科学・政策と社会ニュースクリップ

科学政策や科学コミュニケーション等の情報をクリップしていきます。

震災後に何をすべきか〜ワールドカフェで考えた

5月6日、阪大中之島センターにてミーティングを開催しました。

震災後に科学コミュニティ、科学コミュニケーションは何をするか
http://kokucheese.com/event/index/10875/

 震災以来、研究者や科学コミュニケーションに対する厳しい批判が多方面から起こっています。事業仕分けのときにあれほど活発に動いていたのに、なんで黙っているのか、という批判もあります。

●「井の中」の科学立国 知の結集、垣根越えて(新しい日本へ)−危機からの再出発(2)
http://www.nikkei.com/news/article/g=96958A9C93819595E2E0E2E29C8DE2E0E2E7E0E2E3E3EBE2E79FE2E2

●日本の科学技術、真価はどこに(新しい日本へ)
http://www.nikkei.com/news/article/g=96958A9C93819595E2E0E2E2878DE2E0E2E7E0E2E3E3E2E2E2E2E2E2

 また、先週公表された

34 学会(44 万会員)会長声明 日本は科学の歩みを止めない
 〜学会は学生・若手と共に希望ある日本の未来を築く〜
http://www.chemistry.or.jp/news/34seimei-201104.pdf

は厳しい批判にさらされました。

 Togetter - 「一回「歩みを止め」て考え直そうよ、34学会(44万会員)会長声明」
http://www.facebook.com/l.php?u=http%3A%2F%2Ftogetter.com%2Fli%2F130053&h=9fa5b

 こうした批判は私達自身も受け止めなければなりません。

 震災直後は医療でいう超急性期、人命を優先させるべきであり、あれこれと議論するべきではないと思っていました。しかし、すでに震災から2ヶ月。まだ傷のいえない被災地への支援とともに、これから中長期的に何をすべきかを議論してもよい時期にさしかかってきたのではないかと思い始めています。

 そこで、ミーティングを企画しました。

 議論を優先するために、講演などはなくし、「ワールドカフェ」の形式で行いました。15名の参加者の方をお迎えして、密な議論ができたと思います。参加された皆様には心より御礼申し上げます。

 参加者それぞれが思うことを率直に述べることができました。多様な意見が出たので、あえてすべては述べませんが、たとえば私が聞いた範囲でいくつかピックアップしたいと思います。

 研究者は自分の専門分野ドンピシャじゃないと発言できない、専門からすこし外れたことに意見は言いにくいし、専門家であるがゆえ発言に慎重にならざるを得ないという意見がありました。

 それに対し、研究者でない参加者の方から、出来ることを専門にこだわり過ぎている、出る杭になることを恐すぎているという意見が出ました。

 この話を聞いて、たしかに専門に沿った情報発信だけができることではないし、もっと活動の範囲を広げてもいいのかなと思いました。

 極端なことを言えば、研究者が普通にボランティア活動してもいいわけですし(私の知人はヘドロ掃除に行ってました)、そこまでいかなくても、被災地の高校生の進学支援とかあるわけで、柔軟に考えたほうがいいなあと思っています。「プロボノ」という形で、専門性を活かすという方法もあります。

 また、各種提言や様々な活動が独りよがりになっているので、現地のニーズを掘り起こすべきではないか、それには、科学コミュニティを出て多彩な職に就いた人達が重要な役割を果たすのではないか、科学コミュニティはそういう人達を今まで「負け組」とみなして大切にしてこなかったので、これからは社会のニーズを把握するネットワークとして活用すべきではないか、という意見にはなるほどと思いました。

 日本学術会議を中心に出されている提言は、多くは言いっぱなしになっている部分が多いので、提言を実現させるためには、科学議員を擁立するといったことも含め、政治力を付けていくことも必要ではないかという声も出ました。

 また、とくに原発事故に関して、いろいろな立場の専門家がいろいろなことを言っている状況を、研究者の立ち位置をマッピングすることで整理するべきというアイディアが飛び出したりもしました。

 何のために行動するかということをはっきりしないと行動が場当たり的になってしまう、現在の科学コミュニティや政府の対応はそうではないか、という意見もありました。

 こうしたやりとりを繰り返すうちに、私は草の根の自発的な組織をきちんとつくらなければならないという思いを強くしています。

 こうした組織が、政府が動くより先に、経済や国家の論理で捉えきれないニーズを踏まえ行動していくことが、これからは不可欠になっていくと思います。

 現在日本学術会議の若手アカデミーが、学術会議の「内側」で頑張っていますが、それを刺激するためにも、「外側」からオルタナティブな分野横断的なグループが活発に活動することも必要だなと思っています。出る杭になって叩かれても、生きていける場所、「万年助手」がなくなっても自分の信念を貫ける場所として、社会の中で研究するNPOがこれから重要な役割を果たしていくようにも思っています。

 ミーティングの最後に、参加者一人ひとりに明日から何をするかを一言で書いてもらいました。

 まだ第一歩を踏み出したに過ぎないミーティングでしたが、何をすべきか見えてきたように思います。

 科学技術に対する社会の不信が高まる中、また、まだまだ被災地で苦しんでいらっしゃる方々がいる中で、やるべき事、課題は山積みです。これをきっかけに、さらにアグレッシブに行動してきいたいと、決意を新たにしました。