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中教審、大学院に関する答申を出す

追記
答申が公開されました。

グローバル化社会の大学院教育〜世界の多様な分野で大学院修了者が活躍するために〜答申

(追記ここまで)

“徒弟制度”や修士論文の廃止求める 大学院博士課程で中教審答申
http://sankei.jp.msn.com/life/news/110131/edc11013122040003-n1.htm

中教審が上記の答申をまとめ、twitter上も含めて大きな話題となっている。

1月31日産経ニュース報道「大学院教育改革策に関する中央教育審議会答申」に対する反応
中教審の提言に関して

産経新聞ウェブの報道では

院生が1人の教員に師事して研究を手伝いながら指導を受ける“徒弟制度”や、特定のテーマに絞り込んだ修士論文の廃止などを盛り込む

5年制の博士課程の2年修了時点で、特定の研究テーマについてまとめる修士論文を原則的に廃止。代わりに幅広い分野についてテストやリポート審査を行う「クォリファイング・イグザム」の導入を求めている。

との情報があり、様々な憶測が飛び交っているようだ。

ただ、やや情報が錯綜している。31日に発表された答申は

であり、これは大学院については触れられていない。

どうやらこのブログですでに取り上げたグローバル化社会の大学院教育(答申案)〜世界の多様な分野で大学院修了者が活躍するために〜 (PDF:1635KB)のほうのようで、最終的な答申はまだ文科省のウェブにアップされていない。

これは大学分科会(第94回) 配付資料(1月19日)にあったものだが、12月16日の大学院部会(第52回) 配付資料には、概要も含め掲載されている(1月19日のほうは、12月16日の以下の3つをひとつにまとめたもの)。

資料1 グローバル化が進展する中での大学院教育〜世界の多様な分野で大学院修了者が活躍するために〜(答申案)(ポイント) (PDF:395KB)
資料2 グローバル化が進展する中での大学院教育〜世界の多様な分野で大学院修了者が活躍するために〜(答申案)(概要)
資料3 グローバル化が進展する中での大学院教育〜世界の多様な分野で大学院修了者が活躍するために〜(答申案) (PDF:969KB)

グローバル化社会の大学院教育(答申案)〜世界の多様な分野で大学院修了者が活躍するために〜 (PDF:1635KB)をもとに、産経の報道にあった部分に相当する部分を一部抜き出してみる。

p6

4.大学院教育の改善方策
(1)学位プログラムとしての大学院教育の確立
? 課程制大学院制度の趣旨に沿った体系的な教育の確立
博士課程,修士課程,専門職学位課程を編成する専攻単位で,人材養成の目的や学位の授与要件,修得すべき知識・能力の内容を具体的・体系的に示す。その上で,コースワークから研究指導へ有機的に繋がりを持った体系的な大学院教育を確立する。

<複数の教員による研究指導体制の確立>
高い専門性とともに幅広い視野を備え,専門分野の枠にとらわれない独創性・創造性を持った人材を養成する観点からは,異なる専門分野の複数の教員が論文作成等の研究指導を行う体制を確保することが重要である。各大学は,上記の助教制度の創設や講座制又は学科目制を基本原則とする規定の削除の趣旨を十分に踏まえ,教育研究組織を見直していくことが必要である。
また,国は,各大学院の組織的な教育・研究指導体制の現状と優れた事例の積極的な情報提供を進める必要がある。

p14

(2)グローバルに活躍する博士の養成
? 学位プログラムとして一貫した博士課程教育の確立
課程を通じ一貫した学位プログラムを構築し,産学官の中核的人材としてグローバルに活躍できる高度な人材を養成する質の保証された博士課程教育を確立する。

学士課程段階で充実した教養教育や基礎教育を受けた優秀な学生が,将来の見通しを持って自らの可能性に挑み,互いに切磋琢磨し,産学官の様々な分野で中核的人材としてグローバルに活躍できるよう,大学院教育,とりわけ博士課程教育に重点を置く大学などにあっては,専攻等の規模や人材養成目的に応じ,幅広い知識を修得させる広範なコースワークや複数専攻制,研究室のローテーションなど研究室等の壁を破る統合的な教育を経て,専攻する専門分野を選択し,独創的な研究活動を自立して遂行していく博士を養成することが重要である。こうしたプロセスを効果的に実現するため,修業年限を弾力的に取り扱い,課程を通じて一貫した学位プログラムを構築し,質の保証された博士課程教育を確立していく必要があり,制度と予算の両面から強力に推進していくことが求められる。

<博士課程学生の基礎的能力の審査>
課程を通じて一貫した体系的なカリキュラムを編成する観点から,アメリカの博士課程教育で広く行われている「Qualifying Examination」,すなわち,学生が本格的に博士論文作成に着手するまでに,博士論文作成に必要な基礎知識,研究計画能力,倫理観,語学力を含むコミュニケーション能力などを体系的なコースワーク等を通じて修得しているか否かについて包括的に審査を行う仕組みの導入が有効である。
区分制博士課程をとる多くの大学院においては,博士課程(前期)の修了要件に修士論文が課されているが,修士論文の作成に係る負担が過度となるとの指摘がある。このため,修士論文が研究者としての訓練を積む上で大きな役割を果たしてきたことや,博士課程(前期)修了後に就職する者等の取扱いに留意しつつ,課程を通じ一貫したカリキュラムを編成する観点から,博士課程(前期)の修了時に,修士論文の作成に代えて上記のような審査を行う場合の制度的取扱いや博士課程(後期)へ受け入れる要件を明確にすることが適当である。

最終的な答申にどのような変更があったのかは不明だが、まずはこの答申案を各自読んでほしい。