科学・政策と社会ニュースクリップ

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参院選、科学技術政策に関する公開質問状

参院選に際し、以下のような公開質問状を作成し、現在各党に発送中です。

回答があり次第、このページにて掲載いたします。


拝啓

突然のご連絡大変失礼いたします。

理工系研究者を中心としたグループ、「サイエンス・サポート・アソシエーション」代表の榎木英介と申します。

私たちは日本の科学・技術政策の動向に関心があり、講演会、討論会、シンポジウムの開催、メールマガジンの発行(読者数2800人)、政府の会議等での発言などを行っています。

また選挙に際しては、科学・技術政策に関してマニフェスト政権公約の比較)や公開質問状の送付を行っており、昨年の総選挙の際には、民主党日本共産党国民新党の3党からご回答をいただいています。

今回、参院選にあたり、貴党が科学・技術の発展、振興に対し、どのような施策をお考えなのかを知りたいと考え、公開質問状を作成いたしました。

ご多忙の中大変恐縮ではありますが、ご回答のほど何卒よろしくお願い申し上げます。いただきましたご回答は、ホームページやメールマガジン等にて公開し、有権者の投票の参考として供させていただきたいと思います。

ご回答ですが、可能ならばメールoffice@sci-support.orgまでいただけますと幸いに存じます。

敬具

平成22年6月26日
任意団体サイエンス・サポート・アソシエーション
代表 榎木英介

1) 科学・技術および大学関係予算の方針について

a. 財政が厳しいため、これらの予算も公共事業や福祉等、その他国家予算と同様に減額の対象であるべきだ
b. これらの予算は未来をつくるための予算であるため、ほかの予算とは異なる扱いをし、増額すべきだ
c. どちらともいえない。
d. その他(具体的に  )

1-2) 具体的な方針や政策、適切と思われる予算規模についてお聞かせください(例政府投資GDP比1%)

2) 科学技術の予算の内訳、特に基礎研究と応用研究の比率について

a. 近年の既定路線通り、産業応用や雇用創出の可能性の高い課題を研究する競争的資金を増額していく
b. 競争的資金を少し抑えても、産業応用にすぐにはつながらない基礎研究への配分を増やしていく
c. どちらともいえない
d. その他(具体的に  )

2-2)その他、科学・技術を用いた雇用創出に対する施策など、具体的な方針や政策があればお聞かせください。

3)競争的資金の方向性を国家が決めるという「基本計画」の路線を踏襲するとした場合、具体的にどのような分野を優先的に支援すべきとお考えかお聞かせください。(複数回答可)

a. 生命科学(ライフサイエンス) b. IT (ICT) c. 環境 d. ナノテクノロジー eエネルギー f. 宇宙 g.海洋 h. 食糧 i.優先分野配分をやめる j. その他(具体的に:      )

3-2)その他関連して、具体的な方針や政策があればお聞かせください。

4)科学・技術研究への寄付の税控除について、貴党のお考えをお聞かせください。

a. 導入を検討する
b. 導入の予定はない
c. 未定

4-2)その他関連して、具体的な方針や政策があればお聞かせください。

5)大学政策について、貴党の方針をお聞かせください。

5-1)国立大学法人への運営費交付金は毎年減額されています。これを増やしますか?減らしますか?その規模はどれくらいですか?
a. 削減方針は変わらない(規模: )
b. 増額する(規模: )
c. 現状維持
d. その他(具体的に  )

5-2)大学予算の配分方針について貴党の方針お聞かせください。
a. 旧帝大を中心とした一部の大学に集中して予算を配分
b. 特定大学の集中を緩和し、地方大学等の予算を増やす
c. その他(具体的に )

5-3)国立大学の法人化について貴党の方針をお聞かせください。
a. 現状のまま、国立大学法人を維持する
b. 国立大学法人を民営化する
c. 国立大学法人を見直す
d. その他(具体的に )

5-4)世界大学ランキングに関して貴党の方針をお聞かせください。
a. 日本の大学が上位になることを目指す
b. 気にしない、考慮しない
c. その他(具体的に )

5-5)私立大学振興に対する施策をお持ちですか?お持ちの場合は具体的にお書きください。
a. 持っている(具体的に )
b. 持っていない

5-6)その他関連して、具体的な方針や政策があればお聞かせください。

6)学術、科学・技術関連人材の育成について

6-1)青少年の科学・技術に対する興味を高めるための施策をお持ちですか?お持ちの場合は具体的にお書きください。
a. 持っている(具体的に )
b. 持っていない

6-2)若手研究者の育成、能力発揮に対する施策をお持ちですか?お持ちの場合は具体的にお書きください。
a. 持っている(具体的に )
b. 持っていない

6-3)女性研究者の育成、能力発揮に対する施策をお持ちですか?お持ちの場合は具体的にお書きください。
a. 持っている(具体的に )
b. 持っていない

6-4)博士号取得者やポストドクトラルフェロー(ポストドクター)等研究関連の人材の能力を社会の様々な場で活用するために、具体的な施策をお持ちですか?お持ちの場合は具体的にお書きください。
a. 持っている(具体的に )
b. 持っていない

6-5)大学院博士課程の大学院生の数についてお伺いします。
a. 増やす(理由 )
b. 減らす(理由 )
c. 変えない(理由 )
d. その他(具体的に  )

7)科学技術コミュニケーションについて、第4期科学技術基本計画で議論が進んでいますが、研究者と社会一般(市民)の関係について、どのようにあるべきだとお考えですか。

a. 研究者は自分の研究について市民の意見を直に聞き、場合によってはそれらを研究に反映させる義務がある
b. 研究者は市民に対して自分の研究を説明する義務はあるが、研究の方向性は市民の意見に左右されるべきではない。
c. 研究者の職務は研究を行うことであり、市民への説明は別途プロ(科学コミュニケーターや科学ジャーナリスト)が行うべきである。
d. 科学技術は独自の領域であり、市民一般に対する説明の機会は必須のものではない。
e. その他(具体的に  )

7-2)その他関連して、具体的な方針や政策があればお聞かせください。
8)科学コミュニケーターの養成がいくつかの大学や博物館などで進められていますが、これらの今後についてお聞かせください(複数回答可)

a. 今後も科学コミュニケーションのスキルをもった人材の養成を継続して進めるか規模を拡大する
b. 科学コミュニケーターはあまり機能していないので、これら養成予算は削減を検討する
c. 各研究機関などで科学コミュニケーターの雇用を進める
c. マスメディアや民間企業などに科学コミュニケーターの雇用を奨励する
d. 現場の研究者が市民と積極的に意見交換する機会をつくることを制度的に奨励する
e. その他(具体的に  )

8-2)その他関連して、具体的な方針や政策があればお聞かせください。

9)原子力遺伝子組み換え作物の利用、受精卵からのES細胞研究などについて、そもそも研究を進めるべきか、また国がそれをどの程度支援すべきかについて、自然科学の専門家以外に誰の意見を聞くべきかお聞かせください(複数回答可)。

a. 科学者のみの意見で決めるべきである(この項目を選んだ場合は他を選択しないでください)
b. 倫理や法律、その他社会科学など自然科学以外の専門家の意見
b. 地方自治体など、国以外の行政の意見
b. 幅広い市民の意見(世論調査など)
c. 熟議による市民の意見(コンセンサス会議、デリベレイティヴ・ポルなど)
d. 業界団体、NGOや住民グループなど(政府に批判的なものも含めて)ステークホルダーの意見
e. その他(具体的に: )

9-2)その他関連して、具体的な方針や政策があればお聞かせください。

10)長期的視野にたった科学・技術政策について
貴党は科学・技術政策(の構想・検討)において、参議院独自の役割をお考えでしょうか?

a. 考えている(具体的に )
b. 考えていない(衆議院と同じ)
c. その他(具体的に )

【質問の背景】
1) 科学・技術および大学関係予算の方針について
ノーベル賞の受賞、世界をリードするiPS細胞研究や小惑星探査機「はやぶさ」の成功など、科学技術が明るいニュースになり、世間を勇気づけているという議論が見られます。

一方で、経済や国民の生活が厳しい折りに、福祉や地方経済の支援につながる分野に少しでも多く回すべきだという議論も見られます。先の行政刷新会議事業仕分けのおりにも、仕分け人の中から「産業にならず、ほっておいても他の国がやるような研究を日本がやる必要はない」という意見も見られたようです。

この点について貴党のお考えをお聞かせください。

なお、現在の科学・技術予算(科学技術関係経費)は3兆5723億円。対GDP比0.68%(2007年)で、これはアメリカ1.0%、イギリス0.76%、フランス0.75%、ドイツ(連邦・州政府)0.77%(以上2007年、ドイツのみ2006年)と比較すると決して多いとはいえません。

2) 科学技術の予算の内訳、特に基礎研究と応用研究の比率について
80年代以降、科学技術の発展と各国の経済は不可分のものと見なされるようになってきました。そのため、国家が決めた基本方針の下、国際的競争力を高められるような分野への集中投資を行い、また研究者もその成果が厳しく求められるトップダウンの「競争的資金」が大幅に増額されました。

一方で、個々の大学に配分される運営費交付金や科学者の興味関心に基づいたボトムアップで、直接産業応用に結びつかない基礎研究への資金配分は押さえられる傾向にありましたが、これは科学技術の可能性そのものを枯らしてしまうとして近年各国で見直しの機運も見られます。

この点について貴党のお考えをお聞かせください。

3)どのような分野を優先的に支援すべきか
これまでの基本計画では、生命科学、IT、環境、ナノ・材料(いわゆる重点四分野)といった形で重点分野が指定されていました。現在策定作業中の第四期の科学技術基本計画ではこれを「グリーン・イノベーションとライフ・イノベーション」という表現に変えて、国民生活へのインパクトを重視した表現に変わっています。このこと事態の是非はともかく、その結果、どのような研究領域が重視されているか、現場の研究者から見えづらくなっているという問題は指摘できるように思われます。この点について貴党のご意見をお聞かせください。

4)科学・技術研究への寄付の税控除について
科学・技術研究は国の予算が中心になって行われていますが、科学・技術研究への寄付が税控除になれば、新たな研究資金源になると同時に、寄付者への説明責任を果たす意味合いから、研究のアウトリーチ活動も活発になると期待されています。これに関して貴党のお考えをお聞かせください。

5)大学政策について
現在大学は大きな岐路に立たされています。少子化に伴う学生数の減少、国立大学法人化に伴う業務量増加が、研究のアクティビティを低下させていると言う声があります。さらに、日本の高等教育に対する公財政支出は対GDP比で0.5%であり、OECD加盟国平均の1.0%の半分ありませんが、国立大学法人に対する運営費交付金は毎年1%減額されており、大学の現場にさまざまな影響を及ぼしているといった問題が指摘されています。

一方、大学は世界的な競争にさらされており、国際大学ランキングでは、東大、京大が20位台など、アジアでは依然としてトップレベルですが、世界から水をあけられているという指摘もあります。一方で、大学ランキングが理工系を重視しすぎており、正確な評価ではないという声も聞かれます。

また、学生数の7割が私立大学に通っているなど、日本の高等教育における私立大学の役割は大きなものがありますが、予算などで国公立大学(法人)と格差があり、少子化にともなう厳しい経営難にさらされており、大学の倒産も取りざた割れている状況です。

こうした状況の中、貴党は大学に対し、どのような施策を行うのかをお聞かせください。

6)学術、科学・技術関連人材の育成について
資源のない日本にとって、学術、科学・技術関連の人材の育成は大変重要であると考えます。

大学院生博士課程の学生は、現在7万3千人と、平成2年の2万8千人から20年あまりで倍以上に増えました。これでも諸外国に比較して、博士号取得者の人口比は低い状態です。

ところが、「高学歴ワーキングプア」や「余剰博士」という言葉が登場するなど、博士課程修了者の活躍の場がないことが大きな問題となっています。これに加え、1万8千人を超える任期付きのポストドクトラルフェロー(ポスドク)が、活躍の場を見つけられず、ポスドクが高齢化しつつあります。また、人文、社会科学系を中心に、非常勤講師として、低賃金の不安定な職についている研究者が数万人いると言われています。

また、諸外国では大学院博士課程の学生には返還の不要な給与制の奨学金が支給される場合が多いですが、日本では返還の必要な奨学金が主体であり、大学院への進学が経済的に不利益をもたらすことが指摘されています。

こうした状況の現在理工系を中心に大学院博士課程進学者が減少しています。また成績優秀者が医学部に流れるなど、将来学術、科学・技術人材が不足するのではないかと危惧されています。

また、日本の女性研究者の研究者全体に占める割合は13%で、OECD加盟国の中で最低と言われています。女性研究者の能力活用も大きな課題だと考えます。

以上のような現状に対し、貴党がどのような施策をお持ちなのか伺います。

7)科学技術コミュニケーションについて、第四期基本計画で議論が進んでいますが、研究者と社会一般(市民)の関係について
第三期科学技術基本計画では、「アウトリーチ」を「研究者等と国民が互いに対話しながら、国民のニーズを研究者等が共有するための双方向コミュニケーション活動」と規定して、研究者に義務づけています。これは、第四期においても踏襲されるか、研究領域から国民生活に結びついた「イノベーション」に重点目標を転換したことによりさらに重要性を増すように思われます。この点について貴党のお考えをお聞かせ下さい。

8)科学コミュニケーターの養成
科学コミュニケーターは自分自身が科学技術の専門的な問題について市民に説明したり、あるいは市民と専門家の対話をデザインしたりする仕事を行う専門家のことです。これらの専門家は日本ではまだ一般的ではありませんが、徐々に増加の傾向にあります。

現在、東京大学インタープリター養成プログラムや北海道大学科学技術コミュニケーション教育研究部などで、専門家と一般社会を結ぶ「科学コミュニケーター」の養成が進んでいます。これらの必要性については多くの専門家が賛成しているところですが、残念ながら修了者の就職先は限られており、また数少ない就職先(メディアや各研究機関の広報)でも、必ずしも培った記述が生かせるとはいえない状況にあることが少なくありません。

この点について貴党のご意見をお聞かせください。


9)自然科学の専門家以外に誰の意見を聞くべきか
国際的な合意として科学者には研究の自由があり、なにを研究すべきかは個々の研究者が自分の好奇心と良心に従って自由に決めるべきだ、と考えられてきました。研究開発の規模が大きくなり、また社会的影響も甚大になってくると、それは十分ではないという議論も出てきました。

しかし、例えば社会科学者の意見を聞くことで、十分に研究の本質を理解しないまま規制を強化してしまうことや、「予防原則」などの重視により研究開発を遅らせてしまうという批判も出ています。

また、「市民」の意見を聞くといった場合「誰が市民なのか」という問題も議論される必要があります。例えば、すでに選挙によって選ばれた議員による国会が市民すべてを代表しているのだから、それ以上特別な「市民」の意見を聞くことは逆に問題であるという意見もあります。また逆に、国会議員や行政が細分化された「市民」のすべての事情に通じるのは不可能なので、生活や仕事の中で問題に直面しているステイクホルダーの意見を重視すべきであるという意見もあります。

この点について貴党のご意見をお聞かせください。

10)長期的視野にたった科学・技術政策について
参議院衆議院と異なり、長期の任期を約束されています。長期的視野に立った議論が行うことができると考えられ、それは、科学・技術を議論する上では利点になりうると考えます。