科学・政策と社会ニュースクリップ

科学政策や科学コミュニケーション等の情報をクリップしていきます。

燃えるブラジル、厚労省職員の嘆き、エリート目線の大卒者

2019年8月20日~2019年8月27日

 G7サミットが開催されていました。

★2019 G7ビアリッツ・サミット
https://www.mofa.go.jp/mofaj/ecm/ec/page23_002901.html

G7ビアリッツ・サミット(結果)
https://www.mofa.go.jp/mofaj/ecm/ec/page4_005205.html

 A41枚の薄い首脳宣言が出ています。

G7ビアリッツ首脳宣言
2019年8月26日
https://www.mofa.go.jp/mofaj/files/000510267.pdf

 科学技術に関連する事項としては、知的財産の保護くらいです。

 その他の成果としては、

ジェンダー平等及び女性のエンパワーメントに関するG7宣言
G7とアフリカのパートナーシップのためのビアリッツ宣言
G7サヘル・パートナーシップ行動計画
気候変動,生物多様性及び海洋に関するビアリッツ議長総括
ビアリッツ宣言:開かれた自由で安全なデジタル化による変革のための戦略

 などです。そしてアマゾンの森林火災についても取り上げられました。

 ブラジルの熱帯雨林で多発している森林火災についても議論されました。安倍総理からは,消火への協力のため,G7としてできる支援を各国が検討して行っていくべきであり,中長期的に,アマゾン開発と森林の持続可能性を両立させるために必要な支援を国際社会として考えていくことが必要であると発言しました。
 議論の結果,地域の国々としっかり連携しつつ,G7として流域全体の支援を行うこと,まずは消火のための協力を行い,植林の協力を行うにあたってもしっかり連携を取っていくことで一致しました。

アマゾン森林火災、国際問題に 仏大統領「G7で議論へ」
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO48899330T20C19A8000000/

ブラジル:アマゾン火災 仏「議題に」
https://mainichi.jp/articles/20190824/ddm/002/030/130000c

G7:アマゾン火災支援、21億円拠出で合意 生物多様性など討議
https://mainichi.jp/articles/20190827/ddm/002/030/077000c

 そのアマゾン森林火災ですが、世界的な課題となっています。

★Alarming surge in Amazon fires prompts global outcry
https://www.nature.com/articles/d41586-019-02537-0

アマゾン森林火災、原因は「過剰な伐採」と専門家
1週間で9000件以上の火災報告、大統領の開発政策が影響か
https://natgeo.nikkeibp.co.jp/atcl/news/19/082200484/

 地球の肺という言い方もされますが、酸素を出すと同時に真菌などが酸素を吸収しているので、酸素というよりは生物多様性の消失が大きな課題です。

 アマゾンを有するブラジルですが、もう一つの火、研究予算カットが研究者たちを苦しめています。

★Funding crisis at Brazilian science agency could leave 80,000 researchers and students without pay
https://www.sciencemag.org/news/2019/08/funding-crisis-brazilian-science-agency-could-leave-80000-researchers-and-students

Financial crisis looms at Brazilian science agency
https://science.sciencemag.org/content/365/6455/731

Brazil’s budget cuts threaten more than 80,000 science scholarships
https://www.nature.com/articles/d41586-019-02484-w

In Brazil, Thousands of Research Fellowships Are at Risk
https://www.the-scientist.com/news-opinion/in-brazil-thousands-of-research-fellowships-are-at-risk-66302

 影響を受けるのは8万人にも及びます。

★第7回アフリカ開発会議(TICAD7)
https://www.mofa.go.jp/mofaj/area/ticad/ticad7/index.html

 サミットのあとは横浜で開催されます。

★「中国が輸入しない米のトウモロコシ日本が買います」のトウモロコシは、我々が食べているスイートコーンではありません。
https://www.yamaken.org/mt/kuidaore/archives/2019/08/29915.html

 サミット中に日米首脳が合意。かなり物議を醸していますが、その影響は冷静に見極めるべきでしょう。しかし、国と国との関係というのは妥協の連続だとつくづく感じます。

厚生労働省の 業務・組織改革のための 緊急提言
https://www.mhlw.go.jp/content/11600000/000540047.pdf

厚生労働省を変えるために、すべての職員で実現させること。
https://www.mhlw.go.jp/content/11600000/000540040.pdf

「人生の墓場に入ったとずっと思っている」。厚労省の職員や退職者の叫びと改革への動き
https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20190826-00010002-bfj-soci

 厚労省職員の痛々しい働き方。官僚が忙しすぎて自死者も出るとは以前から聞いていましたが、もうそれを放置することはできません。

★大学無償化政策に透ける、エリート大卒層の「上から目線」
https://gendai.ismedia.jp/articles/-/66575

親が非大卒の学生に奨学金
学歴の固定化に一石
https://r.nikkei.com/article/DGKKZO48762380Q9A820C1EAC000

 このメルマガの読者の多くは大卒以上で、大学院卒も多いと思います。

 しかし、世の中の半分の人は大卒ではないという事実を、大卒者はあまり肌感覚で理解していないように思います。おそらく交友関係も大卒者が多いでしょう。

 全ての人が大卒を目指すべきという大卒至上主義に大きな落とし穴があることを自覚すべきだと思います。

★国際的動向を踏まえたオープンサイエンスの推進に関する検討会(第11回)
https://www8.cao.go.jp/cstp/tyousakai/kokusaiopen/11kai/11kai.html

★大学院設置基準の一部改正について(諮問)
http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chukyo/chukyo0/toushin/1420274.htm

大学院設置基準改正要綱(案)

第一 博士後期課程におけるプレFDに関する改正

大学院は,博士後期課程の学生が修了後自らが有する学識を教授するために必要な能力を培うための機会を設けること又は当該機会に関する情報の提供を行うことに努めるものとすること。

第二 ファイナンシャル・プランに関する改正

大学院は,授業料,入学料その他の大学院が徴収する費用及び修学に係る経済的負担の軽減を図るための措置に関する情報を整理し、学生及び入学を志望する者に対して明示するよう努めるものとすること。

 とのことです。これで大学院博士課程の進学率が回復するでしょうか。

★全国イノベーション調査 2018年調査統計報告[NISTEP REPORT No.182]の公表について
https://www.nistep.go.jp/archives/41305

★平成30年 結核登録者情報調査年報集計結果について
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000175095_00002.html

 職業柄結核患者さんの標本を見ることはしばしばあります。日本はだいぶ減ったとはいえ、結核が多い国であることは知っておいたほうがよいでしょう。

★第3回厚生労働省統計改革ビジョン2019(仮称)有識者懇談会資料
https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_06220.html

統計不正、業務改善へ工程表作成 厚労省の懇談会が提言
https://www.chunichi.co.jp/s/article/2019082001001430.html

★Microplastics in Drinking Water Don’t Threaten Human Health: WHO
https://www.the-scientist.com/news-opinion/microplastics-in-drinking-water-dont-threaten-human-health-who-66338

 マイクロプラスチックに食べ物が汚染されていますが、食べても問題はないということのようです。しかし、だから放っておけという問題ではありません。

★Why I said no to peer review this summer
https://www.nature.com/articles/d41586-019-02470-2

Peer reviewers need a code of conduct too
https://www.nature.com/articles/d41586-019-02492-w

 ピアレビュー関連の記事が2つ。上のは休日にはピアレビューなんかしないよ、という宣言。下はピアレビューにも行動規範が必要との主張。

★The Push to Replace Journal Supplements with Repositories
http://bit.ly/324qhl9

★疑惑の投資家に絡むスキャンダルに揺れるMITメディアラボ-研究者2人が抗議の辞任
https://japan.cnet.com/article/35141599/

Top US university investigates donations from Jeffrey Epstein
https://www.nature.com/articles/d41586-019-01805-3

Researchers Quit MIT’s Media Lab over Jeffrey Epstein Money
https://www.the-scientist.com/news-opinion/researchers-quit-mits-media-lab-over-jeffrey-epstein-money-66326

 自死したエプスタイン氏はMITに寄付をしていました。研究者コミュニティにも影響が出るとは…

★教員の処分について
https://www.osaka-u.ac.jp/ja/news/topics/2019/08/2102

9200万円不正受給で教授解雇
https://www3.nhk.or.jp/kansai-news/20190821/2000019390.html

9千万円不正受給、阪大が教授を懲戒解雇 住居など偽り
https://www.asahi.com/articles/ASM8P5V65M8PPTIL01H.html

大阪大、不正受給の教授を解雇 過去にセクハラも
https://www.chunichi.co.jp/s/article/2019082101002127.html

★博士学位の取消しについて
https://www.osaka-u.ac.jp/ja/news/topics/2019/08/2101

 上記2つの事件はともに大阪大学が関わっています。

★論文コピペで博士号…不正告発した教授を「大学が排除」のその後
https://gendai.ismedia.jp/articles/-/66681

 岡山大学の事件は私もフォローしています。

★<研究者目指したけれど…大学非常勤講師らの嘆き> (番外編)新ルール導入、道開く
https://www.tokyo-np.co.jp/article/living/life/201908/CK2019082602000166.html

★Bill to fight sexual harassment in universities approved by Chilean Senate
https://www.sciencemag.org/news/2019/08/bill-fight-sexual-harassment-universities-approved-chilean-senate

★Strategies for combating online hate
https://www.nature.com/articles/d41586-019-02447-1

★Alarm as devastating banana fungus reaches the Americas
https://www.nature.com/articles/d41586-019-02489-5

★Suicide-turning the tide
https://science.sciencemag.org/content/365/6455/725

 Science誌の特集。

★UCSD Eye Doctor Resigns After Investigation into Ties with China
https://www.the-scientist.com/news-opinion/ucsd-eye-doctor-resigns-after-investigation-into-ties-with-china-66344

 中国系の研究者が中国政府との関係を問われ辞任。こうした事態が相次いています。

★More than 700 German research institutions strike open-access deal with Springer Nature
https://www.sciencemag.org/news/2019/08/more-700-german-research-institutions-strike-open-access-deal-springer-nature

Project DEAL in Germany Reaches Agreement with Springer Nature
https://www.the-scientist.com/news-opinion/project-deal-in-germany-reaches-agreement-with-springer-nature-66342

 ドイツの研究機関とSpringer Natureとの間に、オープンアクセスの手続きを簡素化する協定が結ばれました。ただ、Natureと姉妹紙はだめだそうです。

★終わらない氷河期~今を生き抜く:やりたい仕事にのめり込む…氷河期世代は「自己実現ワーカホリック」 阿部真大・甲南大教授
https://mainichi.jp/articles/20190824/k00/00m/040/009000c

 氷河期世代のひとたちに活躍してもらうにはどうすればよいか、非常に大きな問題です。

 阿部教授はこの世代が新しい働き方を模索した世代であると指摘し、これをうまく引き継いでいくべきだと述べます。

 そして、就業支援はマッチング事業を手厚くすべきと言っています。

 博士号取得者についても、やはり丁寧なマッチングを行うべきだと思います。文科省ポスドクキャリア事業で、そうした取り組みが行われたわけですが、十把一絡げに博士号取得者はどういう能力があるかなど言えないわけで、丁寧な取り組みが必要です

 そして、阿部教授が指摘するように、草の根の動きも必要です。繰り返しになりますが、ここが決定的に弱いのが日本の特徴です。私たちもNPOを作って地べたでもがいてきましたが、もっと仲間が欲しいなあと思っています。

★“勤務ではない研究” 大学教員の働き方を考える
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20190820/k10012042101000.html

 勤務かそうでないか、研究者は非常にわかりにくいのが現状です。

 私もポスドク過労死裁判で証言したとき、それを痛感しました。

★3度目のノーベル賞狙う3代目、建設費概算要求に
https://www.yomiuri.co.jp/science/20190821-OYT1T50126/

ハイパーカミオカンデ建設へ ノーベル賞級の観測目指す
https://www.asahi.com/articles/ASM8Q41NGM8QULBJ00C.html

ハイパーカミオカンデ:「スーパー」超える「カミオカンデ」建設へ ニュートリノ研究、27年完成予定 岐阜
https://mainichi.jp/articles/20190822/ddm/002/040/062000c

 概算要求のシーズンです。

★2019 Carson Prize: Aya Kimura
https://www.4sonline.org/prizes/carson

Radiation Brain Moms and Citizen Scientists
The Gender Politics of Food Contamination after Fukushima
https://www.dukeupress.edu/radiation-brain-moms-and-citizen-scientists

書評
http://hdl.handle.net/10114/00021407