科学・政策と社会ニュースクリップ

科学政策や科学コミュニケーション等の情報をクリップしていきます。

新型コロナとラクイラ地震〜専門家の責任とは

2020年5月12日~2020年5月19日
カセイケン代表 榎木英介

 まずはご案内を。

緊急事態宣言による在宅勤務中の科学者・技術者の実態調査
担当:男女共同参画学協会連絡会 提言・要望委員会
締切は6月13日
https://docs.google.com/forms/d/e/1FAIpQLSeh3BkCEI0fo0gpouW2rCHr-0ryLopnFGgHod-TjOCUUAJnuA/viewform

 在宅の研究者の様子は以下のような報道があります。

★図書館休館で「論文が間に合わない」 コロナ禍の「若手研究者」に降りかかる困難
https://news.yahoo.co.jp/articles/3448a182bf29ecdd3816e6e352af2b4e98878fd2

 図書館という拠点を失ったことの大きさが窺い知れます。

★Coronavirus shut-downs pose huge threat to Australian research jobs
https://www.nature.com/articles/d41586-020-01407-4

 オーストラリアでは、研究者が研究費や職を失いかねない危機的な状況に直面しています。

★Amid the COVID-19 Pandemic, Some Scientists Bring the Bench Home
https://www.the-scientist.com/news-opinion/amid-the-covid-19-pandemic-some-scientists-bring-the-bench-home-67533

 DIYバイオ、バイオハッカーとの境界が曖昧になるような感じです。

★Impact of COVID-19 on academic mothers
https://science.sciencemag.org/content/368/6492/724.1

 在宅は女性研究者に大きな負担を強いているというジェンダー問題も発生しています。

★Opinion: Lab Work Under Isolation
https://www.the-scientist.com/news-opinion/opinion-lab-work-under-isolation-67398

★Learning to love virtual conferences in the coronavirus era
https://www.nature.com/articles/d41586-020-01489-0

 オンライン会議に適応しつつある研究者もいます。

★As labs move to reopen, safety worries abound
https://science.sciencemag.org/content/368/6492/690.full

★Secretive Jasons to offer advice on how to reopen academic labs shut by pandemic
https://www.sciencemag.org/news/2020/05/secretive-jasons-have-advised-united-states-nuclear-war-next-how-reopen-labs-pandemic

 ロックダウンの解除にも問題があります。

 話は戻りますが、緊急事態宣言下の日本の研究者の情報発信がまだ足りないように思います。ぜひアンケートにお答えください。

 新型コロナ、政府の対応です。

 もう5日も経ってしまいましたが、緊急事態宣言が解除された地区が出ました。こういう時週刊メルマガでは遅すぎるという感じです。

新型コロナウイルス感染症対策専門家会議 「新型コロナウイルス感染症対策の状況分析・提言」(令和 2 年 5 月 14 日)
https://corona.go.jp/expert-meeting/pdf/jyoukyou_bunseki_0514.pdf

業種別ガイドラインについて
https://corona.go.jp/prevention/pdf/guideline_20200514.pdf

新型コロナウイルス感染症対策本部(第 34 回)
https://corona.go.jp/expert-meeting/pdf/sidai_r020514.pdf

新型コロナウイルス感染症対策専門家会議(第 14 回)
https://corona.go.jp/expert-meeting/pdf/senmonka_sidai_r020514.pdf

緊急事態措置を実施すべき区域の変更等に伴う都道府県の対応について
https://corona.go.jp/news/pdf/kinkyujitai_kuikihenkou_0514.pdf

緊急事態措置を実施すべき区域の変更等に伴う都道府県の対応について
https://corona.go.jp/news/pdf/kinkyujitai_kuikihenkou_0514.pdf

新型コロナウイルス感染症緊急事態宣言の区域変更
https://corona.go.jp/news/pdf/kinkyujitaisengen_gaiyou0514.pdf

安倍総理は第34回新型コロナウイルス感染症対策本部を開催しました
https://www.kantei.go.jp/jp/98_abe/actions/202005/14corona.html

安倍総理は記者会見を行いました
https://www.kantei.go.jp/jp/98_abe/statement/2020/0514kaiken.html

イベルメクチンなど3剤、有効性確認後に早期承認へ-安倍首相が表明
https://www.cbnews.jp/news/entry/20200515192634

 この緊急事態宣言の解除については、政府の対応が遅すぎるという意見と早すぎるという意見の二つから「挟撃」されています。

 遅すぎる派は、北大西浦教授を批判し、早すぎる派は「第2波」を懸念しています。

 ちょっと気になるのが、遅すぎる派に知事経験者がいることです。政治の責任の取り方を知っている人が、専門家の責任を追求しているわけで、これは知っていてあえてやっているのかどうか気になるところではあります。

 専門家の責任が問われた事態で思い出すのが、イタリアで発生したラクイラ地震です。

裁かれた科学者たち ラクイラ地震で有罪判決
https://facta.co.jp/article/201302018.html

地震予知できなかった科学者を殺人罪とする判決、一転無罪に:イタリア
https://wired.jp/2014/11/11/laquila-earthquake-ruling-overturned/

ラクイラ地震裁判
災害科学の不定性と科学者の責任
http://taro.eri.u-tokyo.ac.jp/saigai/published/koketsu_oki2015.pdf

 詳細は上記の記事、文章をお読みいただいのですが、イタリアのラクイラ地区で頻発していた地震の評価のために集められた専門家が、あたかも大地震が起きない「安全宣言」をしたかのように報道等されたことで、大地震が発生したのちに訴えられたというものです。

 一審では有罪となり、科学コミュニティを震撼させましたが、二審では無罪となりました。

 西浦教授や専門家委員会に対し、厳しい予測で人々を惑わせ、経済を破綻させたなどとして訴えられる、あるいはその逆に、誤った対策を助言したために死者が増えたとして訴えられる二つの可能性があるように思っています。

トロント大学准教授Phillip Lipscy氏による、「なぜ日本のコロナ対策は不評なのか?」に関する考察
https://togetter.com/li/1508916

「生ぬるい」対応の日本、なぜ欧米より死者が少ないか
https://note.com/gyamaguchi/n/ne2d2d72e75fc

日本のコロナ対策「奇妙な成功」 低い死亡率、米外交誌が論評
https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20200515-00000101-kyodonews-int

 日本の現状を「成功」と見るのか、そうでないと見るのかには、見解の違いがあります。どちらの見解からも政府に助言する専門家は批判を受けています。

 批判を甘んじて受けるのが専門家の責任だと言われればそれまでですが、科学的助言がどの程度責任を取るべきか、考えてしまいます。

★コロナ対策で助言必要 岸・前外相科技顧問に聞く
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO58941490R10C20A5000000/

 外務省で科学顧問だった岸さんの言葉は重いです。

"「新型コロナ対策専門家会議は頑張っていると思うが、市民に合わせた説明をしているため学術的には説明が不十分に思うことがある。市民性は大事だが、科学的な根拠がしっかりわかる説明が求められている。また(STAP細胞事件後の)理化学研究所改革委員会の委員長を務めた経験から言えば、行政との距離の取り方が難しい。役所から独立していないと取り込まれてしまう。理研改革委の時は文部科学省理研の関係者には退出してもらってから議論をした」

「科学的な助言システムとして、各省庁に科学技術顧問がいて、災害など緊急時にすぐに専門家を結集できるネットワークを日ごろから維持していくのがよいと考える」"

 岸さんへのインタビューをした日経新聞の滝 順一編集委員は以下のような記事も書かれています。

★コロナ専門家会議の迷走、独立性なくあいまいな組織
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO58852670Y0A500C2000000/

 ここでも、専門家の独立性について触れられています。

★U.K. government should not keep scientific advice secret, former chief adviser says
https://www.sciencemag.org/news/2020/05/uk-government-should-not-keep-scientific-advice-secret-former-chief-adviser-says

 科学的助言のもう一つの重要な点は透明性です。透明性を担保するためにも独立性は求められていると思います。

★第40回厚生科学審議会感染症部会(持ち回り開催)資料
https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_11288.html

安倍総理は第38回未来投資会議を開催しました
https://www.kantei.go.jp/jp/98_abe/actions/202005/14miraitoushi.html

安倍総理は令和2年第7回経済財政諮問会議を開催しました
https://www.kantei.go.jp/jp/98_abe/actions/202005/15keizaishimon.html

★政府、授業料減免の大学を助成へ 困窮の学生救済促す 新型コロナ
https://mainichi.jp/articles/20200516/k00/00m/040/213000c

★困窮学生に最大20万円給付、閣議決定 43万人対象
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO59275740Z10C20A5MM0000/

 これは大きな決定です。

PCR検査は増やすべきなのか?
https://www.yushoukai.org/blog/pcr

★臨床検査医学会栁原氏、新型コロナのPCR検査が増えない3つの理由
https://bio.nikkeibp.co.jp/atcl/news/p1/20/05/12/06912/

★「自由」を危機にさらす「全員PCR検査論」の罠
「誰のためのPCR検査なのか」冷静に考えたい
https://toyokeizai.net/articles/-/350192

PCR検査をめぐる「5つの理論」を検討する
https://webronza.asahi.com/national/articles/2020051500010.html

 いまだPCR問題が論争になっています。

 私もちょっと勘違いしていた時期がありましたが、PCR検査の増強は、目一杯働いている臨床検査技師をさらに使い倒せというわけではないということです。

 また、「全員PCR」もごく一部でしか言われていません。

 誰も批判していないことを批判されていると思って反論する、いわゆる「藁人形」叩きが起きているようにも思います。

 要は必要な時に必要なPCRができる体制を作ることで、その方法として、民間検査センターと大学の活用があります。

★大学のPCR検査能力、文科省が調査 山中教授も提言
https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20200513-00000004-asahi-soci
https://www.asahi.com/articles/ASN5D7HZRN5DULBJ00J.html

 これには大学の研究者からかなり反発がありました。

 慈恵医大のように基礎研究者が自発的にやっているところもあります。これは成功事例だと思いますが、「ピペド」で持っている現場にいきなり持ってくるのは難しいのかもしれません。

 民間の衛生検査所の余力については、かなりあることが分かっています。

第9回遺伝子・染色体検査アンケート調査報告書の公表について
http://www.jrcla.or.jp/info/info/info_124.html

 4月の患者ピーク時のPCR検査が不足していたのは明らかで、次にこのような患者増が起こったときの備えはしておくべきです。

新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)抗原検査キット 製造販売承認の取得について
https://ssl4.eir-parts.net/doc/4544/tdnet/1827081/00.pdf

新型コロナ検査、新段階に 厚労省、抗原検査キットを13日に承認
https://scienceportal.jst.go.jp/news/newsflash_review/review/2020/05/20200512_01.html

抗原検査キット承認へ 短時間で結果、救急患者にも活用
https://www.asahi.com/articles/ASN5D3V56N5DULBJ002.html

 富士レビオの抗原検査キットが承認されました。

★Coronavirus: How 'overreaction' made Vietnam a virus success
https://www.bbc.com/news/world-asia-52628283

 ローコストで感染を抑え込んだベトナム。徹底的な隔離と検査が肝のようです。

★COVID-19 死亡例における死後組織検体の検査について(2020年5月12日版)
https://www.niid.go.jp/niid/ja/diseases/ka/corona-virus/2019-ncov/2518-lab/9610-covid19-20.html

コロナ死亡例の組織検体の検査、針生検で検索可能-国立感染症研究所が見解
https://www.cbnews.jp/news/entry/20200515141846

 これは私の本業にとっては重要な見解です。

★オンライン教育、親が悲鳴
https://www.nikkei.com/article/DGKKZO59201570V10C20A5CR8000/

遠隔授業に四苦八苦 アクセス殺到、通信環境も課題
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO59193790V10C20A5CN8000/

遠隔授業活用、6割「実施」 4割弱が「視野」
https://www.nikkei.com/article/DGKKZO58986310S0A510C2TCN000/

 私もオンライン授業を何度か行いましたが、課題は

学費支援 拡充の動き
https://www.nikkei.com/article/DGKKZO59099420U0A510C2PPD000/

★新型コロナウィルス感染パンデミック時における治療薬開発についての緊急提言
https://www.covid19-jma-medical-expert-meeting.jp/topic/1526

コロナ治療薬「特例的承認」に懸念 日本医師会有識者会議が声明
https://mainichi.jp/articles/20200519/k00/00m/040/089000c

 パンデミックならなんでもあり、ではいけません。

医療機関の経営危機への対応策を検討、厚労省-新型コロナ感染拡大で
https://www.cbnews.jp/news/entry/20200513190617

 患者が集中したのは一部の機関であり、この不均衡が日本の医療体制の問題です。

★Include the true value of nature when rebuilding economies after coronavirus
https://www.nature.com/articles/d41586-020-01390-w

★Double epidemic could crash Latin America health systems
https://www.scidev.net/global/coronavirus/news/double-epidemic-could-crash-latin-america-health-systems.html

 デング熱と新型コロナのダブルパンチを受けています。

★How to report the science of COVID-19
https://www.scidev.net/global/script-practical-guide/how-to-report-the-science-of-covid-19.html

★Scientists are drowning in COVID-19 papers. Can new tools keep them afloat?
https://www.sciencemag.org/news/2020/05/scientists-are-drowning-covid-19-papers-can-new-tools-keep-them-afloat

 論文爆発をどう乗り切るか。

★COVID-19 / SARS-CoV-2 に関する研究の概況 [DISCUSSION PAPER No. 181]の公表について
https://www.nistep.go.jp/archives/44297

 NISTEPのまとめです。

★An unequal blow
https://science.sciencemag.org/content/368/6492/700

 過去のパンデミックから学。

★今後10年の我が国の地球観測の実施方針のフォローアップ報告書(中間とりまとめ)
https://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/gijyutu/gijyutu2/097/houkoku/1422531_00001.htm

★研究データ公開と論文のオープンアクセスに関する実態調査2018[調査資料-289]の公表について
https://www.nistep.go.jp/archives/44300

大学発ベンチャー実態調査とチームビルディング事例集を取りまとめました
https://www.meti.go.jp/press/2020/05/20200515003/20200515003.html

★「今後の自然公園制度のあり方に関する提言」について
https://www.env.go.jp/press/107987.html

★報告
地球惑星科学分野における 科学・夢ロードマップ(改訂) 2020
http://www.scj.go.jp/ja/info/kohyo/pdf/kohyo-24-h200515.pdf

★提言
長期の温室効果ガス大幅排出削減に 向けたイノベーションの加速
http://www.scj.go.jp/ja/info/kohyo/pdf/kohyo-24-t289-1.pdf

★Meet this super-spotter of duplicated images in science papers
https://www.nature.com/articles/d41586-020-01363-z

注目の「ネカトハンター」エリザベス・ビク博士。

★Reproducibility: bypass animals for antibody production
https://www.nature.com/articles/d41586-020-01474-7

★Publishers launch joint effort to tackle altered images in research papers
https://www.nature.com/articles/d41586-020-01410-9

 重要な取り組みです。

立教大学総長退任予定および次期総長選出手続きについて
年内に総長選挙を実施、決定予定
https://www.rikkyo.ac.jp/news/2020/05/mknpps0000017joy.html

立教大教員が学生にセクハラ、懲戒解雇 被害対応誤り総長引責辞任
https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20200515-00000067-mai-soci

★元院生論文不正 指導教授を懲戒 徳島大 /徳島
https://mainichi.jp/articles/20200517/ddl/k36/040/257000c

教員の処分について
https://www.tokushima-u.ac.jp/docs/20318.html

★21年度の専攻医募集、「研究者枠」設定へ-日本専門医機構
https://www.cbnews.jp/news/entry/20200518153518

 絶滅危惧種MD-PhD問題。

★中国系研究者、米から助成金を不正受給か…FBI「中国政府が犯罪促している」
https://www.yomiuri.co.jp/world/20200516-OYT1T50151/

Fired Emory University neuroscientist with ties to China sentenced on tax charge
https://www.sciencemag.org/news/2020/05/fired-emory-university-neuroscientist-ties-china-sentenced-tax-charge

★米国務長官、中国系ハッカー集団のコロナ研究機関不正侵入を批判
http://www.asahi.com/international/reuters/CRWKBN22Q38J.html

中国系ハッカー集団、新型コロナ研究機関に不正侵入=米当局
https://jp.reuters.com/article/health-coronavirus-china-cyber-idJPKBN22P2RN

 中国とアメリカの対立は、現在開催中のWHO総会でも。

Seventy-third World Health Assembly
https://www.who.int/about/governance/world-health-assembly/seventy-third-world-health-assembly

★日本企業はもっと博士号取得者を採用して、先端的な知識や専門外の知見を活用すべき
https://hakushi.careers/column/chuo-univ-prof-taguchi/