科学・政策と社会ニュースクリップ

科学政策や科学コミュニケーション等の情報をクリップしていきます。

文科省に意見を送る

 3月31日締め切りで、文科省が科学技術政策に対して意見を募集していたので、締め切り間際に急いで書いて送った。以下。

意見項目6

その他、科学技術・学術審議会基本計画特別委員会がとりまとめた提言(我が国の中長期を展望した科学技術の総合戦略に向けて−ポスト第3期科学技術基本計画における重要政策−中間報告)や科学技術政策に関することなど、ご意見・ご感想がありましたらお寄せください。

 昨年12月に公表された「我が国の中長期を展望した科学技術の総合戦略に向けて(中間報告)」では、「社会・国民と科学技術イノベーションとの連携強化」が重要項目として取り上げられており、政策の企画立案・推進への国民参画の促進が推進項目として取り上げられています。この中で、「NPO法人等による地域社会での科学技術活動や、社会的課題に関する調査・分析に係る取組等を支援する」と明記されています。

 また、「科学技術コミュニケーション活動の推進」も項目として取り上げられ、ここでも「国は、科学技術に親しみ、普及するための様々な活動を行うNPO法人や大学等、公的研究機関、さらには博物館・科学館等における科学技術コミュニケーションに係るボランティア活動を支援する」と述べられています

 私は、科学技術の振興を活動分野にするNPO法人に所属しており、このようにNPO法人に関して国が期待を持っていることを高く評価したいと思います。このような社会、国からの期待に応えるべく、より一層活動に励みたいと思います。

 国にお願したいのは、このような自発的なNPO法人等の活動を促し、背中を押すような政策の実施です。

 NPOにとって重要なのは、活動を担う人です。科学技術の研究現場を知っている人材には、ぜひNPOで活躍してもらいたいと思っています。しかし、NPO活動に参加する人は多くありません。

 そこで考えるのが、博士号を取得した人たちです。ポスドク問題に象徴されるように、就職難に苦しむ博士号取得者が数多くいます。もし彼らにNPO法人等で活躍してもらえたら、科学技術コミュニケーションや政策立案への国民参加にとって非常に大きな力になるのではないかと思います。

 そのために、博士号取得者がNPOで活躍するインセンティブを与えることを提案いたします。たとえば、博士号取得者に「科学大使」という称号を与え、全国の科学館、大学、図書館等の利用優先権を与えるといったことです。

 たとえ副業や余暇を利用する活動であっても、NPOでの活動をしやすい環境があれば、残念ながら科学とはかけ離れた職業に就かざるを得なかったとしても、科学とつながっていることができます。

 博士号取得者がアカデミックポストに固執する傾向があるといわれるのも、研究をやめてしまうことイコール科学を捨てることになるからではないかと思っています。スポーツや芸術では、いろいろな段階のアマチュアがおり、たとえ第一線から引退したとしても、いろいろな形で、もとの職業とつながることができます。科学でも、NPOのような形で科学とつながることができれば、科学と社会を行き来する人が増えるのではないでしょうか。

 また、現役の研究者として科学技術コミュニケーション等の活動に関わってもよいと思いますが、現役研究者の多くが、たとえ関心があっても、専従規定がありNPOに関われないといわれることも多いです。その点も改善をお願いしたいと思います。

 もちろん、このような活動をするのは博士号取得者に限る必要はなく、どんな人であっても、意思があれば科学技術に関するNPO活動を行えるような環境が重要です。そのためには、科学技術に関する情報を容易に入手できる環境の整備や、活動場所の提供が重要です。

 情報に関しては、中間報告でも述べられていたように、機関リポジトリやオープンアクセス等の推進が必要です。普通の市民でも、地域や自らの抱える問題解決のために科学技術の知見が必要になることがあるでしょう。このようなときに、学術論文や専門書を容易に手に入れることができれば、市民にとって大きな力になります。

 場所に関しては、地域の大学、図書館、科学館などが候補に挙げられます。図書館は市民にとって知的な活動の拠点として重要な役割を果たし得ると思います。

 さらに言えば、市民自らが実験を含めた研究を行えるような場があれば、市民の科学技術活動に大きな広がりが出ると思います。たとえば週末貸し研究室のようなものがあれば、関心を持った市民が研究を行うといったことが考えられます。市民と大学の研究者との共同研究といった形態もあり得ます。研究は今までは大学や研究機関でなければできないというイメージがありましたが、もし市民として研究を行うことができれば、大学や研究機関に固執する必要もなくなります。大学や研究機関と社会との人材の行き来も増え、これらの関係を見直す機会にもなるのではないかと思います。

 上記のような政策により、科学技術に関わる多彩なNPO法人等が出てくれば、「科学技術への興味関心が高く、理数好きな子どもの裾野の拡大」「研究成果等の発信・流通促進」にも寄与しますし、国際的な活動を行う団体が出現すれば、科学技術外交にも寄与する可能性があります。国や研究機関がとらえきれない科学技術のニーズを発掘する役割を果たすことになり、我が国の科学技術の多様性を高めることになるでしょう。

上記の点、何卒ご考慮いただけますよう、宜しくお願いいたします。