科学・政策と社会ニュースクリップ

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各党選挙公約マニフェスト比較

■各党の政策が出揃いました。
http://d.hatena.ne.jp/scicom/20121216/p1

科学技術政策に関する公約の比較をしたいと思います。科学技術政策の中でも、研究予算や若手研究者などに関する部分にしぼります。

民主党以外は、記載がない政党は掲載していません。

1)科学技術政策のあり方
民主党
記載なし

自民党
震災復興の原動力として「科学技術・イノベーション推進」の国づくりを目指すため、人材・予算・制度や研究体制の改革など、科学技術基盤を根本から徹底強化

安保・外交、経済・財政、規制改革等の総合戦略として科学技術イノベーション政策を位置づけ、官邸のリーダーシップを発揮するための司令塔を整備

福島第一原子力事故対応の教訓を踏まえ、政治決定と科学的助言の機能強化を図る

共産党
基礎研究を重視
科学技術基本計画を政府がトップダウンで策定するやり方をあらため、日本学術会議をはじめひろく学術団体の意見を尊重して、科学、技術の調和のとれた発展をはかる総合的な振興計画を確立

みんなの党
現行の「科学技術会議」を改組し、予算配分権限等を有する「真の司令塔」を発足。前年比較での予算配分方式から目標設定方式へと変更

みどりの風
産業化に偏った科学技術開発を、国民生活とその環境観点から総合的再編

2)若手研究者、女性研究者支援
民主党
大学等の理系カリキュラム改善やインターンシップ産学官連携で推進し、またテニュアトラック制(任期付き研究者が審査を経て専任となる制度)の普及等により優秀な若手研究者を支援する。

自民党
入学金や授業料免除の対象拡大、給付型奨学金の創設、ティーチング・アシスタント及びリサーチ・アシスタントの充実など博士課程学生への経済支援を抜本的に拡充

単なる任期付ではない若手研究者のポストを大幅に増やすとともに、キャリアパスを多様化するため、産業界の研究職や知的財産管理等の研究支援に携わる専門職等での活躍を促進

公的研究機関等における、ポスドク等を対象とした専門人材育成の取り組みを支援し、活躍機会を拡大

若手研究者が自立して研究に専念できるようにするための新たな研究資金制度として、当該研究者の名前を冠した「冠プロジェクト」を創設

世界トップレベル大学からの博士号を持つ若手研究者の大量スカウト、資金支援などを行なう

公明党
大学教員等に若手・女性研究者の積極的な採用を図る

共産党
公務員の大学院卒採用枠を新設し、学校の教師や科学に関わる行政職、司書や学芸員などに博士を積極的に採用

博士を派遣や期間社員で雇用する企業に対して正規職への採用を促すとともに、大企業に対して博士の採用枠の設定を求める

大学や独法研究機関が、期限付きで研究者を雇用する場合に、テニュアトラック制(期限終了時の審査をへて正規職に就ける制度)をさらに発展させ、期限終了後の雇用先の確保を予め義務づける制度を確立

ポスドクの賃金の引き上げ、社会保険加入の拡大をはかる

特別研究員制度を大幅に拡充(院生には20%まで採用を増やす)

大学院生に給費制奨学金を創設

大学非常勤講師で主な生計を立てている「専業非常勤講師」の処遇を抜本的に改善するため、専任教員との「同一労働同一賃金」の原則にもとづく賃金の引き上げ、社会保険への加入の拡大など、均等待遇の実現をはかる

一方的な雇い止めを禁止するなど安定した雇用を保障させる

すべての大学・研究機関が男女共同参画推進委員会などを設置し、教員、研究員、職員の採用、昇進にあたって女性の比率を高めるとりくみを、目標の設定、達成度の公開をふくめていっそう強めることを奨励・支援

各大学・研究機関における男女格差是正のための暫定的措置(ポジティブ・アクション又はアファーマティブ・アクション)の運用を推奨し、女性研究者のキャリア形成を支援するプログラムの形成を促す

大学・研究機関が、男女共同参画の促進やセクシャルハラスメントアカデミックハラスメントなどの人権侵害を防止する専門家を専任で配置することへの支援を強める

出産・育児・介護にあたる研究者にたいする業績評価での配慮、育児休業による不利益あつかいの禁止、育児支援資金の創設をはじめ休職・復帰支援策の拡充、大学・研究機関で働き・学ぶすべての者が利用できる保育施設の設置・充実など、研究者としての能力を十分に発揮できる環境整備促進に力を尽くす

文科省が実施している女性研究者支援のための補助事業を大幅増額

採択枠を文系・理系を問わずすべての分野に拡大し、保育所の設置・運営なども経費負担に含めるなど現場の実情に即して柔軟に利用できる制度に改善

非常勤講師やポスドクについても出産・育児にみあって採用期間を延長し、大学院生に出産・育児のための休学保障などの支援策をひろげる

企業に対しては、研究・技術職に女性を積極的に採用すること、昇進・昇格・仕事内容において性差別をしないことなどを求める

科学者で常勤の審査員を大幅に増員

みんなの党
若手研究者を世界トップクラスの研究機関に派遣する

3)科学技術予算
民主党
記載なし

自民党
科学研究費補助金をはじめとする競争的資金について、その多様性や連続性を確保しつつ、大幅に拡充
全ての競争的資金について、間接経費30%を確保
第4期科学技術基本計画で掲げている25兆円を上回る政府研究開発投資総額を目指し、必要な経費の確保を図る

共産党
科学研究費補助金を大幅に増額し、採択率を抜本的に引きあげる

国の科学技術関係予算の配分を全面的に見直し、人文・社会科学の役割を重視するとともに、基礎研究への支援を抜本的に強める
防衛省の軍事研究費、「もんじゅ」の開発など原発推進予算、大企業への技術開発補助金など、不要・不急の予算を削減
研究者が自由に使える研究費(大学・研究機関が研究者に支給する経常的な研究費)を十分に保障
国立大学法人・独法研究機関の人件費を増額
研究費の配分がより公正で民主的になるように、審査のあり方を改革

4)国立大学法人運営費交付金
民主党
記載なし

自民党
安定的に確保

共産党
2012年度、2013年度の運営費交付金の減額を中止 大幅に増額する

社民党
国立大学・高専運営交付金、私学助成費のシーリング・マイナスの方針を転換し、義務的経費の減額は行なわない

【講評】
今回の選挙でも、科学技術政策に記載を割く政党が少ないのが残念です。そのなかでも、自民党共産党の記載が群を抜いています。

両党は、トップダウンボトムアップという対立軸は明確で、両党の政策は価値観の違いということなるでしょう。

その他の政党では、みんなの党が、科学技術政策のトップダウン重視を打ち出しています。ここでは取り上げませんでしたが、みんなの党は国立大学の民営化にも触れています。

民主党は、前回の公約から交代し、科学技術政策への記載が乏しくなりました。現時点での政権与党ですから、もう少し詳しく記載して欲しかったと思います。

論点は多岐に渡り、とくに原子力やエネルギーなどを含めたら、いろいろな対立軸や評価項目もあるかと思います。それは多くのNPOなどが評価しており、

(たとえば
言論NPOの未来選択2012
http://mirai-sentaku.net/

それゆえ今回は私達は比較しませんでした。それでよいのか、というご批判もあるかと思いますが、私達の能力の問題もあり、また、イシューを絞った形で多彩なNPOなどが政策を評価するということも重要だと思っていますので、こうした形にしています。

ぜひ皆様も、自分の関心で政策比較を行っていただけたらと思います。