科学・政策と社会ニュースクリップ

科学政策や科学コミュニケーション等の情報をクリップしていきます。

今年もサイエンスアゴラがやってくる。

横山 雅俊

 今や毎年恒例になった、科学コミュニケーションの祭典「サイエンスアゴラ」。
 今年も、東京・青海の国際研究交流大学村(日本科学未来館東京国際交流館、産
業技術総合研究所臨海副都心センター)を会場に、去年からはフジテレビ湾岸スタジ
オも会場に加わって、華やかに開催されます。
 早いもので今から9年前、全米科学振興協会(AAAS)の年次総会などをモデルにし
て、科学にまつわるあらゆる人たちが、垣根を超えて集う広場=アゴラとして始まっ
た、このサイエンスアゴラ。科学にまつわるある専門家とそれ以外の方々をつなぐ営
みとしての科学コミュニケーションの多様な形を一堂に集めた「見せ方の見本市」と
して、その存在感を年々増してきました。今年は、これまでの実績の積み重ねも踏ま
えながら、当初の理念に立ち返り、「あなたと創るこれからの科学と社会」をテーマ
に開催されます。

 今回の本記事では、その今年のサイエンスアゴラにおいて、筆者が関与する2つの
企画をご紹介します。勿論、これ以外にも魅力的な企画が満載です。

 まず、1つめ。
 今年で6回目を迎えた東京国際科学フェスティバル(TISF 2014)。その開催に向
けての基本的な考え方と背後にある出展者の皆さんの思いの丈を、開催されたイベン
ト群の報告と共に、会場に届けます。そして、日本各地で科学祭や地域連携活動を担
う方々の思いの丈を共にする場を作り、成果や課題を共有します。
 それが、A1-051, C11-116「広がりゆく科学の広場の担い手たち」です。
 去年に続き、ブース出展(A1-051)と時間枠企画(C11-116)の二本立てですが、
今年は時間枠企画が正規扱いになりました。
 ブース出展では、TISF 2014 の開催理念とメインビジュアル、科学祭に出展された
企画の開催報告に併せて、日本各地の科学祭の模様(特に、今回のサイエンスアゴラ
にお越し頂けない方々の取り組みや思い)をご紹介します。
 時間枠企画では、TISF の他にも日本各地にある科学祭や、地域連携活動を担う皆
さんに情報交換や人的交流の機会を提供し、科学祭そのものの意義、それらを継続的
に発展させていく上での課題や悩みを共有します。それを契機として、各地の科学祭
や地域連携活動の担い手の皆さん同士のネットワーク作りのキックオフにしたいと考
えています。
 ブース出展は未来館1F会場で 11/8,9 の2日間、時間枠企画は 11/9, 10:30〜12
:00 に産総研臨海センター別館 11F にて、それぞれ実施します。
 なお、時間枠企画にお越し頂ける、各地の科学祭主催者や地域連携活動の担い手の
皆さんを、絶賛大募集しております。TISF 実行委員会か僕まで、是非ともお気軽に
ご連絡ください。
http://tokyo.sci-fest.net/2014/ja/about/contact.html
 併せて、ご紹介を一つ。
 サイエンスアゴラの源流の一つである全米科学振興協会(AAAS)の今年の年次総会
で、科学祭ネットワークの取り組みに関するセッションがありました。
https://aaas.confex.com/aaas/2014/webprogram/Session7254.html
 時間枠企画の中で、こうした取り組みをご紹介できればと思います。

 科学祭や地域連携活動の出展は、これまでも数多くありました。函館や名古屋、千
葉、静岡、島根、香川など、各地で多くの実りある成果が出ています。それらの取り
組みに関しても、ぜひご注目頂ければと思います。

 もう一つ。
 科学研究の負の側面、影の部分を考えるワークショップ「本音で語る」。今年は、
研究不正、研究倫理の問題を扱います。
 C11-117「本音で語る研究倫理問題リターンズ」です。
 昨今の STAP 騒動をはじめ、医薬品の臨床研究に関する数ある研究不正(降圧剤、
白血病認知症等)、東邦大医学部の 172 本もの論文捏造、東北大工学部の二重投
稿疑惑(よりによって学長の案件)、東大分生研での大規模な捏造および改竄などな
ど、世間を騒がせている不正事件は、実は国内外で枚挙にいとまないほど沢山ありま
す。
 それらがなぜ起こるのか? 背景にある問題は何か? 公正な研究を進めていく上
で何が必要なのか? 我々はそれをどのように受け止めていけばよいのか? それら
を本音で考えてみたいと思います。

C11-117
研究問題ワークショップ・本音で語る研究倫理問題リターンズ
会場:産総研臨海センター別館 11 F 会議室2・3
日時:11 月 9 日(日) 13:00〜17:00
主催:横山 雅俊
   榎木 英介(SSA
   #phdjp 科学と社会ワーキンググループ
ゲスト:中村 征樹さん(大阪大学全学研究推進機構)
    粥川 準二さん(科学ライター)
    坂内 博子さん(名古屋大学理学部)

 サイエンスアゴラも今年で第9回。原点に立ち返るという形そのものは、サイエン
アゴラの開催理念と偶然ながら一致することになり、知る人ぞ知るサイコムのクレ
ジットで実施した第1回のあの時と同じテーマで開催することになりました。
 布陣としては史上最強。素晴らしい方々にご協力頂けることになりました。
 イベントの開催要項とおよその内容は
http://stsfwgjp.seesaa.net/article/406756367.html
..にあります。なお、必須ではありませんが、事前申し込みを受け付けています。こ
ちらのページ
http://kokucheese.com/event/index/223645/
...からお願いします。

 これまで、研究問題ワークショップ「本音で語る」からは、幾つもの2次的波及が
ありました。
 今回久しぶりに共同出展する、SSA 榎木代表の著書「博士漂流時代」は、サイエン
アゴラ 2007 での「本音で語るポスドク問題」を含むサイコム時代からの継続的取
り組みの延長線上にあります。サイエンスアゴラ 2008 での「本音で語る研究問題」
では、高学歴人材の社会進出やネットワーキングを取り上げ、産業技術総合研究所
の共同企画「博士ネットワーク・ミーティング」として、科学技術政策への提言やビ
ジネスモデルデザインなどの取り組みが生れました。一昨年の「本音で語る専門職学
位〜薬学6年化は成功するか〜」では、派生して6年制薬学部生の臨床実務実習に関
する意識調査を実施し、その成果を学会発表しました。

 昨今のアゴラの他企画を拝見する限り、科学と社会の間にある問題を主体的に考え
る取り組みの幅は徐々に広がっています。高校生による遺伝子組み換えに関するディ
ベートや、東日本大震災に関連した取り組みなど、科学と社会の接点にある負の側面
、影の部分を扱う出展企画は、幅を持ちながら脈々と続いています。
 それらの他企画は同時多発的なものではありますが、必ずしも楽しくなくても大切
な問題をしっかり考える取り組みは、ずっと続いてほしいと願っています。

 この他にも、今年のサイエンスアゴラでは、誰でも楽しめる企画、大切な問題をま
じめに考える企画、ひらめきや驚きの得られる企画が満載です。
 科学研究の最前線を担う人、インフラとしての科学や技術を支える人、科学や技術
に興味のある一般の方々、これから社会に出て行く学生さんたち、科学のことはよく
分からないけど「ちょっと見てみたい」「ちょっとつついてみたい」と思う方々など
、多くの方々にその場が開かれ、多くの方が集う。
 それが、サイエンスアゴラです。

 今年は公募者多数で選抜を実施し、残念ながら選に漏れた方もおられると聞きます。
 そうした方々の思いも載せて、今年のサイエンスアゴラが実りある営みになること
を願うとともに、会場で多くの方々とお目にかかりたいと思います。