科学・政策と社会ニュースクリップ

科学政策や科学コミュニケーション等の情報をクリップしていきます。

科学技術NPOと政策との関わり

 以下メルマガの巻頭言の文章。3月27日の記事の焼き直しであるが、掲載。


 科学技術NPOについて、先の科学技術担当大臣の会合でもお話させていただいたが、この会合の前日、3月19日には、日本生態学会にて講演させていただいた。

 ここでは、科学技術担当大臣の会合では言いきれなかったこと、とくに科学技術NPOに関することを述べたので、ご参照いただきたい。

若手研究者のキャリア問題 ピンチをチャンスに
http://www.slideshare.net/enodon/100322

 繰り返しになるが、科学技術NPOは少ない。内閣府に登録しているNPO法人の中で、科学技術の振興を活動分野にしている法人は2000に満たず、17ある活動分野の中で最低だ。

 この状況は、2001年3月に、科学技術政策研究所が「科学技術とNPOの関係についての調査」
http://www.nistep.go.jp/achiev/ftx/jpn/mat078j/idx078j.html

 を行ったときに比べればだいぶ進歩しているが(この時点では、科学技術の振興がNPO法人の活動分野に入っていなかった)、まだ十分とは言えない。

 ましてやアドボカシー(政策提言)を行う科学技術NPOは限られているというのが現状だ。

(この点に関しては、科学技術社会論研究第5号
http://www.tamagawa.ac.jp/SISETU/UP/isbn/isbn978-4-472-18305-8.html
http://www.amazon.co.jp/dp/4472183056?tag=nposciencec0d-22

科学技術政策とNPO 政策提言型科学技術NPOの現状と課題(榎木英介 春日匠)で論じたので、ご参照いただきたい。別刷り残部わずかだが、ご希望の方はenodon@sci-support.orgまでご連絡いただきたい)。

 こんな中、新しい公共を作る市民キャビネット
http://www.npo-support.jp/event/20100129-ccf-report.php

の中に、科学・技術と社会部会が発足した。
http://sites.google.com/site/sciencetrustjapan/sts

 私が参加している2団体(サイエンス・サポート・アソシエーションおよびNPO法人サイエンス・コミュニケーション)も参加することになった。

 ここで、鳩山首相所信表明演説で言われた「新しい公共」について振り返りたい。

「私が目指したいのは、人と人が支え合い、役に立ち合う「新しい公共」の概念です。「新しい公共」とは、人を支えるという役割を、「官」と言われる人たちだけが担うのではなく、教育や子育て、街づくり、防犯や防災、医療や福祉などに地域でかかわっておられる方々一人ひとりにも参加していただき、それを社会全体として応援しようという新しい価値観です。

 国民生活の現場において、実は政治の役割は、それほど大きくないのかもしれません。政治ができることは、市民の皆さんやNPOが活発な活動を始めたときに、それを邪魔するような余分な規制、役所の仕事と予算を増やすためだけの規制を取り払うことだけかもしれません。しかし、そうやって市民やNPOの活動を側面から支援していくことこそが、二十一世紀の政治の役割だと私は考えています。」

 新しい公共とは何か、まだよく分かりにくいのが、市民も政府任せにして文句を言っているだけではなく、公共を担うべき、当事者として主体的に社会問題にかかわっていこうという方向性なのだと思う。

 行政機構のアウトソーシング、というネガティブな意見もあるが、当事者として市民社会に関わっていく人が増えるのは、今後の社会にとって重要であると考えている。

現在政府側では

新しい公共」円卓会議
http://www5.cao.go.jp/entaku/index.html

が開催され、議論が進んでいるが、これに対するNPO側の動きとして、新しい公共をつくる市民キャビネットができた。今回その中に科学・技術と社会部会ができたので、私達も参加したのだ。

 新しい公共の流れと同時に、事業仕分け以来、科学技術政策も市民に開かれつつあり、科学コミュニケーションも含めた科学・技術関連の活動をしている団体も、政治の動きに無縁ではいられない。私が科学技術担当大臣との会合に出席したのも、その流れのなかにあるといえる。

 そんな中、科学技術NPOの集まりができたのは、大きなことだと思う。

 残念ながら現段階では参加団体が10に満たない。広報不足という面も大きいが、そもそも科学技術NPO(任意団体を含む)が少ないこと、政治に絡むことをあまりよしとしないこと、民主党によりすぎているのではないかという批判もあり、参加団体が増えなかった。

 民主党に寄りすぎているという批判に関しては、新しい公共という概念を提案したのが鳩山首相なので、そう見られても仕方ない面もある。もちろんNPO法人は特定の政党を支援してはいけないので、政党や政治に意見は言うが、下請け団体になるわけではない。

 政権がたとえ変わろうとも、当事者が声を上げ、動き、公共を担うという方向性に変わりはないだろう。

 NPOや市民が、それぞれの活動の中で感じた問題点などを、政策の現場に伝えるというのは、とても重要なことだと思っている。政治を他人事と思わず、当事者として関わっていくことが、NPOや市民一人一人に求められている。

 この組織に関わるか否かは別として、サイエンスカフェの活動を行っている団体も含め、多くの団体が科学技術政策に関心を持ってもらえたらと思う。

 時代が大きく変わりつつあるのを感じる。この中に、科学技術人材が当事者として主体的に加われば、科学技術と社会の在り方がより深く、広くなると思っている。みなさんの行動を期待したい。

★第1回会合開催を以下の日程で開催する。オブザーバー参加可能なので、下記のページを
ご覧いただきたい。

日時:2010年4月14日(水)19:30〜21:30

場所:財団法人 未来工学研究所4階会議室
東京都江東区深川2-6-11 富岡橋ビル4F
https://sites.google.com/site/sciencetrustjapan/sts/meeting01