今までメールマガジンの編集後記などに何度も書いてきたことだけれど、科学コミュニケーションを広げるために、相撲のシステムをまねしたらよいのではないかと思っている。
聞きかじったことなので、どこまで正しいか分からないけれど、相撲取りは引退したら各地でちゃんこ料理屋を開く。
で、そのちゃんこ料理屋は、引退した力士の食い扶持となると同時に、地域の相撲情報の核となる。そして各地で有望な子どもを見つける情報網となるらしい。
体が大きく将来有望な子どもがいると、情報を出身部屋に流したりスカウトするという。
科学コミュニケーションでも、相撲のこのシステム?を真似てみてはどうだろう。
たとえば大学院生とかポスドクなど、科学研究の経験のあるものが、各地で就職し、その土地でオリジナルな科学コミュニケーション活動をはじめれば、科学コミュニケーションが地域に根付くと同時に、地域で科学に興味があったり才能がある子どもを見つけて、濃厚な科学体験を施すことができる。こうした子どもが将来の科学を担う人材となるかも知れない。
このとき、科学館に就職しなければ、大学などに就職しなければ活動できない、と思うのは視野が狭い。
ポスドクたちは各地でさまざまな職を求めなければならない。それは研究に関係のある職かも知れないし、そうでないかもしれない。
けれど、たとえどんな職についても、ボランティアやNPOを立ち上げ、仕事の合間や余暇に活動をすればいい。活動の内容は、理解増進系でも科学ウォッチ/監視系でもいい。おのおのがチョイスすればいい。
研究と異なる職に就くことは、心理的にも挫折感を感じやすいが、もしもどんな職についても、科学コミュニケーターである、という実感と誇りを持つことができれば、ポスドクはもっと思い切って多彩な職に就くのではないだろうか。
そして、地域の科学コミュニケーションの場の中心となるのは、学校であってもカフェであっても、本屋や飲み屋であってもいい。
とくに学校は、既に地域の核であるし、理科の先生という科学コミュニケーターを擁している、よく考えればすごい?施設だ。
学校と地域の科学コミュニケーターが協力すれば、いろいろなことができるのではないか。
私はポスドクや大学院生に、科学技術系NPOを運営するノウハウやスキルを伝えたい。もちろん個人でやってもよいが、持続可能な運営をすることが重要だと思う。そのためにはNPOという形態が向いている。
まだこなれていないけれど、この構想は科学コミュニケーションの裾野を広げると同時に、ポスドクの就職問題と理科離れ問題と理解増進とその他諸々を一気に解決しようとする欲張りなものだ。
ちょっと時間はかかるだろうが、ぜひ取り組んでみたい。