科学・政策と社会ニュースクリップ

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自民党政権公約

 自民党政権公約を発表しました。

 政権公約詳細版(PDF)から、科学技術政策に関連する部分を抜粋します。医療、環境、エネルギーは今回は省きます。

63 激動の時代に対応する、新たな教育改革(平成の学制大改革)
世界トップの教育立国とするため、幼児教育の無償化、小学校5・6年生への教科担当制の導入、飛び級制度、中学・高校において未達成科目の再チャレンジ、義務教育化を含めた高等学校の理念・あり方等、現行の6・3・3・4制の是非について検討し、子どもの成長に応じた柔軟な教育システムとするため、新時代に対応した「平成の学制大改革」を行います。あわせて、改正教育基本法に対応した関係法令の見直し・改正を行います。
小・中学校卒業時における学力評価や高校での達成度試験の実施を図り、確実に学力を身に付けさせます。あわせて、高校在学中も何度も挑戦できる達成度テスト(日本版バカロレア)の創設や、それを前提とした論文、面接、多様な経験重視で潜在力を評価する入試改革など、大学全入時代の大学入試のあり方そのものを検討します。
高校授業料無償化については、所得制限を設け、低所得者のための給付型奨学金の創設や公私間格差・自治体間格差の解消のための財源とするなど、真に公助が必要な方々のための制度になるように見直します。
大学の9月入学を促進し、高校卒業から入学までのギャップターム(半年間)などを活用した大学生の体験活動(国とふるさと、環境を守る仕事−例えば、海外NGO、農業・福祉体験、自衛隊消防団体験等)の必修化や、学生の体験活動の評価・単位化を行い、企業の採用プロセスに活用します。
一度社会に出てからも、学び直しができるよう、社会人が再び大学で学べるシステムを導入し、キャリアアップの機会保障と再チャレンジを促進します。

6 理数教育及び才能教育の大幅な充実・強化
次世代を担う理数好きな子どもを増やすため、体験活動や実験教室の充実、理工学部の学生や企業関係者等の外部人材の活用、さらには理数教育に携わる教員の指導力向上等、初等中等教育段階での理数教育を大幅に充実します。
将来、世界のリーダーとなるような明確な目的意識を持つ子どもの育成に向けて、優れた資質を伸ばし、育てる才能教育を強化します。「スーパーサイエンスハイスクール」を一層拡充するとともに、国際科学オリンピックに参加する児童生徒数の大幅な増加を促進し、国際的な交流機会を拡大します。

79 受験一辺倒でない多様な選択肢を持つ教育
人材育成に関する社会の要請に応えるため、普通高校以外に、最先端の職業教育を行う専門高校を整備する等、多様性・専門性のある選択ができるようにします。
高等教育における産学連携を強化するとともに、専門学校の果たしてきた実績に基づき、職業教育に特化した新しい高等教育機関を創設し、『学校教育法』上の地位についても検討します。現状の専修学校各種学校の存在意義を十分認識して、他の学校群との制度的格差の解消を目指し、財政的支援や教育内容の充実に向けての公的支援等を図ります。
大学等と産業界・地域社会とのより幅広い連携協力の下で、インターンシップを充実します。地域密着型のコミュニティカレッジ化により、技能習得と就労を支援します。

80 高等教育政策・大学政策の積極的な推進(大学ビックバン)
「大学力」は国力そのものであり、質・量両面の充実・強化が必要です。経営が悪化したり、質が著しく低下した大学の改善を促し、成果が認められない時は退場を促す仕組みの確立や、社会や学生ニーズの観点からの新規参入認可プロセスの明確化など、大学強化のための設置基準の見直しを行います。
世界トップレベルの大学は特区化し、諸規制を撤廃します。オープンラボ、研究サポートスタッフの設置を義務化します。世界トップレベル大学からの博士号を持つ若手研究者の大量スカウト、資金支援などを行います。
大学教育の質の保証徹底を義務化し、評価に基づく資金の重点配分(授業評価、教員の業績評価の厳格化等)を行います。
開かれた教育と研究体制をつくり、学長のリーダーシップを強化するため、学長と教授会の役割の明確化や、学長を支えるスタッフ(理事、副学長、財務等の専門スタッフ)の抜本的強化、学長裁量経費の充実などを行います。
私立大学の収入の約8割は学生納付金であり受益者負担が重く、国公私立大学の設置形態論・経費の受益者負担論の見直し等を行い、財政支出の仕組みを再構築します。地域共創(大学と地方・地域社会、産業の連携)運動を積極的に推進します。

81 国立大学法人運営費交付金等の安定的な確保
わが国の基礎科学の中核を担っているのは、多様な人材が集い、教育活動や研究活動を行っている大学ですが、近年、その安定的な教育研究活動を支える基盤的経費(国立大学法人運営費交付金及び施設整備費補助金、私学助成)が大幅な減少傾向にあります。
これにより、教員数の維持や施設・設備の管理・運用等で、多大な困難が生じていると指摘されていることから、わが国の基礎科学を強化する観点からも、これらの基盤的経費を安定的に確保します。
東日本大震災の被災地にある大学が、被災地復興の拠点として研究やプロジェクト実践を進められるよう、重点化して支援を行います。

82 大学院教育の抜本改革
大学院について、研究活動のみならず教育活動を一層重視し、文系・理系それぞれの設置目的に応じた多様性を確保して、体系的かつ集中的な人材育成の取り組みを強化します。社会の多様な場で活躍する人材を育成・確保するため、産業界や優れた人材育成の取り組みを行っている公的研究機関等との密接な連携・協力を推進し、社会人が学べる環境を整備するなど、大学院における教育活動を強化します。
世界をリードする大学院の形成を促進するとともに、世界水準にある大学院の層に厚みを持たせるため、世界最先端の優れた教育研究活動を行う大学や、特定分野で質の高い教育研究活動を行う大学等に対する重点的支援を強化します。教育研究活動の閉鎖性・排他性を排除するため、学問分野別に細分化されて設けられている学協会の改革を促進します。

83 博士課程学生に対する支援強化及び若手研究者の活躍促進
入学金や授業料免除の対象拡大、給付型奨学金の創設、ティーチング・アシスタント及びリサーチ・アシスタントの充実など博士課程学生への経済支援を抜本的に拡充し、学生全員が安心して学べる環境を整備します。
単なる任期付ではない若手研究者のポストを大幅に増やすとともに、キャリアパスを多様化するため、産業界の研究職や知的財産管理等の研究支援に携わる専門職等での活躍を促進します。公的研究機関等における、ポスドク等を対象とした専門人材育成の取り組みを支援し、活躍機会を拡大します。若手研究者が自立して研究に専念できるようにするための新たな研究資金制度として、当該研究者の名前を冠した「冠プロジェクト」を創設します。

84 「留学生30万人計画」と学生・研究者の国際交流の積極的推進
「留学生30万人計画」の実現を目指し(当面20万人目標)、国・地域・分野等に留意しつつ、優秀な留学生を戦略的に獲得します。東日本大震災の影響により、日本で学ぶ留学生や研究者が減少しないよう、日本の学校や研究機関の教育研究活動に関する情報発信の強化、生活支援など在学時の受け入れ環境づくり、卒業・修了後の就職支援など社会の受け入れの推進を図ります。
わが国の学生や若手の研究者が内向き指向にあると指摘されており、世界で活躍する優れた人材の育成を強化するため、高校生を含む学生の留学機会を拡大するとともに、若手をはじめとする研究者の海外研鑽の義務づけや機会の大幅拡大を推進します。
世界水準の教育研究活動を展開するためには、海外から優れた研究者を受け入れ、協働で研究活動に取り組むことが不可欠であり、奨学金の充実や受け入れ機関の体制整備、周辺の生活環境の整備等を推進し、優秀な留学生や海外からの研究者の受け入れを大幅に拡充します。

90 「科学技術・イノベーション推進」の国づくり
震災復興の原動力として「科学技術・イノベーション推進」の国づくりを目指すため、人材・予算・制度や研究体制の改革など、科学技術基盤を根本から徹底強化します。安保・外交、経済・財政、規制改革等の総合戦略として科学技術イノベーション政策を位置づけ、官邸のリーダーシップを発揮するための司令塔を整備します。特に、福島第一原子力事故対応の教訓を踏まえ、政治決定と科学的助言の機能強化を図ります。第4期科学技術基本計画で掲げている25兆円を上回る政府研究開発投資総額を目指し、必要な経費の確保を図ります。
事業仕分け」により停滞してしまった地域発のイノベーション創出を改めて強力に推進し、地域の元気を科学技術により取り戻します。
世界をリードする新たな知の資産を絶え間なく創出し続けていくためには、研究者の自発性や独創性に基づいて行われる研究の一層強力な推進が不可欠であり、これを支える科学研究費補助金をはじめとする競争的資金について、その多様性や連続性を確保しつつ、大幅に拡充します。同時に、全ての競争的資金について、間接経費30%を確保します。

91 イノベーションの実現に向けた制度改革
新たな産業や雇用を創出するため、企業だけでは実現できない革新的なイノベーションを産学連携で実現するとともに、イノベーションを妨げる各種規制を官邸=司令塔主導で抜本改革します。
研究開発税制やエンジェル税制の対象拡充等の税制改革や、ベンチャー支援の充実等の制度改革、特許等の知的財産の迅速な保護及び円滑な利活用を促進するための知的財産制度の改革、イノベーションの隘路となっている規制や社会制度等の改革を強力に推進します。国際標準の獲得を目指す各国の動きが一層活発化していることから、特に、アジア諸国等との連携・協力の促進を念頭に置いて、官民協働による戦略的な国際標準化活動を抜本的に強化します。
わが国が優れた先端技術を持つ基幹インフラについて、建設から運用、人材養成への寄与までを一体システムとしてとらえ、官民協働による海外輸出・展開活動を大幅に強化します。

92 世界に冠たる研究開発拠点の形成
イノベーションを生み出していくためには、大学や公的研究機関、産業界等が集い、協働で研究開発に取り組む「場」の構築が必要です。特に、わが国の強みを有する分野において、地域資源等も柔軟に活用しつつ、オープン・イノベーションに対応した「競争」と「協調」による世界最先端の研究開発拠点を形成します。
わが国が世界の頭脳の獲得における中核的な地位を占めていくためには、国内のみならず海外の優れた研究者を惹きつける国際的な研究ネットワークの拠点形成が不可欠であり、「世界トップレベル研究拠点(WPI)」の大幅な拡充や、素粒子分野の最先端大型実験施設「国際リニアコライダー」のわが国への誘致を目指すなど、世界水準をしのぐ優れた研究活動を行う大学や公的研究機関などに対する支援を抜本的に強化します。

93 科学技術の国際活動の強化
わが国の科学技術水準の一層の向上を図り、自然災害や感染症等、地球規模で発生する深刻な課題の解決に積極的に貢献するためには、諸外国との連携・協力を一層強化することが不可欠です。先端分野での科学技術協力やODAを活用した科学技術協力等、科学技術外交を大幅に強化するとともに、新興国の科学技術力の急伸等に時期を逸せず対応し、国家存立のために必要な科学技術を強力に推進します。また、優れた教育活動や研究活動を行う国内の大学と海外の大学との連携・協力を進め、外交面からも、これらの教育研究活動の積極的な活用を促進します。
さらに、海外動向の収集・分析体制を確立するとともに、安全保障に関わる技術等の管理を強化します。一方で、国際的な核不拡散体制の強化に向けて、わが国の技術を積極的に活用し、これに貢献していきます。

94 戦略的宇宙政策の推進
国際的なプレゼンスの確保と日本の国益のために、必要な予算を確保し、宇宙科学の推進と不断の研究開発に加え、国民生活の質の向上のための利用の促進、安全保障対応、産業振興等を加速します。
宇宙の開発利用体制は、宇宙基本法の理念と、宇宙基本計画に明記された5年間2兆5千億円の事業試算に基づき、ロケットなどの輸送系及び衛星システムの開発・整備・運用など宇宙の開発利用を強力に推進するための重要分野・重点プロジェクトへの資源配分を行う等、戦略的な宇宙政策を実施していきます。そのために、予算編成に権限を有する内閣府宇宙政策委員会及び、執行機関である独立行政法人宇宙航空研究開発機構JAXA)の理事長及び理事に国家観をもった人員を配置させ、内閣総理大臣の重要な政策の一つとして、宇宙科学の振興、宇宙産業基盤の振興、わが国の安全保障、シーレーン確保、戦略的ODA、資源外交、海洋政策等と宇宙政策等と密接に連携させます。

128 日本の外交、防衛の向上に直結する宇宙システムの構築
宇宙覇権各国の動向に注視しつつ、日本の国益に直結するグローバル・コモンズにおける宇宙空間を国家領域として捉え活用します。具体的には、わが国のミサイル防衛に必要な高分解能かつ高頻度の偵察衛星と早期警戒衛星に必要な開発を加速し、自衛隊が利用する通信、気象衛星、偵察等、様々な用途の衛星システムを開発・構築します。これらの運用を支える輸送系、新射場の新設・整備を含む地上系、技術基盤の維持・向上を図るため、デュアルユースの観点からの宇宙システムの開発を推進し、その保全策を立案します。また、準天頂衛星「きずな」を7基打ち上げ、アジア・オセアニア地域の情勢安定の観点からも、測位政策を推進させ日本の国際的プレゼンスを高めていきます。

243 中小企業の活性化、地域経済の発展につながる人材の育成・確保
地域経済の発展には、中小企業の発展は不可欠です。一方、中小企業の発展には、新しい製品や商品を開発し、さらに、その製品・商品を国内外に売り込んでいく環境を整備しなければなりません。特に、これらの研究開発や「セールス」を行う人材が重要であり、その育成・確保が企業経営の運命を担っていると言っても過言でありません。
我々は、こうした人材を育成する観点から、地域にある大学等の教育研究機関と中小企業との連携強化や中小企業が独自に人材の育成・確保を行える「人材育成研究会」(仮称)を設置し、人材育成の専門家が行政や教育機関と連携が取れる体制を整備します。

244 地方大学等と地域産業とのマッチング強化
地方大学や地域の工業高校等で学んだ卒業生を地元発のオリジナル人材として地域でその能力を十二分に発揮できるよう、商工会議所・商工会等の組織機能強化に向けた抜本的な対策を講じ、「地域のヒトは地域で育てる」体制を早急に整備します。これにより、学生・企業・地域の三者が共にWINWINの関係となれるよう、産学官民が連携して中小企業向け新卒者支援制度の創設等の支援を行い、高度な専門人材と地域産業とのマッチングを強化します。同時に、地元からの投資を促進させることで地方の研究機関と地元企業による技術革新や研究開発等の支援を強化し、地域独自で培った技術やノウハウを地域に還元できるサイクル作りを進めます。

257 新たな沖縄振興2法に基づく“強く自立した沖縄”の実現
『沖縄振興特別措置法』及び『沖縄県における駐留軍用地の返還に伴う特別措置に関する法律』の沖縄振興2法の改正法案が、一括交付金の拡充・使途弾力化・一部基金化、基地地主の土地譲渡所得の5,000万円控除等、わが党の主張を十分に反映するかたちで修正・成立しました。
今後、2法に盛り込まれた、国際物流拠点産業集積策や観光産業・文化等の振興策等を十分に活用して、沖縄がわが国21世紀の成長モデルとなるように“強く自立した沖縄”の実現に取り組みます。
また、当初の“ベスト・イン・ザ・ワールド”との理念に沿って開学した、沖縄科学技術大学院大学を国際水準の研究・教育拠点にします。さらに、那覇国際空港の第二滑走路建設の重要性に鑑み、早期実現を目指します。