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若手研究者を重視〜総合科学技術会議議事録

第87回総合科学技術会議議事要旨

わずか40分の会議だったが、すでに報道の通り、若手研究者重視が語られていた。

白石隆氏(元政策研究大学院大学教授・副学長)が口火を切った。

2点指摘させていただきたい。
1つは、独立行政法人、これは29で研究者が約1万5千2百人おり、そのうち若手、37歳以下が5,200人、約3分の1だが、先ほど相澤議員から指摘があったとおり、若手の中で常勤が減って非常勤が増えている。しかも常勤の中では終身の身分保障のついたポストが減って、任期つきが増えている。その一方、38歳以上の研究員は増えているという事態がある。
大学のほうでも非常によく似たことが起こっており、大学の場合には全教員に占める若手の比率は、平成17年度の23%から平成19年には21%に落ちている。ということは、シニアの研究者が優遇されて、若手が冷遇されているということで、これは実は非常に深刻な問題。したがって、若手の研究者についての一般的なサポートは非常に重要で、これはぜひお願いしたい
と思うが、同時に国の研究機関、それから国の大学については、特にやはり若手の処遇ということを注意して進めていく必要がある。

若手も同じ問題があり、放っておくと、教授会を構成しているのは年寄りなので、そちらに有利な決定になる。定年が65に延びている。

経済界出身の奥村直樹氏(元新日本製鐵(株)代表取締役 副社長、技術開発本部長)も、以下のように述べる。

深刻だと思う。私は企業から参っているが、企業の場合、会社の存続性を考えているので、あるポストであっても若手に置き換えていくということを積極的にやる。そうした事は大学には余りないと思う。

これに対し、管直人・国家戦略担当大臣がこたえる。

何となく外からは、この会議そのものもそういう有力な方の集まりだから、逆に若手の声が聞こえないのではないか、中にこういう場には皆さん若手を育てなきゃいけないとまさに言っていただいているが、そこにギャップがある。さっき言われた若手が非常勤等の比率が増えている、そういう意味では構造的に深刻。

鳩山総理も続く。

今も大変白熱した議論もあったが、特に若手の研究者が冷遇されて、さらには外国人の方にも非常に狭き門であるということ、これは他国に比べて大きな日本のマイナスの特徴だと思っており、これを克服しない限り、科学技術において世界をリードする日本というものになかなかなり得ないと思っている。
いかにして外国人をもっと日本に招いて最先端の研究をしていただける環境をつくるか、また若手の研究者に5年、10年、時間がたてば必ず花が開く研究もあるんだと、基礎研究に対してもっと力を入れる日本にしていくことが大変重要だと思っている。

若手研究者の問題に関しては、以下のような意見もいただく。

  • 現在のシニア研究者は、そもそも大学、大学院進学率が低い時代に研究者になったのだから、世代からみたら、きわめて競争率が高い。いまより厳しい時代を勝ち抜いてきた。決してシニア研究者が優遇されてきたわけではない
  • いまの人たちは、それからみれば、研究者になれる可能性は高まっている 実際若くして教授などになれる人が増えた 昔は年功序列で待たなければならなかった
  • 若手が不安定といっても、皆が常勤ポストにつくことは現実的に無理


確かに、シニアの研究者が、決して今まで厚遇されてきたとは思わない。研究者人口も昔より増えたのは事実。そして研究はなにより競争だ。すべての人が教授になるのは無理だ。

しかし、多くの若手研究者を、単年から数年の短期の非常勤の職にとどめているという現実を放置してよいとは思わない。

シニアの世代は、1970年代から80年代にかけて、オーバードクター問題に取り組んだ。しかし、自分たちがポジションを得てしまえば、今は昔は無給だったのだから今のほうがまし、と言って現状を肯定するのでは、筋が通っていない。

そんな不安定なポストに応募したのが悪いのだ、嫌ならやめればいい、といわれるかもしれないが、それを人を雇っている側が言うのは責任放棄ではないか。


解決策としては、やはり、シニアに人口比が偏った状態を是正することは必要だ。そして、一時的に労働力として使うだけでなく、能力を発揮できる場を作りだすことも必要だ。

いずれも簡単ではないが、やらなければならない。若手の生首切りが迫っている。