科学・政策と社会ニュースクリップ

科学政策や科学コミュニケーション等の情報をクリップしていきます。

今年もサイエンスアゴラがやってくる

横山 雅俊

 今年で 10 回目を迎える、科学コミュニケーションの総合見本市「サイエンスアゴラ」。
 「アゴラ」とはギリシャ語で「広場」。科学にまつわるあらゆる人が、日本各地、そして世界各国から垣根を超えて集う広場として、その歩みを続けてきました。今年、その大きな節目を迎えます。
 そもそも科学コミュニケーションとは何だろうか?という点で、色々と議論はあるところです。その議論の場や中身に関して、云いたいことのある人も少なからず居ることでしょう。それでも、広場を彩る担い手たちには変遷がありながらも、その顔触れは少しずつ多様化しています。
 モデルになっているのは、全米科学振興協会(AAAS)の年次総会など、幾つかの総合見本市や科学フェスティバル。科学そのものの魅力や意義、科学を担う人や使う人の人生、科学と社会の関係のあり方、科学と社会の接点における陰の部分や負の側面など、科学と社会、人間との間にある全てが、そこにきっとある。そうした広場であることを目指しての、この 10 年のサイエンスアゴラの歩みであり、これからもその歩みが続くと、筆者は理解しています。
 どこまでそれが形になっているかは改めて考えることにして、その広場そのものが今年もやってきます。
 今年の会期は 11/13(金)〜11/15(日)。会場はいつもと同じく、国際研究交流大学村(日本科学未来館東京国際交流館産総研臨海副都心センター)とフジテレビ湾岸スタジオ、プロムナード公園の一帯です。
 今年も今回の記事で、筆者が関わる2つの出展企画をご紹介します。
 まず1つめ。
 今年で7回目を迎える、東京国際科学フェスティバル(TISF 2015)。首都圏各地の同時多発的なイベント群で同じ看板を掲げてつながろうというメタフェス型の科学祭として、毎年多くの方々の参画を頂いています。そこに秘められた思いの丈、実際につながっている方々の思い、続けていく上での目的意識や課題などを、多くの方々に知っていただきたい。そして、この 10 年ほどの間に日本各地で始まり、今日まで続いている科学フェスティバルや科学にまつわる地域連携活動の担い手の皆さんと、文化としての科学の価値や意義、それを(その陰日向も含めて)伝えていくことの大切さに関して共に考えていきたいと、TISF としては考えています。
 それを形にする企画が、Aa-021, Cb-209「広がりゆく科学のひろばの担い手たち」です。
Aa-021(終日ブース出展)
http://www.jst.go.jp/csc/scienceagora/program/booth/aa_021/
Cb-209(時間枠交流セッション)
http://www.jst.go.jp/csc/scienceagora/program/booth/cb_209/
 3年前から継続的な取り組みとして、TISF としてのメッセージの発信と、科学祭や地域連携活動の担い手の皆さんを繋げる試みを重ねており、去年から終日ブース出展と共に、時間枠の交流企画も正式なエントリー枠を頂いています。昨年は函館、栃木、静岡、名古屋、富山、福岡の皆さんに参画を頂き、有意義な交流の場にすることが出来ました。そして、この他に千葉、つくば、島根、鹿児島の皆様から成果報告のご恵与を頂きました。
 海外には、科学祭主催者のネットワークが存在します。
 例えば、イギリスの
http://www.britishscienceassociation.org/uk-science-festivals-network
や、アメリカの
http://sciencefestivals.org/
など。昨年筆者が参加した AAAS 年次総会シカゴ大会では、科学祭主催者ネットワークのセッションもありました。
Symposium Track: Communication and Public Programs
Science Festivals as Regional Collaborations: Extending Resources by Working Together
https://aaas.confex.com/aaas/2014/webprogram/Session7254.html
 この流れを、是非とも日本にも持ち込みたいと思っています。
 今年も、多くの方々と繋がり、この流れを太くしていきたいと願っています。
 日本各地の科学祭や地域的な取り組みの出展は、TISF 以外にもいくつかあります。一部を挙げると以下のようです。
Aa-006「ノンアルコールワイン開発から学んだワインの科学と文化」(徳島文理大学
Aa-017「はこだて国際科学祭〜地方都市発よりよい社会のために〜」(サイエンス・サポート函館)
Aa-032「ぐんま☆じゅとく☆Kawaii スライム×生糸をつくろう☆」(群馬県・樹徳高校)
Aa-042「記事にコメント!みんなでつくるアゴラ新聞」(サイエンスカフェとやま)
Aa-064「ちばっとプロジェクト 身近なコウモリのひみつを探れ」(ちば生きもの科学クラブ)
Aa-074「まちなかで科学実験! コロンブスの卵プロジェクト」(青森県・八戸工業高専
 大急ぎでプログラム全体を斜め読みしての抽出ゆえ、漏れもあると思います。我々も地域的取り組みを重視しているぞ!という出展者の方々は、是非ともお知らせ下さい。
 そして、2つめ。
 第1回のサイエンスアゴラから共に歩みを続けている、科学研究の負の側面、陰の部分にある問題群に光を当てる取り組みが、研究問題ワークショップ「本音で語る」です。第1回のサイエンスアゴラでも後援として名を連ねた NPO 法人サイコムジャパンのクレジットでその第1回を始めてから、この企画も今年で 10 回目を迎えます。
 サイコム時代から(...というより、それ以前からの長期にわたり)問題意識として持ち続けながらも、機が熟するまで何年も温め続けた持ちネタの1つ。いよいよ今年は、研究問題の重要な本丸の1つ、研究費の問題を取り上げます。それが Fb-511「本音で語る研究費問題〜幸せに研究するために〜」です。
http://www.jst.go.jp/csc/scienceagora/program/booth/fb_511/
(主催者公式サイトの
http://stsfwgjp.seesaa.net/article/427660232.html
...も、是非ご覧下さい。)
 例年通り、前半がサイエンスカフェ形式のトークセッション、後半がひらめきや気づきを重視する手法を用いる全員参加型のワークセッションです。
 前半部では、ゲストに2人お迎えします。お一人は政策科学の専門家として未来工学研究所の田原敬一郎さん。もうお一人は研究の現場や大学運営のマネジメントの最先端に立つ、「ある医療系大学長のつぼやき」でおなじみの鈴鹿医療科学大学学長・豊田長康さん。このお2人から、日本の研究費制度や高等教育の現状と課題、日本の研究パワー低下とその背景となる構造問題に関して、話題提供をお願いしています。
 そこでの議論や問題意識の共有を通じて、後半部では、研究者にとって使いやすい研究費のあり方を皆で探り、今後の提言や二次的波及につなげます。
 なお、当日はネットワーキングチャット Twitter での生中継を実施します。用いるハッシュタグは #ffs15 です。
 また、非必須ですが、事前受付も行っています。宜しければ
http://kokucheese.com/event/index/337416/
...からお申し込みをお願いします。勿論、当日のご来場も大歓迎です。
 科学研究や、科学と社会の接点における陰の部分、負の側面に関する取り組みは、目立つ事例が少なくはあるものの、脈々と続いてきました。2011 年の東日本大震災以降の福島での取り組みや、いわゆる ELSI 問題(倫理的法的社会的問題)、遺伝子組み替え技術や環境保全の価値衝突など、実はいくつかあります。今年の出展例に関して云えば、
Aa-004「臓器提供意志表示を拡げる科学コミュニケーション」(同志社大学 Shape Your Value P J)
Aa-033「医療と放射線 知って欲しい3つのこと」(放医研)
Ab-099「文理融合で、人文社会科学はこんなに変わる!」(日本学術会議科学者委員会他)
Ab-100「ミンナでカタル、日本の未来『気候変動とエネルギー』」(JST-CSC 他)
Cb-205「なぜ科学を嫌いになるのか?」(コミュニティ研究会)
Cb-211「SSH 高校生ディベート『遺伝子組み替え食品は安全か』」(岐阜県立岐阜農林高校)
...などなど。やはり、プログラム全体を急いで斜め読みしての抽出ゆえ、漏れもあると思います。我こそは!という出展者の方々は、是非お知らせ下さい。
 これ以外にも、サイエンスアゴラの第1回から連綿と続く基本理念...「科学が社会と交流し、社会と対話する」「科学を担う多様な人々の間の対話を促す」「日本中の科学コミュニケータたちが集い議論する」...を体現する企画が、3日間の朝から晩まで詰め込まれています。昨年から企画公募の競争率や選考が激化し、選に漏れる企画も以前に比してだいぶ多くなりました。それでもなお、サイエンスアゴラは科学にまつわる全ての人に開かれており、垣根を超えて集う広場として、皆さんを待っています。
 筆者はしがない出展者の一人に過ぎませんが、第1回から出展者として、第6回、第7回では企画委員として運営側でも、ずっと参画を続けており、筆者なりの思いの丈もそれなりにあります。
 一人でも多くの方々と、その思いの丈を共にしたいと願っております。
 是非とも会場で皆さんとお会いしたいと思います。