科学・政策と社会ニュースクリップ

科学政策や科学コミュニケーション等の情報をクリップしていきます。

なぜ「大学」は敗け続ける?

2019年5月28日~2019年6月4日

 今年の科学技術白書が出ました。

★令和元年版 科学技術白書
http://www.mext.go.jp/b_menu/hakusho/html/hpaa201901/1411294.htm

基礎研究の成果は将来の社会発展の基盤 令和元年版の科学技術白書
https://scienceportal.jst.go.jp/news/newsflash_review/newsflash/2019/05/20190530_01.html

科学技術白書「基礎研究が重要」 本庶氏らの危機感紹介
https://www.asahi.com/articles/ASM5S462HM5SULBJ006.html

基礎研究は社会を変える 科技白書で重要性強調
https://www.chunichi.co.jp/s/article/2019052801001562.html

「日本の研究力、低下傾向」
https://www.nikkei.com/article/DGKKZO45358680Y9A520C1CR0000/

 基礎研究の重要性について多くの記載があります。筆者の熱が伝わってきます。

「第1部では、基礎研究について様々な観点から考察を加え、事例を通じて研究者たちがこの「見 えぬもの」の深奥には必ず普遍的な真理が「ある」と信じ、それを必死で追い求め、新たな知の フロンティアを開拓していった営みと、社会に大きな価値をもたらした経緯を概観した。」
http://www.mext.go.jp/component/b_menu/other/__icsFiles/afieldfile/2019/05/22/1417228_005.pdf

 財務省などに向けて書いているのかなあと邪推したりもします。

 ではこうした文科省(+大学)の思いがなぜ伝わらないのでしょう。

★科学政策で国と研究者にズレ なぜ? 専門家に聞いた
https://www.asahi.com/articles/ASM3P0PRTM3NPLBJ00Z.html

 倉持隆雄さんへのインタビュー。

「CSTIはまた、政治に近いことから政権の優先課題が重視されるのも特徴だ。政権の課題とは、端的に言えば経済だ。日本の経済をいかに高めるかが最優先になってしまう。現状を早く変えてほしい、早く成果を出して欲しいというプレッシャーが強く、長期的な視点で高みをめざす研究にどう突っ込むかの議論は難しい面がある。」

 政治の要請を無視した科学技術政策はありえませんが、選挙という短期的スパンでは、どうしても経済優先となってしまいます。

 基礎研究を行うところは大学だけではないのですが、大学が基礎研究の主体であるのは事実ですので、大学のことを考えてみます。

 大学の基礎研究の衰退をなんとかするためには、経済界にも理解を求めなければなりませんが…。

★なぜ経団連会長は「大学は、理系と文系の区別をやめてほしい」と大胆提言するのか
経団連・中西宏明会長×経営共創基盤(IGPI)冨山和彦CEO 就活対談#2
https://bunshun.jp/articles/-/12038

なぜ企業は大学に高望みするのか
http://www.h-yamaguchi.net/2019/05/post-76e8f5.html

 またまた登場の冨山和彦氏と、経団連の中西会長。

 財界人の大学への理解がとにかく古くて、現状からかけ離れています。もちろん財界人のなかには大学に関わっている人もいます。

★大学改革、足りぬ経営目線
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO45409450Z20C19A5X93000/

 こちらは宮内義彦オリックスシニア・チェアマン。

 財界人とて基礎研究の重要性を無視しているわけではないと思いますが、大学と財界、そして政官界のコミュニケーションが断絶していることが分かります。

 財務省の神田氏や冨山氏など、ブリリアントな頭脳をお持ちの方々とコミュニケーションをどうやってとればよいのか、結構大変だなと思いますが、冨山氏に十年一日のごとく「シェークスピアが」などと言われるのは、大学サイドの敗北だと言わざるを得ません。

 大学のコミュニケーションといえば、何かあったときにどこに向いているのか分からない声明やアピールをするのみで、産官とのリアルなコミュニケーションを怠ってきたツケが蓄積してきたのではないでしょうか。

 最近「なぜリベラルは敗け続けるのか」という本が話題です。
https://togetter.com/li/1358604

 リベラルを「大学」と読み替えても通用するのではないかと思ってしまいます。

 ただ、大学といっても人の集合体ですし、企業以上に個々人はバラバラです。誰がどうすればよかったのか、という問題は結構深刻です。研究者は大学や研究機関を移動していくもので、大学に忠誠を誓う存在ではないからです。

 だからこそ、大学を出てさまざまな立場にいる人たちとのコミュニケーションが必要のように思います。しかし、とくに大学院などに言えることですが、外に出て行った人たちを大学の「ファン」にするどころか、恨みを抱かせてしまう現状、排他性があります。

 先々週放送していた「白い巨塔」は、まさにそのあたりを誇張したような内容でした…。

 現在基礎研究に従事しておらず、大学にも所属していない「野良」の私たちとしては、あくまで社会がよりよくなるために、基礎研究の環境がよりよいものになってほしいという観点からあれこれ言っています。必ずしも大学の研究者と意見が全て一致しているわけではないと思います。

 一致していない点は、基礎研究や基礎研究者は重要だと思いますが、個別の研究者のことを言っているわけではないことだと思います。つまり、実力ある研究者には老いも若きも関係なく、才能を発揮する場を与えてほしいと思う一方、そうでない研究者には、別の世界で才能を発揮してほしいと思っている点です。何をもって実力とするかという問題はありますが…。

 基礎研究を大切にしろ、イコール現在の研究者たちを守れ、ではないということです。大学の「メンバー」を守るのではなく、基礎研究自体をよりよいものにしたいわけです。そこらあたりは、日本の雇用にも通じる話です。

 もちろん、大学を去るイコール終わりではないことは強調したいと思いますし、繰り返しになりますが、社会のさまざまな場所で活躍できるようにしたいと願っています。

 長くなりましたが、参院選も迫ってきました。今回の選挙でも、政治家が基礎研究や博士人材のキャリアパスについてどう思っているのか、聴いていきたいと思っています。

★これでも勝ち組です -若手研究者の生存と研究、両立させてもらえますか?1
https://note.mu/mkepasince2019/n/n2fef66a2b9b7

国への要求第0版 -若手研究者の生存と研究、両立させてもらえますか?2
https://note.mu/mkepasince2019/n/n2e41d2ca72df

 現場の研究者が声をあげるのは重要です。こういうのは当事者でないとなかなか言えません。

★(大学入試改革)2021年度入学者選抜(一般選抜)における国立大学の英語資格・検定試験の活用予定の公表状況について~82大学中79大学が英語資格・検定試験を活用~(令和元年5月31日)
http://www.mext.go.jp/a_menu/koutou/koudai/detail/1417592.htm

東大など国立3割「英検準2級」で出願可 共通テスト
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO45499900R30C19A5MM0000/

国立大の4割、合否判定に使わず 英語の民間試験
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO45557490R30C19A5EA4000/

★(大学入試改革)2021年度入学者選抜に向けた各大学の検討状況の調査結果について(令和元年5月31日)
http://www.mext.go.jp/a_menu/koutou/koudai/detail/1417589.htm

 2021年の新入試が迫ってきました。大学に大きな変革を迫る入試改革です。

★科学技術・学術政策研究所「民間企業の研究活動に関する調査報告 2018」報告書の公表について
http://www.mext.go.jp/b_menu/houdou/31/05/1417478.htm

★「民間企業の研究活動に関する調査報告2018」[NISTEP REPORT No.181]の公表について
http://www.nistep.go.jp/archives/40826

 毎年恒例の調査。いつも人材の部分に注目しています。

「2017 年度に研究開発者を採用した企業の割合は、全体的に前年度より大幅に増加した。
・新卒の研究開発者を採用した企業割合は、2014 年度以降 4 年連続で増加し、2017 年度の割 合は、2011 年度以降で最大となった。また、博士課程修了者(新卒)については、2 年連続 の増加となるとともに、8 年ぶりに 8%台となり、堅調な増加傾向が示された。
・中途で採用した企業の割合は、2 年連続で増加し、2017 年度の割合は、2011 年度以降で最大となった。」

「・採用された研究開発者に占める中途採用者の割合は、2013 年度以降、増加傾向であったが、 2017 年度は大幅に減少した。
・新卒採用者では、修士号取得者(新卒)及び学士号取得者(新卒)の割合が 2017 年度に顕著な増加となった。女性研究開発者(新卒)の割合は 3 年連続で増加した。
・博士課程修了者(新卒)の割合は、2017 年度は横ばいであり、ポストドクター経験者の割 合は減少となっている。」

 とのことです。

安倍総理は令和元年第2回経済財政諮問会議を開催しました
https://www.kantei.go.jp/jp/98_abe/actions/201905/31keizaishimon.html

令和元年第2回経済財政諮問会議
https://www5.cao.go.jp/keizai-shimon/kaigi/minutes/2019r/0531/agenda.html

議事

(1) 経済・財政一体改革(社会保障2)等
(2) 次世代型行政サービスへの改革
(3) 骨太方針の骨子案

 就職氷河期世代の支援を、今後3年で集中的に行うとしています。

安倍総理は「ニッポン一億総活躍プラン」フォローアップ会合・働き方改革フォローアップ会合合同会合を開催しました
https://www.kantei.go.jp/jp/98_abe/actions/201905/30goudoukaigou.html

「ニッポン一億総活躍プラン」フォローアップ会合・
働き方改革フォローアップ会合 合同会合
議事次第
https://www.kantei.go.jp/jp/singi/ichiokusoukatsuyaku/follow_up/dai3/gijisidai.html
https://www.kantei.go.jp/jp/singi/hatarakikata/followup/dai2/gijisidai.html

 こちらでは非正規雇用者の処遇改善、転職、再就職者の雇用機会拡大について触れられています。

 このメルマガで取り扱う問題ではないかもしれませんが、衝撃的な殺人事件が2つあり、それが「引きこもり」に関係があるのではないかと言われています。

 破滅的な行動に出ることをどう防ぐことができるのか。上記の政策も含め、実行に移していかなければなりませんし、私たちも「自分ごと」として考えないといけません。

G20SDGsなど地球規模課題で協調を 世界のシンクタンクが参加するT20が共同声明
https://scienceportal.jst.go.jp/news/newsflash_review/newsflash/2019/05/20190528_01.html

安倍総理は第39回中央防災会議を開催しました
https://www.kantei.go.jp/jp/98_abe/actions/201905/31bousai.html

第39回議事次第
http://www.bousai.go.jp/kaigirep/chuobou/39/index.html

南海トラフ、想定死者数3割減 建物改修進み 政府試算
https://www.asahi.com/articles/ASM503CV3M50UTIL008.html

南海トラフ、想定死者数3割減 「事前避難」も明記
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO45499510R30C19A5MM0000/

南海トラフ地震、「事前避難」に悩む西日本の自治
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO45566040R00C19A6AC8000/

南海トラフ対策 被災域外も避難、自治体が苦慮
https://www.nikkei.com/article/DGKKZO45526150R30C19A5CC1000/

南海トラフ 防災推進計画 関西市町村、15%未作成
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO45535810R30C19A5LKA000/

 この前の日向灘地震含め、南海トラフ地震への危機感が高まっているように思います。

 研究機関の地震対策も加速しなければなりません。

★「ウナギの国際的資源保護・管理に係る第12回非公式協議」の結果についての共同発表
http://www.jfa.maff.go.jp/j/press/sigen/190531_21.html

安倍総理は海洋プラスチックごみ対策の推進に関する関係閣僚会議に出席しました
https://www.kantei.go.jp/jp/98_abe/actions/201905/31kaiyo_kaigi.html

海洋プラごみ削減へペット容器再生 政府が行動計画
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO45500360R30C19A5EAF000/

政府の海洋プラ対策 技術力で巻き返し、実効性に課題
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO45445840Q9A530C1000000/

G20前に姿勢アピールも 抜本的解決策と言えず 海洋プラごみ削減計画
https://mainichi.jp/articles/20190531/k00/00m/040/317000c

プラスチック危機:G20前に姿勢アピール 海洋ごみ削減、政府計画 「技術革新」見込む
https://mainichi.jp/articles/20190601/ddm/012/040/138000c

★「プラスチック資源循環戦略」の策定について
http://www.env.go.jp/press/106866.html

「海洋プラスチックごみ対策アクションプラン」の策定について
http://www.env.go.jp/press/106865.html

 プラスチックの問題が大きな課題となってきました。G20でどのような議論があるのか注目です。

★統計的有意性を巡る重要な論争
https://go.nature.com/2QG9fWc

★How to report scientific findings
https://www.scidev.net/global/journalism/script-practical-guide/how-to-report-scientific-findings-1x.html

How to find the right journalist to report on your research
https://www.scidev.net/global/communication/script-practical-guide/how-to-find-the-right-journalist-to-report-on-your-research.html

★Radical open-access plan delayed a year as revised effort seeks more support
https://www.sciencemag.org/news/2019/05/radical-open-access-plan-delayed-year-revised-effort-seeks-more-support

Ambitious open-access Plan S delayed to let research community adapt
https://www.nature.com/articles/d41586-019-01717-2

 プランSですが、延期されるとのこと。

★Rethinking impact factors: better ways to judge a journal
https://www.nature.com/articles/d41586-019-01643-3

 インパクトファクター問題。

★Update: In reversal, science publisher IEEE drops ban on using Huawei scientists as reviewers
https://www.sciencemag.org/news/2019/06/update-reversal-science-publisher-ieee-drops-ban-using-huawei-scientists-reviewers?rss=1

IEEE, a major science publisher, bans Huawei scientists from reviewing papers
https://www.sciencemag.org/news/2019/05/ieee-major-science-publisher-bans-huawei-scientists-reviewing-papers

世界最大の学会が「Huaweiの科学者による論文査読を禁止する」と決定
https://gigazine.net/news/20190530-ieee-bans-huawei-scientists-review/

世界最大の技術者団体もファーウェイ排除 活動を制限
https://www.asahi.com/articles/ASM5Z54G1M5ZUHBI01S.html

 一番新しい情報では、ファーウェイ排除の決定は中止とのことですが、アメリカの中国系科学者への締め付けが強くなっています。

★Chinese American scientists uneasy amid crackdown on foreign influence
https://www.nature.com/articles/d41586-019-01605-9

Scientists caught in U.S. crackdown on China
https://science.sciencemag.org/content/364/6443/811

★Bipartisan bill would create forum for discussing how to counter U.S. academic espionage
https://www.sciencemag.org/news/2019/05/bipartisan-bill-would-create-forum-discussing-how-counter-us-academic-espionage

★Psychology's reproducibility solution fails first test
https://science.sciencemag.org/content/364/6443/813.full

★Make reports of research misconduct public
https://www.nature.com/articles/d41586-019-01728-z

★Research integrity is much more than misconduct
https://www.nature.com/articles/d41586-019-01727-0

★がんゲノム医療、一部患者で保険適用へ 遺伝子を解析
https://www.asahi.com/articles/ASM5Y34Q6M5YUTFK005.html

中央社会保険医療協議会 総会(第415回) 議事次第
https://www.mhlw.go.jp/stf/shingi2/0000212500_00026.html

がん遺伝子パネル検査2種、5万6000点で保険適用-中医協了承、がんゲノム医療中核拠点病院で6月から
https://www.cbnews.jp/news/entry/20190529185805

クローズアップ:がんゲノム検査、保険適用 遺伝子解析し最適治療
https://mainichi.jp/articles/20190530/ddm/003/040/050000c

ゲノム医療幕開け がん関連遺伝子検査保険適用へ 差別には懸念
https://mainichi.jp/articles/20190529/k00/00m/040/244000c

がん、遺伝情報から薬選択 ゲノム医療に保険適用
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO45437980Z20C19A5EE8000/

 がんゲノム検査が保険適用に。がん治療も大きな変革期を迎えています。

★「薬が高ければ自分で作ればいい」とバイオハッカー集団が特許フリーなインスリンの開発を目指す「オープン・インスリン・プロジェクト」
https://gigazine.net/news/20190603-open-insulin-project/

 バイオハッカーたちの大胆な試み。

★National Academy of Sciences to allow expulsion of harassers
https://www.sciencemag.org/news/2019/06/national-academy-sciences-allow-expulsion-harassers

US science academy approves plan to oust sexual harassers
https://www.nature.com/articles/d41586-019-01758-7

★A wave of graduate programs drops the GRE application requirement
https://www.sciencemag.org/news/2019/05/wave-graduate-programs-drop-gre-application-requirement

★U.S. think tank shuts down prominent center that challenged climate science
https://www.sciencemag.org/news/2019/05/us-think-tank-shuts-down-prominent-center-challenged-climate-science

★White House sends mixed messages on 2020 research spending bills
https://www.sciencemag.org/news/2019/05/white-house-sends-mixed-messages-2020-research-spending-bills

★No paper, no PhD? India rethinks graduate student policy
https://www.nature.com/articles/d41586-019-01692-8

★Here’s why the outcomes of this week’s European elections are good news for science
https://www.sciencemag.org/news/2019/05/here-s-why-outcomes-week-s-european-elections-are-good-news-science

 先日行われたEU議会選挙。科学に与える影響は…。

★起業めざす若手研究者、支えます 会社に在籍中でもOK
https://www.asahi.com/articles/ASM5S55S6M5SPLBJ005.html

 副業解禁ともからみます。

★Many scientist parents travel for work. We need more support
https://www.sciencemag.org/careers/2019/05/many-scientist-parents-travel-work-we-need-more-support

Travel for two
https://science.sciencemag.org/content/364/6443/902

 子連れで学会。まだまだサポートが不十分です。