。そのためには、年齢制限や専従規定といった規制の緩和、オープンアクセスなどが重要だ。オープンアクセスのお金を誰が出すか、という問題があるので、お金はいらないというわけではないのだが、博士に持参金500万円という、プライドを傷つけるような施策よりはずっといいと思っている。

 そして、科学技術政策そのものについては、「フラット」で「オープン」なものにすべきと訴えた。

 陳情はいけない、というイメージがあるが、広義では、政策に意見を言うことは陳情にあたる。要は、特定の有力者の陳情しか受け付けないのが問題なのであり、お金のあるなし、力の強い弱いとは無関係に、皆が等しく利益表出できるのが重要なのだ。

 ただ、若手の意見、ベテランの意見、市民の意見、研究者の意見、それぞれを全部反映させることはできない。以前、田口さんとのやりとりで、研究者に研究費配分を任せてはいけないという話が出た。研究分野間でも利害が対立する。政府、政治の役割は、様々な意見を踏まえつつも、最後は利害を超越し、責任をもって、未来のため、公益のために政策を決定するということだ。

 上記スライドがなぜか画面に投影されないというハプニングもあったのだが、みなさんの意見も可能な限り取り入れ、発表することができた。みなさんに感謝したい。

 そのあと、岡山大学の松井先生は、岡山大学がトランスレーショナルリサーチの人材を育成した成功例を示し、これをもとに全国に広めてほしい、と述べた。

 藤田保健衛生大の宮川教授は、神経科学者SNSの提言を発表した。宮川さんの発表はこちらで公開されている。笑いも誘いつつ、大臣や議員に強い印象を与える見事な発表だった。

 一番反応が大きかったのが、数学オリンピック金メダリスト今村さんの発言だ。高校生の立場から、教育の抱える問題点について鋭い意見を述べた。休憩時間に大臣が話しにいくなど、今村さんはこの日の発表の一番のアイドルだった。

 短い休憩ののち、フリーディスカッションの時間がとられた。地域の問題、人材の問題、教育の問題について多彩な話題が議論された。

 津村政務官は、私のスライド(科学技術政策のイメージの図)を投影しながら、現在このような政策の在り方を変えるべく様々な取り組みを行っていることを説明された。

 多彩な意見が語られ、やや散漫な感じではあったが、公開の場で様々な立場の人が意見を述べる会が開催されたことは評価したい。twitterでの中継には、多くの意見や感想が寄せられ、今でも意見交換が続いている。事業仕分けと同様、オープン化されたことで皆の関心が高まり、議論が活発化したのだ。

 もちろん、意見を述べた人たちにやや偏りがあるなど、問題はあったと思う。今後もこのような会が開催されるので、改善を期待したい。

 政府になんでもお願いする時代は終わった。もちろん政府にしかできないことは多いが、それが何であるかを含めて、現場が、市民が声をあげていかないといけない。

 川端大臣が言われたように、意見を聞くだけではだめで、それを政府がどう政策に反映されるのかが重要だ。この会が単なるセレモニーで終わらないためにも、私たちは主体的に政策を監視してく必要がある。また、意見を言うのも、単なる思いつきではだめで、私たちNPO、科学者コミュニティ、市民が政策提言能力を高めていくことも重要だ。

 政府と私たちのキャッチボールがこれからどうなっていくのか。期待を持って見つめていきたい。

 今回のミーティングに関する報道は以下。

http://www.kobe-np.co.jp/news/shakai/0002799646.shtml

  • 科学技術めぐり大阪でミーティング 「研究費や若手ポストを」

http://www.47news.jp/CN/201003/CN2010032001000685.html

http://sankei.jp.msn.com/life/environment/100321/env1003210126000-n1.htm

  • 朝日3・21朝刊 科学・技術研究 国の支援探る 川端担当大臣ら、大阪で

NPO法人サイエンス・コミュニケーション(東京都)の榎木英介理事は、どこでも最新の論文が読める環境や週末に借りられる研究室など、研究者が多様な場所で活躍できるよう後押しする政策を提案した