4月14日に開催された総合科学技術会議基本政策専門調査会第7回会合の資料が公開された。
以下の資料がかなり重要な資料。
第4期科学技術基本計画がみえてきた。以下のような構成のようだ。
?.基本理念
1.ダイナミックな世界の変化と日本の危機
2.国家戦略における基本計画の位置付け
3.第4期基本計画の理念 〜第3期基本計画の実績と課題を踏まえて〜?.国家戦略の柱としての2大イノベーションの推進
1.基本方針
2.グリーン・イノベーションで環境・エネルギー大国を目指す
3.ライフ・イノベーションで健康大国を目指す
4.イノベーションの創出を促す新たな仕組み?.国家を支え新たな強みを生むプラットフォームの構築
1.基本方針
2.豊かな国民生活の基盤を支える研究開発の推進
3.産業の基盤を支える研究開発の推進
4.国家の基盤を支える研究開発の推進
5.共通基盤技術の研究開発の推進?.我が国の基礎体力の抜本的強化
1.基本方針
2.基礎研究の抜本的強化
3.科学・技術を担う人財の強化
4.国際水準の研究環境の形成
5.世界の活力と一体化する国際展開?.これからの新たな政策の展開
1.基本方針
2.科学・技術システムの改革
3.科学・技術コミュニケーションの抜本的強化 〜国民とともに創り進める政策〜
4.研究開発投資の強化
多様な論点があり、全部は紹介できないが、私が関心がある若手人材と科学コミュニケーションに絞って紹介する。
若手人材に関しては、以下のような記述がある。
3.科学・技術を担う人財の強化
(1)多様な人財の育成と活躍の促進
?大学院教育の抜本的強化
優秀な人財が安心して大学院を目指すことができるよう、TA(ティーチングアシスタント)、RA(リサーチアシスタント)、フェローシップ(研究奨励金)など、大学院学生への給付型の経済的支援の充実を図る。また、授業料の負担軽減や奨学金の貸与等、家計に応じた負担軽減策を講じるとともに、民間企業からの寄付金や受託研究などを活用した大学の自助努力を促進する。これらの取組も通じ、「博士課程(後期)在籍者の2割程度が生活費相当額程度を受給できることを目指す」との第3期基本計画の目標の早期達成を図る。(P)
理工系博士課程の学生収容定員の未充足状態を是正するため、適切な競争による質の高い学生を確保するため入学定員の見直しを行う。
博士課程の定員の見直しがついに計画の中に入った。
?専門知識を活かせる多様な人財の育成と活躍の促進
研究開発成果をビジネスにつなげる人財、課題解決に向けて効果的・効率的に研究開発をマネジメントする人財、政策の科学的分析ができる人財、知的財産専門家、標準化専門家、リサーチ・アドミニストレーター、サイエンステクニシャンなどの多様な人財を育成していく。
(2)人財の独創性と資質の発揮
?フェアでバランスの取れた評価制度の構築
大学は、例えば、一定年齢(50歳)を超えた研究者に対する教育研究能力の再審査や別の給与体系への移行など大胆な人事や給与費全体の合理化・効率化の実施により、若手研究者のポストを拡充することが期待される。また、このような取組の透明化によって優秀な若手研究者を惹き付け、さらにこれを大学評価に反映する。
流動性の向上や若手研究者の雇用促進にもつながることから、研究者については、年俸制による雇用を段階的に進めることを推奨する。
かなり踏み込んだ表現だ。若手を重視する姿勢がみえる。
?ポストドクターを含む研究者のキャリアパスの整備
全大学の自然科学系における若手の新規採用教員総数のうち30〜50%に相当する人数をテニュア・トラック制とすることを目指し、大学に対する支援を充実する。
自校出身者比率を20%以下に抑制することを目指していく
?女性研究者の活躍の促進
次期基本計画期間には、自然科学系の女性研究者の採用を30%(理学系20%以上、工学系15%以上、農学系30%以上)とすることを目標とする。
(3)次代を担う人財の育成
大学と教育委員会は連携して、中学校・高等学校の数学・理科の教員免許で小学校の算数・理科を教える制度や、教員免許を持たない専門家を登用する特別非常勤講師制度及び特別免許状制度の活用を通じ、理工系学部・大学院出身者の教員としての活躍の場を拡げる。また、処遇の適正化を進め、理工系の学部・大学院学生が理科支援員としてより一層活躍できる機会を充実する。
子どもの科学・技術に対する関心を高め、チャレンジへの意欲を喚起するような、身近で目に見える機会(「科学甲子園」、「科学インターハイ」、「科学インカレ」)を充実する。
以下、少々長いが、科学コミュニケーションに関する部分を引用する。
3.科学・技術コミュニケーションの抜本的強化 〜国民とともに創り進める政策〜
(1)政策の企画立案・推進への国民参画の促進○科学・技術・イノベーション政策で解決すべき課題や社会ニーズ、科学・技術の成果が社会に還元される際の課題等について、広く国民が参画して議論できる場の形成など新たな仕組みを整備する。
○国民の政策への積極的参画を促す観点から、例えばNPO法人等による地域社会での科学・技術コミュニケーション活動や、社会的課題に関する調査・分析に係る取組を支援する。
○国民が自ら科学・技術の活用や要望について判断できるような情報提供やリテラシー向上の取組を行う。
(2)科学・技術コミュニケーション活動の推進
○国全体から大学及び研究開発独法、研究者、市民まであらゆるレベルで双方向対話を行う科学・技術コミュニケーションを促進する。専門家の話を直接聞く場や、科学・技術に関する身近な話題について専門家と意見交換する場を充実するとともに、大学、研究開発独法、博物館・科学館・図書館、NPO法人における科学・技術コミュニケーション活動を支援する。関係者相互の連携や情報交換により、取組を活性化させる。○科学・技術・イノベーション政策や、それにより得られた成果等を分かりやすく国民に伝える役割を担う専門人財として、科学・技術コミュニケーターの養成・確保に向けた取組を進めるとともに、社会の多様な場での活躍を促進する。
○科学・技術情報を含む知的基盤の構築に取り組んでいる国立国会図書館など公共図書館や草の根の活動から始まり急速な展開を見せているビジネス支援図書館など各地域の公共図書館の取組とも十分に連携して、広く国民への科学・技術コミュニケーションを充実させていく。
○科学・技術と政策の連携を深めるため、英国で実施されているような国会議員と研究者のマッチングや、国会議員と研究者の対話の場づくりなどを推進する。
○総合科学技術会議と日本学術会議の連携を深めるため、定期的に意見交換を行う場を設置する。
(3)研究情報の分かりやすい形での発信
○研究者自身が、それぞれの研究について、内容や成果を分かりやすく発信する取組を進める。例えば、1000万円以上の公的研究費を得た研究者には、小中学校や市民講座でのレクチャーなどの科学・技術コミュニケーション活動への貢献を求める。また、公的資金による研究論文は、すべて機関リポジトリに登録することとし、その際には、一般向けにも分かりやすい数百字程度の説明を添付する。○アウトリーチ活動の普及・定着を図るため、大学の組織的な取組を支援するとともに、研究者等のアウトリーチ活動への参画が業績評価に反映されるようにする。
(4)倫理的・法的・社会的課題への取組
○倫理的・法的・社会的課題への取組を促進するため、研究資金制度の目的や特性等に応じて、これらの課題対応に研究資金の一部を充当する制度設計を検討する。○研究開発の発展段階に応じて、科学・技術が社会・国民に与える影響について調査分析・評価を行うための活動(テクノロジーアセスメント)の在り方について検討する。また、政策等の意志決定に際して、テクノロジーアセスメントに基づいた幅広い国民合意への取組とともに、社会と科学・技術・イノベーションとの関わりについて専門知識を持つ人財の育成・確保に向けた取組を進める。
具体例を交え踏み込んだ内容になっている。一方的なアウトリーチだけでなく、双方向性もうたわれているようだ。
今後の議論の行方が気になる。注目していきたい。