科学・政策と社会ニュースクリップ

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科学者維新塾にて講演〜飛び出せ行動する博士!

 2011年2月19日(土)、大阪大学中之島センターで開催された科学者維新塾にてお話する機会を得たので、報告したい。

 この科学者維新塾、大阪大学の河田聡教授の発案で始まって3年目を迎える。

 この塾の目的は、緒方洪庵の「適塾」のように、「理系博士や博士を目指す人たちが、広く世に貢献する人材へと醸成すべく」設立された。「「蘭学」を「科学」へ置き換え、世界に貢献する人材を養成」することを目的にしているという。

 以前からこの塾のことは噂で聞いていた。私達が行なってきた活動のミッションとも共通する部分が多く、何らかの形で関わることができたらと思っていたところ、幸運にもお話させていただく機会を得たのだ。

 「これからの「理系博士の使い方」の話をしよう。」と、ちょっとどこかで聞いたようなタイトルでお話させていただいた。集まったのは20人くらい。理工系大学院生を中心に、ポスドクの方や企業に勤めている方など。

 著書

博士漂流時代  「余った博士」はどうなるか? (DISCOVERサイエンス)

博士漂流時代 「余った博士」はどうなるか? (DISCOVERサイエンス)

 をベースに、私の歩んできた道のり(失敗談たくさん)なども交えて、私の考える「博士の能力活用法」を述べさせていただいた。

 今回は、理工系の院生、ポスドクの方々の前で話すということで、著書の趣旨「社会で博士を使いこなそう」をひっくり返し、「博士を社会で活かす」にはどうすればよいか、ということを強調した。

 しのぎを削る最先端科学の外側に、博士の能力を活かすことのできる「中間的な科学」の領域が広がっているのだ。

 特に言いたかったことは、自分の能力を活かすためにどんどん行動しよう、ということだ。

 博士の能力を活かすというと、どうしても職業=食っていくということを念頭に考えてしまう。

 たしかに食っていくことは重要だが、やりたい事=職業となる人など今の時代少ないわけで、偶然やることになった職で能力を活かすことだって重要だ。

 それだけでなく、何も職業でなくても、博士の能力を活かす方法はある。

 最近はやりのプロボノだっていい。ブログを書く、Twitterでつぶやく、新聞に投書する、寄付をする、イベントに参加する、ボランティアをする、NPOのスタッフになる、NPOを立ち上げる、会社を作る、それで食っていく…

 できることには段階があるのだ。だから、博士になるのを待ってなくてもいい。今すぐできることをやればいい。

 専業でなくても、逆に専業でないほうが、複数のキャリアを同時並行で生きることができて、楽しいかもしれない。これは、と思う時が来たときに、どれかに絞ればいいわけだ。

 こういう風に考えたら、たとえ食っていくためだけの職業につかざるを得なくなっても、怖がる必要はない。もちろん、食っていくって大変なことだし、今の時代、それだけで手一杯になるだろうが、ほんの少しでもやりたいことをやれていれば、自信を持って生きていける…

 こんな話をしたのだが、塾生のみなさんに届いただろうか。

 懇親会も含め、熱いディスカッションをすることができた。そんな塾生に接することで、博士の未来に希望を感じることができた。

 この塾に集まった人達は、お金を払って、貴重な時間を割いて参加している。すでに行動しているわけだ。そんな塾生が行動をおこせば、何か新しいものが生まれ、そして世の中が変わるかもしれない…そんなことを感じることができた。

 私自身、偉そうなことは何も言えなくて、まだ何も成し遂げていないわけだ。塾生のみなさんとはまったく同じ場所に立っている。

 塾生のみなさんとともに、行動していこう…私も大いに刺激を受け、気持ちを新たにすることができた。

 科学者維新塾は、大阪だけでなく東京でも始まっている。東京でも熱い議論が展開されたという。

 私達が行って来た「博士ネットワークミーティング」でも感じたが、自分の専門領域の枠を超えて行動しようとする人達が、少しずつ増えているように感じる。

 著書に書いたように、博士を取り巻く状況は厳しいけれど、自分の人生の主役は自分だ、という気持ちで、小さなことからでもいいから、行動する…

 そんな博士はきっと増える。そんなことを感じた一日だった。