科学・政策と社会ニュースクリップ

科学政策や科学コミュニケーション等の情報をクリップしていきます。

研究改革のために

2019年10月22日~2019年10月29日

 台風19号に続き、21号と大雨の被害で多くの方々か亡くなられました。ご冥福をお祈りします。

★Deadly typhoon forces Japan to face its vulnerability to increasingly powerful storms
https://www.sciencemag.org/news/2019/10/deadly-typhoon-forces-japan-face-its-vulnerability-increasingly-powerful-storms

台風19号で被災した川崎市市民ミュージアムへの支援について
http://www.bunka.go.jp/koho_hodo_oshirase/hodohappyo/1422192.html

令和元年台風第19号等により被災した学生・生徒等のみなさまへ(被災学生等特別就職相談窓口の設置)
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000122602_00002.html

 文化施設も被害を受け、学生にも被害を受けた人がいます。

 災害の発生が常態化しつつあるなか、文化財や図書を守り、学生の安全を確保することが、大学にも求められています。

★科学技術政策担当大臣等政務三役と総合科学技術・イノベーション会議有識者議員との会合(令和元年度) > 議事次第 令和元年10月10日
https://www8.cao.go.jp/cstp/gaiyo/yusikisha/20191010.html

議題
「研究力強化・若手研究者支援総合パッケージ」(仮称)の検討について

資料

資料1研究力に関するエビデンスデータ(PDF形式:1200KB)
https://www8.cao.go.jp/cstp/gaiyo/yusikisha/20191010/siryo1.pdf

資料2競争的研究費の現状と課題に関してのヒアリング結果(PDF形式:411KB)
https://www8.cao.go.jp/cstp/gaiyo/yusikisha/20191010/siryo2.pdf

資料3研究力強化・若手研究者支援総合パッケージ(仮称)の検討について(PDF形式:839KB)
https://www8.cao.go.jp/cstp/gaiyo/yusikisha/20191010/siryo3.pdf

参考資料1参考資料(PDF形式:1362KB)
https://www8.cao.go.jp/cstp/gaiyo/yusikisha/20191010/sanko1.pdf

 人材、資金、環境の三位一体の改革を謳っています。問題は明らかで、どう改革するかです。

★知識集約型の価値創造に向けた科学技術イノベーション政策の展開 ― Society 5.0の実現で世界をリードする国へ ― 中間取りまとめ
http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/gijyutu/gijyutu22/houkoku/1422095.htm

 次の科学技術基本計画に向けて議論が進んでいます。

★第91回「人文・社会科学と科学技術 ―よりよい連携に向けて」
科学技術振興機構 研究開発戦略センター 科学技術イノベーション政策ユニット フェロー 前田知子 氏
https://scienceportal.jst.go.jp/reports/launchout/20191028_01.html

 第6期計画には、人文社会科学系に関する記載も入れられることになりそうですが、これに対しては賛否両論があるようです。本来政策から距離をおくべき領域まで、政策目標化するのはどうか、という意見です。

★(記者解説)後退する基礎研究 0から1生む力、競争政策で弱まる 大阪科学医療部・嘉幡久敬
https://www.asahi.com/articles/DA3S14233563.html

★第622回「迫るノーベル賞枯渇時代、見えぬ抜本政策転換」
http://dandoweb.com/backno/20191028.htm

★「誰が科学を殺すのか」毎日新聞連載が書籍に 28日から発売
https://mainichi.jp/articles/20191025/k00/00m/040/217000c

 ノーベル賞シーズンに、日本の科学技術政策を分析する記事や本が出る傾向がありますが、これらの記事や本では、日本の「研究力」の低下が語られ、選択と集中が大いに批判されています。

 そして、そこに立ちはだかるのが財務省という構図が見えてきます。その象徴が神田さんですね。

 研究力強化・若手研究者支援総合パッケージ(仮称)や次の科学技術基本計画などで、問題点が少しでも解消されることを願います。

 しかしながら、現在の大学や研究者の現状に両手をあげて賛成することはできません。

 多くの研究者が、自分の研究領域の利益のための発言、行動しかせず、社会との双方向コミュニケーションに背を向けているからです。

 2000年台半ばごろ、科学技術コミュニケーションの重要性が叫ばれ、科学技術基本計画中にも、社会とのコミュニケーションの重要性が明記されました。

 現在の第5期計画にもそれは引き継がれ、以下のように書かれています(46ページ)。
https://www8.cao.go.jp/cstp/kihonkeikaku/5honbun.pdf

共創に向けた各ステークホルダーの取組

科学技術においてステークホルダー間の共創を進めるためには、社会側のステークホ ルダーである国民の科学技術リテラシーの向上と共に、研究者の社会リテラシーの向上 が重要である。

 しかし、しかるべきポジションを得ているような研究者に話を聞いても、こうした精神が根付いているとは言えないように感じています。

 もちろん人によるわけで、理解している人もいるとは思うのですが、いまだその意識は啓蒙に留まり、共創とまでは言えない場合が多いのかなと思います。

 社会のどの声を聴くのかというのは、なかなか難しい問題ですが、少なくとも研究成果を出すことだけが社会貢献であるという時代ではないはずです。

 そして聴くべき声は外側だけでなく、内側にもあります。内側も社会であるはずです。

 ノーベル賞受賞者の発言ならば聴くということは、裏を返せばノーベル賞を受賞するまでは何を言っても聴かれないということでもあります。

 研究歴があり、今は科学コミュニティの外側に出ている人間だってステークホルダーなはずですが、そうした声は顧みられることはありません。

 優れた研究者の声しか聴かないということでは、とても社会との共創などできるはずがありません。

 政府、とくに財務省に向かって、自由に研究をさせてほしい、選択と集中を緩めてほしい、というのは重要ですが、政府を維持させている国民に、研究がどのように社会に役割を果たしているか(役に立つというだけでなく)をきちんと明示したうえで、だからこそ、その自由を尊重してほしいというべきなのではないでしょうか。

 自分たちの研究のことしか考えず、エリート主義で排他的な「楽園」を維持させるための余裕はこの国にはないはずです。「研究力」の凋落の原因を外側にだけ求めるのは都合が良すぎです。

 双方向コミュニケーションを訴えてきた私たちの力不足を感じます。どうやったら今の現場の研究者たちに理解してもらえるのか…。

 2009年の事業仕分けのときに声明を出したノーベル賞受賞者に対して、多様な「ノンノーベル」の仲間たちが議論しました。

 その時の思いはいまだ忘れていません。

 ちょっと「エモい」文章になりました…。

★未来を脅かす地球温暖化と、活力を失う日本社会
なぜ日本は環境問題への関心が低いのか、なぜ日本の若者たちは動かないのか
https://webronza.asahi.com/science/articles/2019102200001.html

Canadian kids sue government over climate change
https://www.nature.com/articles/d41586-019-03253-5

 環境問題に関して日本の若者は動かないのはなぜか…。

 もちろん環境の前に雇用、という切羽詰まった状態に置かれているのも理由ですが、動く人間を徹底的に叩くからでしょう。

 意見を言う資格は誰にでもあるはずです。大人になるまで、偉くなるまで何もいうな、と押さえつけるのですから、若者は声など出せるはずがありません。

★環境問題に関する世論調査
https://survey.gov-online.go.jp/r01/r01-kankyou/index.html

弁当小分け容器、飾り、レジ袋、緩衝材…過剰なプラ製品は? 内閣府調査
https://mainichi.jp/articles/20191025/k00/00m/040/267000c

★UCL to Phase Out Single-Use Plastics, Including Pipette Tips
http://bit.ly/32Vqjwx

 大量に消費されるピペットのチップも汚染の原因ですから…。

産学官連携の更なる発展に向けた今後の改善について(とりまとめ)
http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/gijyutu/gijyutu16/011/houkoku/1421792.htm

★今後の産学官連携・地域科学技術政策に関する方向性について
http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/gijyutu/gijyutu16/houkoku/1422212.htm

★夜盲症の子どもたちに星空を 特殊な眼鏡を盲学校に クラウドファンディング呼び掛け
https://mainichi.jp/articles/20191026/k00/00m/040/034000c

盲学校の生徒に星空を。暗闇で見える暗所視支援眼鏡を届けたい。
https://readyfor.jp/projects/MW10

★Predict science to improve science
https://science.sciencemag.org/content/366/6464/428.full

 経済学や心理学、政治学等に関して、予想研究をシステミックに集約しようという提案。

★Opinion: Boycotting Elsevier Is Not Enough
http://bit.ly/2pbAGhk

 エルゼビア社は科学者のボイコットを乗り切りました。次の手は…。

★米国人大学生の論文をケニアで書く 論文代筆ビジネス、いまやグローバル産業に
https://globe.asahi.com/article/12813245

 ゴーストオーサーです。学生の収入の手段にもなっていて、重い問題です。

安倍総理は令和元年第9回経済財政諮問会議を開催しました
https://www.kantei.go.jp/jp/98_abe/actions/201910/28keizaishimon.html

令和元年第9回経済財政諮問会議
https://www5.cao.go.jp/keizai-shimon/kaigi/minutes/2019r/1028/agenda.html

「官民合わせて約13万床削減」を主張、民間議員-今後3年程度を「集中再編期間」に、諮問会議で
https://www.cbnews.jp/news/entry/20191028203415

首相、病院再編に意欲 民間議員「成果で補助金」 経財諮問会議
https://mainichi.jp/articles/20191029/ddm/008/020/032000c

 病院の再編の問題は私の本業にも関わることです。

 基本的には、早い(アクセス)、うまい(クオリティ)、安い(コスト)は両立できないので、病院を集約化し、医師や医療資源を集めることで質を担保すべきです。

 医療の場合は選択と集中が不可避です…。

★無届けの細胞移植が実施された報道に関する日本再生医療学会声明
https://www.jsrm.jp/news/news-4271/

大阪医大元講師、再生医療を無届け投与  府警、容疑で捜索
https://mainichi.jp/articles/20191026/ddm/041/040/082000c

 生命倫理的に言語道断な事態。処分が下されるはずです。

★「トンデモ医療であると、断言します」 血液クレンジング、医学的に徹底検証してみた
https://www.buzzfeed.com/jp/naokoiwanaga/blood-cleansing

 明確な法律違反が問えないグレーゾーンの怪しい医療も、大きな問題です。

 先週も書きましたが、怪しげな治療の被害を受けてしまう患者さんや、アンチワクチンなど、は訴訟も飛び交うような厳しい状況にあります。相当に高度なコミュニケーションが必要です。

 正しい知識の普及や一方的な批判だけではだめで、かといって双方向コミュニケーションもそう簡単ではないわけです。

★A livestock-poison-turned-drug might save her from endless cancer surgeries. But if she helps test it, could she afford to keep taking it?
https://www.statnews.com/feature/medicine-hunters/part-1/

日本学術会議・学術フォーラム
ゲノム編集技術の ヒト胚等への応用について考える
http://www.scj.go.jp/ja/event/pdf2/280-s-1124.pdf

2019年11月24日(日)13:00-17:00(12:30開場) 会場:日本学術会議講堂

★Hello quantum world! Google publishes landmark quantum supremacy claim
https://www.nature.com/articles/d41586-019-03213-z

グーグルの量子コンピューター発表は、要するに何がすごいのか
https://headlines.yahoo.co.jp/article?a=20191024-00218455-diamond-sci

 Natureに発表された量子コンピュータの論文が大きな話題となりました。ライト兄弟が飛行したのに匹敵するという声もあれば、そうではないという反論もあります。

 すぐに実用化できるわけではないという点は一致しています。

 ライト兄弟の飛行からロケットができるまで数十年かかったわけですが、ともかくも飛んだのなら大ごとなので、ウォッチし続けていきます。

★Young universities show leadership
https://www.nature.com/articles/d41586-019-03166-3

NATURE INDEX | 23 OCTOBER 2019
Young Universities 2019
https://www.nature.com/collections/ccghbdhhii

 創設後まもない(といっても50年以内)の大学ランキング。日本からはOISTが29位にランクインしています。ほか、総研大奈良先端大も。

 日本の大学はいまだ旧帝国大学中心の「入れ替え戦のないリーグ戦」の様相を呈していますが、新陳代謝はもっとあってもよいでしょう。

★Trump names seven to revived presidential science advisory panel
https://www.sciencemag.org/news/2019/10/breaking-trump-names-seven-revived-presidential-science-advisory-panel

 実に33ヶ月もたって指名。

★U.S. Travel Ban Disrupts The World’s Largest Brain Science Meeting
https://www.npr.org/sections/health-shots/2019/10/24/773095904/u-s-travel-ban-disrupts-the-worlds-largest-brain-science-meeting

 学会に参加できない研究者続出。これは科学にとってマイナスだといわざるを得ません。

★60の学協会が米国政府機関に安全保障と科学的営為のバランスを取るよう要請
https://crds.jst.go.jp/dw/20191024/2019102421482/

★科学工学指標2020:STEM教育の現状について
https://crds.jst.go.jp/dw/20191028/2019102821471/

★NIH and Gates Foundation lay out ambitious plan to bring gene-based treatments for HIV and sickle cell disease to Africa
https://www.sciencemag.org/news/2019/10/nih-and-gates-foundation-lay-out-ambitious-plan-bring-gene-based-treatments-hiv-and

★U.K. science minister says DARPA-like agency is in the works
https://www.sciencemag.org/news/2019/10/uk-science-minister-says-darpa-agency-works

 日本ではムーンショットが賛否両論ですが、イギリス政府はUK Research and Innovation (UKRI)の外側に独立した機関を立ち上げるとのこと。

 まだ詳細は不明ですが、2050年までに二酸化炭素排出ゼロなどが目標ではないかと言われています。

★「実力ない」悩んだ過去と決別
豪チーフ・ディフェンス・サイエンティスト タニア・モンローさん
https://www.nikkei.com/article/DGKKZO51397760V21C19A0TY5000/

★Canadian scientists relieved as Trudeau ekes out election win
https://www.nature.com/articles/d41586-019-03208-w

 カナダの総選挙。科学者たちはトルドー首相らの与党勝利でホッとしているとのこと。

★How our daughter’s diagnosis shifted the course of our careers
https://www.sciencemag.org/careers/2019/10/how-our-daughter-s-diagnosis-shifted-course-our-careers

 お子さんに障害があったことで、キャリアにどのような影響があったのか語られています。

★ハワイ巨大望遠鏡計画 有志が文部科学省に見直し嘆願書を提出
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20191028/k10012153421000.html

 望遠鏡建設問題は日本が関わる問題です。